今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

介護の日

2014-11-11 | 記念日
皆さんは「介護」について考えたことがありますか。
今年、後期高齢者(高齢者のうち75歳以上の者。→後期高齢者医療制度参照)の仲間入りをした私など、今のところ、ほんの少し血圧が高い(いわゆる高血圧)ため軽い薬(降圧薬)を飲んでいる以外は、医者に通わなければならない病気もなく、自分では年の割に元気なつもりなのだが、メタポ検診などではいろいろと医者から指摘はされており、平均寿命の延びた今の時代、一番気になることは、やはり女房を含めて、これから先の二人の病気と、体が不自由になった時の看護のことである。
日本では高齢化が進み、生活習慣病などの病気も増えている中、親や配偶者など家族の介護をする人が増えている。
今、介護をしていない人も、何時、家族の介護をする立場になったり、逆に介護を受ける立場になったりするかもしれない。介護は誰にとっても身近なものなのである。

今日11月11日は「介護の日」である。定めているのは厚生労働省(※1)。
厚生労働省のHP(※1)の「介護・高齢者福祉」のところを見ると、以下のように書かれている。
高齢者が尊厳を保ちながら暮らし続けることができる社会の実現を目指して、
高齢者が、 介護が必要になっても、住み慣れた地域や住まいで尊厳ある自立した生活を送ることができるよう、質の高い保健医療・福祉サービスの確保、将来にわたって安定した介護保険制度(※1の介護保険制度の概要参照)の確立などに取り組んでいます。・・・と。
障害福祉サービスの体系は→ここ参照。

そして、介護の日を定めた趣旨については、以下のように書かれている。
高齢化などにより介護が必要な人が増加している一方、介護にまつわる課題は多様化している。こうした中、多くの人々に介護を身近なものとしてとらえてもらうためには、それぞれの立場で介護を考え、関わってもらうことが必要となっている。
介護についての理解と認識を深め、介護サービス利用者及びその家族、介護従事者等を支援するとともに、これらの人たちを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進する観点から、高齢者や障害者等に対する介護に関し、国民への啓発を重点的に実施する日を設定することとした。
名称と日にちについては、意見公募を行った結果、最も支持の多かった名称と日にちを選び「介護の日」と「11月11日」とした。
日にちについては、「いい日、いい日、毎日、あったか介護ありがとう」を念頭に、「いい日、いい日」にかけた、覚えやすく、親しみやすい語呂合わせとなっている。
今後、高齢化がさらに進行することが予想される中で、福祉介護サービス分野は、最も人材確保に真剣に取り組んでいかなければならない分野であり、福祉・介護サービスの仕事が、働きがいのある職業として社会的に認知され、特に若い世代の人々から魅力ある職業として選択されるようにする必要がある。
このため、厚生労働省は、平成19年8月に「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」(平成19年度8月28日厚生労働省告示第289号)を策定し、指針に基づく取組を進めているところである。
この取組みの一貫として、11月4日から11月17日までを「福祉人材確保重点実施期間」として設定し、厚生労働省、地方公共団体、関係機関・団体及び事業者等が連携して、福祉・介護サービスの意義の理解を一層深めるための普及啓発及び福祉人材の確保・定着を促進するための取組に努めることとしている。・・・と。

