ドラクエ9☆天使ツアーズ

■DQ9ファンブログ■
オリジナルストーリー4コマ漫画を中心に更新中
時々ドラクエ風味ほかゲームプレイ漫画とかとか

ミカの頼みごと2

2019年08月31日 | 天使ツアーズの章(学園祭)

ウイ 「ウイは時々ミカちゃんが戦ってる敵が見えないよ」

ヒロ 「大丈夫だ、多分ミカにしか見えてない」

 

 

 

 

 

ちょっと補足(この先4コマで盛り込めるかどうか怪しいところ)

妹から学園祭の招待状が届いて、ミカが参加することになったわけですが

一日目は賓客とかも招いての学園長主宰の格式高い園遊会(家の当主とかが式に参列)

二日目三日目に生徒たちが学習発表会をする楽しい学園祭(ミカの参加がこっち)

妹に思いっきり煽られているわけで、だったら恐れ入るほど完璧に出向いてやろうじゃないか

って考えたミカはまず従者の必要性に思い至って家に確認を取りに行ってます

どうしてもヒロを連れて行きたいのは4コマの通り

なのでここは必死

絶対折れねえ!の覚悟で交渉して、

「まあ学園祭ならお遊び要素もあるしヒロを連れて行っても良いよ、友人枠でね」

「ただし、最低でも上級の振る舞いを身につけるように彼を指導するからね」

って感じの了承を取り付けてきてます

 

あと

 

ミカは貴族界の女性陣がもれなく苦手

淑女教育を受けている同年代あたりの少女たちは意味不明な言動をするし

淑女教育を受けて社交界もこなれた年上の女性たちは意味深な行動をするしで

全然交流が成り立たない異次元の別生物、と思ってます

 

なので

庶民の世界に出てきても、女性らと交流することを避けてはいるんですが

庶民の同年代の少女たち→めっちゃ見てくるけど交流しなくて良いので不快ではない

庶民の年上の女性たち→上に同じく

必然的に交流しなくてはいけない女性陣→たまにもめるけど嫌いじゃない

ウイとミオ→なんだ!女でも話通じるじゃねーか!めっちゃ好き!

って感じの好感度ゲージなので

他の女子キャラもミカとそれなりに交流できるキャラなら、嫌いじゃない、か、めっちゃ好き!の

どちらかに振り分けられる模様

敵は貴族界の女性陣です


さらにおまけ

2019年08月28日 | ■うのじごと■


花押は署名みたいなもの
今のは師匠入れてメンバー5名だけど、そのうち人数増えてきたりしたら書簡で情報交換も頻繁になるだろうし、て事で、その書簡の本人確認、みたいな感じで使うかと

・名前の一文字目からとる
・一筆書きできる

この二点を重視して各自デザイン
ウイと師匠だけ羽マーク(元天使なのであんまり字とか書かないイメージがある)



天使ツアーズナンバーは自己申告
とりあえずリーダーとサブリーダーさえはっきりしてれば、数字で序列とか別にいらねーじゃん、っていう
まあリアルのナンバープレートみたいな感じで



この二点の4コマもあったりするけどめっちゃ長くなる上にオチがないっていう取扱注意物件になったので割愛
ナンバー決めのとこだけ抜き出し


「この天使ツアーズNo.は、どうする?」

「あー、自己申告制でいいんじゃね?」

「はあ?」

「…自分の好きな数字で良いって事、ですか?」

 「(ミカの私設ファンクラブ)ほしおとめ会員の方でやってる方式なんだけどさ、自己申告。それがさー、入会順にナンバー付けてくとさ、新参だの古参だのでマウント合戦始まるじゃん。ただの数字にそこまで思い入れるくらいだったら、楽しく思い入れすれば良いじゃん、って思って。自分の好きな数字付けたら良いよ、って方式採用してから割と平和」

「No.被ったらどーすんだよ?」

「まあ気があうわね、って仲良くしたら良いじゃん」

「……(会員ナンバーの意味)」

「でもウイ別に好きな数字とかないよ?」

「俺も特にないけど…、なんかこう語呂合わせとか縁起担ぎとかあるんだよ色々」

「例えば?」

「例えば、えっと、俺だったら116とか。ひーふーみーの数え方で1がひ、次の1がい、でひい、6が、ろ。ひ・い・ろ」

「あー、名前になるんだ!」

「じゃあ私は30(ミオ)です」

「そう、そんな感じ!良いね!」

「ウイは?」

「…できないのもあるから…」

「俺は?」

「できないのもあるから」

「なんでー!どーしてー!ウイにもなんか作ってー!」

「あーもー…、えーっと、うーんと、むぅ。…70」

「ななじゅう」

「7はカタカナのウみたいじゃね?」

「みたいじゃねえ」

「…0はレイって読む」

「ななじゅう」

「ななじゅうだな」

「ゴロにできないのもあるんだって!!」

「あ、あああ、あのあの、名前ができないのは仕方ないとして、名前にこだわらなくてもウイちゃんはちゃんとウイちゃんらしいの作れますよ。104(てんし)とかどうですか?」

