初日観劇。観劇疲れと息切れの昨今、駒田さん観たさにチケットを確保したようなもので、大した期待もせず予備知識もなく劇場へ向かう。
開演前に流れている音楽、これがなかなかよい。妙にしっくりくるのは日本人の遺伝子レベルか。
序幕、アンサンブルが坂上田村麻呂の蝦夷征伐のようすを踊り歌いながら語る。ここから早や食い付いた。手塚治虫作品のような展開の期待が膨らむ。
歴史的に『正』とされているものはほんとに正しいのか。例えば源平などは源氏は善し平氏は悪し、と鎌倉幕府以来刷り込まれて現代に至り、ドラマでも学校の教科書でもそんな展開になりがちである。しかし、『悪』とされている側にスポットを当てると必ずしも『正』は正ではない。
「上に立つものが行く先を間違えるとこの世は地獄となる。他人任せにばかりしていると地獄への道を突き進むことになる。」
「都に訴えても無駄だ。殺されに行くようなものだ。」
上=坂上田村麻呂、都=帝(すめらみこと)なのだが、これをそのまま会社の上司、会社のトップに置き換えると驚くほど現代社会に合致する。
鬼とされて退治(斬首)されたアテルイだが、彼は最後まで大和を信じた。多くの蝦夷は復讐を誓い、大和を信じなくなる。蝦夷が失くした信じる心を持った熱き男は大和の安倍高麿だった(白鹿の暗示)。信じることで傷付くこと、損をすること、裏切られることはよくある話だが、それでもやはり人との関わりは信じないことには始まらない。そして鬼の棲家は人の心にあるのだ。
高麿役の坂元君が非常にいい表情をしていてかっこいい。真っ直ぐな心でそれでいて物事を一方的ではなく相手の立場に立って考える公平さを持つこの役にぴったり。彼はアンジョルラスで観倒してきているが、改めて見直した。この坂元君なら「私の子どもを産んでくれ」と言われれば「はい」と言ってしまうだろう。
背が足りないのはこの際目を瞑り・・・
駒田さんは脇役的な登場の仕方で、このまま終わるわけはないよなあ、と思っていたら案の定重要な役どころ。彼もまた争いよりも平和を望む、信じる心を失ってはいない長だった。今日は笑わせるセリフを言わないなあ、と思っていたら、アドリブは止められていたらしい。^^;
今ちゃんの刀捌きにジャベールの影あり! ストレートなセリフよりも歌った方がやはり本領発揮。
藤本君が出ているらしいということで、どこにいる???と探した。肩幅と胸板の厚さですぐに分かったが、最近太った? 大胸筋と腹筋がたるんでませんか???
彩木なおは初めて観たが、思ったより背が低くてそして華奢。昨年の引退公演でトートをやっていたので背が高い人だと思っていたのだが・・・(私の中ではトート閣下=長身なのである。)
吉野君の役どころがこれまた艶っぽくてそれでいて核心を突いたメッセージを客席に投げかける。彼は無駄死にしたのだろうか? いや、その心は民族の壁を越えて高麿に受け継がれている。だから彼は高麿を“選んだ”のだろう。
目の前の舞台はスーパー歌舞伎のようでもあり、染五郎くんの出る新感線作品(観たことないけど)のようでもあり。しかし、歌舞伎のようにだれることも飽きることもなく、隙のない展開でぐいぐいと引き込まれた。
殺陣の動きも歌舞伎のような「もうえぇて、早よ次の展開に行ってんかー」という無駄に長いものでなく、きびきびしている。眠くなるのではないか、という心配は杞憂に終わり、最初から最後まで舞台に釘付けだった。
最近はパンフレットや筋書はほとんど買わないのだが、迷わず幕間に買った。しかし吉野君の役どころが書いてあり、これは観終わるまでは買わない方がいいと思う。(←初見の方へ)
この作品は今年観た中で間違いなくベスト3に入る。最近の私にしては珍しく「もう一度観たい!」と思い、帰宅してすぐにチケット譲渡掲示板やヤフオクを探した。そして今日、1枚確保した。
^^;
写真はロビーに飾られていた花。つい「岡田浩暉」に反応して・・・^^;
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