昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

蒼い恋慕 ~ブルー・れいでぃ~ (亀の歩み)

2010-02-01 18:00:04 | 小説
バンドが交代している。
身を乗り出さんばかりだった女も、ストローを口に運んでいる。

バンドのボーカルがマイクスタンドを蹴っては、
がなりたてている。
素っ頓狂な声を張り上げている。

シャウト!と、何度も叫んでいる。
ホールで踊りに興じる若者も、シャウト!と叫んでいる。
ボーカルに合わせるように、拳を振り上げている。

少年が立ち上がったーが、逡巡は続いている。
帰られるのだ、このまま何事もない顔をして帰られるのだ。

しかし少年の足は、あの女の元に動いた。
手足のない達磨の少しの歩みではあっても、
確実に少年の歩は進んだ。

亀のようにのろい歩みではあっても、
確かに女の元へ。

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