「あ!本当だ!天使だ!素敵!」

「ななじゅうよりは読めるな」

「良い良い!お師匠様もこれにする!」

「…する、って(師匠に聞かねーのか)」

「じゃあ俺も116は無理やりっぽいから、1123にしよ」

「いいにいさん」

「良い兄さん、俺にも作ってくれ」

「…君たち(なんでそんな他人任せなのか)」

「あー!ミカちゃんに良いのあるよ?877」

「ば、バナナ?」

「バナナ?!」

「お月様の形だしー、黄色いしー、可愛いよ?」

「却下」

「なんでー!どーしてー!!」

「バナナになんの思い入れもねーんだよ!!」

「あー、じゃあ145」

「…ひよこ?」

「ひよこ?!」

「ミカ、俺の村でひよこちゃん言われてるし、黄色いし、可愛いぞ」

「却下!!!!」

「黄色いのにー」

「(いつの間にか黄色押しに…)」

「じゃあ、こんなのは?11922960」

「なが!!」

「長!!」

「いいくにつくろう?」

「おおー」

「お、おお」

「ただ、これにしたミカは、以後、『鎌倉幕府』と呼ばれるだろうけど」

「…却下」

「37514(みんなこいよ)」

「来なくて良い」

「5187440(恋バナしよう)」

「せんでいい」

「うもー!!こんなに考えてんのに!なんでもかんでも却下すんなー!!」

「お前がロクでもないもの出してくるからだろー!!」

「ミカには遊び心ってもんがねえ!」

「あってたまるかそんなもの!」

「じゃあもう0にしといたら?0」

「…ひでぇ」

「……」

「ミオちゃんたすけてあげて」

「え、えっと、10004とかどうですか」

「いちまんよん」

「とお、えっと、おお、よん、し?」

「区切って、1000と4です」

「せん、し」

「はい、ミカさん戦士だから…えっと…ちょっと強引、です、よね…」

「…それでいい」

「いいんだ」

「いいんかい」

「バナナ黄色いのに」

「ひよこだって黄色いのに」

「お前らが申告制だなんだと言い出すからだろー!!」



10004(せんし)、ウイの104(てんし)とものすごい被り方してるけど
ミカっぽい語呂合わせ考えて3日かかってひねり出したのがコレ…

まあ序列でNo.ふってもミカは4番手だから

まあいいやもういいやそれでいいや、って感じのNo.申告制ネタでした





天使ツアーズ10周年

2019年08月26日 | ■うのじごと■




広大なファンタジー世界の隅の隅の隅にひっそり存在し続けて10周年!!
ちまちまちまちま更新を続けてきた甲斐があったかどうかなんてもはやどうでも良い!
そんな瑣末は広大なファンタジー世界の広大な海に投げ捨てておけ!
ってことで
10周年を記念してここに天使ツアーズ手帳発行!!

…10年か

って考えると本当は実物を配りたいくらい長い年月がかかっておりますが
まあ需要もなかろう!ということで
皆様の心の中にひっそりとお配りしておきます

こちらを訪れてくださってるあなた様にはもれなくこちらのクラン手帳をプレゼント!
表紙はおなじみ天使ツアーズの紋章であります
天使の輪と羽をあしらい世界樹がどっしり構える地上の守り人仕様

表紙の裏側にはスリットを入れてあります
ポケット仕様ではありませんので
簡単なメモ書きや定食屋の回数券などを挟むのにご利用ください

さて中身の1枚目は天使ツアーズ憲章
右の頬を打たれれば左の頬を差し出せ的なアレのようなものでございます
なんなら右手左手交互に見てではありませんがそれに続く各文言は
各々が考え得る「右手とは」大喜利にもご利用ください
一人時間の暇つぶしや、仲間との親睦を深める時間などに一役買うことができれば感無量でございます

2枚目は天使ツアーズメンバーの証です
顔写真、似顔絵など、個人を特定できる画像をお貼りください
リーダー(ウレイ)の元までお持ちいただければ割印を押すことで完成します
ツアーズNoはその時にサブリーダー(ヒイロ)から説明があるでしょう

3、4枚目は各地にある伝達所です
手帳を見せ、天使ツアーズメンバーであることを証明すればいつでも利用可能
天使ツアーズのメンバーそれぞれと連絡を取りたい時には、ここを訪れ伝言を託すなり託されるなりしてご活用ください
うまくいけば数日で連絡がつく場合もあります

5枚目はメンバー寄せ書きです
御朱印を集めるように、メンバーの寄せ書きを集めておくとひとりぼっちの夜も寂しくないかもしれないよ的な良い話に持って行こうとしたわけではなく
単にもうページを埋める内容を思いつかなかっただけなのですが
広大なファンタジー世界の中でどれだけのメンバーがいるかはわかりませんが、ええまあ
グットラック!

6枚目はメモ帳にでもご利用ください
思いつかないにもほどがあります
白紙のページならいくらでもあるので、必要な方はいくらでも増やしてくださって結構でございます
なんならおもしろネタページをじゃんじゃん増やし公式の攻略本より分厚くなった天使ツアーズ手帳を心に持ち歩くのも一興
そんな緩さも、実物じゃないからこそ可能な神対応ですね
紙だけに
やかましいわ

さておしまいに
裏表紙の裏のスリット二つは、独立したポケット仕様です
落としては困るカード類や秘密のあれやこれやなんかをしまってください
もうじゃんじゃんしまってください
そこに施してあるエンブレムは金です
旅の途中で魔物に襲われたり盗難にあったりした際に、最悪一文無しになってしまった!
なんて
そんな場合はこのエンブレムを換金して窮地を凌いでください
天使ツアーズは陰ながらメンバーの旅路を応援しています



そんな10年
こんな10年

せっかくの大台だし、と思って(次の大台は100周年だから…)張り切って10周年企画考えてみたのですが
…あんまり面白いネタが生まれなかったことを陳謝します


待ち遠しい

2019年08月24日 | ツアーズ らくがき

マリス 「兄上様が来てくださる園遊会の日、もうすぐですねえ」

アステ 「本当に来てくださるか、わからないわよ?」

 

 

 

 

ミカ妹とその侍女が通う全寮制の学校の設定を煮詰めるのを忘れてました!

 

若かりし日のミカ母は、後継では無いのでワンランク下の学校へ入学してます

なので、伯爵以下の貴族クラスがあるところに庶民クラスも併設されていて

ミカ母と侍女レアは(ついでにミカ父も)ここで出会うことができたわけですが

 

ミカは後継なので、最高ランクの学校へ入ってます

ここで優秀な成績を収めてから近衛の任務へついて、さらに外交任務(お飾り)へという流れなのですが

アステも後継では無いので、最高ランクの学校へ通う必要はないはずです

しかしアステは教師陣からミカがいかに優秀であったか、またクラスメイトの兄弟からいかに孤高であったかを聞かされている、という設定でSSを書いています

(この段階であまり深く考えてなかったことが明るみに)

そのおかげさまで、アステも最高ランクのミカと同じ学校へ入学した、ということになってしまいました!

 

学校…

お貴族様の学校…

 

って考えてここで気づく

ミカの卒業すんげえ早くねえ?!

現代だと高1で卒業かよ!ってなってる、今

近衛…、近衛を務めてる設定が邪魔だな!!ああそうだな!

 

セントシュタインと近衛の設定が邪魔です!!

 

と過去の私に全力で念波を送っておいてので、多分、なんとかそこの設定を回避してくれているはず

そして時間軸が変わって、多分そのへんうまいこと回してくれているはず

うむ、このまま園遊会を書き始めればその設定が消え失せているのは想像に難くないな!

よし、万事おっけー!

 

てことで園遊会ネタは、時間軸が変わったら始まる手はずを整えておきましたので!

頼んだぞ、過去の私!

 

いやあ、待ち遠しいなあ!!!

