ドラクエ9☆天使ツアーズ

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北風と太陽2

2020年03月21日 | ツアーズ SS
「なぜあの二人が、これを作成せねばならなかったか、を聞いてくださらんか」

それが御館様の言い分であるならば。
面会を終え一人私室に戻ったオシエルは、手元にある用紙を開き、その内容を吟味する。
礼儀作法課題達成報酬一覧、と題されたそれは、今回の騒動の最たるもの。
ヒイロが提案し、ミカヅキが作成した、と聞いた。
確かに、寸分の狂いもなく全く同じ字形を書くミカヅキの筆跡だ。
彼の精密な美しさへの追求は、こんな所にも現れている。今なら、それが苦い。オシエルが何も持たない子供に完璧な作法を身につけさせたのではない。完璧さを備えた子供がオシエルの望んだ通りに成長しただけの事だ。

(そう考えてしまえば、いっそやり直す機会を与えられた事に感謝の意もあろうかというもの)

苦さを噛みしめながら、オシエルの目は表面的な美しさからその内容へと引き込まれていく。

確かに、よく練られている、と思った。
課題の一つ一つを作成したのはオシエルであったが、その課題の内容を理解し、それを達成する事で得る報酬(この場合は玩具である将棋の駒だが)を考えたのはミカヅキだ。
そして気づく。
単純に、オシエルの意図した課題の内容を理解しているだけではない。そこに、ヒイロの特性も踏まえ、ヒイロという人間が苦手とする分野、得意とする分野も熟知している様に見受けられる。そればかりか、どの課題を達成すれば自ずと他の課題の達成度に貢献できるのかということまでも考慮したのに違いない。
(これほどまでに完成度が高いとは)
一見すればただの遊びだ。
だが、その内容を確かめミカヅキがこれを作成した規範に思考を巡らせれば、「指導する立場から礼儀作法を考えたい」といったあの訴えも、あながち体裁を整えるためだけのものではありはしないのではないか。
そんな思いに囚われながら確認した報酬の内容も、課題達成度に引けを取る事なく、塾考されている。
単純に、駒の格付け通りに配付されるのではないその不規則性に目を引かれた。
将棋盤の役割は元来実際の戦場での軍議に使用されていたものだ。歩兵から将軍まで、駒の役割は多い。それを段階的に与えるという事がどういう意図であるか、ミカヅキの立場を考えれば自ずと知れるというもの。
(彼君は主人然として、臣下に報酬を下される武勲を模倣している?)
ただ、そう言い切るには所々格付けがおかしい。何度も達成の進捗具合を確認しながら駒の増減を頭に入れ、それが攻めの陣、守りの陣を形成できる格付けにもなっていることがわかる。
これは、オシエルが将棋を嗜むからこそ言えることではあったが。
(成程。配付基準を、実際の武勲か、将棋の陣形かに絞りきることができなかったのは彼君の拙さか)
二人の子供が作成した図に向き合い、去来するのは従兄弟たちとの学生生活。
マナーコレットの本家筋である従兄弟たちは快活で奔放だった。文武両道、を掲げていたマナーコレットの家訓に沿わず、学芸を厭い、武芸に明け暮れる。逆に武芸を苦手としているオシエルは度々彼らに振り回され、無茶に付き合わされては要領悪く一人謹慎処分を食らったりしていたものだ。
「そんなに優秀な跡目が欲しければ、オシエルにくれてやるがよろしかろう」
従兄弟らのその言葉に当て付ける様に大叔父や叔父が、レネーゼ最高顧問という跡目をオシエルに決めたのではないか。若き日の自分は、それを受けるか否か、悩みに悩んで従兄弟たちに想いを打ち明けた。しかし根っから明朗快活な彼らはオシエルの杞憂を吹き飛ばした。
「俺たちは生まれた家を間違えたな」
俺の親は文芸に励めと俺たちを叱責する。お前の親は、武芸に励めとお前を叱責する。いっそ逆なら円満解決、それを分からせてやっただけの事で、親たちはそれをやっと解っただけの話だ。
だからお前は進め。認められ求められる道が敷かれた。それはお前の功績だ。幸運はそれに花を添えた程度だろうよ。
それが従兄弟たちからの餞。
日々に忙殺され、何十年と思い出すこともなかった言葉だ。
彼らは今現在、マナーコレット家としてレネーゼ侯爵家に支え武官としての地位で実に伸び伸びと実力を発揮している。彼らもまた、己の功績でそれを勝ち取ったのだから何に恥じることもない、と周囲の雑音を一掃して今がある。
そんな彼らに手ほどきを受けての、オシエルの将棋の腕。
(こんなところでもまた彼らに助けられている)

