自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

平和への不安を煽るNHK報道部

2013-09-23 14:18:56 | NHK

NHKスペシャル「戦後68年 いま、"ニッポンの平和"を考える」を考える

問題提起  (平和への不安が高まる中、ニッポンの平和をどう守るのか)  前篇(35分)

司会A「世論調査で日本が戦争や紛争に巻き込まれたり、他の国から侵略を受けたりする危険があると答えた人は69%に上りました。」 : NHK世論調査(全国20歳以上、男女2500人。うち、1503人が回答)
自衛隊行進の映像、
司会A「日本の平和を守るために、防衛力の強化が必要だと考える人も増えています。」

岩田「戦後60年間、我々が平和であったのは平和憲法があったからではなくて、自衛隊が一生懸命働いていただいたこと、それと強固な日米同盟があった、要するに軍事力があった、ここに尽きていると思います。」

岡本「外交が大事なのはもちろんですね。だけど防衛と外交は二者選択ではなくて、まず外交でやるべきですよね。危なくなった時のセーフティーネットとして防衛力がある、抑止力がある。抑止力とは何かというと、端的に言えば、例えば、横須賀に置いてあるアメリカの第7艦隊ですよ。あれはジョージ・ワシントンという航空母艦を含めて全体が3~4兆円のお金がかかっているんですね。もっとかも知れません。そういう巨額の金を投じた艦隊が日本の首都のすぐ隣に置いてあるということが、周辺諸国に対して自分たちは日本を守るぞという強い決意になっている。だから、仮にどっかの国が日本の自衛隊は怖くないと言って来たって、アメリカと戦争する、アメリカから報復されるのはいやだからどこも日本にチョッカイをださない。そういうメカニズムがある。」

この番組への疑問

 「平和への不安が高まる」ことを前提に、「どう平和を守るか」と問うことは、軍事力の強化を望む答えを求めているようなもの。最近の原発事故の報道も真実に迫るのではなく政府の広報機関に堕していたが、この番組はそれをさらに逸脱して軍国主義化を煽った戦前と同じNHKではないかと思いました。

 ここでは、世論調査の扱い方、討論参加者の人選(シナリオと番組の編集)、世論を代弁していない市民討論等の疑問点を指摘したいと思います。

1.世論調査の扱い方

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 「日本が戦争や紛争に巻き込まれたり他の国から侵略を受けたりする危険」があると答えた69%はマスメディアの報道の影響を受けたものであり、「安全保障や外交に関して日本人の意識は変わってきている」と答えた65%とほぼ一致しています。むしろ危険と思っても、安全保障や外交に関して日本人の意識が変わったと思う人は4%少ないと読むこともできます。

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  自衛隊の防衛力についても、増強したほうが良いと答えたのが24.8%に増加していることを強調していますが、今の程度で良いが60%あり、平成21年度の65%より5%減少しているにすぎません。危機感を煽っても自衛隊の防衛力は60%が今の程度で良いと答えているのです。
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 また、日本と中国の人の中で、相手国に「良くない印象」を持っている人が2013年に90%を超えたとしていまが、2010年の中国は56%と日本の72%より低く、2012年までは日本より低かったものが、2013年に93%と日本の90%より高くなったものであり、日本の尖閣諸島の国有化が中国を刺激したものであり、中国の脅威が増していると言うのは、むしろ日本政府に問題があります。

 与那国島の町長選挙の先頭に自民党の小池議員がいて、菅官房長官が「自衛隊の与那国配備というのは、私たちは必要だと考えております。」と断言している政府の前のめりな姿は、尖閣諸島の問題は政府の責任が大きいことを示していると言えましょう。

2.報道の基本を踏み外した取材

 我々には尖閣諸島周辺で何が起こっているのか分かりません。それを正確に伝えるのが報道の基本です。この番組では、「島では漁業関係者の間で、自衛隊の配備を望む声が高まっていました。去年、日本が尖閣諸島を国有化して以来、中国の監視船と頻繁に遭遇するようになったからです。」 というナレーションに続いて漁民Aが仲間から聞いた話「尖閣に行っている仲間がいるんで、すごいと言っていましたね。日本の漁船を見ると追いかけ回してくるって。」を紹介しています。まず、聞いた話ではなく直接経験した本人を登場させるべきですし、それよりも。「中国の監視船が日本の漁船を追い回すことはない」という情報もありますので、中国の監視船が日本の漁船を追い回している映像を紹介するのが報道の鉄則です。また、漁業権で中国と台湾を分断するために、地元の漁業者に相談することもなく『日台漁業取り決め』が締結されて以降、台湾の漁船が急増しているニュースは無視しています。

