昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十七)ピンク色の紅茶カップ

2015-10-09 15:03:51 | 小説
自宅の部屋とは打って変わって、キャラクター商品が所狭しと飾られている。
土間側の窓には、アイドルグループのポスターとそのカレンダーが貼り付けてある。
その反対側にも窓があり、この家には不似合いなアルミのサッシだ。
女の子らしく、レースとピンク系のカーテンが取り付けられている。

その窓の下にコタツが置いてあり、片側を寄せている。
四畳程度の部屋では、中央に置くわけにもいかない。
もっとも、由香里一人だけである。
片側だけで、十分ではあった。

土間側の窓の下には色々のぬいぐるみが置いてあり、赤ちゃんほどの大きさのペンギンがお気に入りらしい。
壁際に設置してある本棚には、レディスコミック群が一杯になっている。
申し訳程度に百科事典が収まっているが、飾りのようなものらしい。
ドアの横にも棚があり、そこにはカップ類が置いてある。
紅茶が好きな由香里の為に、電気ポットも置いてあった。

「先生、コタツに入ってて。いま、紅茶を用意するから」
本棚を背にしてコタツに入ると、
「だめだめ! ここの、広いほうに入ってて。
いいよ、寝転がっても。疲れたでしょ、先生も。
お母さんって、人使いが荒いから」
と、移動させた。

「いいよ、ここで。本棚に寄りかかってれば、楽だから」
と言う彼だったが、泣きそうな表情を見せる由香里に負けてしまった。
「はい、どうぞ」
可愛らしいピンク色の紅茶カップが差し出された。

「お砂糖なしでも、おいしいよ。ねっ、香りが良いでしょ
。英国直輸入物ですって。お歳暮で、届いたの」
案の定、由香里は彼の隣に滑り込んできた。二人並んで座るには狭すぎる。
「由香里ちゃん。狭いよ、これじゃ」
「いいの。由香里は、ここがいいの」

両親が顔を覗かせないかと気が気でない彼に対し、由香里はまるで気にしていない。
その天真爛漫さに、彼は苦笑いをするだけだった。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