【実録】会計事務所(公認会計士・税理士)の経理・税金・経営相談

大阪市北区の築山公認会計士事務所(築山哲税理士事務所)です。
身近な疑問の解説と役立つ情報の提供をさせていただきます。

仕訳の漏れと重複を防止・発見する方法

2014-08-29 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
仕訳は漏れなく行う必要があります。また、仕訳が正しくても重複していてはいけません。仕訳の漏れと重複を防止・発見することは、正しい仕訳をすることと並んで非常に重要です。

漏れと重複が容易に発見できない仕訳もありますが、下記によって漏れと重複の大部分が発見されますので、是非とも試してください。

■原始記録に処理済みマークを付す

原始記録とは、預金通帳、請求書、領収書など、仕訳の基となる資料のことです。特定の原始記録からの仕訳が済んだならば、原始記録に「ペンによるチェックマークを付す」「処理済みのゴム印を押す」などの方法で仕訳済みであることを明らかにしておく必要があります。

■現金預金の実際残高と照合する

試算表(総勘定元帳)の現金と預金の残高は、現金ならば試算表の日付の現金の残高(紙幣と硬貨の合計額)、預金ならば預金通帳の残高に一致しなければなりません。一致しない場合には、現金あるいは預金に関する仕訳の漏れあるいは重複があるということです(もちろん、仕訳の現金預金の額が間違っていることもあります)。

■売上記録と預金通帳の入金欄を照合する

売上代金が銀行預金振込みの場合には、預金通帳の入金欄を売上計上(借方は売掛金、貸方は売上高)の原始記録である納品書や請求書の控と照合します。預金通帳にはあるけれども原始記録にはない場合には売上計上漏れ、原始記録にはあるけれども預金通帳にはない場合には売上計上の重複(余計な売上計上をしている)と考えられます。

■試算表を眺める(?)

試算表の各勘定科目に目を通して、「この勘定科目はこうなるべき」「こんな勘定科目が計上されるはずがない」という尺度と照らし合わします。雲を掴むような作業かもしれませんが、この作業は非常に大切です。「おかしい(こんな金額のはずがない)」という勘定科目がある場合にはその勘定科目の総勘定元帳を検討してみます。この方法は、仕訳の漏れ・重複だけでなく、誤り(金額と勘定科目)を発見するためも行います。

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仕訳の漏れと重複は、対象となる取引が多くなればなるほど発見が困難になりますので、こまめにチェックするよう心掛けてください。

会計ソフトがしてくれる決算手続(試算表の勘定科目を決算書の様式に集計する)

2014-08-27 17:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
会計ソフトには決算書を作成する機能があります。この機能は、試算表の勘定科目とその金額を、決算書の勘定科目に転記・集計するという機能です。試算表は会社内部の管理資料ですので、決算書という外部報告用(株主、債権者、税務署への報告用)に組み替える必要があるのです。

試算表と決算書は内容が同じでなければなりません。勘定科目の名称や配列が違うとか、決算書では試算表の勘定科目が集約されているとかは別として、「利益」「総資産」「負債」「純資産」は同じでなければなりません。

★決算仕訳は入力しなければなりません

決算仕訳とは、決算のときだけにする仕訳のことです。「在庫」「減価償却」「未収・未払」などです。

決算仕訳も、日常の仕訳と同じようにユーザー自身で仕訳を考えて入力する必要があります。会計ソフトが自動的にはしてくれません。

★会計ソフトは節税対策をしてくれません

「もう少し飲食代を費用に計上してください」といったようなメッセージが画面に表示されるといったことはありません。ましてや、「節税モード」「銀行モード(融資が受けやすい決算書)」といった自動的処理は一切行ってはくれません。(会計ソフトには利益に課税される法人税の計算機能はありません。この機能は法人税申告書作成ソフトとして販売されています。)

★消費税の計算

多くの(ほとんどの)会計ソフトには、事業者として申告納税する消費税の計算をする機能があります。ただし、この機能もユーザーの入力の結果ですので、入力が誤っている場合には結果も間違いになってしまいます。

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決算処理(決算仕訳)は専門的で、その処理次第で結果が大きく異なってきます。思いもよらない税額になる、金融機関の評価が大きく違ってくるという結果になってしまいます。この部分の自動処理を会計ソフトの機能として期待するのはもっともなことかもしれませんが、会計ソフトはそこまで賢く(?)はありません。

会計ソフトを従業員のタイプに例えると?

2014-08-25 17:00:00 | 会計ソフト(弥生会計)
会計ソフトについての誤った認識をしたまま会計ソフトを導入し、トラブルを起こす人が後を絶ちません。このブログでも会計ソフトで「何ができるか」「何ができないか」をしつこいほど取り上げています。また、ネット上でも多数の情報があります。しかし、都合のよい情報だけを信じてしまうようです。会計ソフトメーカーの偏った説明を信じてしまうようです。

今回は、わかりやすくするために、会計ソフトを従業員のタイプに例えて説明してみます。性格を把握していないと恐ろしいことになる従業員がいると思います。会計ソフトも同じです。

■命令した仕事しかしない(命令しなければ何もしない)

