【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

源泉所得税の納期の特例

2017-05-31 17:00:00 | 源泉徴収と年末調整
給与などから源泉徴収した所得税(および共に徴収した復興特別所得税、以下同じ)は、源泉徴収の対象となった給与などを支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。しかし、「特例」として、給与の支給人員が常時10人未満の源泉徴収義務者は、源泉徴収した所得税を「半年分まとめて」納付することができます。これを「納期の特例」といいます。この特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした所得税と、税理士、弁護士、司法書士などの「一定の報酬」から源泉徴収をした所得税に限られています。

この特例を受けていると、1月から6月までに源泉徴収した所得税は7月10日、7月から12月までに源泉徴収した所得税は翌年1月20日(10日ではありませんよ!)が、それぞれ納付期限になります。

この特例を受けるためには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出する必要があります。この申請書を提出すれば、提出した翌月以降に源泉徴収する所得税から特例の対象になります。例えば、7月から特例を受けたい場合には6月中に提出しなければなりません。

納期の特例を受けている場合には、「特例用の納付書」で納付しなければなりません。特例用の納付書は特例適用期間の税額を一括して納付する様式になっています。

給与の支給人員が常時10人超となって特例の要件に該当しなくなった場合は、「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出しなければなりません。この場合、該当しなくなった月以降は特例が適用されませんので、原則どおり源泉徴収した翌月10日までに納付しなければなりません。例えば、4月に該当しなくなった場合には、「1月から3月」は特例が適用され、4月以降は原則どおりとなります。

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◆特例を受けるには給与の支給人員が常時10人未満でなければならない
◆全ての所得税が特例の対象になるのではない
◆特例の対象期間は任意の半年間ではなく1月から6月までと7月から12月までとなる
◆特例を受けるには特例を受ける前月までに申請しなければならない
◆特例を受けている場合には特例用の納付書で納付しなければならない
◆納期特例の要件に該当しなくなったならば届けをしなければならない
◆納期特例に該当しなくなった月から原則どおりの納付をしなければならない

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29年版 源泉徴収税額表とその見方
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日本法令


特別徴収の税額決定通知書(大阪市のサイト)

2017-05-06 10:00:00 | 地方税
間もなく特別徴収の税額決定通知書が送られてきます。大阪市のサイトでは、特別徴収に関するささいな疑問を大変わかりやすく解説されており、大阪市と関わりがない人でも役に立ちます。

なぜ特別徴収を行わなくてはならないのか?

訳もなく徴収しろといわれても納得できませんよね。地方税法第321条の4の規定により、所得税の源泉徴収義務がある給与支払者(事業主)は、従業員の個人住民税を特別徴収することが義務付けられています。法律ですので、事業主や従業員の意思で特別徴収するかどうかを選択することはできないのです。

アルバイトやパートの従業員も特別徴収が必要ですか?

従業員が前年中に給与の支払いを受けており、当年度の4月1日において給与の支払いを受けている場合は、特別徴収しなければなりません。アルバイト・パートなどの非正規雇用者であっても、この要件に該当する場合には特別徴収をしなければなりません。ただし、例外があります。他の事業主から支給される給与で特別徴収されている、毎月の給与支給額が少なく特別徴収しきれない場合などです。

税額決定通知書に記載されていない従業員がいるのはなぜか?

給与支払報告書が未提出の場合は税額決定通知書に記載されません。提出が遅かった場合も税額決定通知書に記載されないことがあります。給与支払報告書を期限内に提出している場合であっても、1月1日時点での住所が大阪市外の場合は大阪市から該当の市町村へ転送することになっていますので税額決定通知書には記載されません。大阪市に住所があっても、給与支払報告書に記載された住所と大阪市が把握している住所と一致せず実情を調査中である場合には税額決定通知書には記載されません。

特別徴収税額決定通知書の送付先を変更してほしい。

よくあると思います。給与支払報告書を提出後、特別徴収義務者が引っ越した場合です。

税額決定通知書(特別徴収義務者用)に個人番号欄が追加されているがその目的は?

特別徴収義務者(給与支払者)と市町村との間で、納税義務者(従業員等)の正確な個人番号(マイナンバー)を共有することで、事務の効率化につながることから、平成29年度「特別徴収税額の決定・変更通知書(特別徴収義務者用)」に個人番号欄が追加されました。

なぜ、個人番号通知書が別郵便で送られてくるのか?

個人番号通知書?

特別徴収税額決定通知書だけでも大変なのに、たまりませんよね。

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まほろばからの地方税のありかた提言 (奈良県税制調査会の挑戦)
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税務調査の立会い回数「100回以上」という不名誉記録!