 

 

 

 

 

ていう逃避


おめかしたい3

2019年08月23日 | ツアーズ らくがき

立ち絵、激むず

だったので、前日のウイヒロと同じ下絵を使った

(絆し絆されも同じく)

なのに、ミオの顔が異様にでかいのはなんでなのかしら😨

全く同じなんだけどな?

 

あと、ウイヒロがゴシックだったのでミカミオはパンクを狙った

パンク…

パンクってなんだ…

 

 

良い塩梅にトチ狂ったのでそろそろ真面目にやります

 


おめかしたい

2019年08月21日 | ツアーズ らくがき

次からの長編は園遊会ネタが控えておりますです

ヒロとミカしか出てこないので、ちょっと女の子成分を補給しとこっかな!

てことで衣装がおニューになります!

 

4コマで素早くかけて(デッサン狂いまくってても気にならなくて)

白・黒・灰色・薄灰色・濃灰色の塗り分けが楽で(背景なくても画面の白さが気にならなくて)

適当にファンタジー風味にごまかしが効く服!!

っていうのが大前提

いつもだいたいそれを目標にラフにかける服を考えてるつもりなんだけど

実際4コマで使ってみて「楽だったわあ」っていう服はあんまし無い

…だから何度もデザイン思考錯誤しては撃沈されてるとも言える

あと、どう頑張ってもファンタジー風味の服にはならない(私的にファンタジー風味衣装は鎧ビキニだから…ほら…)

さらに、男の服のバリエーションはもう尽きた(特にミカ)

 

てことでもう次のネタに突入してもいいかな汗

 

本当はミカ父のSS挟む予定だったのだけども

このSS作った時はここの段階でねじ込む予定は全くなかったので

(SSはだいたいキャラの肉付けのために作るので、前後の流れとか無視して単発で作ってく)

ミカが父を呼び出す理由がちょっと唐突にすぎるんだよなあ、って悩む

「お小遣いで公共事業始めるつもりなのでアドバイスください」

ってところから始まるので、これはもうミカスピンオフの方で出した方がいいか、と思い始めている

(ウイたち一切出てこないし)

 

もう一つ、ヒロの妹とミカが絡むSSもどこに入れようかと狙ってるものの

これも単発で作ってるので前後のつながりが全く無い

あるのはただ「妹」という重し…

ミカが自分の妹と絡んでからヒロの妹と絡むのがいいか逆がいいか、決めかねる

どっちの妹もミカには懐かないからそれは別に良いんだけど

兄に懐きたいけど懐き方がわからない妹

兄に懐いてるけど懐いてるが故に兄の友人を敵視してくる妹

どっちを先に攻略するか、っていう、ただ単にミカの経験の問題

 

