「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

僕がサイクリストになった、いくつかの理由(24)

2012年09月07日 | アホな自分
7月中旬の木曜日の八津菱電機華厳寮203号室では、珍しく夜の9時前に、3人が揃っていた。

「この時間に3人が揃っているのは、珍しいなあ」

と、ガオが笑う。

「そうだな。これはやっぱり、一杯いっとく?」

と、イズミ。

「そうだな。りっちゃんもいたから、りっちゃんも呼ぶか」

ということで、203号室は、たちまち飲み会の場所に変わったりする。


「ねえ、203号室はゴールデンルームに戻ったって、ほんと?」

と、りっちゃんが青い顔して、ガオに聞いている。

「ああ。もう、一ヶ月くらい前だったかなー。俺の彼女は藍ちゃん、イズミは愛ちゃんだよな。んで、パパは・・・」

と、ガオが言う。

「姉さん女房の、東堂アイリだ」

と、僕が言う。

「ひえー、ほんとだったのかー・・・俺出張してたから、知らなかったんだよねー。昨日、田村に聞いたんだけど・・・」

と、りっちゃんは同室のルームメイトの名前を挙げている。

「しっかし、こいつらは普通と違うとは、思っていたけど、3人共、早すぎじゃない?復活するの」

と、りっちゃんが呆れている。

「まあね・・・それだけ、皆、積極的ってことじゃないかな」

と、僕が言うと、

「いくら、積極的に行ってもさー・・・相手が自分のことを気にいってくれなければ、つきあえないじゃん!」

と、りっちゃんは、当然のことを言っている。

「でも、男から声をかけなければ、女性は絶対に動かないぜ」

と、イズミは当然のことを言う。

「そうだな。男はフラレてなんぼ・・・そのうちに、度胸も座ってくるし、女性にとって、好ましいってことは何かってのが、段々わかってくる。具体的にな」

と、ガオが言う。

「その具体的な何かって、何よ?」

と、りっちゃんは口を尖らせて言う。

「そうだな。女性を安心させる笑顔かな」

と、ガオは言う。

「うん。それはそうだな」

と、イズミも言う。

「確かに、笑顔は、重要」

と、僕も続く。

「それとさ、なんと言っても雰囲気さ。女性が好きになる雰囲気って、やっぱりある」

と、イズミは言う。

「うん。そうだろうな、自分を護ってくれる安心感とか・・・誰かさんは、女性に「守ってあげるから安心して!」って言われたらしいけどな」

と、ガオが笑う。

「え、それって・・・」

と、りっちゃんはちんぷんかんぷん。

「俺だよ。年上のアイリさんに「あなたのことを守るから、安心して」って言われたんだ」

と、少し照れながら、僕は言う。

「あのさ、それって、すごくない?・・・絶対に、そんなことを言ってくれる女性は、僕については、この世に存在しない」

と、りっちゃんは驚きながら、言う。

「まあ、パパは別格だよ。舞台女優のエイコさんには愛され・・・アイリさんって人も相当美人だぜー。パパ写真見せてあげれば・・・」

と、イズミが言う。


僕はアイリと二人で撮ったプライベート写真をりっちゃんに見せる。


「げ、なにこの美人・・・背もすらっとしていて、色も白くて髪の毛も長くて、ちょっとハーフっぽいじゃん・・・パパと二人、やわらかい笑顔で・・・うらやましい」

と、りっちゃんは、げんなりしている。

「まあ、パパは女性に愛される相なんだろうな。そうでなきゃ、そんなすごい美人達に、続けて、愛されるわけがない」

と、ガオは皮肉たっぷりに言っている。

「なあ、イズミ、このことは、どう考えればいいんだ?パパって、どういうところが、女性に愛されるんだ?」

と、りっちゃんが泣きそうになりながら、イズミに聞いている。

「そうだなあ。女性心理的に言うと・・・パパって守りたくなる要素を持っているんだよ。パパから聞いた話だと、いつも機嫌のいい少年みたいって言われているらしいから・・・」

