サンチョパンサの憂鬱

昼下りのサンチョパンサ(2)……『自己愛』とか『自己肯定感』なんて簡単に言っちゃ駄目なんですね?

自己愛だの自己肯定感だの、さも分かった風に言ってきたけれど……。

エゴとか被害者意識とかを動員して『被害者になる』、ソコから転じて凄まじい攻撃性を発揮し始める……その一連のメカニズムの根底には『自分に対する罪悪感』があるのだ……という動画をTikTokの動画で観た。

この動画一つで、散々おバカな動画を流し観てきた事が報われた?と思った。

クリニックのカウンセラーの方の体験談。
とても美しい容姿の若い女性の相談。身体の右側に家庭内の事故でひどい火傷の跡が原因の悩み。

彼女は事故の原因となった母親を責め苛んで生きて来た…。誤って熱湯をかけてしまった母親を……。

すごい数のラブレターに彼女は一回も返事を返さずそこまでを生きて来ていた。
『私を美しいという人は私の本当の姿を知らないからだ』という頑な姿勢……。

丹念に話を聞いている内に『彼女はその事故の顛末』を思い出したという。長らく心の奥底に封印されていた事が……。

三歳の時に……台所は危ないからリビングで遊んでいなさい!と言われたのに彼女は台所に駆けて行き後ろから大好きな母親に抱きついた……。

よろけた母親が手にしていたやかんの熱湯を……という一連の光景を彼女はやっと思い出した。
それ以来、彼女を見ると弾ける様な笑顔を向けてくれた母親から明るい表情が消えた。

『私のせいだ!!』……明るかった母親を悲しませることになったのは自分が…言付けを守らなかったからだ……という『罪悪感』がそれ以来彼女の心の底に居座り続けていたのである。

ソコからは『論理の逆転』によって被害者となり……母親に対する攻撃性によって自己正当化して生きて来たことに気付いたのである。

別れ際にカウンセラーは彼女に言ったという。今までに誰かにその火傷の跡を見せたことは?……誰にも見せていません!!と彼女。

誰でも良いからたった一人だけ、貴女のその傷を見せてみて下さい。恐らく貴女が決め付けている反応とは違う反応があるかも知れませんよ?……とカウンセラーは言って別れた。

そのニ年後……カウンセラーは彼女から結婚式の招待状を受け取った。
ニ年間……断られても断られても彼女に愛を告白し続けた男性。彼女は意を決して彼に電話した。

貴方が私を愛してくれているのは分かった。
但し、私には貴方の知らない大きな重大な秘密がある。それを今夜見せます…覚悟があるなら私のマンションに来て下さい……と。

彼は……様々を想像して気圧された。全身に昇り龍が入っている裏の稼業?とんでもない借金?などなど……考えられる限りの『不幸の条件』を用意してみた。それでも『愛していること』は揺らがない。

覚悟を決めて彼は彼女のマンションへ……。
彼女は彼をマンションに上げて……おもむろに服を脱いで自分の全てを見せた……。コレを見ても貴方は私を愛していると言うの?……。

彼は腰を抜かした……ハァ???
秘密って『ソレ、ソレだけぇ?』……と散々の悲惨な想像から開放され脱力してしまったのだと……。

結婚式の花束贈呈のとき……彼女は裁判官となって母親に『火傷の件に無罪判決』を言い渡したのだという。『お母さんは無実よ』と『お母さんのお陰様で私はこんなにも幸せです』……二人は抱き合い泣きじゃくったのだという……。

神よりも厳格に自分を罰する幼い心。

ソレを起点に始まる罪悪感による自己嫌悪……。
辛い自分を慰める為に他者に向かう攻撃性……。

人間の心は何て素敵でキレイなのだろう…。
人間の心は何て悲しく愚かなのだろう……。

『自分の心』を巧みに誰よりも複雑にして自分に分からない様にして隠す名人が自分?
自分を愛すること、自分を肯定してあげること……。

簡単じゃないよね?……と僕は一人言を呟いた。
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