アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『ノノノノ』第6巻/岡本倫

2009-06-03 | 青年漫画
 


野々宮?
野々宮ってだれだっけ?
聞いたことがあるような…
そうだ
たしかお母さんの昔の名前--
私の名前は--


最新刊です。ノノの大ケガ、気になって仕方がなかったんだ…!
スキー部でただ一人、野々宮が女の子だと知ってしまった岸谷の必死の制止、しかし「ケガ人を病院へ運んで何が悪いんだ!!」と有無を言わさず搬送されてしまう…!

ここで物語は10年前に遡ります。明らかになる全ての過去。第5巻を読んだ時に、ノノがその笑顔の下でどれだけのものに耐えているのだろうと思ったんですが、こんなにも重いものを背負っていたんだ…。(→第5巻)

10年前、父の由良悠介(ゆらゆうすけ)はスキーしか取り柄のない神川(かみかわ)町でオリンピックで金メダル獲得を期待されながらも「応援よろしく!」と笑って応える、ノノと悠太にとって自慢の優しいお父さんだった。母と四人で暮らしながら、父が笑顔で悠太とノノにスキーを教えてくれる幸せな家庭。
何もない神川町から金メダリストが出ると、有名人の父。町のオリンピック出場選手壮行会で応援に集まってくれた町の人達を前に自分はスキージャンプしかできない人間で、選手の現役期間は短くもうすぐ30で引退する歳だ、せめて子供たちが胸を張って誇れる父親になりたいと、必ず金メダルを獲ると約束し皆の声援に応える。金メダルがなくても自慢のお父さんだよと思うノノ。その時父は、左足の痛みを隠し、ひとつだけ嘘をついていた。

町民総出でオリンピックに送り出され、冬季五輪最後の種目の団体戦。由良悠介、天津敦、槙野慎二、下里広明(しもさとひろあき)のチームは期待に反し天津の銀メダル以外のメダルを獲得していなかったが、この団体戦で勝てば金メダルが4つも増えて俺達全員金メダリストだと明るく笑う由良悠介。その由良の脳天気さに助けられるという三人は、全員実力を出し切って大ジャンプをする。足が痛み出し、一人トイレで震えている由良悠介。
2位のオーストリアに大差を付けて1位に登りつめる日本チーム。あとは由良がたったの80メートル飛ぶだけで金メダルは確実だった。怪我を隠したまま飛び、転倒し失格となる父、4位に転落する日本チーム。
さっきまで父を応援してくれていた観客から「バカ野郎!!」「メダル返せ!!」と壮絶なブーイング。「死んでわびろ!!」「腹を切れ!!」と嵐のような非難。
帰国すると投げつけられるペンキ、誰も出迎えてくれない空港、立て続けにかかってくる脅迫電話。飛び交う野次の中、自分達が父の代わりに金メダルを獲ると叫ぶ悠太とノノ。
毎日届く脅迫状、鳴りやまないいやがらせ電話、左膝を悪くして選手生命を絶たれた父、体を壊し本州で療養している母。「転倒兄妹」と学校でいじめられ、苗字を母の旧姓「野々宮」に変えて追われるように引っ越した悠太とノノ。あの日を境に、もう昔の優しい父ではなくなってしまった。

父のために金メダルを獲ろうと、ジャンプに明け暮れる悠太とノノ。オリンピックに出られない妹のノノの方が才能があり、体罰をも伴う、父の悠太への重いプレッシャー。
小学生大会で優勝を重ね、小学生ながらも中学生の大会でも優勝し、どんどんスキージャンプが好きになっていくノノ。それに反し、期待に応えられない兄の悠太は、妹に負ける度に父に殴られる。その頃はまだ、女はオリンピックに出られないことを知らなかったノノは優勝する度にカップを父に見せていたが、父は少しも喜んでくれなかった。今は喜んでくれなくても、最後に喜んでくれると、昔見たアニメのように「よかった探し」をするノノ。優勝カップを見せるたびに父に冷たく無視されるノノが、「まだお父さんがほめてくれなくてよかったよかった」と「よかった探し」をする姿が泣けてしまうほどにすごく可哀想。自分が勝つ度に兄が殴られるのを見ていて自分が金メダルを獲るからもうお兄ちゃんを叩かないでと父に懇願すると、初めて女はオリンピックに出られない、無駄だと怒鳴りつけられる。