好事も、悪事も、たった一人では踏み込めない。そこに友があってこそ。

それを言った老侯爵の胸の内は計り知れない。
今日会談して初めて解った。孫可愛しの一存だけでなく、オシエルにも向けられた慈愛。家に携わる全ての者たちが愛おしいという慈しみ。領地という甚大な命を抱えて、誰一人取りこぼすこなく率いていく事は、理屈ではないのだろう。
それが、好事にも悪事にもなる。
(あの二人にとっての、好事と悪事)
生まれた家を間違えたな、と笑って見せた従兄弟のくれたもの。
目の前に並べられる駒の意味。
道は敷かれた。
そして幸運はそれに花を添えるだけ。



■ ■ ■



翌日、オシエルはそれを手掛かりにミカヅキとの対話を試みた。
思えば、ヒイロという人間に「教師との信頼関係を築く様に」と注意しておきながら、なんの事はない、ミカヅキとの信頼関係も築けていなかったのではないか。
そんな思いがあったからだが。
将棋の駒を課題達成の報酬に選んだのはヒイロであるが、それを振り分けたのはミカヅキだ。
所々二人で駆け引きを行い、報酬の内容は図面と離れたところもあったというが、それでも今日までの達成度合いで向き合った。
将棋の駒、その格付け、武勲と陣形から見えるミカヅキの思考。
五歳の時より今まで見てきた彼と同じく、納得の行かないところはとことん話を詰めてくる。自分の主張も譲らないながら、こちらの言い分を吟味し対抗してくる姿勢は、普段の授業と同じ様ではあったが。
「それほどまでに仰るなら、ここまでの手持ちの駒で対戦と行きましょうか」
そう挑発すれば、ここまでの議論で熱くなっていたミカヅキもすぐさま乗った。
「望むところです」
ミカヅキと同じくオシエルも熱くなっていた事は否めない。
ミカヅキとヒイロに向き合う、と構えていた再開の初日はそんな風に使い切ってしまったのだから。
ミカヅキの作成した駒の配分を実際の盤上で再現し、初めて、将棋で対戦した結果。
なんとかギリギリでミカヅキの言い分を退けることができた。
非常に接戦ではあったため、数手のやり取りでどちらに転ぶかは分からない応酬が続いた事もあって、ミカヅキは屈辱そうではあったが。
「まいりました」
そう礼儀正しく頭を下げた。
「先生の格付け理論は正しいのだと認めます」
「いいえ、若様の武勲の解釈もなかなかにございましたよ」
と、これは負けた子供をあやすためでなく「やりあって見て初めてわかるものですね」と言えば、ミカヅキも顔をあげた。
「ああ、確かに…、そう、ですね」
そこにはもう負かされた無念さはない。新たな気づきに意表を突かれた様でもあった。
無論、オシエルも同じ。
しばし二人は無言で、その盤上に並べられた対戦の跡を見ていたが。
静かに、ミカヅキが口を開いた。
「先生に戻ってきていただいて、本当に良かったと思っています」
何より、ヒイロのために。
そう言われて、ああ、と応じかけたオシエルは再会した直後のヒイロの様子を思い返して口籠る。
彼に礼儀作法の極意を指導してきたと疑わぬ二週間余り。
それらが一切振り出しに戻ったと思わせる体たらくには言葉もない。
「…なんと申し上げましょうか、若様にはお耳の痛い事とは存じますが…」
残り二週間。
わずかな時間で彼に礼儀作法を仕込む。一月でも短いと思っていた期間がさらに半分にまで減った。それを余すことなく使い切るために、今一度、ヒイロとの話し合いを設けるつもりではあるが。
「非常に厳しい、…と言わざるを、得ないかと」
ヒイロのために、というミカヅキの言葉を裏切る様で心苦しいのは事実。
しかしミカヅキは、いいえ、とオシエルの話を遮った。
「私は先生を信頼申し上げています。その事については何の不安もありません」
そうではなく、と続けられるミカヅキの真意。
ヒイロという人間は、心底オシエルを慕っている様だったので、このままで終わるのはあまりにも申し訳ないと思った、と言う。
申し訳ないのは、ヒイロに対して。