難題だなあ…


絆され

2019年08月15日 | ツアーズ SS
夜の海岸に、火花がちらつく。
昼間にヒロが買い込んだ手持ち花火を広げて、仲間たちがそれぞれに花火遊びに興じているのを、ミカはすぐそばの岩場に腰を下ろして眺めている。
新しい仕掛けの花火に火が着くたび、ウイが「見てー!」と楽しそうにそれを振り回して報告してくるのには、「見えてる」「危ないからやめろ」と返していたが、一通りの種類を体験してしまったのだろう、今は初めの頃の歓声も落ち着き、明るく仲間の顔を照らす花火を鑑賞しながらの普段通りのおしゃべり会になっていた。
正直、あれの何が楽しいのかわからない。
火薬に火をつけ、それが燃えるのも、火花が散るのも、一度見てしまえばただの現象だ。
火薬が燃える臭いもあまり良いとは思えなくて、ミカは、自分の分をウイにあげてしまった。
「わかった、ミカちゃんの代わりに楽しんであげるよ」とウイは言う。そして、実際自分とミカのと、二人分の歓喜を存分に楽しんで見せた。
花火は楽しいものじゃない。ただそれを楽しんでいる仲間たちと過ごす時間は、自分にとってとても楽しいものだと思う。
それをわかってくれる仲間たちだからこそ、ミカに、「良いからお前もやれ」などと強制はしない。
おかげで、ただ大人しく座っていることができるミカの隣に、ヒロが座った。
「俺さー、祭りの時とかに上げるでっかい花火しか知らなかったからさ」
それはミカも同じだ。
うん、と同意して見せれば、ヒロが「あんなちっこい花火珍しくてつい買い込んじゃったけど」と、無邪気に笑って言った。
「なんか、あれくらいなら俺でも作れそうじゃね?」
「お前はまた」
と呆れた声を出すミカに、それを聞いていたウイが笑う。
「出来る出来る、ヒロなら出来るよ」
「そう言う問題じゃねーよ、火薬の取り扱いには職人免許がいる」
「あ、そうなんだ」
「兵器になる」
「はー。なるほどなるほど」
いや中身どうなってんのかと思って分解したら火薬だけ出てきたから、なんて言うのには、こいつにはまず本格的に法律関係を教え込まないといつか何かやらかしかねないな、と危機感を抱く。
「子供か。何でもかんでも興味のままに行動するな」
「肝に銘じまっす」
口調は軽いが、こういう時のヒロの言質は信用できる。場の空気を悪くしないために、と敢えて軽い態度を取るのも解ってきた。それに苛つくかどうかはまた別の話だが。
「あ、子供といえばさ」
とヒロが座り直した。
「ミカの伯父さんに会って思ったんだけど」
こいつはまた、何を言い出すつもりか。
自分が叔父を毛嫌いしていることは言ってある。それを踏まえて、そんな悪い人じゃないからもっと打ち解けてみろ、なんて言われようものなら、たとえヒロと言えども手が出てしまうかも知れないな、と今の自分の精神状態を危惧しただけに、次の言葉には呆気にとられた。
「子供だよな、あの人」
「はあ?」
「いやー、さあ、なんか大人気ない、ってのともちょっと違うかな、ってずっと考えてたんだけど」
やってる事はうちのチビたちと一緒なんかな実は、って思って。
まあ聞いてくれ、とヒロが言うのに、花火を手にウイとミオも神妙に聞く体制に入っている。
もちろん、ミカも同様に。
「伯父さんはなんとかミカと交流しようとしてるんだろうけど、お貴族様のミカってさ、なんかこうおすましさんじゃん?」
「おすましさんだね」
ミカではなく、うんうん、と頷くウイを受けて続けられる言葉。
「ミカのすまし顔を何とかしたくて、ミカを怒らせるようなことをわざわざ言ってくるわけじゃん?」
それには、ミカも、うんうん、と頷く。
そうだよな、別に俺が悪いわけじゃないよな。あっちがわざわざ苛立たせる言動をとってるんだからな、と思っている。
「それって考えるとチビたちとあんま変わらなくてさ」
チビたちはなんとかして大人の気をひきたくて、色々仕掛けてくるわけ。
大人は一応、形だけでもそれに反応するわけ。
でもチビたちには、一応とか、形だけ、とかわかんないわけ。
と三段階に区切っておいて、ヒロが自分の話を聞いているほか三人を見回す。
「大きくなるとある程度わかるじゃん、気の無い返事だと、今忙しいんだな、とか機嫌悪いな、とか、そういう、空気読むっていうやつ?でもチビたちはわかんないからさ、明確な反応を欲しがるのな。で、チビたちにとって、イッチバンわかりやすい反応が、喜怒哀楽の、怒、なんだよ」
人間の感情で、相手から返ってきて一番、衝撃を受けるのが「怒」の感情だと、ヒロは言う。
「だからチビたちは、とにかくめっちゃ怒らせることやるんだと思ってるんだけど」
「ああ、だから伯父さんはミカちゃんを怒らせるってこと」
「そう、この考え方で行くと、おすましさんのミカと子供みたいな伯父さんはめっちゃ相性悪いの、もう仕方ない事だと思うんだよな」
先ほど、全面的に同意した内容とさほど変わりはないと言うのに、今度はそれに素直に頷けないミカが思いっきり渋面を見せれば、まあ待て、とヒロがあやしてくる。
「ここでミカが手に入れるべきスキルは、おーよーだと思う」
「応用?」
またそれか。
頭が硬いだと、自由さがないだの、基本しかできないだの、ウイとヒロには散々言われている事だが、それを手に入れたからと言って、相手をかわせるとは思わない。
それにヒロが手を振る。
「違う、違う、そっちの応用じゃない。鷹揚。おすましさんの、もう一つ上だと思うんだけど」
「鷹揚、ね」
「もう一つ上?」
うん、と頷いたヒロが。
「おすましさんをもうあとちょっと極めるだけで、鷹揚になると思うんだけどな」
どうだろう?とウイに同意を求めれば、なるほど!とウイが手にしていた未着火の花火を振る。
「確かに、ヒロは鷹揚、って言うか、おっとりさんで構えてるから、モエちゃんが突っかかってこないように見えるよ」
「ああ、モエか」
「モエちゃんもミカちゃんには突っかかっていくでしょ。つんつん。でもヒロはおっとりしてるから何しても怒らないって思ってて、あんまりつんつんしない感じ」
つんつんしても無駄なんだよ、と言うウイにヒロも同調する。
「そう、そこ!相手に、この方法は無駄!って思わせたら、とりあえず自分は何をしなくても、相手が勝手に対策練ってくる感じ」
ポイントはここです、とヒロが出来の悪い生徒に言い聞かせる教師風に胸を張る。
「ミカはとりあえず何もしない、相手が変わるように仕向ける、って言う戦法が有効になる」
もういい加減子供じゃないんだから叔父に対して愛想ぐらい使えるようになれ、と言う嫌味な伝言をヒロに預けたモエギと、その養父であるクルート伯爵の顔が思い浮かぶ。
あまり愉快な気持ちにはなれないが、それでも、愛想を使え、と言われるよりは数倍マシだと思えるのが不思議だ。
なるほど相手に仕向ける、と言うのは考えたことがなかった。
だが一度そう冷静になると、今度はそれを提案しているヒロの人間関係が気になる。
「鷹揚がスキルとして、お前は鷹揚を持ってるわけだ」
「うーん?まあ、俺が鷹揚、かどうか自分ではわかんねーけど」
「その鷹揚を持ってしても、村の同年代の男たちといい関係を築けているとは思えないが」