さて、私達は基本的に、一人ひとりが自らの責任と努力によって生活を営んでいるが、病気や怪我、老齢や障害、失業などにより、自分の努力だけでは解決できず、自立した生活を維持できなくなる場合も生じる。そのように個人の責任や努力だけでは対応できないリスクに対して、相互に連帯して支え合い、それでもなお困窮する場合には、必要な生活保障を行うのが、社会保障制度の役割である。
つまり、社会保障制度は、私たち国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティーネットであり、戦後の昭和21年11月公布の日本国憲法では生存権の規定 (25条1項) に次いで,「国は、すべての生活部面について、社会福祉社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定められている (同2項) 。
憲法に定められて以降、現在に至るまで、いろいろな経済社会や人口構造(男女・年齢・配偶関係などの属性別の人口の構成)のめまぐるしい変化に直面しながらも、各時代における人々の努力により、社会保障制度に対する国民各層の様々なニーズに応え、それなりの充実は図られてきた。
しかし、21世紀を迎えた今日、経済社会を取り巻く環境が大きく変化する中で、日本の社会は、世界でも稀に見る少子高齢化の進行に直面しており、このため、経済社会の様々な側面で深刻な長期的問題を抱えているが、その中でもとりわけ深刻な課題が社会保障制度の問題であり、現在の制度がそのまま続けば、早晩破綻することが避けられないといわれている。
厚生労働省:政策レポート(戦後社会保障制度史)

この社会保障の中でも、最も重要なのは高齢者の老後の生活の支えとなる年金問題であり、この問題は、長期的に継続する制度なのでとりわけ厄介な問題だが、医療・介護もそれに劣らない政治的、社会的に難しい問題を多く含んでいるが、本日のテーマーは、「介護」が主題なので、以下本日の主題である介護のことについて見てみたい。社会保障制度全般や、年金、介護の問題等は、厚生省HPや、※2.※3、※4等を見て考えてください。