ヒイロをこの状況に引き込んだのは自分の責任であり、それを可能な限り補佐することが義務なのだと思っていた。しかし結果として成せなかった事実は重く受け止めている。
それを打ち明けられて、自分はミカヅキという存在を自分と等しく考えていた事を自省した。
ミカヅキと自分は立場が違う。彼はあくまでも上に立つ人間としての教育でのみ生きる。
気に入ったおもちゃに難癖つけられて不貞腐れる子供ではない。
(友人を持つ事に対して、責任と義務を考えなくてはならないとは)
礼儀作法を通して接するだけだった目の前の子供は、なぜ今まで友を持たなかったのか、と言った点に気づかされ。
「軽々しく彼らを巻き込むべきではなかった、と、呵責を覚えておられるので?」
オシエルはその様に彼の胸のうちを慮って見たが、ミカヅキは、キッパリとそれを否定した。
「いえ、それはありません」
彼らにとってもこれは必要だと考えている、と言い、反省はあるが自分の至らなさや未熟さは克服する事で次に繋げる、と言い切る。
これもまた、レネーゼの教育の現れ。
「私が先生に彼の教育を一任してしまったことが問題だと思います」
オシエルを信頼しているからヒイロを預けた。ヒイロのこともまた、信頼しているから彼の自由意志に任せていた。両者が行き詰まった時に介入することが、自分の「補佐」だと考えていた甘さがあった。そんな想いを打ち明けるミカヅキの口は重い。
先ほどに、将棋の駒の格付け、武勲や褒賞の考えを主張していた時とはまるで違う。
何度か口が止まり、考えを言葉にしようとして思考し、時間をかけて想いを整理しながらの話には口を挟むことができなかった。そこにある慎重さに、手を出す事は躊躇われたのだ。教師としての自分が、教え子に対し、手を述べることができない。
おそらくこれが初めての、対話だ。
ミカヅキは明確な形あるものについて考えを述べる時には淀みなく、時には教師である自分をも言いまかすほどに達者な達弁を披露するが、あやふやに形のないものを言葉にする事は苦手とする様だった。
これもまた初めて気づかされる事。
だからこそ見守り、ただ彼の言葉に耳を傾ける。
言葉が拙いからと言って、考えが、思いが拙いとは限らない。それを見誤る事はしない。もう二度とは。
「ヒイロは感情が何よりも正しい。それを表に出す事に躊躇いも、制止される規則もない。先生が戻られた時、なりふり構わず抱きついて感謝を口にする。非常に見苦しい体を先生にはお見せしてしまいました。本当なら、この様な経緯があった後の再会では、私はそれを止めなければならなかった」
でも、とそれまで自分の胸の内にある感情を言葉に置き換えながら口にすると言う重荷を背負っていたミカヅキが顔をあげた。
真っ直ぐにオシエルをみる目には迷いがない。
「そうできるヒイロを羨ましいと思ってしまった」
その迷いのなさに驚かされる。
誇り高いレネーゼの教育よりも、ヒイロの行動に価値があると認める言葉。
それを口にする事に対する覚悟。
今一度、教え子と向き合う、と決めたのは何もオシエルだけではない。ミカヅキもまた、自分たちのしでかした一件に向き合い、己と向き合い、教師と向き合うと決した。
おそらくはミカヅキと共に、ヒイロもまた同じ覚悟を持って挑んでくるのだろう。
この高揚は言葉にし難い。
教え子の成長は、教師として何よりもの発奮だ。
オシエルの衝撃は沈黙。それをどう捉えたのか、ミカヅキは「戯言を申し上げました」と、謝意を述べつつも、「ですが本心です」と言い切った。
「おそらくは、私とヒイロの感情は同等にあると思います。それを礼儀作法という縛りが隔たりを生む。先生に抱きつくなどもってのほかです。けれど、今一度の猶予を有難くお受けさせていただきます、と告げて先生から差し伸べられた手を取る行為、それ以上の感情の行き場をどうすればいいのか、私は知りません。形式にならない、形式から外れたこれを、どう表せばいいのかが判らないので」
レネーゼの家憲。
美しく正しく、人として斯くあるべきと掲げる精神。長い歴史の中で磨き上げられた思考と動向。

