The Bill Holman Band
先日の日曜日、辰巳哲也Big bandのAfternoon Liveに出かけた。
今回で3回目だが、毎回テーマを決めてあまり取り上げられない珍しいアレンジの演奏を披露してくれるライブなので、ビッグバンド好き、それもマニアックなファンにはたまらない。
前回はオルガン特集であったが、今回はビルホルマンのアレンジ特集。
ホルマンは普段あまり表には出ないが、50年代から今に至るまで結構色々なアルバムにプレーヤーとして、そしてアレンジャーとして顔を出している。
ゴルフクラブのメーカーに三浦技研という会社がある。いつも表に出るナショナルブランドと較べると知名度は圧倒的に低いが、有名ブランドの商品も実はこの三浦技研で製造されているクラブが多くある。いわゆるモノづくりのための技術は実はごく限られた数社に限られているという話はよく聞くが、その一例だろう。
このビルホルマンも実は有名オーケストラや歌手を支えてきたアレンジャーとしてはいなくてはならない存在だ。名盤といわれる中にホルマンがアレンジを行ったアルバムは枚挙の暇がない。
自分の紹介したアルバムでもホルマンが関係しているアルバムは結構な枚数がある。作編曲のクレジットを書き漏らしたものもあると思うので、丹念に探せばもっとあるかもしれない。最近では、ベイシーのパブロ盤が丸々ホルマンのアレンジであった。
今回のライブは、そんなホルマンの作品集だったので、果たしてどんな曲が飛び出すか楽しみであった。イントロは、まずはデイブペルのオクテットからスタートした。
Jazz goes to Siwash. “A Pell of A Time”というアルバムに入っている曲だ。
軽くウォーミングアップで本命はフルバンド編成のアレンジ。
50年代から最近までの物まで多くの作品があるが、今回も古いアレンジから比較的最近のアルバムに収められている曲まで色々と。途中、ホルマンのアレンジの特徴などの解説も入り、自分のような「聴くだけファン」には参考になった。
演奏する方にとっても難曲が多いらしく、プレーヤーとっても終わった後で達成感を感じた雰囲気が伝わってくるライブであった。
丁度バブルの絶頂期、日本の企業は業種を問わず元気であった。ジャズレコードの業界でも日本のレーベル、プロデューサー制作のアルバムがアメリカ録音で数多く作られた。バブルが弾けた結果の負の遺産は山ほどあるが、こと音楽に関しては、よくぞこの時残しておきてくれたというアルバムが何枚もある。これらは後世に残る遺産だ。
このホルマンのアルバムもそうかもしれない。ホルマンのバンドは1975年に結成され地元でリハーサルバンドとして活動を続けていたが、アルバムとして残っているものはあまりない。
ビクターの田口ディレクターが他の仕事でロスを訪れていた時、地元でのライブを聴いて、」ホルマンの作編曲の素晴らしさに惚れて、このアルバム制作に至ったそうだ。企業人が営利主義でしか行動できない今の時代では考えられないことだが。
曲は、ホルマンのオリジナルから、スタンダード、そしてモンクの曲まで、素材は千差万別。
それぞれアレンジの施し方が、ホルマンの本領発揮といった所だろう。
このアルバムに収められているJust friendsも今回のライブで演奏された。
ピアノのソロからスタートするが、各セクションの総出のユニゾンが延々続く。譜面を繰るのが追い付かないほど、これでもかという感じでひたすら突き進む。途中のベースソロで一服するが最後までアンサンブルワークが続く。普通の譜面では繰り返しが多いが、この様なアレンジはエリントンの大作物のようだ。
これは、WDR bigband の同じアレンジの演奏。
ジャストフレンズといえば、内堀勝のMUBig bandのトロンボーンアンサンブルが軽快でお気に入りだが、このホルマンのアレンジは心地よさを超えて強烈だ。CDで聴く以上にライブだとその迫力に圧倒される。
以前紹介した、Bill Holman の”Live”というアルバムからも何曲かDonna Leeはいきなり最初のメロディーの展開から意表を突くし、PressOneも楽しい曲だ。
やはりビッグバンドはライブでないと本当の迫力を実感できない。辰巳さんのバンドは拘りでいつもPAを使わない生音。今回のライブでもそうだったが、サンサンブルでもソロでも全く問題なかったし、反対に生音のバランスが心地良かった。
素晴らしいライブであったが、惜しむらくは聴衆が少なかった事。一回目のシュナイダー&ブルックマイヤーはそこそこの出足であったが、今回はせっかくの演奏にもかかわらず寂しい客席だった。
辰巳さんも自らのブログで語っているが、ビッグバンドファンは是非一度足を運んでみる価値はある。マイクプライスさんのバンドとか辰巳さんのバンドは普段聴けない曲の演奏をたっぷり楽しめるのだが。
クラシックの場合は、必ず出演者だけでなく、当日の演目が事前に発表される。聴きに行く人は、もちろん演奏家目当てもあるが、時には曲を聴きたくてということもある。
ところが、ジャズの場合は事前に分かるのは出演者だけ。曲目が告知されるのは稀である。
それでは、当然ライブに行く目的はその出演者目当てになってしまう。辰巳さんのような試みは、出演者というよりは、その日のプログラムが目的になるのだが。
もしかしたら、このオーケストラに何か別なネーミングが必要かもしれない。リンカーンセンタージャズオーケストラのように。
