ステーション物語 第六話<o:p></o:p>
ホームはラッシュ時を過ぎ、乗客の姿も心なしか少なめとなり、駅舎全体がリラックスした雰囲気に包まれていきます。そんなほっとした空気を引き裂くように、今しも発車寸前の電車に乗ろうと、階段を駆け降りてくる男女がいます。女性の方が年嵩と見受けられます。スピーカーが「駆け込み乗車は危険でーす」と悲鳴を上げますが、女性は飛び乗ります。その瞬間無情にもドアは閉まってしまいます。しかし女性が機敏にハンドバッグを閉まる寸前のドアに挟みました。取り残された若い男が必死にドアをこじ開けようとします。駅員が駆けつけ車掌に合図を送りますが、ドアはバッグが引き入れられるギリギリしか開かずにドアは閉まって、またも男は取り残されてしまいました。電車は何事もなかったように動き出します。駅員と男の前でにこやかに笑みを浮べ挙手の礼をする車掌。そして冷ややかに電車は通過して行きます。<o:p></o:p>
「こんなってありかよ」男が駅員に怒りをぶつけます。「僕は連れだぞ、僕が乗れるぐらいドア開けたっていいじゃないか」どうやら駅近辺の居酒屋あたりで飲食してきたらしく、酒気を帯びての怒気には凄まじいものがありました。駅員は一歩身を引いて弁解します。「電車が定刻より大分遅れているのです。次の電車で下車駅でお会いになって下さい。待っててくれますよ」「何言ってるんだ、行き先まだ決めてないんだぞ、乗ってから行き先相談しようと言ってたんだ。どうしてくれるんだ!」駅員は冷静に応対します。「そうおっしゃられても困ります。直ぐに次の電車が参りますから」「だからどこで降りるか決めてないって言ってるだろう。わざと僕を乗せないように意地悪したんだ」駅員は悲鳴に近い声を上げます。「そんなあ、そんなこと出来るわけないじゃないですか」「いや、そうに決まってる!絶対そうに決まってる、あの車掌め、嬉しそうにひとの顔見てにやにやしながら通り過ぎて行きやがった。お前も車掌と示し合わせて意地悪したんだ。自分たちが女に持てないもんで、ひとのことやっかんで、陰険だぞ!」<o:p></o:p>
駅員は思わず口をとんがらせます。「それはないっすよお客様。第一この駅近辺にだってホテルなんかいくらでもあるんだし、わざわざ電車に乗ってまで行かなくたっていいじゃ…」「あれっ、おい、変な言い方するじゃないか。僕たちがホテルに行くって決めてかかってる。僕たちが不倫してるみたいな言い方じゃないか!」駅員、余計なこと言ってしまったといった慌てようで男をとりなします。「そういう意味ではありません。なっ、仲がよろしくって結構だってことを言ってるわけです。やさしそうなお方でしたから、なんとか連絡をつけてくれますよ」<o:p></o:p>
駅員しきりと頭を下げるなか、いきなり一人の乗客が登場します。<o:p></o:p>
「はははっ、語るに落ちるとはこのことだな」「なんだよあんた横から」「まあまあ、ところで駅員さん、お二人は不倫なんかしておらんよ」「すみません、つい口が滑って申し訳ありません」「そうじゃない、不倫とは或る人に言わせると美人が浮気するのを言うのであって、あの手の容貌(かお)では不倫とは言わん。不貞を働くと言うのだそうだ」「何だよ、不貞を働くって」男は乗客に怒りをむけます。これ幸いと駅員は急いで二人から逃げ出しました。<o:p></o:p>
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乗客は斜に構えて男から離れながら言いました。<o:p></o:p>
「えっ、あっそう、わかんない、君の連れは煙草吸って鼻から煙出してるのが似合いの顔だって言ってるんだ」。<o:p></o:p>
第六話終わり<o:p></o:p>
何気なく通り過ぎる日常の風景から、一枚を取り出し、それに命を吹き込み、動画に仕立てる表現力、見事です。
毎日駅ではありそうな出来事です。しかしすぐ忘れられてしまい 人の脳裏には残りません。それをひとつのストーリーに仕上げてしまう うたさんは すごい~~。何時の間にか うたさんになってしまいました。山の手線沿線多そうですね~。
ところが、その二、三前の駅から乗ってくる友人二人と、「後ろから三両目に乗る」と約束してあったのに、二人の姿がない。「これ、33分の電車よね。」と呟くように言って腕時計を見た。5、6分早い。
約束したのは、その後に来る電車だったのだ。
まだ、ドアは開いている。すぐ、降りればいいものを、どまぐれている間にドアが閉まった。次の瞬間、もう一度、ドアが開いた。飛び降りた。駆け込み降車をして、駅員さんに怒られるのではないかと、胸がどきどきした。
予報では北海道は晴天と言ってましたが、海は時化て海鳴りが凄いとは、やはり海は繋がっているのですね。海鳴りも時化も見たり聞いたりしたことがありません。無責任な言い方ですが豪快な見ものでしょぅね。
こんにちは、うたさんで結構ですよ。
電車に乗ってました。閉まる扉に男と女が駆けつけ、女だけが乗り遅れ差し出すバッグが挟まれました。ドアがちっと開きバッグは女の手に、電車は発車です。昔々神戸での出来事でした。
こんにちは。電車を降りたとき、階段を駆け降りて来る人がいますと、結果はいかにと振り返って見てます。ヒマですね。乗り遅れると10人が10人照れくさそうに笑います。普通なら怒って当たり前の場面なのですが、不思議な心理です。