 尖閣諸島の歴史的問題については、岡田充著『尖閣問題―領土ナショナリズムの魔力』が、最も信頼がおける情報だと思いますが、これを推薦しているブログでは、『NHKなど自らが手を染めた「国民の右傾化」を白々しく「世の中が右傾化していますね」などと他人事のように話す無責任極まりないオトボケぶり。自らの無能さを隠すための属米外務官僚らの世論誘導そのまま垂れ流す始末。いま、マスメディアを中心とし歴史的事実を捻じ曲げようと行われているのは、心理学的にあるそうだが、事実でないことでも延々と言い続けると、それがあたかも「事実」であるかのような錯覚に陥るマインドコントロールである。国民を洗脳するための「ウソ」を言い続ける』と論じています。

3.討論参加者の人選(シナリオと番組の編集)

 司会者は論議の冒頭で「今夜は生放送で議論していきます。」と言っていますが、自由な論議を時間内にまとめることはできません。しかも報道と市民討論を挟んでの論議であり、NHKが政府の広報機関であるという立場からも、政府の政策に直接異議申し出ないよう討論者の選抜を含めて、シナリオが作成され編集されたと考える方が自然でしょう。

 例えば、岩田氏や岡本氏の発言は明瞭にして論理不在の感がありますが、半藤、伊勢崎氏はこれに明確な反論を与えず、論理あれども不明瞭な印象を与えています。このことから改憲に疑問を抱く若手の宇野氏から、「保守の人は明確な回答を持っている。改憲して、国軍を作って、重武装化してという回答を持っている。これに対抗するリベラルの人達の処方箋が全然ない。とりあえず反対とかで具体案がない。その差が世論調査にも出ているのではないか」 と言わせる結果となったように思います。「保守は改憲と国軍の重武装化という明確な回答を持つ」けれども、それは手段の明確化であり安全の解決には決してなりません。しかも、手段は「絶対に戦争はしない」ために選択すべきです

 NHKの報道や今回の論議のシナリオの危険性はここにあります。安全の解決に関する個々の論点につきましては、後半の論議で検証したいと思います。

4.世論を代弁していない市民討論

 市民討論は18名で実施されています。世論調査では自衛力を増強した方が良いのは25%であったので、世論を代弁するなら4~5名が自衛力増強派で残りはこのままで良いか縮小派となるはずです。しかし、市民討論の結果「国の守りを強化すべきかどうか議論が分かれた」とし、「意識の変化をどう考えるか」から議論に入っています。このシナリオで議論を誘導することは、世論を誘導こそすれ、世論を代弁するものではありません。

 日本の世論の実態はどこにあるのでしょうか。不安を煽れば強くありたいと願うでしょう。しかし、銃で身を守るアメリカ社会は市民が市民を殺し、他国からのテロ攻撃の対象とされています。軍事力を行使して強くなろうとすることが、他国に嫌われこそすれ安全を守ることにはつながっていないことが、アメリカの悩みであり、平和を考える確実な第一歩ではないでしょうか。


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1 コメント

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マスコミの世論調査なんてまともに受けちゃいけま... (山形)
2013-10-02 08:02:05
マスコミの世論調査なんてまともに受けちゃいけませんね。
あんなのは使い古された手法で、あくまで「国民誘導」の手段です。

しかし、NHKまでがねえ…。

まあ、昨日の韓国の大規模軍事パレードや最近の装備調達、前日のパククネ大統領の日本批判などを見ていると、彼の国は何処と戦いたいんだ?とも。

私は別に嫌韓でも嫌中でもありませんし「在特会」などのヘイトスピーチにはウンザリしてますが、
軍事ってのは「意思ではなく能力に備えよ」が大原則ですからねえ…で、大抵はどちらも壮大な無駄遣いに終わりますが。

いずれにしても、地勢は動かしようがありませんから。
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