それが先生を縛っているのではありませんかな

レネーゼ侯爵の言葉が、それを継ぐミカヅキの言葉に重なる。
形式に準えることのできないほどの思い。それを抱いた雛は、飛び立つ様を模索する。まだ見ぬ空を行く翼を、光をまとい風を道連れに、最も優雅に羽ばたかせる術を。美しさが弧を描く様を。

「先生と共に考えたいのです」

先生への信頼は何があろうともわずかも揺らいでおりませぬよ

「オシエル先生でなければならないのです」

だから戻ってきてくださって良かった。
戻ってくることができて良かった。
戻る事を許されて、良かった。

過ちは時に尊い。
歪さは、見るものには美しい。

それを教え子に教えられる師もまた、はるか高みを知る。

好事も、悪事も
たった一人では踏み込めぬ未知。

北風と太陽1

2020年03月18日 | ツアーズ SS
「教え子は、かつての自分だと思いなさい」
それが、師の最終の教えだった。
師は、ガンコール・マナーコレット。マナーコレット家の家長であり、自分にとっては大叔父にあたる。
彼は長年、侯爵家の礼儀作法を取り仕切る最高顧問の務めを引退し、その跡目を「姪孫のオシエルに引き継がせる」と宣言したのだ。
威厳ある家長の一言は絶対。
オシエルは三十半ばにして、直系の叔父や従兄弟らを押し除けてその位格を継いだ。
その時から十年余り、レネーゼ侯爵家の礼儀作法に関わる全ての教育を担い、信頼と実績を築き上げてきたと自負している。
その誇りを支えるものはやはり、正統後継者の専任教師、という肩書きに他ならない。
オシエルは、レネーゼの後継者、ミカヅキが僅か五歳の時より彼の礼儀作法の教師としての成果を上げてきた。
幼く拙い時分から成長する過程においてわずかも乱れる事なく、レネーゼの家憲にあるが如く美しい礼儀と研ぎ澄まされた作法を身につけたミカヅキを誰もが称賛する。その称賛は等しくオシエルの元へも向けられる。
ミカヅキが認められれば認められるほど、オシエルの教師としての地位は盤石となって行ったのだ。

(だがそれは、自分の誤想だった)

オシエルは残酷な現実を突きつけられ、己の深淵に目を向ける。


■ ■ ■


レネーゼの正当後継者、ミカヅキはオシエルにとって、初めての専属となる生徒だった。
それまでレネーゼにあって多くの立場の人間に礼儀作法を説き、指導を行ってきていたが、専任顧問を継いだと同時に、正当後継者の礼儀作法の教育係をも任された。
これほどの大役を同時に頂く事も、また未成年の、それも学校へも上がっていない生徒を指導する事も初めての事であった為に、狼狽と困惑は計り知れないものであったが。
オシエルの不安を他所に、ミカヅキは優秀な生徒だった。

(そうだ。思えば、彼の君は初めから優秀であった)

ミカヅキはわずか5歳にして、オシエルの指導をよく理解した。理解した上で納得がいかぬ所は物怖じせず指摘してくる。それにつきあい問答し、礼儀作法の真髄とは何であるのかと考え抜く時間は、あの頃のオシエルにとって全く何ものにも変えがたい研鑽の積み重ねであった。
その研鑽は時と共に極限を求め、結果、ミカヅキは、レネーゼの家憲を熟知し、礼儀とは、作法とはこうあるべき、というオシエルの理想を寸分違える事なく体現した存在となった。

(それは、己の手腕などではなかった)