中学に上がってジャンプを辞めてしまうノノ。働いていない父の代わりに、兄がジャンプを続けられるように毎日アルバイトをする。

絵の才能がありながらも、ジャンプ選手になるの一点張りの悠太。今や父に元オリンピック選手の面影はなく、醜く老いた奇人。それでも何も言わずにジャンプを続ける兄。こんな無理強いをさせられて、まだ父を愛している兄妹。まだお父さんが大好きだから余計に可哀想。自分を殴る父を、兄を殴る父を、嫌いになれたら、憎むことができたらどれほど楽だったでしょう。変わり果てた父は、もし全国中学生体育大会(全中体)で予選落ちなどしたら殺してやると兄にナイフを向ける。たかが北海道大会で85位と予選落ちをする兄。もう悠太にオリンピックは無理だと、今までの自分のわがままを詫びた父は家で首を吊る。意識不明となり担ぎ込まれた病院のベッドで、人工呼吸器と点滴の管を付けたまま戻らぬ意識で「金メダル… ありがとう… ありがとう… 悠太えらいぞ…」とうわごとを言う父。
兄の中で溜まっていたなにかが壊れる。

先生が勝手に応募した、悠太の絵が内閣総理大臣賞を受賞した日、その結果を知らずに、兄は自宅の倉庫で灯油を撒いて焼身自殺する。帰宅しようとしたノノが兄の物と入れ替わっていたコートのポケットに見付けた自分宛の手紙。自分には父を救うことができないので、「野々宮ノノ」として死に、妹に全てを託すという手紙。『ぼくが死ぬことでノノに足りなかったものとぼくに足りなかったものが補(おぎな)い合える』『ぼくは死ぬことで夢を叶えることが出来るんだ』。ずっと絵を描いて生きていきたかったくせにと涙を浮かべ炎に包まれる悠太。父と母、恋人のそら、妹のノノに謝りながら。

燃え上がる倉庫、その場を走り去り、丘に上がると「ノノのジャンプが見たいんだ」と兄の亡霊が目の前に現れる。髪を切り落とし、「野々宮悠太」として生きていく決心をするノノ。
警察では、一人の刑事が双子の遺体が入れ替わっていたのではないかと疑いを抱くが、検死結果が女性と出て「自殺」と処理される。


意識不明のノノを見舞いに来ている興梠(こうろぎ)は、「悠太 あなた… よくも私に… 嘘ばっかり言ってくれたわね 覚えてなさいよ 目を覚ましたら許さないんだから」と眠っているノノに言う。
目を覚まし、転倒したことを思い出し、胸にギプス、バレた…全部…と蒼くなるノノ。だが意外にも、与田記者の機転で知り合いの小さな病院に搬送されたため、女とはバレていない。

目を覚ましたノノをなじる興梠、安心するノノ。ノノをいつものように奴隷呼ばわりする興梠の言葉に救われます。だが悪い知らせがあると言う与田さん。転倒したノノが最下位なのは当然として、奇跡的に風が変わり、岸谷が優勝してしまった。インターハイ出場に内定した岸谷と天津。インターハイの出場枠は一校3人まで、皇帝はインターハイ出場は自分とあと2人と言った(→第2巻)。ノノは順調に怪我から回復している皇帝と一騎打ちをすることになるのか--!?。

お薦め度:★★★★☆
明かされた過去、重く、つらいんですが、ノノが「男」としてオリンピックを目指している理由が分かってスッキリしました。その過去が予想できた範囲のもので、意外性はあまりありませんでしたが泣けました。この巻だけを読むと「描かなくてはならない部分を描いた」という、必要なエピソードの消化という印象ですが、皇帝との一騎打ちが始まるであろう今後の展開を待ち遠しく思えます。


マクロミルへ登録
【マクロミル】アンケート会員募集中!謝礼ポイント有


↓第7巻からの展開がまた楽しみ!
にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へにほんブログ村
にほんブログ村 トラコミュ 漫画、マンガ、まんが、コミックへ漫画、マンガ、まんが、コミック
にほんブログ村 トラコミュ 青年マンガへ青年マンガ
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ちはやふる』第二巻/末次由紀 | トップ | 『空を泳ぐ女』/倉科遼・玉置... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。