昭和の恋物語り

小説をメインに、時折よもやま話と旅行報告をしていきます。

えそらごと (二十)

2018-10-23 08:00:13 | 小説
「OK!」と答えるや否や、町の外れにあるさほど高くはない山に作られた金華山ドライブウェイ―― 金華山の南に瑞龍寺山(通称水道山)があり、西麓の岐阜公園と南麓の岩戸公園を結ぶ山道―― に向かって車を走らせた。
その山頂を造成し、プラネタリウムが作られている。
このドライブウェイは、以前に二、三度走ったことはあるが、プラネタリウムには入ってはいない。
山頂の駐車場で一休みしてすぐに下りるだけだった。
                   
 小さな店舗の並ぶ忠節橋通りに入った。
路面電車のレールの上を走ると、車の振動が激しく二人の会話を邪魔してしまう。
やむなくのろのろと走る車の後ろに付かざるを得ない。
彼のイライラする気持ちがクラクションに手を伸ばさせた。

「やめなさいって、それは。
お年寄りじゃないの、前の車は。
ほんとに短気な子ねえ、あんたは」

 貴子のたしなめる言葉に、だってと反論しかかった彼だが、ルームミラーに映る真理子が貴子に同調するがごとくに頷くのを見て、わかりましたよと速度を緩めた。


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