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わまのミュージカルな毎日

主にミュージカルの観劇記を綴っています。リスクマネージャーとしての提言も少しずつ書いています。

舞台技術スタッフのための共通基盤研修

2005年01月25日 | 観劇記
今月は、自分の職業に関する研修が3件。趣味の舞台に関する研修が2件(先日の亜門さんのトーク・イベントも経験の伝承という意味では研修でしたので)。いや~~~充実した毎日です(笑)。

今日の「舞台技術スタッフのための共通基盤研修」への参加は、佐山陽規さんと広田勇二さんの歌を聴いてみたいという動機でした。午後6時半から新国立劇場・中劇場でとのことでしたので、軽い気持ちで「オブザーバー」資格で申し込みました。
本来のこの研修の狙いは、舞台創造に関わる技術者やプランナーで現場での経験が3年以上の方を対象にした技術向上です。オブザーバーは舞台技術に興味のある舞台芸術関係者ということでしたので、まあ資格があるとかなり拡大解釈して参加してみました。
本来の研修は24日と25日の二日間。一日目はパネルディスカッションと素舞台での場当たりがあったようです。二日目は、ストレートプレー「薔薇」、コンテンポラリーダンス、音楽劇「三文オペラ」の3つのプログラムの仕込み、場当たり、舞台稽古などを行い、最後に通してゲネプロという形での通し上演を行いました。
当初、私は最後のゲネプロの通し上演のみ観るつもりでしたが、仕事のやりくりがついたので、「三文オペラ」の仕込み、場当たり、舞台稽古の一部も見ました。
現職研修者にはイヤホンによる解説があるのですが、オブザーバーにはそれがありません。ただ、劇場内に響き渡る指示の声は当然聞こえるので、とても興味深いやりとりがあって勉強になりました。

お稽古場で舞台自体はかなり作り上げられているのだと思いますが、劇場に入ってみるまで予測不能のことがいろいろあるのだと実感しました。
舞台装置をセットして、セットのチェックをします。3人のミュージシャンが中央、上手、下手に配置されます。真ん中に白い、突起のある板があります。そしてミュージシャンと白い板の間に黒っぽい布がありました。幕は最初畳まれて床の上にあり、それを引き上げていくのですが、手動でやる上手と下手がバランスよく上がりません。何度も何度もやり直します。板と後ろの幕はコンピュータ制御。演出の伊藤和美さんが「3秒の設定を2秒にして」と指示を出すと、数分後には完了。やはり機械はすごい?
ミュージシャンの音響チェック。ドラムは楽器一つ一つに対してチェックをします。単調に叩いているのですが、音響がいろいろ操作すると全然違う楽器になったような音が聞こえてきて、不思議な気持ちでした。キーボード、ドラム、サックス&クラリネットの音響チェックが終わると、ミュージシャンだけで一部を演奏。ここから音楽監督の久米大作さんからいろいろ細かいチェックが飛びます。演奏だけのところはもっと派手に、という大雑把のものから、どこどこのフレーズはもっと軽く、など具体的なところまで。今回はたった3人のミュージシャンでも劇場という空間で音のバランスをとりながら、また、キャストの歌とのバランスを取りながら、細かい指示が繰り返されていくのです。これが大所帯になったら本当に大変ですよね。そうなると「指揮者」が間に入るのだと思いますが、気の遠くなるような作業が繰り返されるのでしょう。
ある程度、音が決まると、キャスト(佐山陽規さん、広田勇二さん、佐山真知子さん、三国由奈さん)の音響チェックです。これは結構あっさり終わりました。が多分、場当たりの途中で、いろいろチェックを入れていたと思います。聞こえ方がいろいろ変わったので。
場当たりが始まります。これが本当に大変。噂には聞いていましたが、劇場に入るまで、空間の大きさが分らないわけですから、本当に一つ一つ丁寧にやってきます。立ち位置、動き出しの位置は勿論、どこを見るかというのもチェックします。キャスト全員4人が揃って、具体的には登場しない人の姿を追いかける視線の位置などは、劇場のどこかを目標にするので、劇場に入らないと決まらないわけです。他にも、広田さんと三国さんが二人でどこかを見つめるという場面があって、伊藤さんから「もう少し上を」と指示が飛ぶと、キャストはどこか目標を探して二人で合わせます。ちょっとしたことですが、本当に雰囲気が違います。視線って大切なんだなぁと実感しました。
場当たりをしながら照明が入ってきます。立ち位置が決まると照明はそこに当たるのですが、かなりばらばら。照明ほど劇場に入らないとセットできない技術はないようです。ライトが当たるとキャストは見え方が違ってしまうようで、目標にしていたものがライトが強くて見えないこともあるようです。
少しずつ進みますが、やる度に最初の印象とは変わっていくので、とても面白かったですね。でも、やっている方は大変です。時間にかなりの制約があるという今回の特殊要因もあると思いますが、すごく細かい指示が一度にたくさん出て、短時間で対応しなければならないわけですから。でも観ている方は、ああ、かわったかわたったと楽しんでいました。
私は、あまり業界用語がわからないので、理解しきれないところもありました。が、ハプニングが起こっても、最善の作業をこなすスタッフの皆様。表舞台には決して登場しない、まさに縁の下の力持ちの方々のいろいろな姿を見て、感慨深いものがありました。