ミカヅキは、オシエルの理想ではない。
過ちも犯せば、興味本位で道をはずれもする。己の意思で行動し、その結果としてオシエルの意に添わぬ事態をも引き起こす。
そんな当たり前のことを考えた事もなかった自分に気づかされる。
確かに自分は、指導に置ける場と公式の場での振る舞いでしか、ミカヅキという存在を知り得ない。
時に耳にする彼の孤立した噂など、ミカヅキの身につけた究極の美意識の前では然もありなん、とまで悦に入っていた事は否めない。
それほどまでに、完璧だった。完璧であればあるほど良いと思っていた。
究極の美意識の完全体、それを目指し、追求した末の齟齬などは些細な事だ。なぜならば、オシエル・マナーコレットは礼儀作法の教師であるが故に。
礼儀作法より他の分野においてのミカヅキの教育には任を持たないが故に。

「あの子を一人の少年として見てやってくれませんか」

その様に老侯爵に言われ、オシエルは自分の中に潜む愚かさを見たのだ。
レネーゼ最高峰と謳われた教育は、その美しさの影に、人一人の人間の歪さを隠してしまったのか。



■ ■ ■



ミカヅキの友人に上流社会の礼儀作法を身につけさせる事。
期間はおよそ一月。
それを命じられた事は、さほど重荷だとは感じなかった。
オシエルはレネーゼの専任教師ではあるから、レネーゼに関わるいかなる人材の教育にも携わる。地位、部署、年齢のいかほどにも合わせて指導要領を作成し、他の教師に授業を任せる事もあれば、自ら受け持つ事もある。
要請があれば城の外にも出向く。貴族らの家に招かれ、子息たちが通う学園関係にも招かれる。
最高顧問としての多忙な十数年の実績が、この風変わりな要請であっても、オシエルを動じさせないものとなっていた。
侯爵家ではなく城下にある別宅での授業を希望、というのもミカヅキ本人の意向であり、それを許されるほどには、侯爵家の当主である御館様に目をかけられているのだろう。

「御館様は、御子息を亡くされてから怯懦になられた様だ」

暗に、孫には甘い、という非難めいた嘆きが時折囁かれているのも承知。
だから、ミカヅキが友人の教育場に同席する為に別宅を選んだ事も、甘やかされているが故の増長だと割り切る事ができた。
気に入りのおもちゃに大人から難癖つけられるのが我慢ならないのは、子供なら誰しも経験のある事だ。
ミカヅキにもそういった一面があったという事は多少の驚きではあったものの、注意すべきほどの事ではないと受け流し、館に赴いたのだ。
果たしてそこで、オシエルの想定通り、ミカヅキからは授業に同席したいとの申し出があり。
想定通りであったから、というのもあるが、同席する理由として「指導する立場から礼儀作法を考えたい」という主張には、やや興味を惹かれ、全面的にミカヅキの要求を受け入れた。
それは子供の、己の意を通す為に体裁を整えたばかりの主張、である事も解ってはいたのだ。解っていてなお、「さすがは美意識を極めさせただけはある」「体裁の整え方も申し分なく見事」と満悦してしまった。

(そこに傲りはなかったか)

あの日から今までを詳細に思い起こしての、自問自答。
まさか、オシエルに下された命は半月ほどで崩壊を迎えた。
人一人に礼儀作法を仕込むことなど、この自分にとっては容易い。究極の美を完成させた今、迷いも、惑いもあり得ない。
あり得ないはずのことが起こった、その始まりはなんであったのかと問われれば、傲りとしか言いようがない。
ミカヅキと、その友人であるヒイロは、あろうことか授業をゲームに準え、教師であるオシエルに秘匿して報酬のやり取りを行なっていた。
そんな愚行を、正統後継者の立場ともあろう人物に許してしまったのは、おそらくは教師であるオシエルの怠慢。

(怠慢である、と、今なら言える)

教え子二人の動向を、しっかりと見ていなかった。
一人は、友という立場を利用している現状を、利己心ではないかとの、迷い。
一人は、友という関係に利己は生まれるはずがないとの、惑い。