それでも鷹揚が伯父に有効だと思うか?と言うミカの問いに、ヒロが悩む風を見せる。
「ううーん、そこな、うん、そこ言われるとな」
「逆にお前が鷹揚だからそれにイラッとされて攻撃されてるように見えるけどな」
「そおねえ、まあそうなんだろうな、って解るんだけども」
ミカは慣れたからヒロのこんな煮え切らない態度には、イラッとさせられても、攻撃的にまではならない。ここがヒロの良いところで、こんなヒロだからこそ自分に付き合ってくれるのだろうとも思っている。だがそれが村の男連中に通用していない。
「ヒロはもともと鷹揚を持ってるんだもん。そりゃ、鷹揚じゃ通用しないよ」
と、ウイが話に身を乗り出す。
どう言うことか、と二人そちらを見れば、ミオもウイを見た。
「ヒロが手に入れないといけないのは横暴だね、横暴」
わざわざ、鷹揚、に引っ掛けて横暴を持ってくるとは何事か。
「ヒロがもっと、うおー!ってなって、グワー!ってして、ガツーン!ってやったら村の人たちもびっくりするかも」
「ああ…、ミカが持ってるのな、横暴…」
「えっ、俺、横暴かよ!?」
「持ってないとでも?」
そう言われると、鷹揚のヒロからすれば自分の言動は横暴に当たるのか?と困惑する。
そこに、今までおとなしく話を聞いているだけだったミオが、えっと、と口を開いた。
「それは、ヒロくんとミカさんが入れ替わるきっかけになった話と一緒ですね」
ヒロとミカが互いの環境に対して、自分ならもっと上手くやれるけどな、と張り合っていた些細な口論。
「なるほど」
「つまり実践してみろ、と」
互いに、相手に向けて言い放った「自分ならやれる」の根拠を「鷹揚」と「横暴」でやってみればいい訳か。
と二人同時に考えて、ミカが何を言うより先に、ヒロが手を振って見せた。
「いや、無理無理無理!まず、俺が横暴を手に入れるのが無理!だって俺、横暴とか無理だからいざこざ起きないように村出たんだし」
いや別にそればっかりが理由じゃないけど!と、他の理由を上げようとして、全員の視線に負けたように、どうせ俺はヘタレですよ、と自虐に走る。
「ええ?!ヒロくんのこと、ヘタレとか思ってませんよ?!」
「ウイは思ってるけどヘタレが悪いとか思ってないよ?」
だって生き延びる知恵だもん、とウイが言う。
女子二人の言葉にヒロが「やさしいぃい」と大げさに感動しているが。
一連の流れにミカも思うところがあった。
「確かに、逃げたわけだ」
と、ミカが口を開く。
ヒロは村から逃げた。村で男たちとの競争に死力を尽くすより、逃げて自由になった。
「俺は逃げられそうもない」
自分も逃げられる道があるなら、貴族社会から逃げて自由になりたいと思っただろうか。
「ヒロは逃げた。逃げた先で、自分が戦える相手を選ぶことができる、ってことだろう?」
逃げるとはそう言うことだと思う、と言ってから、俺は、と続けるミカを全員が見守る構え。
逃げたとして、ヒロの様に行く先々で器用にやっていけるとは思えない。加えて、現実的に逃げる事が許される立場にない。この二つを踏まえて、と三人を見る。
「俺は逃げられない代わりに、戦う手段を選ぶことができる」
つまり先ほどの、鷹揚と横暴の使い分けはそれ。
「ヒロは横暴を手に入れるより、鷹揚一本で戦っていくわけだろ。俺は鷹揚を手に入れさえすれば、逃げる必要がなくなる」
手段が違うだけで、やる事は同じだ。
逃げる逃げないはその場その場で見方が変わるだけの話。
結局、人はやっている事の見た目が違うだけで、やるべきことの本質は皆同じだ。
だからヒロがヘタレであるということを自虐する必要はない。そうだよな?とウイを見れば、ウイは晴れやかに笑った。ただし。
「そうだね!ミカちゃんにしてはなかなかの応用力だね!」
と、あからさまにからかう言い方がひどい。
文句を言ってやろうかと口を開けば、ヒロに先を越された。
「あーもーだから俺ミカのこと好き!めっちゃ好き!すんげー好き!」
そこに残る二人が続く。
「わっ、私も大好きです!」
「ウイも好きー!」
三者三様のにこにこ顔を並べられては、これまでの付き合いから、その意味は嫌という程判る。
笑顔の圧力。無言の強制。
「…俺もお前らのことは好きだけどな」
「だよねー!」
「そりゃそーだよねー!」
「はっ、はい!」
あろうことか、この自分が随分この三人に絆されたものだ、と思う。
けれど、この束縛は苦痛じゃない。
絆でありながら、そこには自由しかない。
彼らの自由に後押しされて、自分は遥か高みを目指す。
目指すことができると、確信する。いつも。
「じゃあ、まずミカちゃんが鷹揚を手に入れられるように、明日から特訓だね!」
「よっしゃー!お貴族様ごっこは任せろな?俺ミカのふりできるから!」
「わ、わ、わ、私も練習台になれるように頑張りますよ!」
…不安もあるが。
あるからこそ、そこにある日々は楽しい。
自分にとって、楽しいことは意味をなさない。ただここにいることが楽しいと思える仲間がある。
それを許されている。
持つものと、持たないもの。
「ミカちゃんの自由はウイたちが持っているでしょ」と、ウイが言っていた事は正しい。
ないことが望ましいと、胸を張れる勇気。
ないものねだりでなく。
自分が持たなくても、手に入れる運命はいくらでもある。
それを指し示すように、ヒロが両手を打ち合わせた。
「よし!じゃあ決起花火しよう、決起花火!」
「…なんだそれは」
決起集会とか決起飲み会とかあるじゃん?などと言いながら、ヒロは荷物の中から一つの束を取り出す。
「最後の締めにやろうと思って取っといたやつ。ミカでも俄然燃える、俺の超おすすめ!」
ミカでも、って何だ。ミカ、でも、って。
まあ今更ヒロたちに自分のことがお見通しされていたところで不平も不満もありはしないミカではあるが。
「火がついたら終わりまで1ミリも動いたらダメな花火」
「へえ?…爆発するから?」
「え?!」
「違う違う、ちょっとでも揺らしたら火種が落ちちゃって楽しめないんだって、おっちゃんが言ってたから。忍耐と集中力と精神力がものをいう花火、…誰が一番最後まで持つか、ってのをやらねえ?」
一人に3本が行き渡って、つまりは3回勝負。
なるほど。
「わあ、やるやる!」
「やります!」
「よし!」
四人で輪になって、灯芯の入った油皿を囲む。
「せーの、で火を付けて、着いたら離れる、な」
ヒロの言葉に全員でルール確認、勝負の趣味レーションを数回繰り返しながら。
「ミカちゃんの鷹揚の決起花火だからね!鷹揚だよね、鷹揚」
「それな!鷹揚に構えて最後まで残った人が、鷹揚王者だからな?ミカはその人に習うこと」
「はあ?俺が残ったらどうすんだよ」
そんな会話にヒロとウイが笑う。
「無理無理、今のミカちゃんは鷹揚とか持ってない持ってない」
「まあ見てろって、鷹揚の王者となるべくしてなる俺の鷹揚っぷりを」
「…のやろー…、絶対残ってやる」
「わ、わー、私も負けませんよ」
四人の手が重なるように灯芯に集まり。
手にした花火の先が揺れる小さな炎に触れ。
先端は光を灯し、それぞれに離れた。
鮮やかな、光の放物線を描きながら。
ひかひかと、火花を振りまきながら。

