【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

不動産賃貸業の税金問題(不動産所得以外)

2018-01-19 15:05:00 | 所得税の確定申告
確定申告が始まりました(還付申告は1月4日から受け付けています)。会計事務所に依頼する場合には、できるだけ早くしてください。多くの会計事務所は申告期限(3月15日)のギリギリになっての依頼は引き受けません。申告内容によっては「年内で受付けを締め切る」というケースもあります。

正確で有利な申告をするには、顧客との十分なコミュニケーションが必要です。後から気がついても遅いのです。そんなことは許されないのです。

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不動産所得の計算は購入時の取得価額(以後の減価償却)、大規模な修繕、入居者の出入り(敷金と保証金)さえ正確に処理しておけば、そのほかは非常に簡単です。なによりもお金の出入りの件数が少ないです。しかし、不動産所得のある人にはそれ以外に次のような税金に関する重大な問題が付きまといますので、正確な情報収集と適切な判断がしばしば求められることになります。

◆不動産を取得した資金の出所(源泉)

賃貸用不動産を購入するには高額な資金が必要です。税務署が把握している、不動産購入者の過去の所得と財産形成の状況からして不自然さがある場合には、税務署は所得や相続・贈与の申告漏れについて密かに調査を開始します。例えば、購入した不動産の名義人が専業主婦や未成年者である場合です。

◆消費税の申告と納税

不動産賃貸業の場合も、基準期間(2年前)における課税売上高が1000万円を超える場合には消費税の課税事業者となり、消費税の申告と納税が必要となります。なお、賃貸物件が「住宅のみ」の場合には収入が1000万円を超えたとしても消費税の課税事業者にはなりません。

納税する消費税は入居者から受け取った消費税から、諸経費を支払った際に上乗せして支払った消費税を差し引いた金額です。通常は受け取った金額のほうが圧倒的に多いでしょうが、賃貸物件を取得した年は支払った消費税のほうがはるかに多くなります。購入した建物の代金には多額の消費税が含まれているからです。

消費税の計算においては支払った消費税の計算をみなし計算することができる「簡易課税」が認められています。これが有利ならば選択すべきです。

◆固定資産税

当然のように課税されます。

◆事業税

不動産賃貸業も地方税においては事業に該当し、都道府県に事業税を納税しなければなりません。

◆譲渡所得

売却の際に課税される譲渡所得は、「何時売るか?」、「誰に売るか?」、「売却して得た資金を何に使うか?」によって大きく変わってくることがあります。

譲渡所得の計算は「売却収入-取得価額-譲渡費用」です。建物の取得価額は不動産所得の確定申告を続けていれば一目瞭然ですが、土地の取得価額については契約書か購入時の領収書しか手がかりがありません。売買契約書は大切に残しておいてください。

◆今後の相続(贈与)問題

不動産は相続税が課税される対象となる財産です。不動産の状況や貸付先によって相続税額は異なってきます。残された遺族が、相続税の納税に苦慮し挙句の果てには大切な不動産を「叩き売り」しなくて済むように生前に対策を講じておく必要があります。生前贈与は税負担が大きいといわれていますが、方法によっては(相続時精算課税など)負担が少なくて済む場合もあります。

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不動産を買えば節税になる?

2018-01-19 15:00:00 | 所得税の確定申告
不動産投資で一番気をつけなければならないのは、業者のセールストークを鵜呑みにするということです。中立的な立場の意見、会計事務所にはそれが期待できます。

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とにかく不動産を買い、それを賃貸すれば節税になるという考えは根強く、賃貸の採算や借入金の返済負担をあまり考えずに不動産に投資をする人がいます。

◆不動産所得の赤字は他の種類の所得と損益通算することができる

不動産所得が赤字(損失)となる場合がありますが、その赤字を他の所得(給与所得や事業所得など)と損益通算(差し引き)することを不動産投資の節税メリットと説明されていることがあります。

不動産所得が一時期は赤字となることがあります。投資の初期、大規模修繕を行った年などです。賃貸不動産業というのは必要経費が特定の年度に集中し赤字になる傾向にありますが、その赤字は以後の年度で回収しなければなりません。もし、長期間、赤字が続くのでしたら財産が擦り減っているということです。

◆相続税・贈与税の節税対策と混同している

相続税・贈与税において現金(預貯金)は額面どおりに課税されますが、不動産は取引価格(時価)より低く課税されることがほとんどです。土地は一般的には国税庁が算定する路線価で評価して課税されますが、この路線価は実際の取引価格よりも低く設定されています。建物は固定資産税評価額で評価されますが、これも現実の取引価格よりも低いことが普通です。

ですから、現金を不動産に変えて贈与する、あるいは相続を迎えるほうが税負担は軽くなります。これを所得税の節税と混同している人がいます。不動産を買えば現金は減りますが直ちに所得税の節税にはつながらないのです。

さらに、不動産を借入金で購入することを相続税の節税と説明していることがあります。借入金という「負の遺産」が相続財産を減らすからです。いうまでもなく借入金は返済しなければなりません。遺産と遺産(相続で取得した不動産)からの収益でもって借入金が返済できない場合は大変なことになります。

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★不動産賃貸業はサービス業です!