次回のケントンも日本では人気のない代表格。実は自分もあまり聴いていなかったが、ペッパーアダムスを追いかけていたら当然のようにケントンオーケストラに遭遇。西海岸の多くのプレーヤーが在籍したケントンは聴き返すとやはり素晴らしい。卒業生は数多い、マイクプライスもそうだし、先日来日した、ピーターアースキンもケントンオーケストラの卒業生だ。
今後もこのシリーズはマニアックなライブになりそうだが、何とかこのシリーズを盛り上げたいものだ。
1, Front Runner Bill Holman 5:39
2. Isn't She Lovely Stevie Wonder 6:24
3. St. Thomas Sonny Rollins 7:10
4. Goodbye Pork Pie Hat Bill Holman 5:39
5. I Mean You Coleman Hawkins / Thelonious Monk 5:48
6, Just Friends John Klenner / Sam M. Lewis 5:51
7. Primrose Path Bill Holman 6:47
8. The Moon of Manakoora Frank Loesser / Alfred Newman 7:21
9. The Real You Bill Holman 8:02
Carl Saunders (tp,flh)
Don Rader (tp,flh)
Bob Summers (tp,flh)
Frank Szabo (tp,flh)
Jack Redmond (tb)
Rick Culver (tb)
Bob Enevoldsen (tb)
Pete Beltran (btb)
Bobby Militello (as,ss,cl)
Lanny Morgan (as,ss,fl)
Bob Cooper (ts,ss,fl)
Bill Holeman (ts)
Dick Mitchell (ts,ss,fl)
Bob Efford (bs,bcl)
Barry Zweig (g)
Rick Eames (P)
Bruce Lett (b)
Jeff Hamilton (ds)
Akira Taguchi Producer
Takashi Misu Producer
Don Murray Engineer, Mastering
Leslie Ann Jones Assistant Engineer
Arranged By Bill Holman
Recorded on Nobember 30 & Decmber 1,1987 at Capital Studio in Los Angels.
先日の日曜日、辰巳哲也Big bandのAfternoon Liveに出かけた。
今回で3回目だが、毎回テーマを決めてあまり取り上げられない珍しいアレンジの演奏を披露してくれるライブなので、ビッグバンド好き、それもマニアックなファンにはたまらない。
前回はオルガン特集であったが、今回はビルホルマンのアレンジ特集。
ホルマンは普段あまり表には出ないが、50年代から今に至るまで結構色々なアルバムにプレーヤーとして、そしてアレンジャーとして顔を出している。
ゴルフクラブのメーカーに三浦技研という会社がある。いつも表に出るナショナルブランドと較べると知名度は圧倒的に低いが、有名ブランドの商品も実はこの三浦技研で製造されているクラブが多くある。いわゆるモノづくりのための技術は実はごく限られた数社に限られているという話はよく聞くが、その一例だろう。
このビルホルマンも実は有名オーケストラや歌手を支えてきたアレンジャーとしてはいなくてはならない存在だ。名盤といわれる中にホルマンがアレンジを行ったアルバムは枚挙の暇がない。
自分の紹介したアルバムでもホルマンが関係しているアルバムは結構な枚数がある。作編曲のクレジットを書き漏らしたものもあると思うので、丹念に探せばもっとあるかもしれない。最近では、ベイシーのパブロ盤が丸々ホルマンのアレンジであった。
今回のライブは、そんなホルマンの作品集だったので、果たしてどんな曲が飛び出すか楽しみであった。イントロは、まずはデイブペルのオクテットからスタートした。
Jazz goes to Siwash. “A Pell of A Time”というアルバムに入っている曲だ。
軽くウォーミングアップで本命はフルバンド編成のアレンジ。
50年代から最近までの物まで多くの作品があるが、今回も古いアレンジから比較的最近のアルバムに収められている曲まで色々と。途中、ホルマンのアレンジの特徴などの解説も入り、自分のような「聴くだけファン」には参考になった。
演奏する方にとっても難曲が多いらしく、プレーヤーとっても終わった後で達成感を感じた雰囲気が伝わってくるライブであった。
丁度バブルの絶頂期、日本の企業は業種を問わず元気であった。ジャズレコードの業界でも日本のレーベル、プロデューサー制作のアルバムがアメリカ録音で数多く作られた。バブルが弾けた結果の負の遺産は山ほどあるが、こと音楽に関しては、よくぞこの時残しておきてくれたというアルバムが何枚もある。これらは後世に残る遺産だ。
このホルマンのアルバムもそうかもしれない。ホルマンのバンドは1975年に結成され地元でリハーサルバンドとして活動を続けていたが、アルバムとして残っているものはあまりない。
