とおいひのうた いまというひのうた

自分が感じてきたことを、順不同で、ああでもない、こうでもないと、かきつらねていきたいと思っている。

「蓮舫いじり」あふれ出す東京都知事選…アンチの“罵詈雑言”にみる、辟易するほど劣化しきった日本政治の現在地 2024.6.16

2024年06月16日 20時14分26秒 | 政治

「蓮舫いじり」あふれ出す東京都知事選…アンチの“罵詈雑言”にみる、辟易するほど劣化しきった日本政治の現在地

失笑ものの「#蓮舫パニックおじさん」、そろそろ価値観をアップデートしては?
2024.6.16(日)尾中 香尚里

東京都知事選への立候補を表明している蓮舫氏に対し、怒涛のような攻撃が向けられている。「蓮舫いじり」が沸きに沸く状況で、SNS上では「#蓮舫パニックおじさん」というハッシュタグまで登場した。告示を目前にあふれる蓮舫批判に対し、元毎日新聞編集委員でジャーナリストの尾中香尚里氏は「日本政治の劣化が見て取れる」という。蓮舫氏に向けられている3つの攻撃をもとに、尾中氏が解説する。(JBpress)

 

(尾中 香尚里:ジャーナリスト、元毎日新聞編集委員)

蓮舫氏への“罵詈雑言”から見えるもの

「七夕決戦」となる東京都知事選(6月20日告示、7月7日投開票)は、まれに見る「与野党ガチンコ勝負」の構図となった。

 3選を目指す現職の小池百合子知事を自民、公明両党が支援し、新人の蓮舫参院議員を、出身母体の立憲民主党、共産党、社民党が、それぞれ支援する。ここまで明確な「与野党ガチンコ対決」の様相を呈する都知事選は、過去にほとんど例がない。

 知名度を誇る現職が圧倒的に有利とされる都知事選。ほとんどの選挙が事実上現職の信任投票と化し、選挙が「死んでいた」と言ってもいい。この状況を打破して選挙を「生き返らせる」のは第一義的には野党第1党の務めだが、過去の野党は力不足もあり、こうした構図を作れずにいた。

だから今回、大きなリスクを取って、ともかくも都知事選を「生き返らせる」ことに成功した蓮舫氏と立憲民主党には、素直に敬意を表したい。

 しかし、蓮舫氏が出馬表明した途端、ネットなどで湯水のごとくあふれ出した蓮舫氏への誹謗中傷にはあ然とした。蓮舫氏はファンもアンチも多い政治家だが、それにしても特定候補に対する過剰なまでの攻撃には辟易している。

 ただ、蓮舫氏に向けられた罵詈雑言には、むしろ「日本政治の現在地」を考えるヒントもあるように思う。価値観をアップデートできずに劣化する日本政治の現状が、これらの罵詈雑言によって可視化されているように思えるのだ。

橋下徹氏が投稿「無所属出馬批判」の的外れ

 代表的なものを三つ挙げる。

 

 まず、蓮舫氏が立憲を離党し、無所属で出馬することへの批判だ。

 蓮舫氏が出馬を表明した5月27日、元大阪市長の橋下氏は自らのX(旧ツイッター)で「立憲民主の看板に自信がないのか無所属で出馬」「安易に無所属に逃げるべきではない」などと投稿。ここからネット上には、同種の「蓮舫批判」が次々とあふれ出した。

 言うまでもないが、国政は議院内閣制で政府・与党と野党が対峙するのに対し、地方政治は二元代表制で首長と議会が対峙する。強い権限を持ち、多様な意見を持つ議会に1人で対峙する首長は、候補者が幅広い民意を代表するため、選挙の際に所属政党を離れ無所属になることは、むしろ当然だった。

今回の蓮舫氏のケースだけ批判の対象になるのはおかしい。

 蓮舫氏の挑戦を受ける小池百合子知事も、過去2回の自身の選挙は無所属で戦った。初挑戦した2016年の都知事選は、無所属で立候補しながら自民党を離党していなかった。あれだけ都議会自民党を「伏魔殿」と罵っていた小池氏が自民党を離党していなかったことの方がよほど驚きだが、そんなことには全く目が向かない。

 見事なダブルスタンダードである。

2016年、初めて都知事選に挑んだ小池百合子氏。このときはまだ自民党を離党していなかった(写真:共同通信社)2016年、初めて都知事選に挑んだ小池百合子氏。このときはまだ自民党を離党していなかった(写真:共同通信社)
拡大画像表示