私は、この作業の最後までは見る事が出来なくて、半分はゲネで初見ということになりました。さて、かなり揉めていたドラムの音色はどんな風になったか、照明の出来上がりはどうか、白い板はどんな風に使われるのか、などなどいつもとはちょっと違う視点でゲネを楽しみにしました。

ゲネは3作品を通しました。どの作品も20分程度の上演なので、抜粋です。
最初がストレート・プレーの「薔薇」。場面が現在から過去へさかのぼり、また現在へ戻るという展開をします。その時空間をどう作るかがポイントの作品でした。衣装の上を脱ぐと、冬から夏へ。椅子と机の配置と、見せる舞台を小さくすることで、普通の家庭から夏の軽井沢へ。なかなかシンプルな中に時空間の飛躍がありました。ただ、軽井沢の場面で照明がもっと明るいほうが良かったと感じました。

次は、コンテンポラリーダンス。う~~~ん、理解を超えていました。私はバレエはたくさん観ますが、コンテンポラリーは初めて見ました。踊り手にスポットライトを当てないのが原則なの?と思ってしまいました。つまり、全体に暗い。また、私の感覚から言うと音楽と振りが合っていないような・・・。
上演が終わると質疑応答があります。で、私の疑問「舞台が暗いのでは?」という質問もありました。ほっ、私だけの感覚ではなかったんだ。コンテンポラリーはなかなか難しいですね。

最後が音楽劇。まあ、ミュージカルです。短くても、観たな、という充実感があるのがやはりミュージカルでしょうか。
見比べているというのもあるかもしれませんが、本当に照明が素晴らしいです。勝柴次朗さんという「エリザベート」も手がけられている方です。照明がよく入っていないときを見ていますので、照明がいかに舞台を立体的にしていくかがよく分りました。色の使い方も観客の想像力を掻き立てるような使い方です。
真ん中の白い板(と言っても、照明が常に当たっているので実際には白とは思えない)になぜ突起があるのかと思ったら、進行とともにかなり傾斜するのです。それが、マックの身の破滅を意味しているわけです。
この研修は舞台技術に対するものなので、こういう指摘はしてはいけないと思うのですが、ちょっと、と思うことが一つ。それは、歌詞。あまりにも詰め込み過ぎです。三国さんは初めて拝見しましたが、他の3人の方は何度も舞台を拝見しています。普段、とっても聞きやすい歌唱で、日本語はこう伝えよう!のお手本のような方たちです。でも、聞き取れない。内容がわかっているから大丈夫というところが多かったのです。勿論、演技も歌唱も相変わらずステキでした。
音響という点がミュージカルの場合かなり重要だと思うのですが、最後の場面で、マックに皆が迫る場面では、すごくエコーがかかり、今まで前からしか聞こえていなかった音が、劇場の全ての壁から出ているように感じました。それが照明とあいまって、舞台の臨場感を最大限に膨らませていたと思います。
やはり、ミュージカルは他の分野に比べると、ゴージャス。ということは、関係するスタッフの人数も、機材もとても多くなります。

最後になりましたが、オブザーバーは2階席からの見学でしたので、1階での見え方、聞こえ方はまた違っていたと思います。どの作品も、中劇場ではちょっと大き過ぎるという感じですが、多分いろいろな舞台技術を駆使するには向いていたのだと思います。あの恐ろしいほどの奥行きのある舞台は実際には使いませんでしたが、板の取替えのために見せていただきました。本当に贅沢な劇場です。

亜門さんのトーク・イベントと今回の研修とで、本当にいろいろ舞台を作り上げるまでの苦労はよ~~~くわかりました。とにかく、本当に時間がかかります。また、危険もとなり合わせです。それだけに、舞台技術の向上は、芸術としての高みの前に、安全性の確保という面からもしっかりとして行って欲しいと思います。今回は初めての試みだったようですが、続けていって欲しいと思います。

普段、言いたい放題なので、ちょっとお勉強して、同じ言いたい放題でも、的外れにならないようにしたいなぁ、と思っています。歌唱や演技についての技術的なお話はいろいろな場で触れることも多いのですが、舞台技術となるとなかなかその機会がありませんでした。今回はとても貴重な体験をさせて頂きました。

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