備忘録として

タイトルのまま

リトルブッダ

2013-01-06 00:49:08 | 仏教

年末年始はヘッセの「シッダールタ」を読み、1993年の映画「リトルブッダ」を観た。今年もブッダ探求の年になる予感がする。

ヘッセは「車輪の下」のあのヘッセである。「シッダールタ」というのでブッダのことを書いたものかと思って読み始めたら、実はシッダールタはブッダのことではなく主人公の名前で覚者ブッダは別にいる。シッダールタは一度はブッダ教団に入るがブッダの教えに納得できず間もなく教団を抜け祇園精舎を去る。遊女カマーラや商人カーマスワーミとの世俗に浸りきり堕落した生活を送るが、ある日空しさを覚えその生活のすべてを捨てる。そのとき遊女カマーラはシッダールタの子供を宿していたがそれを知らないままにシッダールタは渡し守との生活を始める。渡し守になったシッダールタは成長した息子に会い再び煩悩や執着に苦しめられる。それでも渡し守として川を見続けているうちに、シッダールタは川の流れに身をまかせることを学び運命と闘うことを止め悩むことを止める。その時彼は時間が実在でないこと悟る。川の流れから悟ったことは無常であり、基本的にブッダの教えと同じなのだが、その悟りはすべて彼の実体験から達成されたもので人から教わったものではない。だから、ブッダにくっついていてもいつまでたっても悟りは得られない。小説「シッダールタ」でヘッセが言いたかったことは個人的体験によってでしか悟りは得られないということだと思う。さらに言うと、出家者の境遇では悟りは得られないということだとしたら、仏教修行者は誰も悟りを得られないことになってしまう。「シッダールタ」の映画があるらしい。

映画「リトルブッダ」は、ラマ教老師の生まれ変わりを捜す旅とシッダールタ(ブッダ)の生い立ちから悟りまでの物語を絡ませた話である。ラマ僧の転生者がシアトルで見つかったというところから話は始まる。父親が建築家で母親が数学教師の9歳の子供ジェシーを、ブータンに連れて行って彼が真の生まれ変わりかを確かめるというのだ。ラマ僧が贈ったシッダールタの物語本をジェシーが読むという設定でシッダールタ(キアヌ・リーブス)の生い立ちが並行して語られる。シッダルータの有名な逸話である四門出遊、生、老、病、死、中道、縁起、悟りが物語として散りばめられている。カトマンズではジェシーに加えラジュとギータという名の生まれ変わり候補者2人が見つかった。実際チベット教ではダライ・ラマが死ぬと生まれ変わりとされる子供を捜しテストを通して継承者を決定する。このようにチベット仏教では輪廻転生が信じられているが、ブッダの原始仏教では解脱は輪廻からの解脱だったはずだ。映画の中でチベット僧が、般若心経の”ガテー ガテー パーラガテー パーラサンガテー ボーディ スバーハー”と唱え始めたのには嬉しくなった。ギータの祖父が飢饉の年に我が身を飢えた虎に与えたという捨身飼虎の話も出てくる。以下は映画に出てきた仏教の教え。

  • Enlightment 悟り
  • Reincarnation 輪廻
  • Impermanence 無常
  • Every movement in the universe provoked by cause 縁起
  • Detachment of emotions 我執を捨てる
  • Compassion 慈悲
  • Middle way 中道
  • For lord of my own ego, you are pure illusion. you do not exist 無我

師ノーブが瞑想に入ったまま死んだようにチベット高僧は自分の死さえもコントロールできる。これは空海の最後と同じで、映画には呪術的密教的な場面がありチベット仏教は真言宗に近いのではと思わせる。死んだ師ノ-ブが現れ般若心経を唱える。色即是空、目も耳も鼻もない、苦しみもない、苦しみの原因もない、老いも死もない、死がなくなることもない、だから恐れもない、智慧の完成である。ジェシーの母親に宿った子は師ノーブの生まれ変わりを暗示しているような気もする。

Wikiより

”Little Buddha”1993、監督:ベルナルド・ベルトルッチ、出演:キアヌ・リーブス、ブリジット・フォンダ、クリス・イサク、ルオチェン・イン、同監督作品”ラストエンペラー”1987と同じくこの映画音楽担当も坂本龍一である。ビデオで観た”ラストエンペラー”の内容はほとんど覚えていないが衛兵が号令を唱える北京語が歌のようだったことと最後ラストエンペラーの溥儀が一市民となり文化大革命で総括されていたような不正確な記憶がある。あるいは間違った記憶かもしれない。同じくこの監督でマーロン・ブランド主演の”ラスト・タンゴ・イン・パリ”1987は学生時代に観た。母親役のブリジッド・フォンダはピーター・フォンダの娘でヘンリー・フォンダの孫である。”Seven Years in Tibet”1997でダライ・ラマがブラッド・ピットに手渡して印象的だった白いカタ―というスカーフがこの映画にも登場した。仏教とシッダールタが覚者ブッダになるまでの物語をかいつまんで知るにはいい映画である。仏教のエッセンスが満載で、それを見逃さないように集中して鑑賞した。しかし、仏教に興味がなければ面白い映画とは言えないかもしれない。★★★★☆

 


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