介護(英::nursing, elderly care)とは、自分で体を動かしたり、判断したりすることが困難な障害者の生活支援をすること。あるいは、高齢者や病人などを介抱し世話をすることである。
人はだれでも年をとり、体の機能が衰えていく。そして、噛む力や飲み込む力、骨や筋肉の力、判断力などが弱くなると、食事や入浴、外出など、日常生活のさまざまなことが困難になってくる。また、50代、60代でも、脳卒中糖尿病心臓病、関節疾患(※5参照)、認知症などの病気をきっかけに、それまでできていた日常生活のことが、突然、一人ではできなくなってしまうこともあり、「介護」は、いつか突然、自分や家族に起こるかもしれない、身近なものなのである。
介護保険制度では、被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65 歳未満の第2号被保険者とに分類されている(介護保険参照)。
介護保険事業状況報告の概要(平成26 年7月暫定版)を見ると、
平成26年(7月末現在)の全国の65 歳以上の被保険者、32,348千人( 65才以上75歳未満16,799千人75歳以上15,549千人)、に対して要介護(要支援)認定者数は、5,945千人(男 1,829千人、 女 4,117千人)となっている。
現在の日本の尐子高齢化現象は深刻な問題となっている。尐子高齢化とは、出生率の低下により子供の数が減ると同時に、平均寿命の伸びが原因で、人口全体に占める子供の割合が減り、65 歳以上の高齢者の割合が高まることを言うが、問題は、日本の高齢化進行のスピードが、諸外国との比較において、その進行速度がきわめて速いことである。
今後「団塊の世代」が全て75歳となる2025年には、75歳以上が全人口の18%となる。
そして、我が国の総人口は、今後、長期の人口減少過程に入り、2026年に人口1億2,000万人を下回った後も減少を続け、2048年には1億人を割って9,913万人となり、2060年には8,674万人にまで減少すると推計されているが、一方で、65歳以上は全人口の約40%となることが予想されている(人口構造の変化と現役世代参照).。
このようなことから、介護の面でも、第1号被保険者は、年々増加し、特に、75歳以上の後期高齢者の増加割合が高くなる。つまり、被保険者に占める要介護(要支援)認定者数の増加傾向が、ますます高まるということになる。それだけ、急速な高齢化に対応するための施策を展開していく必要があるということである。
この後期高齢者人口の増加が問題となるのは、加齢に伴い「寝たきり」や「認知症」などの要介護状態となる確率が後期高齢者では高くなるということである。
そして、この高齢化における地域格差の存在である。大都市への若者の集中により地方都市の高齢化率が急速に進んでいる。産業界全体では労働力の供給不足に対する不安などが指摘されているが、他方で、高齢化による公的年金保険制度の破たんの恐れや、それを回避するための保険料率の大幅な引き上げによる被保険者の負担の増大、さらには高齢者医療費の増大による健康保険国民健康保険等の医療保険の赤字財政問題も危険視しされている。
厚生労働省の『社会保障と税の一体改革』では、日本の人口構造の変化について、2010(平成22)年には1人の高齢者を2、6人で支えている社会構造になっており、尐子高齢化が一層進行する2060年には 1 人の高齢者を 1、2 人で支える社会構造になると想定されている(平成14年版「厚生労働白書」1章 人口構造の変化と現役世代参照)。
そうなると、1990 年の頃には高齢者 1 人に対し 5.1 の人が支えていたので、負担率は 1990 年から 2060 年までに 5 倍にも跳ね上がることが予測されているが、ここまで負担が大きくなってしまうと、若者だけで社会保険費を肩代わりできなくなり、ますます赤字財政を生み出すことになってしまうだろう。
また、高齢化対策も急務になってくるのだが、先にも述べたように、日本の尐子高齢社会の特徴として、後期高齢者人口の増大があげられる。高齢者といっても、60 歳代の高齢者の場合、全般的にいえば健康状態も良好であり、介護を要する可能性は低いが、後期高齢者になってくると、寝たきりや認知症といった要介護状態になる可能性が高くなる。それゆえ、この後期高齢者人口の増大という側面は、高齢者扶養における介護問題が大きなウエイトを占めることを意味している。
要介護者の扶養、とりわけ介護についてはこれまで、日本では、“介護は家庭(家族)の問題”という意識があり、「両親は息子(特に長男)や親族が面倒をみるもの」という価値観があった。
しかし、少子高齢化が進展する中、女性の社会進出や核家族化が進行し、又、医療の進歩に伴い寿命が延びたことなどにより、寝たきりや認知症などの要介護高齢者の増加などから、介護期間も「看取り三月」(高齢者を昔は三ヶ月家で看取れば亡くなるという状況を言っていた)などではなくなり、看護期間も長期化したことなどにより、介護を行う家族(配偶者や子)もまた高齢者であるという「老老介護」の問題なども浮かび上がっている。
さらに、認知症の家族を介護している人も認知症の症状があるという「認認介護」の状態も見られる(※7参照)など、家族にとってはより重い負担となっているが、こうした中で、介護に対する負担感から、介護うつや介護ストレス(※8参照)に陥ったり、介護が必要な家族を虐待してしまったり、挙句の果てには、老老介護の苦労や負担に耐え切れず、介護する子が親を殺害するなどのあまりにも哀しい犯罪にも繋がっている。そういった状況は、介護する側にとっても、介護される側にとっても非常に不幸なことである。
介護は、介護する人自身が心も体も健康であることが大事であり、頑張りすぎると、介護をしている人の体も心も病んでしまうのである。
このように日本の家族構成の変化してきた社会では、果たして、一体要介護の高齢者を今後どのような仕組みで、どこで、誰が介護していくのか。従来のサービスを維持していくのか、それとも抜本的な見直しが必要なのか。そのような高齢者の介護問題への対応が迫られることになった。
こういった問題が生じてきたことから、日本の介護保険制度は「介護の社会化」を目的として、要介護高齢者の介護に関する責任を社会的に担う制度として2000(平成12)年4月年スタートしたのだが、その目的はどの程度達成されたのだろうか・・・・。