不動産賃貸業で成功するには優良な入居者(安定収入がありマナーもよい)の確保が必要不可欠です。そのためには、賃貸物件の立地条件や構造が良好であるだけでなく、入居者に快適な環境を提供するという「サービス精神」と「サービス提供のノウハウ」が何よりも大切です。

節税のためだけに不動産を購入しても財産を擦り減らすだけです。やる気のない業者が儲かるはずがないからです。「私は家主だ、大家だ、オーナーだ。キミに貸してやっているんだ!」という態度では消費者の要求が日増しに高まる昨今では優良な入居者は絶対に集まりません。不動産賃貸業はホテルと同じで、年中無休の24時間営業という大変厳しいサービス業なのです。

「関連業者や金融機関が儲けさせてくれる」、「税理士がうまく節税してくれる」は甘いです!

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不動産所得の計算

2018-01-18 22:00:00 | 所得税の確定申告
賃貸アパート経営、競争が激しくなってきました。

収支を正確に把握する、あらゆる事業の基本です。収支を把握するのは確定申告のときだけで、ただ、税額に愕然とする。それではだめです。

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不動産所得とは、不動産の貸付けによる所得です。不動産所得の金額は、事業所得同様に「収入-経費」として計算します。

不動産所得の計算は事業所得と比べて収入や必要経費の件数が少ないことから簡単で、記帳も1年分をまとめてできるかもしれません。しかし、個々の収入や必要経費の金額が大きいことがあり、処理に当っての判断次第で税額が大きく変わります。ですから、不動産所得のある人は常日頃から多額な入出金の税務上の扱いついて注意しておく必要があります。また、ミスが重大な計算誤りにつながることもありますので、余裕を持って処理をして、何度も見直すことが必要です。

◆入居者別の収入(管理会社の報告書を利用)

収入を集計するに当たっては、管理用に作成している入居者別の家賃の入金記録から集計します。管理会社に集金を任せている場合には、管理会社から送られてくる報告書を集計します。収入の大部分は家賃ですが、保証金や敷金などが不定期に入金されることがあります。これらについても入居者別に把握しておきます。

よほど賃貸物件も入居者も多い場合は別として、物件も数件で入居者も数十人の場合には収入の集計はそんなに難しくないと思います。

◆賃貸物件の取得価額(判断によって必要経費の額が大きく変わる)

賃貸物件の取得価額の決定は大変重要です。なぜならば、以後の大変長期にわたる減価償却の計算に大きな影響を与えるからです。不動産所得の必要経費の大部分が減価償却費ですので取得価額の決定は慎重にしなければなりません。

○土地と建物を一括して取得した場合
取得価額を土地と建物に区分しなければなりません。契約書にそれぞれの価格が明記されている場合にはそれに従いますが、明記されていない場合には時価などを手がかりにして自ら計算しなければなりません。当然、建物の取得価額が多いほど減価償却費が多くなるので有利になります。

○入居中の物件を取得した場合
売買価格は敷金や保証金を差し引いた金額となりますが、取得価額の計算ではこれらを加えた金額となります。資産(土地と建物)と負債(敷金や保証金)を同時に取引きすることから売買価格は差引計算となりますが、税務計算上は資産と負債を別々に計算します。

○付随費用の扱い
不動産業者の仲介手数料は取得価額に含めなければなりませんが、不動産取得税や登録免許税は取得価額に含めずに購入した年度の必要経費にすることができます。

○相続や贈与で取得した場合
被相続人や贈与者の取得価額を引き継ぎます。相続税や贈与税の計算で用いた時価ではありません。

○自宅を賃貸に転用した場合
取得価額から賃貸用に転用するまでの期間の減価償却相当額を差し引いた金額が取得価額となります。

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事業所得の必要経費

2018-01-13 11:35:00 | 所得税の確定申告
とにかく領収書をかき集めてください。ただし、事業と無関係なものは混ぜないでください。でも、その判断が容易ではありません。

次に分類(科目)です。「必要経費合計・・・・円」といった記載は認められません。領収書を分類して集計するか、会計ソフトに分類して入力するかしなければなりません。

必要経費の分類と集計は会計事務所にお任せください。領収書を紛失している場合もご相談ください。

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必要経費とは、収入(売上)を得るための売上原価(仕入代金)と諸経費のことです。必要経費の「必要」とは「事業のために必要である」という意味で、売上に対応する商品の仕入代金は当然として、事業に関連しての支出である以上は必要経費とすることができます。

事業に必要な経費であるならば、「こんなに必要経費が多いと税務署に怪しまれる(認めてくれない)」と、考える必要はありません。例えば、あまり成果を生まなかった多額の広告宣伝費、事業拡大を見込んでやや広めの事務所や倉庫を借りた場合の賃料も、事業のための支出である以上は必要経費とすることができます。

