映画日記-「小さな命が呼ぶとき」(114/687)

映画「小さな命が呼ぶとき」（原題"Extraordinary Measures", 2010年）を観ました。

オレゴン州に住むエリートサラリーマンのジョン・クラウリー（ブレンダン・フレイザー）は、妻と3人の子供と幸せに暮らしていたが、3人のうち2人は難病のポンペ病に侵されていた。
2人の余命がわずかであることを知ったジョンは、藁にもすがる思いで、治療法研究の第一人者であるネブラスカ大学のストーンヒル博士（ハリソン・フォード）を訪ねる。
博士はエキセントリックな科学者だったが、治療薬開発のめどをつけてはいた。
ジョンは子供達の命を救うため、高給の仕事をなげうって、博士と共に治療薬商業化のベンチャー企業を立ち上げる。

実話に基づく映画だそうです。
創薬ベンチャーと言えば、ベンチャー企業の中でも成功確率が低いことで知られますが、そんな創薬ベンチャーを立ち上げ、開発資金に苦しみ、出資を受けて実用化が近づくにつれ、様々な”大人の事情”で当初の目論見と違ってくる悩みも出てくるさまを描いています。
ベンチャー企業の成長の過程は、なかなかリアリティをもって描けていて（もちろん実話に基づくからですが）、非常に興味深く観ました。
ハリソン・フォードがエキセントリックな科学者を見事に演じていました。

しかし、映画そのものは良かったものの、字幕の日本語訳は酷かった。
主人公たちがベンチャー企業を設立して、ベンチャーキャピタルに出資を仰ぐシーンがありますが、字幕の訳が「ベンチャー融資」になっていました。
ベンチャー・キャピタルは通常、融資ではありません。もはや「ベンチャー・キャピタル」は一般名詞化しているというのに、何という誤訳。
"profit margin"が「利潤差額」とは、何ともマルクス経済学的な訳語です。普通は「限界利益」とか、単に「利益」と訳します。
随所に出てくる医学用語の訳の正確性は分かりませんが、ビジネス英語にはずいぶん疎い翻訳者です。
後で調べたら、さる有名な方でした。

主演のブレンダン・フレイザーは、「ハムナプトラ」シリーズの主演でしたが、お腹も出ていい感じにオッサンになっています。
後段で出てくる大企業の社長エリックを演じたのはパトリック・ボーショー。「今そこにある危機」で麻薬王を演じ、ハリソン・フォードと共演でした。
またその会社のイヤミな重役ケント博士を演じたのはジャレッド・ハリス。「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」では、ホームズの宿敵モリアーティ教授を演じました。