厚生労働省は2014年3月、25日、特別養護老人ホーム(特養)に入所できていない高齢者が、2013(平成25)年度は52万2000人にも上るとの調査結果を発表している(特別養護老人ホームの入所申込者の状況 |報道発表資料参)。
これは2009(平成21)年12月の前回集計の約42万1千人より4年間で約10 万人、24%増えた。
待機者全体の3分の2を占めているのは、食事や排せつに介助が必要な要介護3~5の中・重度者で約34万5千人に上る。待機者の中でも他の介護施設には入らず、自宅で特養の空きを待っている人は25万8千人(49.6%)もいる。
毎年、各自治体が特養整備を進め、入所者数の枠は2009年時点から7万4800 人分広がっているが、急速な高齢化の進行で、自治体が特養を整備するペースを入所希望が上回り待機者が増加したことになる。
これに対して政府は在宅介護への移行を促しており、特養へは原則、要介護3以上に限定する方針の介護保険法改正案を国会に提出していて、2015年度施行を目指しているようだ。
特養ホームに入れない待機者の受け皿となるのが、在宅介護であるが、これは、自宅で暮らしつつデイサービスホームヘルパーを利用したり、配食や見守りなど一定のサービスが付く高齢者向け集合住宅へ入居したりするのを見込んでいる。
サービス付き高齢者住宅(サ高住)を含めた「有料老人ホーム」の数は、民間企業が運営に参入したこともあり、厚労省の調べで2012年には約7500 と4年間でほぼ倍増しているようだが、特養での介護を望む高齢者が依然多い。
それは、特養が有料老人ホームなどより比較的料金が安いことと食事や入浴、排せつを含め、日常生活全般で手厚い世話を受けられるし、負担額が少なくて済む利点が希望者を増やす理由になっている。待機者の中には「症状が軽いのに早めに申し込む人もいる」との傾向を指摘する地域もある。
その半面、運営費の大半を介護保険で賄い、入所者1人当たりの給付額は月30万円近く保険財政には重荷となっている現実がある。政府方針は症状の重い人に限って特養で受け入れる法改正を目指しているが、ギャップが浮き彫りとなった格好だ。
詳しくは、以下参照。
週間介護情報第85号

いずれにしても、この厚労省の調査が、在宅サービスの供給量が増えたにもかかわらず、特別養護老人ホームなどの介護施設への入所希望者が依然として根強いことを表しており、在宅サービスの利用は増えているものの、在宅介護の主力部分は依然として家族が担っているケースが圧倒的多数であるなど、現状においては、介護者の身体的、精神的、社会的負担が軽減するまでには至っておらず、厚生労働省が目論んでいる「在宅介護」が利用者のニーズを満たすには条件が整っていない現状を露呈していることを示しており、今後のより多様なサービスの開発や普及が求められるということだろう。