「なぜあの二人がこれを、作成せねばならなかったか、を聞いてやってくださらんか」

オシエルが教え子二人の暴挙を報告しに行ったその日に、御館様との面会が通った。
これは異例の速さだ。
オシエルとしては、まず我が師へ事の次第を報告し、この先の助言をいただくつもりでいたのだが。
顧問の座を引退し、今は政に関わらない立場でご意見番として御館様の側支えをしているオシエルの師、ガンコールは「助言ならば御館様にお伺いした方が早い」と言い、難なく面会を取り付けた。
その速さから言えば、これは遅かれ早かれ起こりうるものだと、想定されていたのではないかと思える。
少なくとも、師と御館様との間では、この一月にはいつでも対応できるよう心構えがなされていたのだと考えてもおかしくない。

(私が役目を受けた時からずっと、この時を準備していたのだ)

なんのためにか?もちろん、ミカヅキのために。
還暦をすぎた老侯爵にとって孫は可愛いものだろう。
そして彼からすれば、オシエルもまた、子供の様な年齢だ。
御館様は始終穏やかにオシエルの訴えを聞き、言葉全てに深く同意し、時折考え込む様に俯いた。
そうして告げられた「助言」は、ミカヅキのためのものではなく、オシエル自身に向けられたものだった。
レネーゼの礼儀作法において、それを任せられるのはオシエル・マナーコレットであることには間違いない。それだけの実績は誰もが認めるところである、と言ったレネーゼの老侯爵は、「それに意を唱える事は私が許さないだろう」と微笑む。
絶対の自信。絶対の信頼。それをオシエルに判らせるように、続けられる言葉。
「今先生があの二人に対し適正な教育が施せない、とおっしゃるのはレネーゼの家憲に縛られておるからではないですかな」
レネーゼの民は斯くあるべき、と遥か昔よりこの地を収める主が、人々のあり様を望んだ美意識。それがオシエルの教育に限界を突きつけているのではないかと、美意識を受け継ぐ現主が問いかける。
「あの子たちを叱るのは私の役目と心得た上で、先生にお願い申し上げる」
決してそこを許す事はしない、と前おいてオシエルに向けられた助言。
「家憲に縛られる事なく、今あの二人に向き合った先生が考える礼儀とは何か、新たに生み出される作法とはどうあるべきか、それを私は期待しておるのです」
だから自由に。
自由に、あの子たちを導いてみてはくれないか。
今一度の猶予を、と頼みにされて引く事はできない。
何より、自分にかけられた期待の重みに胸が震えた。
生涯を投げ打って、レネーゼの名の下に礼儀作法を極める者にとっては最高の栄誉。
「それを誰も分からずとも、御館様は解っておられる」
と、師に言われ覚悟を決めた。
今一度、彼らに向き合う。

人と向き合う事は、人を通して自分に向き合うことに他ならない。

師の言葉だ。
教え子は、かつての自分だと思いなさい。
教育者として自立するお前に最後に教える事だ、と師ガンコールは言った。
それを忘れた事はない。どの立場の教え子らにも、成熟した今の自分から、未熟だったかつての自分を指導するのだ、と心がけてきた。
その経験がまるで活かせないことがあろうとは、思いもしなかった。
慢心。
己の目を曇らせるもの。
今から相対するのは、かつての自分ではない。
かつての自分から見た、今の自分自身だ。

未熟な自分は問いかける。
大人になった私は、私の希望通りの私になれているであろうか。
大人になった私の言動は、私が目指した理想を歪めていないだろうか。
大人になった私の世界は、私が私であるために存在しているだろうか。

教え子は、かつての自分。
かつての自分に恥じる事なく、教えを施せるか否かが問われる。
師匠の言葉が今やっと、この身に染む。

目の曇りは晴らされた。

そして何よりも厳しい目が判断を下す。

衣装部屋にて

2020年03月11日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
こないだドラマ見てたら、たまたま主人公が腹をぶっ刺されていた

「アホかー!犯人と対峙するなら腹にジャンプ仕込んどけやー!!」

ってリアルに声出た

これだから最近の若いもんは!!って、自分が散々言われてきた事だから
あんまり他人にも言いたくないんだけども
こればっかりは言わせてもらうぞ!

