フィクションのチカラ(中央大学教授・宇佐美毅のブログ)
テレビドラマ・映画・演劇など、フィクション世界への感想や、その他日々考えたことなどを掲載しています。
 



 1~3月期のテレビドラマもそろそろ終盤に入るところです。近年テレビドラマは視聴率がとりにくくなっているのですが、今期は、「華麗なる一族」「花より男子2」「ハケンの品格」の3本が常時高視聴率をあげています。
          
 中でもキムタクが主人公を演じる「華麗なる一族」(もちろん山崎豊子の小説のドラマ化作品)は初回から30%近い視聴率をとり、その後少しずつ下がってはいますが、最新の調査でも20%を越える人気番組になっています。
 見ている人のかなりの割合が「キムタクさえ出てればドラマはどうでもいい」「キムタクのスーツ姿がたまらない」という人かもしれません。実際に、原作と違って、キムタク演じる鉄平が主人公となっているところからも、「キムタクのためのドラマ」であることは明らかです。ただ、「他のドラマとは違う」という大きな売りもあるように思います。ストーリーは、企業の食い合いあり、出生の秘密あり、愛憎のもつれあり、といった昼間のドラマみたいなところがありますが、何が違うかと言えば、やはり「豪華さ」でしょう。セットや映像にかなりお金をかけているらしく、テレビドラマにありがちな安っぽさがありません。加えて豪華キャスト。有名俳優がこれでもかというくらいに出てきます。その点で言えば、惜しみなく豪華俳優陣と制作費を投入した壮大な昼ドラといったところでしょうか。
          
 「花より男子2」(ちなみに「ハナヨリダンゴ・リターンズ」と読みます)は、神尾葉子の人気コミックをドラマ化した作品の続編で、台湾でもドラマ化されています。大金持ちの御曹司4人組・F4(エフフォー)と平凡な主人公・つくしの恋愛が中心に描かれた少女マンガチックなストーリーで、少女向けロマンチックコメディーということころでしょうか。たいへんな人気になったのもよくわかります。
 ただ、私はこのドラマ、ちょっと苦手です。「大金持ちの御曹司と平凡な少女の恋」というのはよくあるテーマで、要するに「白馬の王子様に見出されたわたし」という構図です。そのことをジェンダー論的に論じるのは私のスタイルではないのでやめておきますが、この作品のF4のわがままぶりにはいささかうんざりするところがあります。
 彼らの通う学校は彼らに牛耳られて、彼らの手先が逆らう者をリンチのようにいじめています。それに逆らった主人公のつくしが逆にF4に好かれるという話なのですが、気まぐれな御曹司たちは従順な女に飽きて気の強い女が気にいった、というふうにしか見られませんでした。ですから、どんなに面白く作っていても、私には独裁者に気に入られた気の強い喜び組の女の子の話に見えてしまい、どうもドラマを楽しむことができません。まあ、次第にF4も大人になって傍若無人ぶりもおさまってきているので、そんなにかたいことを言う必要もないのだとは思いますが。
          
 その点、今回のドラマの中で面白く見られるのは「ハケンの品格」でした。主人公は派遣社員の大前春子(篠原涼子)。春子は、仕事は何でも驚くほどできる上に、フラメンコができ、助産士の資格も大型重機運転の資格も持ち、剣道4段でマグロの解体もでき……という信じられないようなスーパー派遣社員。という設定からしてもうすでにあり得ないのですが、そういう春子だからこそどこの社員にもならず、残業も人間関係も一切排除して働くという生き方が面白おかしく(かつシニカルに)描かれています。
 こんな人いるわけない、ということさえ割り切ってしまえばあとは楽しく見られるドラマでした。まったくの素人の派遣社員(加藤あい)、コンピュータ得意の派遣社員、派遣社員に理解のある正社員、差別的な正社員、などなど……いろいろなタイプの社員が出てくるところなども、かなりよくできていると思いました。加えて篠原涼子の怪演も見ものです。
          
 視聴率としてはそれほどとれていないものの、実はなかなか面白いのが「ヒミツの花園」と「今週、妻が浮気します」の2本。
 「ヒミツの花園」は、人気少女コミックの覆面女性作者が実は男性4兄弟だったという面白い設定で、その担当になった新米編集者(釈由美子)とのやりとりを描いたコメディーです。随所に笑いの小ネタが効いていて、かなり楽しめます。
 一方、「今週、妻が浮気します」は、Q&Aサイト(→今週妻が浮気します)に書き込まれたやりとりが元になったドラマで、主演はユースケ・サンタマリア。途中に「てんやわんやですよ~」ってクレージーケン・バンドの曲が流れてくるのですが、ユースケほど、「てんやわんや」で「もうどうしよう」ってあわてふためく様子が似合う俳優さんもいないと思います。おしゃれで仕事もできる妻に石田ゆり子を配したこととあわせて、キャスティングが大成功というのが私の感想です。
 今期のドラマでも、視聴率とドラマの善し悪しはそれほど関係ないという印象でした。もっとも、私の趣味が変わっているだけかもしれませんが……。
 
          
 そういえば一つ忘れていたのが、「ちゅらさん4」。2001年4~9月にNHKで放送された朝の連続ドラマの続々々編で、今回は前後編の2回放送でした。
 今回のドラマの中で、恵里が真理亜を後ろから抱きしめて「大丈夫だよ」というところが、このドラマの性格を正にあらわしていると言っていいでしょう。そういう「癒し」と「励まし」のドラマです。
 これはもう、ドラマとしての出来不出来を超越している、としか言いようがありません。「朝になったら歯を磨く」とか、「正月になったら餅を食う」というのと同じで、ときどきまたあの古波蔵家や一風館の人たちに会わないといられない……そういうドラマと理解するべきでしょう。もうこうなったら、どこまでもどこまでも続編を作り続けてほしいものです。



コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


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コメント
 
 
 
忘れてませんか? (はら)
2007-03-11 03:26:36
NHK土曜のハゲタカを…
 
 
 
はらさん、すみません (宇佐美)
2007-03-11 18:44:30
 はらさん、「ハゲタカ」を抜かしてすみませんでした。
 他にも「東京タワー」「きらきら研修医」「エラいところに嫁いでしまった!」「拝啓、父上様」「演歌の女王」などがあるのですが、さすがに全部見きれなかったので、今回コメントは控えさせていただきました。
 「エラいところ~」の谷原章介のイメチェンぶりだけはなかなか笑えましたが。
 
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