産経新聞「ボーナス惜しさの自動失職」

 次に、蓮舫氏が参院議員を辞職せず、都知事選告示の20日に「自動失職」することへの批判である。

 蓮舫氏が5月31日までに辞職すれば、参院議員のボーナス支給が満額の約8割にとどまるため、ネット上で「蓮舫氏はボーナス惜しさに辞職を引き延ばすのか?」との声が上がり、産経新聞がこれを拾って記事化したのだ。その書き方が振るっている。

「蓮舫氏の議員辞職は都知事選出馬に伴うため事情が異なるものの、不祥事で辞める政治家に対するボーナス支給を問題視してきた背景がある」

 書いた側が「こんなの書いても意味がない」と白状しているような記事だ。

誹謗中傷から垣間見える「チェック機能」の軽視

 最後に、今なおくすぶる「二重国籍」問題である。もはや言葉を尽くす気も起きないが、これは蓮舫氏の民進党代表時代に散々言い立てられ、蓮舫氏が戸籍謄本の一部を公開してまで対応し、解決したのは周知の事実だ。

 

 そこから7年近くがたっているのに、蒸し返す神経が理解できない。蓮舫氏が現職の参院議員であることからも、何の問題もないのは明らかだ。

 以上、これらの誹謗中傷は本来、いずれも完全無視で構わない内容なのだが、筆者があえてこれらに着目するのは、いつまでもこんな意味のない誹謗中傷にすがる、この国の政治のありようが、ここから垣間見えるからである。

東京都知事選の構図。社民党も蓮舫氏支援を決めた(似顔・本間康司)(図表:共同通信社)東京都知事選の構図。社民党も蓮舫氏支援を決めた(似顔・本間康司)(図表:共同通信社)
拡大画像表示

 第一の「無所属出馬批判」だが、逆に政党公認の首長がいるのはどこかと言えば、代表的なのが地域政党「大阪維新の会」公認の首長が続いている大阪府や大阪市だ。

 国会でも論客で知られた蓮舫氏が、自身の選挙準備より国民の負託を受けた参院議員としての職責を全うすることを優先したことを、「政治とカネ」の不祥事にまみれ、国会から逃げて議員の職責を果たさなかったにもかかわらず、ボーナスだけは満額支給された過去の自民党議員と一緒にする意味が、筆者には全く分からない。

「蓮舫いじり」は日本政治を腐らせている元凶だ

 第二の「ボーナス受給批判」にも似たような「におい」を感じる。

 

 自民党の小泉政権や菅義偉政権、日本維新の会の政治に特に顕著な「身を切る改革」の政治は、平成の時代の日本を席巻した。国会議員に渡されるささやかな公費をすべからく「悪」とみなし、片っ端から「身を切る」ことが、あたかも「正しい政治」であるかのように喧伝された。

 若手など資金力のない政治家が、日常の政治活動にかかる普通のお金にも四苦八苦するのを横目に、私たちはごく最近まで、自民党政治家による巨額の裏金づくりを、平気で見過ごしてきた。

 そして第三の二重国籍問題である。

こんなことを今の時代に決して言いたくはないが、結局は女性やミックスルーツの方々といった、社会的に弱い立場の人間をそのままの立場にとどめておきたい、つまり「社会の片隅で申し訳なさそうに生きていてほしい」という「マッチョな男たち」の身勝手な願望が、結局はいつまでもこの問題をおもちゃにしていたい、という欲求につながっているのではないか。

 これらはすべて、社会の価値観の変化に追いつけず、むしろ変化を押しとどめようとして日本の政治を腐らせている元凶だと考える。

 独裁的で権威主義的な政治が確かな政策遂行につながらないことは、大阪万博が証明している。公的なものを切り捨てる政治は、コロナ禍などの非常事態にもろさを露呈した。多様性を認めない価値観に社会がNOを突きつけ、企業などが即座に対応を迫られることは、政治以外のジャンルでは日常茶飯事だ。

 そういう時代に政治がついて行けていない。

 今回の「蓮舫いじり」には、ネット上で「#蓮舫パニックおじさん」などというハッシュタグがつき、失笑を買っている。

 あのような誹謗中傷と、それを許してきた政治は、もはや時代に完全に置いて行かれていることを、そろそろ認識すべきではないのか。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 都知事選に関する情報を集め... | トップ | 誕生日ケーキのリクエストが... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

政治」カテゴリの最新記事