絆し

2019年08月13日 | ツアーズ SS
(よし!!2分45秒!)
45秒になりたてでなく、46秒になる直前でもなく、真の45秒。
そんなものがあるとすれば…だが、今日の45秒は確かに45秒の真っ只中と言える…という冴えた確信があった。
モエギは極限まで意識を集中して、2分45秒でポットを取り上げ、紅茶をカップへと注ぐ。
主人の為に淹れるこの紅茶は2分47秒蒸らす、と教わっていたからポットを取り上げてからカップへと注ぐまでの2秒も考慮して45秒で蒸らし時間を切り上げてみたのだ。
(これなら文句はないだろう)
まさに完璧!という高揚感で給湯室を出たモエギは主人の待つ書斎へと向かった。
いつもどこかしらの家に招かれて接待を受けている主人には珍しく、午後はゆったりとした時間を書斎で過ごしている。
いつもなら主人に午後の紅茶を提供するのは執事のフローネストだが今日は不在だ。城下町にある医者の元へ定期検診の日なのだ。
こういった場合だけでなく、老い先短い自分がいつ不自由になっても主人には今まで通りの紅茶を、というフローネストの鉄の意志の元、モエギがそれを習うようになって1年ほど。
指導に従って主人好みの紅茶を淹れられるよう研鑽を積んできたつもりだが、いまだにフローネストから合格点をもらったことはない。
(何が違うんだか?)
何かが違うのだろうことは、わかる。
実際、主人はフローネストの淹れた紅茶と、モエギの淹れた紅茶を間違えたことはなかった。
(飲めりゃそれで良いんだけどな)
とモエギは思っているのだが、やはりこの家の養子に入っておいて紅茶の一つも満足に提供できないのはまずいだろう。
自分は、この家にあって実の息子ではない。
公に養子という対場ではあるが、それは主人との関係性においては、主従であると分かっている。
「伯爵様、入りますよ」
開け放された書斎に立ち入る直前に断り、トレイを持って中に入れば、窓際の長机にいたルガナ伯爵が手にしていた本を閉じ、「ではそちらへ行こう」と立ち上がる。
部屋の中央にある応接のローテーブルを示されて、モエギもそちらへと紅茶の用意をする。
午後の日差しが傾き始める頃、城から戻ったモエギが顔を出した時に、「紅茶を淹れて欲しいのだが」と言われてからさほど時間はかけなかったつもりだ。
それは主人であるクルートにも分かったようで。
「ずいぶん、手際よく動けるようになったな」
と言葉少なに褒めてくれるのは、素直に嬉しい。
「それはもう。フローネストさんの教育の賜物ですからね」
主人の身の回りの世話をすることに関しては厳しいフローネスト老に師事してきたのだ。
モエギが主人に褒められるという事は、すなわち、フローネストの手腕に他ならない。
それを弁えているのも、フローネストの教えだ。
決して驕ってはならない。貴族社会において主人の寵愛を一身に受ける事は身を滅ぼす。これはお前のためだ、と二人きりの時にいつも言い聞かせてくる厳格な老爺の言葉を、モエギはとても信頼していた。
「今日の紅茶は、ぜひともフローネストさんにも感想をもらいたいところなんですけど」
そう言いながら、テーブルに差し出した紅茶を勧めると、クルートは、「ほう」と興味深そうに微笑んでみせた。
「なるほど、今までになく香りがいい」
そう言ってクルートが茶葉の香りを楽しむ様子をただ待つ。
フローネストなら長年主人に仕えてきた経験から、茶の時間を所望する主人の気分に適切な茶葉を選ぶこともできるだろうが、モエギにはまだそこまでの技量はない。無難な茶葉を選んだのはやや逃げに走ったかな、とも自省するだけに、クルートが香りを気に入ったというなら、まずは合格点だろうか。
そう考えていると、「お前も確かめてみなさい」とクルートが向かいの席を勧めてきて、モエギは素直にそれに従った。
主人用と、自分用と。
自分のカップを取り上げて香りを確かめる。正直なところ、茶葉を蒸らす時間で変わるほどの香りの繊細さが分かるわけではない。
だからモエギはなるべく正確に、「これが主人の好みだ」と淹れられた紅茶の全てを数値化して、ギリギリまでその数字を追求しているだけのこと。あとは日によっての誤差。それもほんのわずかな。
…そう、今日の45秒のように。
だから、どうだね?とクルートに尋ねられても、何かしら自分の感想があるわけではない。
「…可もなく不可もなく、って感じですね」
とびきり良いとも、とびきり悪いとも思わない。
そう答えれば、クルートが笑う。
お前は正直だね、と言われて、モエギはカップをソーサーに戻した。
「伯爵様は?どうです?何か、違うってわかります?」
ここにフローネストがいれば即座に叱られているような事を聞いている自覚はあったが、今彼はいない。
そしてクルートは大概、自分で従者を叱りつけたりはしない。
少なくともモエギが彼の養子になって今まで、そんなところを見た事はなかった。
「そうだな。初めの頃と比べると、随分と良くなった」
「ええー、そんな…、茶葉も見分けられない昔と比べられてもな…」
そこは当たり前というか。いや、今でも大雑把にしか見分けがつかないが。少なくとも昔よりは銘柄も産地も頭に入っている。
「フローネストに感想をもらいたいほどの自信があるんだろう?」
「それはそうですけど。ただの自己満足かどうかを知りたいっていうか」
「明日も同じに淹れられるかい?」
「え、それは、…ちょっと無理、かな」
「ではそれが答えだ」
うーん。掴み所がないな、とモエギはクルートの言葉に不満を感じたが。
「あ、そうだ。点数。点数をください。フローネストさんの淹れたお茶が100点として」
モエギの淹れた紅茶を手に、ゆったりと背もたれに身を任せているクルートが可笑しそうに笑う。モエギの言葉を、そうやって軽くいなして、不遜を楽しんでいる。
彼が機嫌の悪い所を見せるのはモエギにではない。
「そうだな。では、80点、というところか」
「80、点」
掴み所のない主人の満足度を、わかりやすく数値化して、ますますわからなくなった。
80がいい点数か、悪い点数か。それはモエギの側とクルートの側と、見る方によっていくらでも評価を変えるだろう。
そう困惑する自分を持て余しているようなモエギの反応に、クルートが身を起こして、カップをソーサーに戻した。
「お前の現時点での最高点が80点。後の20点は、フローネストが今までこの屋敷に仕えてきた時間が積み上げた20点だ」
どうあってもモエギには太刀打ちできないものだ、とでも言うように。
おそらくフローネストも同じように言うだろう、と続けられて、モエギはがっかりする。
「はあ、そうですか」
「おや。最高点だと言ってあげたのに、不満かい?」
何が不満かと尋ねられて、モエギは自分の中にある正体不明の感情を探る。
努力している。フローネストにも、クルートにも、満足な自分を提供できるように、それはもう毎日努力しているつもりではあるが。
紅茶一つで、その努力を可視化しようとした自分の真意はどこにあったか。
点数で己の努力を計り、それが一つの区切りになると期待したのに、芳しくない結果に失望する。
結局。
「結局、褒められたいだけだったかな、って」
子供のような単純な欲望が見えただけで、期待したものは得られなかった。
そんな胸の内を晒せば、クルートは静かに微笑む。
「欲深いのは良い事だ」
私は嫌いではないよ、と言われてモエギが目をあげると同時に、お前のそう言うところがね、とクルートが続けた。
「そうでなくては、養子になどしなかっただろう」
それはいつもクルートがモエギにかける価値。
その価値があるからモエギはここに居られるという現実。
「その現実を守り抜くために、常に努力を怠らず、すべてに対して貪欲であれ。いつもお前に言ってきた事だ」
「はい」
「努力に終わりが欲しいかい?」
率直にそう尋ねられて、心はすぐさま反発を見せる。
「いえ、そういうのじゃなくて」
