経済はもともと「世のため人のため」にあった。経世済民という言葉が中国(隋?)から入って来たとしても、その考え方は縄文時代から八百万神を敬い他者を大切にした日本人に根付いていたと思う。江戸時代末期に「今 世間に貨殖興利を以て經濟と云ふは謬なり」という一文が残されているので、少なくとも江戸時代までは「世のため人のため」の経済は常識であった。
参考:現実の政策は「経済学」でなく「経世済民の学」にこそ基づくべし
経済に「心」を大切にされた経済学者宇沢弘文先生は、「豊かさというのは本来は人間の心が豊かに、一人ひとりの人間が人間らしく生き生きと生きて行くことができるような状態を『豊か』という。20世紀を通じて追及してきている豊かさは『まやかしの豊かさ』だった」と言われている。
参考:自然とお金と個人と組織~何を基準に考えるか
ところが、「美しい国日本」を賛美するはずの安倍首相(経済政策ブレーン、浜田宏一内閣官房参与)は、「お金が富裕層から庶民に滴り落ちる(トリクルダウン)」と恥ずかしくて考えることも口が裂けても言えない「アベノミクス」を経済政策の柱にしている。しかも、浜田氏は内閣官房参与の立場にいながら「アベノミクスに示された金融政策と財政政策は『A』と『B』と評価し、構造改革は官僚の強い権益に属するので評価は『E』で、「ABE」だと冗談半ばに言う。一方で「アベノミクス」の批判に対しては、「よく現実は違うんだ。学者の考えていることは空論だと強く言われるが、逆に言うと経済学200年以上の歴史を全く無視して自分の考え方を述べておられる、という点で、経済は分かっているかもしれないが、経済学を分からないで喋っておられると思うぐらいおかしい」とまで言う支離滅裂な学者だ。
参考:地方をどう創生するのか~アベノミクスと日本経済の未来①
アメリカは1%の富裕層が政治も経済も握っている。リーマンショックは、アメリカの経済が「誰かが勝てば、誰かが負ける」という「ゼロサムゲーム」に躍らせ、勝ち組となるために「ハゲタカ」が手段を選ばず「金融工学」で利益を貪ったことを白日の下にさらした。
何時でも何処でも誰でも、それが成功している時は常識となり皆が同じ方向に走る。しかし、人間の素晴らしいのは何処かに人とは違ったことを考えてる人がいることだ。そして成功だと思ってきたことに疑問が生じたときに、新しい方向を考え出す力があることだ。
金融工学がゼロサムゲームから「世のため人のため」の経済を考え出した。そのことを教えてくれる素晴らしい番組を紹介したい。
BS1スペシャル「マネーの狂わせた世界で 金融工学者の苦悩と挑戦」
マネーゲームからソーシャルインパクトへ 金融工学の新たな段階
ソーシャルインパクトの仕組み~経世経民
ギリシャ危機を救う金融工学へ~お金は経済を動かす
ソーシャルインパクトの夢の拡大~気候変動への備え
江戸初期の「明暦の大火」で江戸の都市改造が行われた。その時に2代目将軍秀忠の腹違いの子(3代将軍家光の弟)、保科正之は民を大切にし、軍事的要塞のシンボルであった天守閣の再建を取りやめ、隅田川には初めて両国橋を掛けて民の安全を優先した。また広い道路とし、開放された広場には商人が市を開いた。
参考:「明暦の大火から江戸を復興させた名君・保科正之 ~今日の震災復興にも教訓~」
NHK BS歴史館 今いてほしい!? 日本を変えたリーダーたち②会津藩主・保科正之
最も尊敬できる日本人~戦争のない民を大切にする政治(動画)
会津藩主~減税、社倉(飢饉対策)、福祉(医療、年金)・出生の秘密(動画)
母の愛、育ての愛、民の生活と多くの家臣を知る。島原の乱、油井正雪の乱
武断から文治へ~性善説と変革への自信・次世代を育てる、地位ある者は学べ(動画)
日本では文明開化の明治維新を高く評価し、勤皇の志士が好きである。しかし、明治は権威として天皇を利用し、軍国主義と侵略への道を歩んだ点で、私は戦争をしなかった徳川幕府を評価している。
参考:戦争(明治政府)と平和(徳川幕府)~多様な視点と国民を守る憲法
260年も戦争をしないで江戸を世界一繁栄する大都市に育てたのは保科正之の業績であった。しかし、歴史は勝者によってつくられる。明治政府は彼の業績を評価せず、彼の名前は世間に知られることはなかった。将軍の子として生まれながら、縄文人の暮らしを想像させる高遠の盆地で、母の愛と育ての愛に恵まれて民の生活を知りながら、他者への愛で利他的に生きることが民を幸せにするという性善説が育ち、現場で学んだことが時代を変革する自信となった。
民が安心する日本とするために、経済と政治を劣化させている地位ある人たちに言いたい。「高度成長時代を現実の目標だとは思わずに、保科正之のことを学べ!」 せめて、著作権よりも大切だとここに紹介した動画ぐらいは観て欲しい。
安倍政権は国民の命を守ると嘘うそぶいて沖縄県民の願いを聴かず、「抑止力」だとアメリカとの軍事同盟と辺野古への基地移転を強引に進めている。原発事故がありながらその対策が進まないうちに、安全には万全を期しているとして原子力発電を有力な電力として推進し、海外に売りまくる。経済政策は富裕層から庶民に富が滴り落ちるという「アベノミクス」で、お金のことばかり考えて、経済は民の安心と活力により繁栄することを忘れてしまっている。
貧困や地球温暖化への対策として、金融工学さえソーシャルインパクトを真剣に考えている。私はお金に関しては縁も能力もないけれど、シャッター街と化した商店街と過疎化で荒れていく里山を身近にして、何とかしたいと「自然とデザイン研究所」を立ち上げた。
「保育所から高校まで地域でつながり、行政も農協も商工会議所も生協も地域とつながって、大学は地域を越えてイノベーションを求め、新しいシステムをつくる時代だ。」 今まではぶつぶつ呟いていたが、今は叫びたい。皆で出来ることでつながって、安心できる社会をつくろうよ!
初稿 2016.3.12
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