厚生労働省が目論む社会保障制度の基となっているのは2025年問題である。
高齢化が進むわが国では、社会保障費は、2012年度109.5兆円(GDP比22.8%)となり、100兆円を超えた。2025年度には148.9兆円(同24.4%)にまで増加する見込みである(出典:厚生労働省社会保障審議会資料12年4月25日「資料4-1社会保障に係る費用の将来推計の改定について」参照)。
2025 年には、4 人に1 人が75 歳以上の後期高齢者になるという超高齢社会が到来するわけだが、75 歳以上ともなると、加齢に伴う心身の機能低下や無数の慢性疾患を抱えているケースも多く、その一部は社会的入院患者や要介護者になっており、団塊世代の年齢が上がるごとにその比率は高まっていき、負担がさらに増えると予想されている。
このような状況のもと、限られた財源で現状のまま社会保障を維持し続けることは困難であり、厚生労働省は2025年を1つの区切りとして医療・介護における改革を行っている。その1つが2012(平成24)年度診療報酬・介護報酬同時改定であったが、このような診療報酬による政策誘導が今後も続くだろうという。
医療機関は地域における役割を明確にし、他の医療機関や介護施設等との連携をすることが求められており、在宅医療(自宅で医師や看護師に訪問され治療を受ける)も推進される。
つまり、少子高齢化により、病院や介護施設が足りず、看取りまで患者を看ることができないことから、今後、国の政策も「脱施設」・「脱病院」そして、「在宅」へと医療・介護財源の問題もあり、在宅での医療・介護支援へのシフトを進め、深夜の往診や自宅での(サ高住)「みとり」の報酬を上げて、医師らが積極的に取り組むように促そうというわけだ。
だが、在宅で介護ができるのは同居世帯であり、「老老介護・認認介護・高齢者のひとり暮らし世帯」などでは、現実的に無理がある。
そうすると「高齢者が安心して住める住まいの普及」が絶対に必要になってくる。それが、「サービス付高齢者住宅」の(サ高住)なのだが・・・。事業者が不必要な介護保険サービスを提供したり、自社の介護利用を入居の条件にしたりといった事態が横行し問題となっている(※9参照)。
サービス付き高齢者向け住宅の費用は「一般型」と「介護型(特定施設入居者生活介護)」で異なるが、主に自立した人を受け入れる一般型ではなく、介護型のところは、介護サービス費は、要介護度などによって異なり、要介護度が高くなるほど、高く設定されており、また、施設の設備や体制、施設で対応する処置やサービスなどに応じて、色々な介護サービス加算が発生し、入居費用も、数千万円かかるものが多く、だれでもが入れというものではない。老後安心して生きてゆくためにはそれ相当の金がなければひどい目に遭いそうだ。
少子高齢化による総人口の減少が日本経済の今後の問題として、しばしば取り上げられるが、本当に問題となるのは、総人口や、総労働力などではなく、介護の労働力(介護者)確保が深刻な問題となることである。そして、医療は介護よりさらに多くの労働力を必要とするが、現在医師不足も言われているが、医師以外の看護婦等医療従事者の賃金は経済全体の平均に比べて高いとは言えず、人員確保は容易でないと言われており、今後の需要増に応えられるかが大きな問題となるだろうとも言われている。
2013年の男性の平均寿命が前年を0,27歳上回り、80,21歳となり、初めて80歳を超えた。女性は前年より0,2上がって過去最高の86,61歳となり、2年連続の世界一。男性の平均寿命は前年の世界5位から4位に順位を上げたことが厚生労働省が、7月31日に発表した「簡易生命表」で判った(平成25年簡易生命表参照)。
又、2014年9月12日、「敬老の日」を前にした厚生労働省の調査で 全国の100歳以上の高齢者が過去最多の5万8820人に上ることが分かった。女性が87.1%を占め、初めて5万人を超えた。前年から4423人増え、44年連続の増加だという(※10参照)。これから先寿命は何歳まで伸びるのだろう。
長寿祝いには様々なものがあるが、数え年60才で行われる「還暦」のお祝いなどは、寿命が長くなった日本では今や長寿祝いというには早すぎる年齢となった。現役を引退したサラリーマンが年金ももらえない。そのうち70才位まで働かないともらえないだろうと言われている。
現在存命中の日本一(長寿世界一でもある)は116歳際の大川ミサヲさん(女性)であるとテレビで紹介されていたが、お元気なのにはびっくり。長寿の人を見ていると、大家族の中で大勢の子供や孫に囲まれて明るく幸せに過ごしている人が多いようだ。
しかし、何によらず、いいことずくめは、ないものであり、寿命もそうで、長寿に恵まれた人だけが知る悲しみもある。
介護老人保健施設や病院のデイケアを訪れて「出前短歌教室」をおこない高齢者の短歌づくりの手伝いをしてきたと云われる医療法人耕和会迫田病院の伊藤一彦さん(評議員、宮崎県立看護大学 客員教授)が、そんなお年寄りの短歌を 『百歳がうたう 百歳をうたう』(、鉱脈社刊)という本にして出版されている。それ等の歌のうち、ブログで紹介されているものを一部、以下に引用させてもらおう。

