A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ソリストとして再出発したアダムス、ワンホーンでの初のスタジオ録音は?・・・

2014-12-22 | PEPPER ADAMS
Reflectory / Pepper Adams

1978年1月、ペッパーアダムスにとっては久々のミンガスのグループへの参加で活動を開始した。23日にレコーディングを終えると、一日休んだ後、シカゴに飛んでチェットベイカーとのギグ、そしてガレスピーと一緒にデビットアラムのギグと続く。

チェットベイカーとのコンビは不自然に感じるかもしれないが、50年代の後半レコーディングに参加した以外でもよく一緒にライブでのプレーをしていた。20年以上も続く長い付き合いであった。

2月はオフで旅行に行ったり、他のギグを楽しんだりしていたが、3月に新しいシルバーのバリトンを購入した。楽器を替えるのは久々だが、当座は長年使用した愛機のバックアップとなったようだ。

4月になると、サンフランシスコにいる古くからの友人Murabuto兄弟の元を訪れ、そのまましばらく西海岸で活動する。サドメル時代は、長期間のツアー、レギュラーのビレッジバンガードへの出演と、自分の自由な時間がとれなかった反動か、自由な時間を満喫していた。

6月になると、精力的にレコーディングを再開する。
まずは手始めに、14日自らのリーダーアルバムの制作をMuseレーベルで行う。
アメリカで自分のリーダーアルバムを制作するのは、”Encounter”以来実に7年ぶり。アダムスにとって16枚目のリーダーアルバムとなるのが、この“Reflectory”である。

ピアノトリオを従えたアダムスのワンホーンアルバム。
実は、アダムスのワンホーンアルバムというのは珍しい。多分最初のワンホーンアルバムは'73年にロンドンで録音された”EPHEMERA"。サドメルでのヨーロッパツアー中に録音されたものだ。サドメルのリズムセクションのメンバーが加わっている。

このセッションはせっかく設けられたレコーディングの機会であったが、録音環境はスタジオ、機器、スタッフともに非常にプアーなものであったらしい。ピアノは調律されていないチープな物で、録音を担当したエンジニアはウッドべースをそれまで見た事も無いという有様であったそうだ。

その後、サドメルを辞める前に、これもヨーロッパ、ミュンヘンでライブの模様を収めた録音がある。これもサドメルのヨーロッパツアー開始前に急遽決まったライブであった。いずれも、腰を据えて作られたアルバムというものではなかった。

‘77年にサドメルを辞めた直後の2枚のライブアルバム、”Pepper Adams Live”, ”In Europe”はワンホーンである。人生の後半を本格的なソリストになりたくてサドメルを辞めたアダムスであったが、本心はあまり他人のことを気にせず自らの想いをストレートに表現できるワンホーンでの演奏に憧れていたのかもしれない。それまで、コンビを組んだドナルドバードとの双頭コンボでは辛酸を舐めさせられたので。

そして、このアルバムの制作となる。アダムスのとっては自分がリーダーとなる初のワンホーンのスタジオ録音であった。という点では、やっと夢が実現、アダムス自身の期待も高まっていたと思う。

メンバーは、サドメル時代の仲間であった、ローランドハナとジョージムラツ、7年前の「エフェメラ」と同じである。それにこの3人とは良くプレーをしたビリーハートが加わる。
メンバーもお互い気心の知れた同士、すべては快調にスタートする。

スタジオでのアダムスの仕切りは完璧であったそうだ。単に譜面を書くというだけではなく、各人の演奏に細かな指示があったが、実際にプレーをすると不思議と皆のクリエイティビティー損なうことなくその通りに収まっていったと、ドラムで参加したビリーハートがそのような主旨のコメントを残している。

サックスの音を綺麗に録音するというのは簡単なようで難しい。アダムスはレコーディングの結果に対して演奏の良し悪しだけでなく、録音に関しても色々コメントを残している。アルバム的にはいいアルバムという評価を得ていても、録音に関してアダムスにボロクソに言われたアルバムも多くある。アダムスは自分の想いを実現できる録音の機会の願っていたのに加えて、自分の豪快であるが、ある意味繊細でもあるバリトンの音を綺麗に録ってくれるエンジニアも求めていたようだ。

そして、この録音ではそのエンジニアにも出会えたようだ。
アダムスは自分のコメントとして、「このアルバムのエンジニアElvin Cambellを最も自分の音を上手く録ってくれた」と評価している。彼の録り方は、一本を楽器に非常に近く、そして一本はかなり頭上高く離れて設置し、2つの音を上手くミックスする方法だという。

このアルバムで、アダムスのソリストとしての活動を祝うアルバムがやっと作られたように思う。




1. Reflectory           Pepper Adams 7:00
2. Sophisticated Lady       Duke Ellington 5:37
3. Etude Diabolique        Pepper Adams 7:16
4. Claudette's Way         Pepper Adams 6:11
5. I Cary Your Heart        Pepper Adams 6:53
6. That's All      Alan Brandt / Bob Haymes 6:32

Pepper Adams (bs)
Roland Hanna (p)
George Mraz (b)
Billy Hart (ds)

Produced by Mitch Farber
Recording Engineer : Elvin Campbell
Recorded at CI Recording, NYC, June 14, 1978


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 強烈なサンバのリズムのクリ... | トップ | 腰の重い人を動かすには、こ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。