反対に、事業に無関連の支出はどんなに少額であっても必要経費に含めることはできません。

★必要経費の分類

税務署が配布している青色申告決算書や収支内訳書では、必要経費を多数の項目(科目)に分類しています。「租税公課」「荷造運賃」「水道光熱費」「旅費交通費」「通信費」「広告宣伝費」「接待交際費」・・・・と延々と続きます。税務署はその手引書で詳細かつ平易な解説をしていますが、必要経費の内容は事業者により異なり、無数に考えられますので相当悩むことがあります。大切なことは「分類よりも、必要経費となるかどうか(事業に必要かどうか)」です。まったく的外れな分類はともかくとして、必要以上に分類に過敏になることは賢明ではありません。

★親族に支払う給与

「生計を一にしている(ふところが同じ)」親族に対して支払う給与は、原則として必要経費にはできません。

これは、親族への所得分散をすることによる所得税の負担減少を防止するためです。わが国の所得税はいわゆる累進税率を採用していることから、所得金額が上昇するにつれて税率も上昇します。これを避けるために所得分散は行われます。

しかし、生計を一にする親族への給与の支払いも経済的に合理性があるので(当然なので)、例えば、次のような一定の条件のもとに必要経費とすることを認めています。

○事業者と生計を一にする配偶者その他の親族であること
○その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること
○その年を通じて6月を超える期間その事業に専ら従事していること

青色申告と白色申告で親族に支払うことができる給与の額が異なります。また、青色申告の場合は事前に税務署への届けが必要です。

★もっと必要経費を計上しておけばよかった・・・

必要経費になるかどうかの解釈や判断は人によって異なります。誰かから「これも必要経費になった!」と聞けば損をしたように感じるのは当然です。大切なことは、必要経費に関しての信念や哲学を持ち、迷いを捨て去ることです。「必要」ということに関して、自身が納得できればいいのではないでしょうか。

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事業所得の収入

2018-01-13 11:30:00 | 所得税の確定申告
事業所得の確定申告で大変なのは「記帳」、帳簿を作成しなければならないということです。帳簿は事業所得を算出するプロセスの記録です。税務調査の際には、帳簿を提示しなければなりません。「(事業所得の)この部分はどのようにして計算しましたか?」という調査官の質問に答えるために帳簿は作成するのです。

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事業所得の収入は、いわゆる「売上」と呼ばれるもので、その年に「収入とすべき」金額を収入としなければなりません。収入とすべき金額には、収入の対価としてその年に現金を受け取った分だけではなく、入金はまだでも収入に含めなければならない分もあります。要するに、「収入とすべき権利の確定」している金額を収入としなければならないということです。

「入金もまだなのに課税の対象にするとは、わが国の税制はなっていない」と憤慨する人がいます。しかし、「信用取引(代金決済は後日)が一般的であること」、「経費についても支払いが済んでいなくても一定のものは収入から差し引けること」を考えると、少しはご納得いただけるのではないかと思います。

抵抗はあるかもしれませんが、この考えは事業を行っていく以上は受け入れるしかありません。いつまでも、拒絶していると税務署との衝突が永久に続きます。「今年入金がないのに売上に含めた分は、来年入金があっても売上にはならない」のですから、あまりムキにならないのが賢明ではないでしょうか。

また、収入に含めたけれども最終的に入金がなかった分については、値引きや貸倒れ(かしだおれ)として翌年以降の事業所得からの減額が認められます。

★収入とすべき日と金額の具体例

収入とすべき日と金額の計算は業種や業態によって異なってきます。

○商品の販売
商品を引渡した日、一般には出荷した日が収入とすべき日になります。つまり、年度中に引渡した商品の代金合計がその年の収入となります。小売店の場合にはレジで精算した日となります(入金日と一致します)

○建設工事の請負
受注した物件が完成し引渡しをした日が収入とすべき日です。その年度中に完成し引渡した物件の受注代金合計が収入となります。

○サービスの提供
個々のサービスの提供が完了した日が収入とすべき日です。その年度中に提供が完了したサービスの代金合計が収入となります。

★収入に関する基礎資料

収入は税務調査における重点的調査項目です。収入に関する帳簿(総勘定元帳や売掛帳など)は当然として、個々の収入の内容を明らかにする次のような資料までもが調査の対象となります。

見積書控
注文書
請求書控
領収書控
預金通帳
レジの記録
出荷の記録

★反面調査

反面調査とは、税務調査での調査手法のひとつで、調査対象納税者の取引先から関連データを入手するという方法です。収入に関しての帳簿や基礎資料が不正確、存在しない、あるいは納税者が提示しない場合にはこの反面調査が行われます。反面調査が行われると取引先との関係が悪化することもありますが、それを理由に反面調査を拒むことはできません。

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