・一日中言葉なき身の淋しさよ君知り給え我も人の子       東京 103歳 高橋 チヨ

・幾度か友を送る日重なりて辛さを人は長寿ともいう        北海道 101歳 長家 ミノ

・七夕に百歳になっても願いごと名残りはつきぬこの世の中に 熊本 100歳 友枝 巴

他の人がなかなか話しかけてくれない孤独感(高橋さんは耳が遠い)、長家さんは友人をつぎつぎに送らざるをえない悲しみを歌っている。ともに心に深く残る歌であるがつらい内容だ。友枝さんは「名残り」と言っているが、この「名残り」が尽きぬからこそ人は苦しくても、悲しくても、寂しくても、一生懸命に生きるのだろう(※11参照)。
寿命が延びれば延びるほど、自分の周囲から、友達や知人が一人づついなくなってゆく。私などやっと後期高齢者の仲間入りをした程度だが、呑兵衛だった私が仲良くしていた呑兵衛友達などは、もう誰も居なくなってしまった。悪たれ子世にはばかるということか、内臓が人一倍丈夫だったからだろうか。
大勢の家族に見守られて生活している人は良いが、そうでない人は、歳をとればとるほど孤独になる。その上、体の自由が利かなくなって、介護をされながら生きてゆかなければならなくなったことを考えたりしていると、私なども、時々落ち込んでしまう。
ところで、「健康寿命」という言葉を知っいますか?
WHOが2000年にこの言葉を公表したもので、健康寿命とは、健康上の問題がない状態で日常生活を送れる期間のこと。したがって、平均寿命と健康寿命との差は、日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味している。
厚生労働省は、2010(平成22年)年の統計では平均寿命と健康寿命(日常生活に制限のない期間)の差は、平成22年で、男性9、13年、女性12、68年となっているそうだ(ここ参照)。
今後、平均寿命の延伸に伴い、こうした健康寿命との差が拡大すれば、医療費や介護給付費の多くを消費する期間が増大することになるので、疾病予防健康増進、介護予防などによって、平均寿命と健康寿命の差を短縮することができれば、個人の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待できる。…というのであるが・・・。
私も元気で長生きはしたい。私が思うには、恐らく、健康寿命が延びれば、人生における「不健康な期間」のパーセンテージは下がるかもしれないが平均寿命も延びるだろう。
年を取って、風邪もひかず何の病気もしないで死ぬなんてことはできないだろう。一年多く長生きすれば、その分、個人としては、医療費もいるし、食事代等の生活費も多くかかる。
しかも、今の日本の経済や社会、そして、社会保険の状況を見ていると、物価は上がり、税金も医療費等もどんどん上がるが、所得のない年金生活者の年金額はどんどん減額されてゆく。これから先、老人が生きてゆくのにどれくらいのお金が要るのだろう。少々の貯蓄では心配でしようがないが・・・。
今ピンチにある国や自治体の年金財政や社会保険料の負担も寿命が延びれば延びるほど増えるのだが・・・、こちらの方は大丈夫なのか?。
先日厚労省は、特別養護老人ホーム(特養)の相部屋代について、一定の所得(夫婦二人所帯で本人の年金収入が211万円超、単身所帯で155万円超)のある入居者には1万5千円を軸に全額負担してもらうことや水道光熱費の値上げなどを提案しているという記事が載っていた。(10月30日朝日新聞)。この様な、負担はどんどん増えるだろう。長生きすればするほど、収入は少なくなり支出は増えてゆく。楽には死なしてもらえなくなる。
そのため私達夫婦は、病気になって、延命のための治療だけはしないことを医師あての紙にし残している。