と、イズミは話す。

「女性はそういう少年を守りたいものさ・・・だから、パパを守りたい女性がわんさか出てくる・・・そういうことだと思うね」

と、イズミは女性心理のプロだけに、現象の本質を見抜いている。

「ふうん・・・このパパがね・・・俺にはまったく理解出来ないよ・・・」

と、りっちゃんは、ビールをがぶ飲みしている。

「まあでも、男ってのは、女に惚れられて、なんぼだからな。女の扱いで、男の価値が決まってくる。だから、リッちゃんもがんばらないと・・・りっちゃんの浮いた話聞いたことないぞ」

と、ガオはツッコむ。

「そうだよ。いつも他人の話を聞いてばかりで・・・うらやましがっているだけじゃ、何も始まらないぜ」

と、イズミもツッコむ。

「そうだな。ガオもイズミも、動いているからな。一生懸命、彼女を作ろうと懸命に努力している。毎週末・・・俺だって自分で動いたから、彼女が出来たんだ」

と、僕は言う。

「リッちゃんは、動いている?誰かターゲットは見つけたの?」

と、僕が聞くと、

「いや、それが、仕事が忙しくて・・・」

と、りっちゃんは、口を尖らせる。

「それを言い訳にしていたら、この会社にいる限り、一生彼女なんて出来ないぜ」

と、イズミが強く言う。

「まあまあ・・・りっちゃんだって、彼女を作りたい気持ちはあるんだろ?まあ、りっちゃんの職場は長期出張も多いし、それはハンデになってる。これは確かだ」

と、ガオは、りっちゃんを擁護する。

「そうなんだよね・・・日々どうも仕事で一杯一杯になっちゃって・・・だいたい女性と出会うのって、どうすりゃいいの?」

と、リッちゃんは言う。

「ガオは趣味のサーフィンで、パパは大学時代の知り合い、俺は合コンで、それぞれ、彼女を見つけた・・・それを考えればいいんじゃん?」

と、イズミは言う。

「知り合いで、彼女になりそうな奴はいないから・・・趣味ったって、夜のドライブくらいだし・・・それじゃあ女性と出会えないし・・・」

と、りっちゃんは自分の可能性を確認している。

「あとは、合コンだけど・・・だいたい合コンでうまくいった試しがないんだよなあ・・・俺・・・」

と、りっちゃんは言う。

「俺みたいに、思い切って、女性が喜ぶような趣味をやればいいじゃないか。サーフィン、一緒にやるか?大自然の中、自然と格闘するんだ。楽しいぞ」

と、ガオが誘う。

「ガオさんは、そのいい身体があるから、いいけど・・・僕は女性の前で裸になれるような身体じゃないし・・・ほら、腹がぷっくり・・・」

と、りっちゃんは、すでに親父腹になった、お腹を見せる。

「うわ、やばいんじゃない、これ・・・」「うわ、どうしてこんなに・・・」「あちゃー・・・俺よりすごいな」

と、イズミも、ガオも、僕も言葉がない。

「あのさー、エッチする時って、相手の女性に自分の裸を見せる時なんだぜ・・・そのお腹を見たら、相手の女性、ヤル気無くすんじゃない?」

と、イズミは辛辣だ。

「やっぱ、そうかな・・・」

と、青い顔になって、汗をかくりっちゃん。

「わかった。まず、その腹をなんとかしよう。すべては、それからだ・・・」

と、ガオが叫ぶ。

「体脂肪を燃やすには、有酸素運動しかない。プールで毎日泳ぐか、自転車にある程度の時間乗るか、ウォーキングをするか・・・とにかく、毎日やること」

と、ガオは言う。

「毎日、少しずつでも、このどれかの運動をすれば、体脂肪が燃焼し、腹は、学生時代の頃に戻る。いいか、毎日が大事だ・・・」

と、ガオが言う。

「毎日か・・・」

と、リッちゃんが言う。


その時、僕は、アイリの言葉を思い出す。

「わたし、タケルを守りたいから、これから、毎朝、ウォーキングを始めるわ。まずは、15分から」