今の生活に疲れたとか、努力は無駄らしいとか、そういった感情はない。
なぜなら、クルートに迎え入れられて今日まで、モエギの努力に対する褒賞は常に十分すぎるほどに与えられてきた。
これ以上何を望むのかと問われても、すぐに答えを導き出すことは難しいだろうほどに。
「良いね。さらに努力を重ねられる何かが満ち足りないとでも?」
「さらに?」
「努力に終わりなどこない」
そう言い切ったクルートは正面からモエギを見据える。
「私はね、モエギ。お前と、レネーゼの後継者が手を組み、この家を乗っ取ろうとしているのだとしても一向に構わない」
「……」
静かな。しかし、確かな。
突然の衝撃。
クルートが何を言い出したのか、咄嗟にはわからなかったほどの。
「ええっ?!」
「そう驚くことかい?」
「驚きますよ!そんなこと、考えたこともない」
これは。
先日に、城でミカヅキと会っていたモエギの身辺を疑われているのか。
あの一件ならば、確かに、クルートに対してやましいことはあるのだ。
何らかの事故で幼馴染が、レネーゼの後継者の姿に成り代わった。その事を、モエギはクルートに秘めている。
これが他の人間なら即座に利用し、その利用価値をクルートに報告しているところだが、自分はどうにもあの幼馴染に弱い。
あの呑気な幼馴染が陰謀だの秘計だのに巻き込まれているのを見るのはあまり良い気がしないものだ。
たったそれだけのつまらない感情から、主人に対して秘め事を一つ抱える羽目になるとは。幼馴染の存在も、その秘め事を軽く扱えるだろうと考えた自分も、こうなっては呪わしい。
身の潔白を示せ、と主人に刃を突き立てられて身動きが取れなくなるほど、自分は甘かった。
それをどう覆せば良いか、と思考するモエギを押しとどめたもの。
それもまた、クルートの言葉。
「お前はまだ私を解っていないね」
そう言ったクルートの声音は、いつになく、優しかった。
それに困惑する。
いつもだいたい本心など悟らせないような完璧な微笑みを面に貼り付け、はるか高みから人々の動向を見下ろしては全くの無関心でいるのが、クルート・ルガナという貴族の有様ではなかったか。
「…伯爵様のことはあんまり解ったと思ったことはないですけど」
そんな困惑がこぼれたモエギの素直な言葉に、クルートが失笑する。
「おや、そうだったか。それは失礼」
楽しそうにひとしきり笑って見せてから、クルートは背もたれに身を預けた。
そこにはもう、モエギの知らない彼は姿を隠し、いつも通りの表情を見せる。
「私は、お前以上に貪欲なのだよ」
それは、知っている。
知っていると、思っていた。
「生きていく上で、努力の終わりは来ない。常に、全力で生きることに努める、それが人の宿命だ。野生を捨て、文明を選んだ人間の、生きるか死ぬかの戦いなのだと思っている」
野に放たれた命が常に死に脅かされるように、人もまた他者に、社会に、制度に、その命の行く末を脅かされている。
「それに安穏と身を任せているなど愚の骨頂。生きるための努力を怠るなど、醜悪の極み。」
お前もそれを知っているだろう、とクルートの言葉はモエギを脅迫する。
貧しい村で育ち、その日の暮らしも危うくして親を亡くし、親戚を頼り一人見知らぬ世界へ飛び出した。頼れるのは己だけ、その日の運命を左右するのは自分自身、そんな覚悟で生き繋いできた日々を知っている。この人は知っているのだ。だからこそモエギを拾い上げた。
「だからこそ、どんな事態も歓迎する。お前がミカヅキと手を組もうと、他の貴族に私を売ろうと、どんな手を使ってでも牙を剥くならそれを受けて立つ。それを裏切りだのと罵る気は一切ないね。お前もまた、生きるための戦いに身を投じたのだと、喝采をあげたいほどだ」
そのためにお前を育てている、とまで言われているようでモエギはその言葉にクルートの芯を見せつけられたことに気づいた。
「それではまるで」
まるで。
その先の答えを期待するようなクルートの視線。
言葉に出して良いのだ、と促す無言。
モエギは一呼吸ごとにクルートの思惑に吸収されるように身を乗り出していた。
「俺に殺されたがっているみたいに」
満足の笑みをたたえて。
「聞こえますけど」
モエギの言葉を受け止めたクルートが、狂喜に満ちたように見えた瞬間。
「まだまだ、お前程度にやられるとは思っていないがね」
と、穏やかに言葉を吐き出した。
その穏やかさは、確かにそれまでの場の空気にそぐわないものではあった。
知らず、呼吸さえも支配されていたかのような一時。
「だがそれに見合うほどに成長して欲しいと願っていることは確かだよ」
モエギは大きく息を吐き出す。
クルートの、何事もなかったかのような穏やかな様子に、一瞬の狂気は跡形もなく。
「それほどの覚悟無くして、この貴族社会で爵位を守っていられるものかね」
それほどに動じない。モエギ程度の小さな秘め事一つ、家を守る当主にとっては取るに足りないものなのだろう。
「だから、お前が誰と何を謀ろうと構わない。ミカヅキのあの変わり身も、お前の関わりがあろうとなかろうと、ただ私はそれを迎える用意がある、と言うだけだ」
「そんなに期待してもらっても、別に何もないですよ」
「ある方が良い、と言っているのに。つまらないことをいうものじゃないよ」
「…何らかの関わりは、持ちたいと思いますけど」
「まあお前は、謙虚なふりをして相当な野心家だと信じているよ」
と、紅茶のカップを手にし、「フローネストの教育の賜物とやらをね」などとからかわれては、まだまだ甘いと言われているようなものだ。
何をしても構わない、というクルートの本心は、モエギを育てるためのものでありながら、80点には到底満たないことを表している。
この家に仕える時間の積み重ねが20点。80点は最低条件。
「つまり、可もなく、不可もなく、ってことですね」
先ほどの同じセリフを、紅茶の入れ方ではなく、モエギ自身に対してのセリフとして言ってみる。
それも謙虚なふりだと思いたいね、と返され。
モエギもカップを取り上げた。
澄んだ美しい紅の色に、自身の顔が映り込み。
「だが、覚えておくんだね」
と、クルートの言葉が静かに紅に放たれる。
「主導の軸は常にお前自身が握っている事だ」
それが、何をしても構わない条件である、と言い含める。
モエギという一人の人間を手元で育て、主人にさえも牙を剥けと望むほどの執着は。
いっそ生への絶望のようにも感じられて、モエギは、紅に染まらざるを得なかった主人の境涯へと引きずり込まれていくのを感じていた。
「他人と手を組み敵対しようとも、お前が主導であるならば、それを招いたのは私自身の責任だと受け止めることもできるが」
他人にそそのかされ、己を見失い、命の主導を自ら手放すなどという最低な行為には侮蔑さえも生温い。
「お前が主導の軸を手放したと見做すその暁には、いっそ殺してくれと懇願するほどの報復措置をとる」
裏切りより、敵対より、はるかに許し難いという真意。冷酷にモエギを見据える彼に、親子の情はない。そんなものは必要ない。あるのはただ主従の絆し。
引きずり込まれた意識のそこで触れた主人の真意は、それでも、わずかもモエギを怯ませるものではなかった。
ずっと、以前より自分はそれを知っている。
生きるということは、自分以外の他者との戦いだ。
「殺してくれと懇願するくらいなら、自分でなんとかする方が楽ですね」
何を気負うでもなく、自然にそんな言葉が口をついて出ていた。
気づけば、クルートはいつも通りの微笑みを見せている。
それだからお前のことが嫌いではないよ、とつい先ほどにも聞いた言葉をあえてモエギに聞かせ。
「では、お茶をもう一杯、所望しようか」
「あ」
唐突に、この部屋の空気を現実にひきもどすクルートの言葉に、否応なく従いかけたモエギだったが。
「今度は100点の方を」と、主人の言葉は書斎の入り口の方へ向けて放たれた事に、モエギもそちらを見る。
この家を取り仕切る老執事が、ただ黙って一礼し、速やかにその場から姿を消した。