介護保険制度が担った「介護の社会化」を在宅の介護環境を整備しようということで、ホームヘルパーとかショートステイとかを増強してきたが、在宅の介護の環境整備が整えば整うほど、在宅の介護環境の限界が明らかになる。また在宅の介護環境が整備されればされるほど、在宅での介護環境の限界を止揚する新しい介護ステージを準備しなければいけなくなってくるわけだ。
つまり、多様で豊富な介護サービスができたからこそ、介護の長期化・重度化・高齢化がはじまったということであり、逆に、既に困難な在宅介護の事態が進行していたからこそ介護保険のような施策が登場してきたとも言えるわけである。これは実は介護保険サービスがもたらした一種のパラドックスでもある。
最近の若い人には、結婚もせず、子供もつくらない人が大勢いる。それが少子化の原因であるが、若いうちは、好きなことをして自由に生きるのも良いだろうが、自分の老後がどうなるかは十分に考えておかなければいけないだろう。
安倍政権は今後の日本の発展のためには女性の活躍を期待しており、女性が社会に出てバリバリ仕事をしてもらえるよう環境づくりに努力している。そして、一方、少子化を無くすため、女性が働きやすい環境づくりの一環として子供を預かる保育所を増やそうとしている。ここでも、問題になるのが、保育所と保育士の不足だろう。
少子高齢化の中での介護問題は若い人が少なく要介護者を介護する人が足らないこと。又、その介護者への報酬を十分払う費用がないことである。
介護をしてもらわなければならない老人は寿命が延びて必然的に増加し、少子化を無くすために子供を増やそうとするが子供を産んだ女性は、ますます社会へ出て働く人が増えてゆく。
介護を必要とする老人を介護する人がいない時に、どんどん子供を増やして、生まれたその子供たちは保育所に預けて働きに行く。一体、どれだけの保育所と保育士が必要となるのか。そして、その保育は誰がするのか。ここにも、介護と同様の人手不足や費用の問題が横たわっている。
女性の社会進出促進と、子供を多く生み、育てること。いずれも理想的なことであり、一日も早くこれらを実現できることを期待したいが、ここにも、新しい社会制度が、新しい介護実態を作り出す原因にもなれば、逆にその結果にもなっている介護保険制度と同様のパラドックスがあるように思えるのだが・・・。

(冒頭の画像は、介護の日ポスター。2013年度のもの。厚生労働省HP掲載のもの借用。)
参考:
※1:厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/
※2:わかりやすい年金講座
http://www.geocities.jp/f05_west/anenkin01.html
※3:はじめに - 星 多絵子 | ブクログのパブー
http://p.booklog.jp/book/63920/page/1511644
※4:野口悠紀雄 2040年「超高齢化日本」への提言 - ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/category/s-noguchi2040
※5:関節疾患:メルクマニュアル18版日本語版
http://merckmanual.jp/mmpej/sec04/ch034/ch034a.html
※6:社会保障・税一体改革 |厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hokabunya/shakaihoshou/kaikaku.html
※7:No.25–増えている「認認介護」-80歳夫婦の11組に1組も! | 公益社団法人認知症の人と家族の会
http://www.alzheimer.or.jp/?p=3404
※8:介護うつの予防法-いい介護どっとこむ
http://iikai5.com/mental/depression.html
※9:東京新聞:介護漬け横行 高齢者住宅 自治体の半数問題視:社会(TOKYO ...
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014102602000134.html
※10:100歳以上、最多の5万8820人 女性が87% :日本経済新聞
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG12H0C_S4A910C1CR0000/
※11:心を表わすよろこび | 医療法人耕和会 迫田病院
http://www.kowakai.jp/letter/1127/
共生社会政策(内閣府)
http://www8.cao.go.jp/souki/index.html
Ⅴ.「介護の社会化」と家族介護者支援を考える介護保険 10 年の検証
http://www.ritsumeihuman.com/cpsic/model4/129_157.pdf#search='%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%81%AE%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E5%8C%96'
介護労働の実態と課題(Adobe PDF)
http://www.f.waseda.jp/k_okabe/semi-theses/12yuiko_yokomizo.pdf#search='%E7%A6%8F%E7%A5%89%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%93%E3%82%B9+%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C%E7%82%B9+%E8%81%B7%E5%93%A1'
介護保険制度 解説・ハンドブック(手引き) - WAM NET(ワムネット)
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/handbook/
内閣府;平成24年版 高齢社会白書(全体版)
http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/index.html
介護 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8B%E8%AD%B7

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