ビクターの田口ディレクターが他の仕事でロスを訪れていた時、地元でのライブを聴いて、」ホルマンの作編曲の素晴らしさに惚れて、このアルバム制作に至ったそうだ。企業人が営利主義でしか行動できない今の時代では考えられないことだが。
曲は、ホルマンのオリジナルから、スタンダード、そしてモンクの曲まで、素材は千差万別。
それぞれアレンジの施し方が、ホルマンの本領発揮といった所だろう。
このアルバムに収められているJust friendsも今回のライブで演奏された。
ピアノのソロからスタートするが、各セクションの総出のユニゾンが延々続く。譜面を繰るのが追い付かないほど、これでもかという感じでひたすら突き進む。途中のベースソロで一服するが最後までアンサンブルワークが続く。普通の譜面では繰り返しが多いが、この様なアレンジはエリントンの大作物のようだ。
これは、WDR bigband の同じアレンジの演奏。
ジャストフレンズといえば、内堀勝のMUBig bandのトロンボーンアンサンブルが軽快でお気に入りだが、このホルマンのアレンジは心地よさを超えて強烈だ。CDで聴く以上にライブだとその迫力に圧倒される。
以前紹介した、Bill Holman の”Live”というアルバムからも何曲かDonna Leeはいきなり最初のメロディーの展開から意表を突くし、PressOneも楽しい曲だ。
やはりビッグバンドはライブでないと本当の迫力を実感できない。辰巳さんのバンドは拘りでいつもPAを使わない生音。今回のライブでもそうだったが、サンサンブルでもソロでも全く問題なかったし、反対に生音のバランスが心地良かった。
素晴らしいライブであったが、惜しむらくは聴衆が少なかった事。一回目のシュナイダー&ブルックマイヤーはそこそこの出足であったが、今回はせっかくの演奏にもかかわらず寂しい客席だった。
辰巳さんも自らのブログで語っているが、ビッグバンドファンは是非一度足を運んでみる価値はある。マイクプライスさんのバンドとか辰巳さんのバンドは普段聴けない曲の演奏をたっぷり楽しめるのだが。
クラシックの場合は、必ず出演者だけでなく、当日の演目が事前に発表される。聴きに行く人は、もちろん演奏家目当てもあるが、時には曲を聴きたくてということもある。
ところが、ジャズの場合は事前に分かるのは出演者だけ。曲目が告知されるのは稀である。
それでは、当然ライブに行く目的はその出演者目当てになってしまう。辰巳さんのような試みは、出演者というよりは、その日のプログラムが目的になるのだが。
もしかしたら、このオーケストラに何か別なネーミングが必要かもしれない。リンカーンセンタージャズオーケストラのように。
次回のケントンも日本では人気のない代表格。実は自分もあまり聴いていなかったが、ペッパーアダムスを追いかけていたら当然のようにケントンオーケストラに遭遇。西海岸の多くのプレーヤーが在籍したケントンは聴き返すとやはり素晴らしい。卒業生は数多い、マイクプライスもそうだし、先日来日した、ピーターアースキンもケントンオーケストラの卒業生だ。
今後もこのシリーズはマニアックなライブになりそうだが、何とかこのシリーズを盛り上げたいものだ。
1, Front Runner Bill Holman 5:39
2. Isn't She Lovely Stevie Wonder 6:24
3. St. Thomas Sonny Rollins 7:10
4. Goodbye Pork Pie Hat Bill Holman 5:39
5. I Mean You Coleman Hawkins / Thelonious Monk 5:48
6, Just Friends John Klenner / Sam M. Lewis 5:51
7. Primrose Path Bill Holman 6:47
8. The Moon of Manakoora Frank Loesser / Alfred Newman 7:21
9. The Real You Bill Holman 8:02
Carl Saunders (tp,flh)
Don Rader (tp,flh)
Bob Summers (tp,flh)
Frank Szabo (tp,flh)
Jack Redmond (tb)
Rick Culver (tb)
Bob Enevoldsen (tb)
Pete Beltran (btb)
Bobby Militello (as,ss,cl)
Lanny Morgan (as,ss,fl)
Bob Cooper (ts,ss,fl)
Bill Holeman (ts)
Dick Mitchell (ts,ss,fl)
Bob Efford (bs,bcl)
Barry Zweig (g)
Rick Eames (P)
Bruce Lett (b)
Jeff Hamilton (ds)
Akira Taguchi Producer
Takashi Misu Producer
Don Murray Engineer, Mastering
Leslie Ann Jones Assistant Engineer
Arranged By Bill Holman
Recorded on Nobember 30 & Decmber 1,1987 at Capital Studio in Los Angels.