アルバニトハルネ紀年図書館

アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。

『バイオメガ』第6巻(完結)/弐瓶勉

2009-05-09 | 青年漫画
 


最終巻です。3月に既に買っていたんですが、自分の中でどうしても消化しきれずになかなか記事が書けませんでした。
読み応えもあり、物語の主軸である点と線は繋がりましたが、「長編SF」の構想で始まったこの作品がわずか全6巻で完結したことにやはり納得のいかないものがあります。
amazonに寄せられたレビューでは好意的な物もあるんですが、それはあくまで旧作の『BLAME!』を知っていることが前提になっているようです。連載回数にして僅か42回という短さで完結してしまった部分では不満が残ります。第5巻までの展開がとても良かっただけに、#38でいきなり復物主(ふくぶつしゅ)の子であるフニペーロが大人になり、造一達がMSCF(最厳重警備隔離施設)を破壊しながらニアルディに向かい400年が経過したという「空白部分」が何故描かれていないのか。
「外伝を描けば良いし、それによって弐瓶ワールドが広がる」というような意見には違和感を覚えます。
でも弐瓶氏のブログを見ると今でもコミティアに参加するなど同人活動を続けているようなので、何か本(同人誌)を買いに行ってみようかなという気にもなりました。

この作品は#10までを描いた時点で「ヤングマガジン」での連載が打ち切られ、#11から「ウルトラジャンプ」に引き継がれた物ですが、「ここでもやはり読者には受け入れられなかったのか」という思いがあります。

庚班とDRF(技術文化遺産復興財団)の400年に及ぶ戦いの中で、「ある場所へ行ってカギを開ける」という使命を与えられたコズロフに関する部分がかなり省略されています。胚珠の望みを実らせる復物主、その復物主の子であるフニペーロはコズロフに「この世界はあなたの願いでつくられたのよ」と言う。
地球での「ドローン禍」から舞台が復物主本体へ移るまでの過程がかなりの密度で描かれていたのに対し、地球再生の願いは叶わず、地球をそもそも知らないフニペーロがニアルディの望む世界を拒絶することの説明が不足している気がします。作者は当然描くつもりだったが、読者アンケートの結果がそれを許さなかったということでしょうか。

誰が望んだものなのか分からない世界で、総主の示現構成体を見たことのない人々が旧世界の遺物を目指す。その遺跡、大陸繋留索(たいりくけいりゅうさく)にいる不死の少女、イオン・グリーン。庚班は最終区画を目指し果てしのない戦いを続けている。「東亜重工」という同じ企業が登場しながらも、作品としての連続性はないんですが、この辺りは『BLAME!』序盤の、果てしない巨大構造物を霧亥が戦いながら登っていく姿を彷彿とさせます。

お前を造るのに苦労した、発芽の瞬間を共に見ようと言うニアルディにフニペーロは「私の母はヤー!! 世界はもう二度と作り変えさせないわ!!」と剣を抜く。

造一とフユが辿り着いた時、ニアルディは死んでおり、発芽しなかった復物主と癒着していた統主は造一に「まだ 人類を救う事などを望んでいるのか? そもそもあいつらは人間なのか?」と言い放ち、コズロフは扉を開けようとする。そのコズロフがレーフと不死者のヴィエフ・チイエナの交配によって生まれたこと、イオン・グリーンの本名こそヴィエフ・チイエナと明らかになる。ニアルディは「不老不死こそ人口統制」と言ったナレインに「種族全体の不老不死に存続可能な発展などありえん」と答えていた(第3巻)。
物語の根底にあったのはニアルディとナレインの人類総改換計画を巡る確執だったということではかなりスッキリしました。その背後にはDRF創設時にレーフが打ち立てた本来の計画があり、DRFの前身であるマイクロボルトが創設された西暦2272年に創設メンバーの一人であるレーフは既に復物主の発芽に備えていた。

最終話のラストシーンで全ての発端の西暦3005年の火星に視点は戻り、入植地跡に乗り込んだ探査船乗組員が一人の女と出会うシーン。マスクを脱いだ探査員が「リル… 僕だよ」と言い、完結です(火星に行った不老不死者のリルオード)。この男こそが、今まで顔を描かれず、記録の中にその名があっただけのレーフであったという解釈が間違っていなければ、確かに遠大な物語です。
機械生命だけで構成された新世界、DRFの起源がデータテロで失われた記録の復旧であったこと、そんな絶望の中で熊の着ぐるみを着たイオンがコズロフと再会できたこと、AIのフユを治(直)せるかもしれないという希望に救われます。
タンノ(異人)と呼ばれたヒグイデの役回りは良く分かりませんでしたが。インゴルヌルカ姫と占師チャイドドリンは結局何だったんだ。
「もう少し長く続けて欲しかった」というのが正直な感想です。弐瓶勉独特の、鳥肌が立つような描写も最終巻では少なかったですね。雑誌を買わずにアンケートはがきも送らなかった私に文句言う権利ないかもしれないけど。


お薦め度:★★★☆☆


先月から新連載『シドニアの騎士』が始まったようです。「アフタヌーン」を買ってないのでどんな話なのかはまだ知りませんが、単行本を楽しみにしてます。

マクロミルへ登録
【マクロミル】アンケート会員募集中!謝礼ポイント有

↓新作に期待します
にほんブログ村 漫画ブログ コミックス感想へにほんブログ村
にほんブログ村 トラコミュ 漫画、マンガ、まんが、コミックへ漫画、マンガ、まんが、コミック
にほんブログ村 トラコミュ 青年マンガへ青年マンガ
コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『夢みる太陽』第3巻/高野苺 | トップ | テレビ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。