中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

第5回紬きもの塾ー白樫、梨の木で初秋を染める

2015年10月01日 | 紬塾 '13~'16
工房の萩も花はそろそろ終わりです。
本格的秋を前にしたこの日曜日に自分で紬いだ糸や古い半衿、帯揚げを白樫と梨の小枝で染める実習をしました。
いつもは七月の桜の枝、葉を使うことが多いのですが、今期は梨、白樫を使いました。

今年は9月下旬の染日程になりましたので、植物にも秋の変化が現れています。
植物の葉は黄色くなるのに枝から煮だす色素は全体的に赤みが強く感じられるようになります。黄色味が抜けていくのです。

もともと赤味の透明感のある色素が多い梨は一層赤みを増していくように思います。
灰汁媒染で秋のピンク、鉄媒染で赤味のグレーになります。
灰汁媒染中。このあと染液にもどして落ち着いたピンクを染めました。 
鉄媒染中。このあと染液に戻して赤みの薄グレーの帯揚げになりました。
白樫も春先は黄色味が強いベージュになりますが、ほのかに赤みの感じられる温かなベージュが染まります。みなさんが紬いだ糸は白樫の無媒染にしました。
染め上がった糸や布はすぐしまわずに、室内で2~3週間は空気酸化させます。
灰汁媒染の場合は特に色の変化も見られます。

さて、実習を受けた方から終了後に感想のメールをいただきました。
大事な所を掴んでくださったようですので一部ご紹介します。

「染めの実習では、全ての工程が理にかなっていて、無駄が無く、とても勉強になりました。
糸は、必要以上に触らないことが大切だとわかって良かったです。
触りすぎないということは、無駄のない動きにつながって、丁寧に扱うこと、火の入れ方など、素材への接し方の基本は、作るときに共通して大切なことでした。」

普段の私がしている仕事の細かなことまで、実際に植物に接し、ハサミの入れ方、糸の触れ方、水の扱い、火加減の調節、洗い方、干し方など体験してもらいました。

煮出しも「何分煮出すのですか?」とタイマーに頼るとそれだけになってしまいますが、火加減の調整や、蒸らし、植物を煮出すときの匂い、色味をよく観察します。

「料理をしているみたいですね」とか「梨はお芋の匂いがする!」などの発言もありました。

 
そして今期の方はラッキーにも!金木犀の花で作る塩香(しおか)を自分たちで作ってもらうお土産つきでした。
前日に満開状態の金木犀の剪定があり、その花だけを摘んでおいたのです。冷蔵庫で保管しておきました。

本当は空き瓶などがあるとよかったのですが、ラップに5ミリほど粗塩をしいてその上に金木犀の花をのせ、上からも粗塩を少しのせます。家に帰ってから何か密閉できる容器に移してもらい一年以上香りを楽しめます。

先日アーティストの栃木美保さんの塩香のワークショップで教えていただきました。
色は変わりますが匂いは発酵が加わるのか一年後もとても良い香りでした。
もう関東以西では花は終わってしまったと思いますがもしまだ残っている地域の方はぜひお試しください。

下の画像は先日のワークショップで作ってきたものです。
アロマオイルよりもっとソフトで塩香もとてもいいものだと思いました。
香りを“聴く”という感じです。嗅覚を磨くのも良いことですね。(^ω^)P


左が金木犀単品で、帰ってきて作ったもの。右はワークショップで作りました。
爽やかな香りにバラの甘さを少し加えたものです。

下から丁子、月桂樹、ラベンダー、グレープフルーツ、バラ、フジバカマです。
栃木さんが一年かけて集め、乾燥させてくださった香り素材を使わせてもらいました。

またかたち塾でもやれるといいなぁと思っています。(*゜▽゜*)





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