君のためならおれはなんだってできる
そうさ!
どんなことだって
『妖魔』の頃から楠桂作品は好きでしたが、久々に読んだ新作はイマドキの萌え要素で展開する、笑えるツボが満載のラブコメでなかなか新鮮でした。ホラー、『鬼切丸』のような切ない物語から『八神くんの家庭の事情』のような作品まで幅広く描けるすごい作家さんです。
合コンで知り合った女子大生の彼女、雨宮菜々子(あまみやななこ)と初Hして幸福の絶頂にいた小林稔(みのる)は、その翌日いきなり不幸のどん底に落ちる。自分は男の子より女の子のほうが好きだと確信したと、別れ話をされてしまう。初Hの後に彼女が泣いたのは感動の涙ではなく、「男の人ダメぇ〜キモい〜」とマジで悲しくて流れた涙だった!(笑)
なんでもするからそばにいたいとすがりつく稔に、菜々子が出した条件は、「これに着替えてみてくれる?」。
そして下着に至るまでの徹底した女装とメイク、女言葉まで強要され、名も「みのり」と呼ばれることになる稔。自分は女顔だったんだと驚愕する暇もなく、抱いて下さいと濃厚なキスをされ!
交際の条件が女装、しかもセックス時まで女物の服を着たままなんてとても親友の順一には言えない。そんな順一は稔の彼女のはずの菜々子が知らない女性と一緒に歩きキスしている姿を見て、親友のために「女装した稔」に菜々子と別れてくれと頼む。その友情に稔は感動するが、なんと順一は女装した自分に惚れてしまう!
順一がカードまで渡してしまうほど無防備に「みのり」に惚れ込んでしまっていると知った稔は、彼をホテルに連れ込むという荒療治でみのりは女装した自分だと分からせる。よほどショックだったのか、「お前とのつきあい方 考えさせてくれ」と沈み込む順一。どう考えるのか、不安と身の危険を感じる稔。
相変わらずHの時には稔に女装を強いる菜々子。しかもすっぴんで男モードの自分にはキスどころか触ってもくれない! たとえ命を救ってもほっぺにチュウ止まり。…気になるんですが、女装しながらのHの時「挿入」はしてるんですよね(笑)?
順一がみのりさんのこと好きになっちゃったらどうしようという会話から、菜々子が「女友達」と会うのを安心していいのか?というとんだ盲点に気付く稔。菜々子ちゃんはまだ本物のレズプレイは未経験の仮性レズビアン。生身の女の子の良さを知っちゃったら浮気どころかおれ捨てられちゃう!?
異様にやさしい…というか重い順一は何故か女装道具一式を所有しており、稔は着替えてメイクして「ゆりあ」になり、買い物中の菜々子ちゃんを尾行。試着室から聞こえてくる、女同士の甘い会話。まさかレズビアン的な愛の告白と思いきや、そこに現れたのは「彼女達って女にも男にも見えないでしょ」と彼女が言うすてきなお友達(笑)
「稔くんのお父さんお母さんに会いたいな…」と言い出す菜々子。困っちゃうけど嬉しい悩み、帰宅した稔は当日は猫をかぶってくれと両親に土下座する。
家に来た彼女を両親に紹介する稔、いきなり同居前提のディープな質問をする父母。すると菜々子は「どうして稔くんを男の身体に産んじゃったの!? 男女産み分け法で女の子に産んでくれればよかったのにーーっ!!」と絶叫。
夕食をはさみ、部屋でいい雰囲気になってきた時、隣の部屋から聞こえてきたのは姉・みちるの不気味な声。
「も もうダメだ!! ひきこもりの腐女子の姉貴がいるってこと一番知られたくなかった!!」(笑)
ところが菜々子がお姉さんを風呂場へ引きずって無理矢理洗うと、現れたのは正に「みのりさん」。
その日を境に、何故かどんどんあか抜けてくる、稔にとって恋敵の姉。母の話では菜々子が家に来てスキンケアとかヘアケアとかメイクとか毎日いろいろしていってくれている。本当に愛してるのは「みのり」さんだけという言葉に喜んでいいものかどうか…。そしてもう一人の勘違いしてる奴は順一。「本物のみのりさんに会わせてやろうか」と奴を自分の姉に引きあわせるが、ノーブラ見せパンのナイスバディも「腐女子ですが何か?」の一言でパー(笑)
菜々子の目を覚まさせるために姉の前で稔が女装をすれば、弟が女装してこの川島くんとつき合ってんのね!?すてき!!萌えるわ〜!!と腐女子の発想!
人は一体どこまで墜ちてゆくものなのか?
お薦め度:★★★☆☆
最高に笑えました。ヘンタイ的な恋に葛藤する主人公という点では『八神くんの家庭の事情』(1987〜1990)に通じるものもあります。『ごめんなさいこ・ぱわあ』(1991)を読んだ時に「ついに楠が壊れた!」と大喜びしたのを覚えています。
菜々子ちゃんの性格がよければ4つ星でしたね。あれじゃただの淫乱娘(笑)
巻末に採録されている読み切り『恋物語れ-罪と罰と恋-』は、自分のせいで凍死した女の子に、永遠に報われない恋におちるという短篇。良かったです。
第2巻は来春発売予定。もちろん購入予定。
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【検索用】Unな彼女 楠桂 1
なんて倒錯的な。
この漫画は男の娘というよりどちらかと言うと「異性装×(百合+BL)÷2」ですね(笑)
奈々子ちゃんの性格が酷いのも同意です(笑)顔は可愛いんですけどね。
『Unな彼女』も面白かったのですが、おまけの読みきりが切なくてきれいで好きでした。
変態サイコー(笑)
このヘンタイラブコメが、巻を重ねる内に「本当の愛」というテーマに迫り第二の『八神くんの家庭の事情』のような作品になるというのもいいかもしれませんね。
併録の読み切り、私も好きです。『楠劇場』のような切なさがありましたね。あの作品集は粒揃いでした。