会計ソフトは「仕訳」という命令を与えないと何もしません。ユーザー自らが「仕訳を入力」しないと、仕訳を総勘定元帳に転記し、試算表に集計はしてくれません。

■命令に対して忠実に仕事をする

会計ソフトは入力された仕訳を命令どおりに処理します。例え、命令が間違っていても命令に背くことはありません。

■命令した仕事は完璧にこなす

会計ソフトは命令を間違って処理することはありません。コンピュータープログラムというものはそうでなければなりません。特に、会計ソフトのような定型的処理の場合にはこの点は完璧です。

■説教をしても「馬の耳に念仏」(向上心がない)

当り前です(笑)。

会計ソフトメーカーのサポートに問い合わせても、「仕訳の誤り・漏れ・重複」は「ユーザーの自己責任です!」の一点張りです。

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★会計の恐ろしさは経験してみないとわからない

多くの会計ソフトユーザーがネガティブな情報を真摯に受け止めないのは、会計の恐ろしさを知らないからだと思います。だから、「そうはいうけれども、どうせ大丈夫だろう」と考えるのです。

人生、経験してみないとわからないことはたくさんあります。
経験してからでは手遅れなこともあります。
経験しても何の役にも立たない(無駄でしかない)こともあります(笑)。

「雑給」の扱い(雑給には危険がいっぱい!)

2014-08-21 17:00:00 | 源泉徴収と年末調整
「雑給」という勘定科目を使用することは多いです。役員の給料は「役員報酬」、正社員の給料は「給料手当」、それ以外(パートやアルバイトなど)を「雑給」として処理します。人件費をこの区分で処理することは管理上大切なことですが、雑給の源泉徴収処理が適切に行われていないことが非常に多いです。「雑給は月額8万8千円未満なので(源泉徴収が不要なので)」「雑給で処理しておけば簡略な扱いが認められる」は甘いです。危険です!

■給与台帳は作成する
「雇用期間が短い」とか「出入りが激しい」とかは関係ありません。給料を支給した以上は、支給した者全員の給与台帳を作成しなければなりません。給与計算ソフトを使用している場合には「登録」が必要です。

■扶養控除申告書を入手する
「源泉徴収の対象額(月額)を超えることはないので源泉徴収は不要」といえるようにするには扶養控除申告書を入手しておく必要があります。扶養控除申告書を書いてもらっていない場合には、たとえ月額1万円の給料であっても源泉徴収が必要になるのです。信じられないかもしれませんが。

■源泉徴収をする(乙欄に注意)
月額8万8千円以上の月は当然として、月額8万8千円未満であっても掛け持ちで勤務している者については「乙欄」で源泉徴収をしなければなりません。乙欄?

■源泉徴収票を発行する
給料を支払った者全員について源泉徴収票を発行しなければなりません。「税額がゼロ」「家族の配偶者・扶養控除の対象」「年末調整はしていない」は関係ありません。

■源泉所得税の納付書にも記入する
源泉所得税の納付書を記入するにあたっても源泉徴収税額がゼロであっても「人員」「支給額」に含めなければなりません。源泉徴収をした場合には「税額」に含めるのは当然です。

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★月額8万8千円未満は源泉徴収不要

あらゆる判断・手続・事務作業をした結果であることをご理解いただけたかと思います。

仕訳がわからない取引に遭遇した際の対処法

2014-08-19 17:00:00 | 経理業務(帳簿の作成)
簿記会計の取引(仕訳の対象となる事象)は無限に存在するために、まったく経験したことがなく、さらにはどれだけ調べても仕訳が見つからない取引に遭遇する場合もあります。そのような場合は、取引の事実関係からその「会計的性格を明確にする」ということが大切になります。

■入金取引の場合

入金取引の貸方は、「収益の増加」「負債の増加」「現金預金以外の資産の減少」「費用の減少(取り消し)」などが考えられます。

利益につながる取引の場合には「収益の増加」「費用の減少(取り消し)」です。利益は伴わないけれども、現金預金が増えるのは「負債の増加(例えば借入をした)」「現金預金以外の資産の減少(例えば売掛金の入金があった)」が考えられます。

入金取引に関して注意をしなければならないのは、すでに収益を計上する仕訳をしている場合です。「売掛金/売上」という仕訳がその典型です。入金されたときの貸方は売掛金です。売上とすると収益が二重に計上されることになります。

■出金取引の場合

特に悩むのは出金取引です。出金の多くを占める経費のパターンは無限にあり、さらには社会経済の発展・変化によってさらに拡大するとともに変化もしているからです。出金取引は、まさにモンスターです。宇宙です。

経費の勘定科目には大変悩むと思います。特に、新手の商品やサービスに関しての勘定科目は既存の勘定科目の中には見つからないことがあります。その際は、会社(経営者)の方針を明確にし、とりあえず既存の勘定科目で処理するか、勘定科目を新設します。

経費に関しては費用配分の問題が付きまといます。全額を出金のあった事業年度の費用とするのか、資産計上をして複数の事業年度に配分するのかという問題です。

出金の中には費用とすることが許されないものもあります。典型は土地の購入です。土地は建物と違って使用や時の経過によって減価する(消耗する)ものではないからです。また、中小零細企業では代表者やその近親者に会社の資金から貸付が行われることがあります。貸付は返済してもらう必要がありますので、返済があるまで資産計上しておかなければなりません。