2017-05-05 13:45:00 | 税務調査
税理士のサイトやブログで、税務調査の立会い回数の多さを誇らしげに書いていることがあります。どうやら、「100回」がひとつの目安なようです。確かに、この回数に到達するには税理士としての経験年数が最低でも20年以上は必要ですので(さらに相応の依頼者数も必要)、いわゆるベテランとか経験豊富という域に達しているとはいえるでしょう。

税務調査のほとんどが、調査対象に選定されるべくしてされています。税理士ならば、どのような申告をすれば調査対象に選定されるかがわかります。当然、税務調査の結果は惨憺たるものです。「なぜ、(依頼者を)説得できなかったのか・・・」、「もう少し資料を収集検討していれば・・・」、税務調査の後に残るのは不快感、嫌悪感、敗北感、挫折感、無力感、厭世観、虚無感、疎外感・・・です。そこからは何も生まれません。

まともな税理士(人間)であれば、税務調査を10回程度経験すれば、「もう、こんなことをしていてはいけない!これからは、税務調査の対象に選定されないような申告をしよう。それが、依頼者のためもなる!」という結論に行き着きます。しかし、性懲りもなく100回を超えてしまうのです。その事情はお察しのとおりです。

★良性(?)の税務調査
税務調査が行われても全く問題点が指摘されない、要するに追徴税額がゼロの場合もあります。税務調査は「一定の基準」で一定件数以上を行わなければならないようで、「問題なし」の納税者が選定されることもあるようです。まさに、「良性」です。このような調査に立ち会ったことを自慢する税理士がいますが、そのような税理士もそれとは比べ物にならないほど「悪性」の税務調査に遭遇しているはずです。税務調査が行われる割合は、納税者数の数パーセントと聞いています。当然、悪性が大多数となります。そうでないと困ります。

★私に頼めば税務調査はありません!
これも問題があります。大切なのは、私(税理士)ではなく依頼者(納税者)です。申告納税制度の主役は納税者です。税理士は、脇役、世話役、裏方でなければなりません。

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元国税調査官が明かす税務署の秘密
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売上代金を値引かれた

2017-05-05 13:30:00 | 勘定科目と仕訳
売上は発生主義で計上しなければなりません。売上は入金に先行して、物品販売ならば出荷の時点で、サービス業ならばサービスが終了した時点で計上しなければなりません。これが「鉄則!」ですが、この鉄則があるがために売上計上したとおりの金額が入金されない場合の処理をどうするかという問題が生じます。

そのひとつが値引きです。

■見積(定価)どおりに販売できなかった(価格交渉段階での値引き)

この場合の値引きは仕訳には表れません。仕訳は相手先との間で成立した販売価格で行いますので、成立した価格が見積価格や定価に対してどのような水準であれその差額は仕訳には反映しないのです。なお、見積書や店頭(サイト)の表示において値引き(値下げ)としている場合も、その価格で取引が成立しているのですから仕訳は不要です

■請求どおりの支払いがなかった

売上計上の段階で販売価格は成立していますので売上計上はその販売価格で行います。この成立した販売価格が変更されることはありませんが、ごくまれに変更(通常は減額)されることがあります。「一部分の品違い」「納期遅れ」「接客不良」などを原因としてやむを得ず値引きが行われる場合があります。仕訳は値引きが確定した時点で次のとおり行います。

≪借方≫売上(あるいは売上値引き)≪貸方≫売掛金

売上値引きの額は請求書において明記しておく必要があります。通常は値引かれた翌月の請求書において明記し、その月に値引きの仕訳もします。

■請求額の訂正(請求ミス)があった

これはミスですのであってはいけないことです。そして、誤って発行した請求書の処理は慎重に行わなければなりません。すでに仕訳をしている場合には、誤った仕訳を「逆仕訳」で取り消し、正しい仕訳をします。

≪借方≫売上≪貸方≫売掛金→誤った金額の取消し
≪借方≫売掛金≪貸方≫売上→正しい金額での売上計上

誤った金額の請求書をすでに得意先に手渡している場合には廃棄か返却を求めます。こちらで保管している「控」は訂正理由を記録の上保管しておきます。

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★販売価格が正式に決まる前の請求
特定の業種や企業によっては請求額から必ずといってよいほど減額して支払われることがあります。このようは方法を「査定」などと呼ぶことがあります。請求は「希望販売価格」にすぎないのです。このようなケースでは、先方が「支払通知書」などと称する書面で最終的な支払額を明示してきます。請求額との差額は、その書面が発行された月に値引きとして処理することになります。

★支払の保留
これは、請求額そのものは認めつつも資金繰りの都合で支払いを繰り延べているだけです。ですから値引きではありません。

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【設問編】読まないで会計思考を身につける方法(上)
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小松 啓


法人(会社)が税務申告で使用する納付書の種類

2017-05-02 18:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
法人(会社)が年に一度決算申告をして、その結果納付する税金の納付書は次のとおりです。

●法人税の納付書
税目番号は030です。税額は、法人税・地方法人税確定申告書、別表1(1)の15の「差引確定法人税額」です。

●地方法人税の納付書
税目番号は040です。税額は、法人税・地方法人税確定申告書別表1(1)の42の「差引確定地方法人税額」です。

●消費税及び地方消費税の納付書
税目番号は300です。税額は、消費税及び地方消費税確定申告書表紙の26、「消費税及び地方消費税の合計(納付又は還付)税額」です。2種類の税目を1枚の納付書で合算して納付します。

以上は、いずれも国税で納付先は管轄の税務署です。なお、納付は金融機関でできます。

●法人道府県民税・法人事業税・地方法人特別税の納付書
これがややこしいです。法人道府県民税はともかくとして、事業税と地方法人特別税を道府県に納めることを知らない人もいると思います。税額は、申告書の第6号様式から転記します。「記入要領」を参考に漏れなく転記してください。

●法人市町村民税の納付書
これは比較的簡単ですが、法人税割と均等割を分けて記入し合計を算出しなければなりません。税額は、申告書の第20号様式から転記します。法人税割は13から、均等割は17から転記します。

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