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< 漱石悶々 夏目漱石最後の恋 京都祇園の二十九日 >(ドラマ視聴)

2017年03月07日 | ドラマ。
いまさら晩年の惚れたはれたをさらされるとは思ってなかっただろうなー、とは家人の弁。
没後百年でありますから、今年は夏目夏目と明け暮れるかな。

豊川悦司が見違えた。線が鋭すぎるほど鋭い容貌だったのに、ほっぺたにだいぶ肉がつきましたな。
あれは役作りなのか?加齢による脂肪の蓄積なのか?いずれにせよ今回の漱石には合っていた。

わたしはテンポの悪いドラマは好きではなく、これも最初はどっちかというと間が長い、テンポの悪いヤツかなーと
思ったのだが、全く退屈することなく1時間半見られた。これは監督のオテガラだなー。

根底に流れるコミカル感が良かったんだと思う。このほぼ何にもない話をシリアスにしたら退屈しただろうな。
夏目漱石の恋でコミカルにしようと思うなんて脚本家エライ。藤本有紀。「ちかえもん」の人。
その他の作品を見たことはないけど、……あ、「花より男子」は見たな。
今後の活躍を期待したいです。


しっとりした京都の雰囲気が良かったですねえ。
ああいうところの旅館で何泊か逗留(やっぱりここは逗留でしょう)してみたいと思った。
和室で。雨の降る日はゴロンと寝転がり。
……あかんな。貧乏性なわたしは観光地を歩き倒す旅行スタイルだ。宿でのんびりなんて性に合わん。

でも奥さんが来た時は、しみじみ漱石に同情した。
日常から逃れたいがゆえの旅なのに。日常の最たるものである奥さんが来たら……がっかりする。すごくがっかりする。
もう京都にいる必要なんてないくらい。
まあでも弟子の青楓にしてみれば、あの状況で呼ばないわけにもいかないだろうしなあ。

鏡子さんの「漱石のおもひで」を読んだわけではないが、あのご夫婦は気が合ったとはいいかねると思う。
漱石も扱いにくい人だったんだろうけどさ。
形而下の人と形而上の人は根本的に相いれない気がする。まあそれでうまくいくパターンもあるだろうけれども。
一つ屋根の下はつらいだろうなあ。

特に漱石的な神経の人はね。このドラマの重要なモチーフである「晴れたら、お多佳さんと、桜」のシーンは
ものすごくよく描けていて、こうだからアンタは胃潰瘍なんかで死んでしまうんだよ、金之助。と言いたくなった。
あんな感じの日常だったろう。妻のすることなすこと気に障ったろう。
気に障ったことをいつまでもいつまでも反芻していて、それで胃壁が溶けただろう。
何しろ居職だから。気分の切り替えがなかなかできないんですよね。考えることが仕事なんだし。

ちらっとネット上で見て、詳細はわからないんだけども、漱石には息子が2人いて
(「猫」に三姉妹しか出てこないので女ばかりだと思っていた)
下の息子の方が、漱石の家庭内暴力について書いていた。
なので、漱石偉人化には不満があるとか。

まあそうだよなあ、どんな偉人でも家に帰ればただの人。
ましてや精神的にバランスのとれた大人とも言いかねる漱石ならば。
困った父、いやな父だったろうと思う。
家庭内で聖人だった森鴎外が稀有な例外なんや。


わたしは漱石好きなんだけどね。かなり好きな方なんだけどね。まあ円満な人格とはいいかねたとは思う。
弟子には慕われたようだけど、それと家族に対する態度はかなり違うだろうと思うね。
人間のアイソは有限で、それが外側に向くか内側に向くかの違いであろうと思っている。
ワンマン社長がすごく身内に甘いとか、接客のプロが家族には雑とか、いくらでもありそうでしょ。


面白いドラマでした。録画を消すに忍びず、つい保留ファイルに入れてある。
今後も折に触れて再放送はするだろうけれども。



















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