柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

懐かしの中房温泉

2013年08月12日 12時39分25秒 | 日記
中房温泉は、20代のわたしが東由多加とふたりで暮らしていた(1回数ヶ月の長逗留をして、小説を書いていた)宿です。

20年前から勤めている従業員の方が何人かいて、わたしと東の思い出話をし、「いやぁ、懐かしい」と涙ぐんでくださりました。

そして、百瀬社長と、お会いしていなかった15年間に起きた出来事を語り合いました。
8年前に年下の彼女と結婚し、2歳の男の子がいること、彼はアトピー性皮膚炎で、医師に入院をすすめられたこと、3年前にお母様が車にはねられお亡くなりになり、加害者を訴え係争中だということ、1年前に40年間勤めていた板さんがお亡くなりになったこと、などなど――。

フロントには昔のようにコリー犬がいたけれど、彼は8歳のジョニーで、その前はケリーで、わたしが知っているのはその前に飼っていた、20年以上生きたレオだということでした。

お風呂は昔からずっと、内湯も露天風呂も混浴なのが、うれしい。(時間で女性専用になります)
わたしは、入浴中におしゃべりができないと、熱くて退屈で10分くらいしか浸かっていられないひとなので、昔から「混浴」が缶詰め宿の条件の一つなのです。

今回は、温泉好きの13歳息子とべらべらしゃべりながら、のぼせるまで温泉に浸かることができました。(ふたりとも、足が草履の鼻緒型に日焼けしている)

きっと、あと1、2年で恥ずかしがって、親とは入らなくなるだろうから、最後の混浴になるかも……

今回の旅は、息子の外の顔が垣間見えて、面白かった。
たとえば、夏山登山のピークなのでバスは並びで座ることができなかったのですが、息子は隣や前の席の登山客に「どこからいらっしゃったんですか?」「どの山に登られたんですか?」と朗らかに話し掛け、運行中ずっと話しつづけていたことや――。

山の休憩ベンチで、うぐいすの鳴き声が聴こえると、息子はうぐいすの口笛を吹き(そっくり!)、わたしが下手くそな鳴き真似をしたら、「それじゃあ、ダメ。鳥には鳥のルールがある。ホーホケキョのあとに間奏があって、またホーホケキョがあって、ちょっと沈黙があるから、そこで口笛を返すと、会話がつづくんだよ。このやり方で、小学校と中学校の周りのうぐいすと友だちになれたんだよ」と言い、眉唾じゃないかと思ったんですが、ホーホケキョ、ホーホケキョとうぐいすとの会話をつづけ、なんと、だんだん近くに寄ってきて、すぐそばの枝に止まったではありませんか――。
下山しながらも、息子はうぐいすと鳴き交わし、「そろそろお別れの挨拶をしないと」と、息子が低い口笛を吹くと、うぐいすはそれきり鳴かなくなりました。

野鳥の友――、感心しました。
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