昭和の恋物語り

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長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十八)強烈な光を発した

2015-11-02 08:59:59 | 小説
「いや、いやっ、子ども扱いしないで! 
それに、たけしさん以上にステキな男性なんて、どこにも居ない! 
たけしさんが好きなの、どうしようもなく好きなの。
それに、麻由美への対抗心なんかじゃない。
由香里の大事なものを、あげたいの。
今、せんせいにあげたいの‥‥」

彼の目を凝視して、由香里は訴えた。
思わず目線を外したくなるほどの、強烈な光を発した。

「わかった」
これ以上の言葉は、油に火を注ぐようなものだと考えた彼は、黙って由香里を抱きよせた。
あぐら座りの膝の上に、由香里を後ろ向きに座らせた。
そして両手で由香里を抱き締めると、耳元にささやいた。

「しばらく、こうしていようね‥‥」
「うん」

由香里はコクリと頷いた。勢いきったものの、不安な気持ちがまるで消え去っているわけではなかった。
このまま彼が由香里を求めたとしても、もちろん、受け入れる準備はしているつもりだった。
そうなるものと、決め付けていた。

しかし、今彼に抱き締められていると、“このままでもいいかな”と、考えてしまう。
じんわりと由香里の体が温かくなり、仏教語で言う安心(あんじん)が、由香里の体にひろがっていった。


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