河原での決闘を始め、治安の悪いとこをうろついたり、人間関係のこじれを感じてきたら
腹に週間漫画雑誌(ジャンプサンデーマガジンチャンピオン等)を仕込んでおく様に!
月刊雑誌の方が防御力高そうに見えてもあれはダメだ!
動きが制限されて意外と辛い!あと雑誌のフチで肌が擦れて擦過傷になるからな!
それから金は財布とは別に靴下の中だ!女の子は髪を縛ってるリボンに隠すんだぞ!
(最近の娘リボンしてないけどな)
昭和の少年漫画の常識だ!!



…別にそれを言いたくてこのネタ描いたわけじゃないんですが
ミカの服のハイウエストズボンはシャツが出ない様に(おしゃれ防御)
ハイウエストじゃないズボンの時は、股のところで止める機能つきシャツを着てるはず
(ほらロンパースみたいなあれ)
その上からさらにつけるウエストガードは腹部ガード用
(胸は胸部ガードがある、ヒロが洗濯中ブラジャー!?!?!って驚くネタがあった)

実家にいる時は警備員がいるからゆるい服装だけど
一応ここ町中にあって警備員とかいないから、防御は上げてるんじゃないかな
と思って描いてた衣装ネタ

そろそろオシエル先生渾身の作、ヒロ用の衣装のデザインを始めないといけないんですが
先生の美意識が高潔すぎて私にはハードルが高い…
普通のスーツじゃいかんのですか、先生…
って感じです
(どうしたってヒロはヒロにしかならないと思うが故に)

謝罪への道5

2020年03月04日 | 天使ツアーズの章(学園祭)
ミカ 「無礼講で先生が言いたい事?!」
ヒロ 「怖い怖い怖い…」






て言うか
3コマ目でもうすでに先生に対して十分無礼なんですが


2コマ目のミカとヒロ

ミカ 「正直に述べるって何を正直に述べるんだ?」
ヒロ 「知らん知らん」
ミカ 「…お前ちょっとなんか言ってみてくれよ」
ヒロ 「やだよ!俺もう先生に嫌われたくねーよ!!」
ミカ 「大丈夫だ!どうせもうお前好感度果てしなく低いんだからこれ以上低くなりようがないだろ!」
ヒロ 「俺のは果てしなく下がってんだから今度はミカのを下げる番だろーが!!!」


3コマ目のミカとヒロ

ミカ 「俺一応先生より身分上だから言いたい事言えるし別に…」
ヒロ 「言えてねーじゃん!普段から全然何にも言いたい事言えてねーじゃん!」
ミカ 「それは…、い、言いたい事があるわけじゃねーし」
ヒロ 「嘘だ!絶対言いたい事あるはずだし!こないだだって先生はスーツの下に筋肉スーツ着てるかどうかって話したし!」
ミカ 「あ!それだ!まず軽くそれを聞いて様子を見ろ!」
ヒロ 「だから嫌だって言ってんだろ!」
ミカ 「俺だって嫌だぞそんな事!!」


天使御一行様

 

愁(ウレイ)
…愛称はウイ

天界から落っこちた、元ウォルロ村の守護天使。
旅の目的は、天界の救出でも女神の果実集めでもなく
ただひたすら!お師匠様探し!

魔法使い
得意技は
バックダンサー呼び

 

緋色(ヒイロ)
…愛称はヒロ

身一つで放浪する、善人の皮を2枚かぶった金の亡者。
究極に節約し、どんな小銭も見逃さない筋金入りの貧乏。
旅の目的は、腕試しでも名声上げでもなく、金稼ぎ。

武闘家
得意技は
ゴッドスマッシュ

 

三日月
(ミカヅキ)
…愛称はミカ

金持ちの道楽で、優雅に各地を放浪するおぼっちゃま。
各方面で人間関係を破綻させる俺様ぶりに半勘当状態。
旅の目的は、冒険でも宝の地図でもなく、人格修行。

戦士
得意技は
ギガスラッシュ

 

美桜(ミオウ)
…愛称はミオ

冒険者とは最も遠い生態でありながら、無謀に放浪。
臆病・内向・繊細、の3拍子揃った取扱注意物件。
旅の目的は、観光でも自分探しでもなく、まず世間慣れ。

僧侶
得意技は
オオカミアタック