備忘録として

タイトルのまま

3月11日14時46分

2011-03-26 09:47:34 | 仙台

そのとき地下鉄半蔵門線に乗っていた。電車が急停車し、その後、車体が左右に大きくゆっくりと揺れた。長い揺れが収まって時間をみると14時49分だった。三陸沖からの地震波到達時間を考えても2分余り揺れていただろうか。電車は最寄の清澄白河駅まで徐行したあと運行停止となり駅の外に追い出された。清澄白河駅から錦糸町まで歩いたが、その間も余震は断続し周囲のビルや電柱が大きく揺れた。余震での地表の揺れは大きく、地下鉄内での揺れの方が小さかったように感じた。ビル上階の揺れは相当なものだったらしい。錦糸町までの道中、水道管が破裂したのか水が噴き出すビルや外壁のタイルがはがれたビルや棚のものが落ちて店内がめちゃくちゃになった店舗があった。三陸沖でM8級の大きな地震があったということと津波で相当な被害が出ていることがわかってきたので、仙台の妻の実家と友人の携帯に電話したが通じずメールを入れておいた。妻の実家は仙台市泉区の高台にあり津波の心配はなかったが友人は津波被害の大きい相馬で勤務している。友人から返事が返ってきたのは翌日だった。相馬の勤務先は高台に立つ8階建てのビルで津波には遇わなかったが仙台まで海岸沿いを避け5時間かけて車で帰ったということだった。仙台の実家から無事という連絡が入ったのは二日後で、家の中のものはひっくり返り電気水道ガスは全滅ということだった。

 当日は電車が止まったため、錦糸町から自宅まで約3時間をかけて歩いた。20時過ぎに荒川にかかる西新井大橋を渡っていた、ちょうどそのとき津波に遭遇した。”ざぁ~”という大きな音で欄干から川を覗き込むと、暗闇の中を白波が一列になって遡上するのが見えた。

妻は1978年の宮城県沖地震(M7.9)を経験している。勤務先にいた妻は震度5の揺れに立っていられなかったという。結婚前のことで、私は妻に会うため前日まで仙台にいたが、その日は東京に戻っていた。まだ携帯がない時代で、公衆電話から何度も妻の実家に電話をしたがつながらなかったことを思い出す。この地震では無筋のブロック塀が倒れて犠牲者が出たことと八木山の造成団地の切り盛り境界が崩壊したことが問題になった。津波被害はなかったと思う。

 地震発生から2週間経ったが、被害規模は拡大を続け、原発と放射能汚染は深刻さを増している。この間にシンガポール出張が入り、3月16日の成田空港までの電車は余震で2度緊急停車をし、通常1時間半の道のりが3時間近くを要した。成田空港は国外に避難する外国人でごった返し、手荷物検査には長蛇の列ができ、通関までに1時間以上かかった。シンガポールの新聞ストレートタイムズは日本の災害記事で埋め尽くされていた。最大の関心事は放射能で、福島原発で事故処理にあたる50人を称賛する記事やシンガポールは十分遠いので放射能が拡散してくることはないという記事やシンガポールの食料や水は安全だという記事が目を引いた。中国発の放射能に塩が有効だというデマが流布した所為でスーパーマーケットの塩が無くなっていた。帰国は21日だったが行きとは違い機内はがらがらだった。

 機中映画は、津波の場面があるため被害者感情に配慮し上映が延期(中止?)されたクリント・イーストウッド監督の「Hereafter」2010を観た。津波に巻き込まれ臨死体験をしたフランスのニュースキャスターの女、霊と交信できることが負担となり厭世的に生きるアメリカの男、双子の兄を亡くし立ち直れないイギリスの男の子の話が別々に進行するが、最後は偶然に出会った3人がそれぞれ癒される。ニュースキャスターが自分の体験を出版するため、スイスのホスピスの女医(セラピスト?)から資料を借りる場面が出てくるが、明らかに「死の瞬間」の著者キューブラー・ロスをモデルにしている。マット・デイモンが死んだ双子の兄の言葉を借りて弟をさとす場面はぐっとくる。最愛の人を亡くした喪失感はあまりに大きいが残されたものは前を向いて生きるしかない。この映画は上映すべきだと思う。出演:マット・デイモン、セシル・ド・フランス ★★★★★

「奇蹟の輝き」1998 監督:ビンセント・ウォード、出演:ロビン・ウィリアムズ、アナベラ・シオラ 次々と襲ってくる家族の置かれた状況は痛ましく天国で再会しても救われた気持ちにはならなかった。ダンテの「神曲」のように天国と地獄を見せることが目的の映画なのか?★★☆☆☆

「ハリーポッター死の秘宝Part1」も観たが、Part2を観る頃には忘れてると思う。Part2を観てから併せて寸評することにする。

地震の前にアカデミー賞を取った「King’s Speech」を映画館で観た。その映画館は地震で被害を受けたらしく2週間たった今も閉鎖中である。被災地の宮古市の映画館が開演したというのにどうしたんだろう。第5グループはなぜか輪番回数が多いという計画停電の所為かも。

「King's Speech」2010、監督:トム・フーバー、出演:コリン・ファース、ヘレナ・ボナム・カーター、ジェフリー・ラッシュ 吃音のジョージ6世とそれを矯正しようとする先生の話。最後は素晴らしいスピーチで締めくくること、しかもイギリス人には馴染の既知のスピーチをすることなど、映画を観る前から結末がわかっているにもかかわらず、スピーチで観客を感動させたコリン・ファースがオスカーを取ったのは妥当と思う。ジョージ6世を懇親的に支える王女役のヘレナ・ボナム・カーターは、ハリーポッターでシリウスを殺す憎たらしい魔女ベラトリックスを演じており、プロの女優の演技はすごい。★★★★☆


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