と、ある夜、ベッドの中で、アイリは僕に言った。

「俺を守るため?」

と、僕が聞くと、

「だって、タケルは私より年下だから、私はタケルより、長生きしなきゃいけないでしょ?だから、健康でいなきゃいけない・・・タケルをいつまでも守るためには!」

と、アイリはうれしそうに言う。

「わたし、タケルと長く一緒にいたいから、そのために、ウォーキングを始めるの。それで筋肉がついたら・・・ランニングをやるの!」

と、アイリはうれしそうに言う。

「ランニングが出来るようになれば・・・体力もつくし、タケルを本当の意味で、守ることが出来るようになる・・・だから、タケルの為に、走りたいの!」

と、アイリはうれしそうに笑った。

「僕の為に?」

と、僕が言うと、

「そう。愛するタケルの為に!」

と、アイリは幸福そうだった。


「りっちゃん、俺も毎朝、走るよ・・・とりあえず、自転車で・・・俺、付き合うよ・・・」

と、僕はリッちゃんに言っていた。

「おう、パパも走るのか・・・それはいい・・・パートナーが出来ると、長続きするからな・・・」

と、ガオはご満悦だ。

「パパ、ありがとう・・・でも、月曜日からでいいかな・・・俺自転車持ってないから、この週末で用意するよ・・・」

と、りっちゃんは言う。

「ああ、まずは、15分からだな・・・」

と、僕が言うと、

「ほう、パパ、始め方をよく知ってるじゃないか・・・」

と、ガオが言う。

「アイリがさ、毎朝、ウォーキングしてるんだ。俺より長生きしなくちゃって・・・俺を守るためにって・・・」

と、僕は言う。

「アイリさん、パパの為にウォーキングまで、してるんだ・・・長生きの為にって、どんだけパパを愛しているんだか・・・」

と、イズミが言う。

「ほんと、すごいな、アイリさんの愛は・・・」

と、ガオも感心する。

「ふうん・・・アイリさんの愛が、パパをどんどん変えてる・・・そういうことなのかな?イズミ」

と、りっちゃんが言う。

「うん。その通りだ。愛される人間というのは、どんどん、愛してくれる人間の為に変わっていく・・・そういうモチベーションになるんだ」

と、イズミは言う。

「だから、人生の中で、愛してくれる人間に出会うことは、絶対にやらなければ、いけないことなんだ」

と、イズミは確信を持って言う。

「ま、りっちゃんは、そういう人生で、とーーーっても、大事な仕事をこれまで、サボってきたことになるんだぜ」

と、イズミは辛辣に笑う。

「そうだな。恋人が自分の人生をドンドン良くしてくれる。それは真理だ。だから、俺達は恋人を持つようにしているんだ」

と、ガオは結論的に言う。

「それを知っているか、知っていないかが、大きいんだ。その差が、僕らとりっちゃんとの差なんだぜ!」

と、イズミが辛辣に言う。

「俺、がんばるよ。月曜日から・・・パパ頼んだぜ」

と、りっちゃんはしょんぼりしながら、僕に言う。

「ああ、がんばろう。俺もがんばらなきゃ、いけない。アイリの為に、身体を、もう少しシェイプしてあげたいからな」

と、僕が言うと、

「彼女の為に・・・か・・・モチベーションあがるだろうなー、それ」

と、りっちゃんが言う。

「ああ。そのために、彼女作ったんだし」

と、僕が言うと、

「よしわかった。とにかく、この三段腹をなんとかするところから、俺は、恋人探しを始めていこう!うん。それからだ、すべては」

と、りっちゃんは、自分の道を、ようやく見つけるのだった。


僕とガオとイズミは、静かに目を合わせて、微笑むのだった。


つづく

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