隣の芝生は青い鳥

2019年08月12日 | 天使ツアーズの章(取替え)

ヒロとミカにおっさん呼ばわりされてるテンツクだけど

私自身は魔物に性別はないと思っているので特におっさん感はないのですが

公式では普通に性別あるみたいだし、おっさんといえばおっさんなのかあ?

なテンツクとウイ、無事元に戻って「このくらいで勘弁してやるわ」です

 

私的チャレンジテーマ、人間見た目より(中身が見た目に出るから)中身が大事

に則って、ヒロとミカの入れ替えはもう全然違和感なかったので

これは行けるかも!とウイとテンツクも入れ替えたままラストまで持ってってみた結果

やっぱ流石にちょっと無理があったかな、の敗北宣言込みの

ミカ「違和感なさすぎだろ」←これが一番違和感だ!!

ではありますが、入れ替わりネタ、ここまでお付き合いありがとうございました

 

 

 

てことで

 

 

 

以下、書ききれなかった点をちょっと補足(いつもながらダラダラでぅす)

 

 

 

 

話の筋としては、締めに向けて着地点をどこに持って行こうか迷いに迷ってました

結果

隣の芝生は青い

探してた青い鳥は家に居たんだ

が混ざってしまった悲劇、ていうか喜劇?みたいな中途半端さがいただけない

 

書き出すまでの脳内ぼんやりイメージでは

楽しいのは自分(達)だけで、それを楽しめない人もいるんだって視点を持たないとそりゃ反感持たれるよね

的なことと

楽しい人たちばかり目につくだろうけど実は楽しくない人もちゃんと居て

でも楽しい人たちに配慮してあげて声をあげてないだけだから自分一人が楽しめないんだわ

って焦ったり不安に思うことはないのよ

的なことを盛り込んでいたものの、実際形にしてみると説教くさくなってきて断念

説教くさいっていうか、一番の問題は、セリフ多くてコマに入らないって所なのだけども

 

あと、作った当初のままだと師匠の倫理観がやばくないか?って焦ったので

・ウイがテンツクになって道中の旅人を襲いまくる所は、師匠が人を集めて非常訓練にした

・事件の後始末はテンツクの成長に期待で放置はまずいので、師匠がその後を見守る方向にした

この辺は流石に変更しましたかね

あ、本来のラストは、モシャスを使える魔物をウイがツアーズにスカウトして、完

(師匠が「私はウイの弟子なので私のことは兄弟子と呼ぶように」って魔物を連れて歩くのを想定してた)

ですが、魔物をテンツクにしちゃったので、テンツクにはあんまり素直に加入してくれそうなイメージないなてことで

今日はこのくらいで勘弁してやるわ、なラストに変えました

どっちでも良かったと言えば、どっちでも良かったかな…

そう言えばギリギリまでドラクエのモンスター使うか、オリジナルモンスターをデザインするか迷ってました

ドラクエの世界観を使わせていただいてるので、余計な混乱があるのもな、と思ってオリジナルは捨てましたが

正直、ミカのセントシュタイン出身設定も捨てたくて仕方ない…

もうただただ足枷でしかないこの辺、どうしたものやら、ですわ

 

てなこともいろいろ含めて 

脳内にしまってある楽しいネタは、実際そこから取り出して形にして、第三者的に見てみると

結構やばい

っていうのが(やっと)(ここで)わかる

それを体裁整えて取り繕ってる身としては、やっぱり中身が見た目に出るから中身が大事まじ大事

ですよ

 

まあそんな諸々の体裁を抜きにすれば、単にヒロミカとウイテンツクの入れ替わりネタがやりたい!

の一念のみだったので、なんとか形にすることができてもう思い残すことはありません

多分、これで大大大昔に作ったネタは出し切ったので(カテゴリで言えばゲームの章を描いてたくらい昔)

次からは比較的鮮度を保ってるネタということで(帰郷の章あたり…それでも5、6年前か…鮮度…鮮度って…)

足取り軽く行ってみます

 


天使御一行様

 

愁(ウレイ)
…愛称はウイ

天界から落っこちた、元ウォルロ村の守護天使。
旅の目的は、天界の救出でも女神の果実集めでもなく
ただひたすら!お師匠様探し!

魔法使い
得意技は
バックダンサー呼び

 

緋色(ヒイロ)
…愛称はヒロ

身一つで放浪する、善人の皮を2枚かぶった金の亡者。
究極に節約し、どんな小銭も見逃さない筋金入りの貧乏。
旅の目的は、腕試しでも名声上げでもなく、金稼ぎ。

武闘家
得意技は
ゴッドスマッシュ

 

三日月
(ミカヅキ)
…愛称はミカ

金持ちの道楽で、優雅に各地を放浪するおぼっちゃま。
各方面で人間関係を破綻させる俺様ぶりに半勘当状態。
旅の目的は、冒険でも宝の地図でもなく、人格修行。

戦士
得意技は
ギガスラッシュ

 

美桜(ミオウ)
…愛称はミオ

冒険者とは最も遠い生態でありながら、無謀に放浪。
臆病・内向・繊細、の3拍子揃った取扱注意物件。
旅の目的は、観光でも自分探しでもなく、まず世間慣れ。

僧侶
得意技は
オオカミアタック