モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

サルビア・コクシネア'Snow Nymph'の花 & 山本由松 ストーリー

2008-06-20 08:14:10 | セージ&サルビア
(写真)S.コクシネア・スノーニンフの花


サルビア・コクシネアは、アメリカ大陸のテキサス、メキシコ、ブラジルなど
年間を通じて温度が高く、乾燥して腐葉土が多い土壌で自生している。

トロピカルセージとも言われるように
温帯では見られない、ウルウルの光沢がある鮮やかな色彩に特色がある。

ピンクと白の桃源郷のような品種 コーラルニンフ('Coral Nymph’)
緋色ともいえる鮮やかな赤が燃えるように輝いている品種 レディインレッド('Lady in Red' )が有名だが

これは、白一色のスノーニンフ('Snow Nymph')
亜熱帯地方の乾燥したところで、 “雪のように真っ白な美少女”とは幻覚かもしれないが
サルビアでこのように鮮明な白一色も珍しい。

しかも
直立した茎に輪状につぼみがつき、次から次と真っ白な口唇形の花が咲き
ハチドリが大好きなセージでもあり、
羽を高速運動させ、空中に停止しながら蜜を吸う姿は、
白地に浮き彫りになるハチドリの色がさぞや美しいことだろう!!

(写真)スノーニンフの花々


S.コクシネア名前の由来
S.コクシネアは、1770年代に新種としての命名と登録がされており、
この頃からヨーロッパで栽培されるようになったようだ。

そして、そのあでやかな花の色から
緋のような色では → Scarlet sage
血のような真っ赤な色から → Blood sage
熱帯地方の植物なので → Tropical sage
そして、原産地から → Texas sage
など様々に呼ばれている。

それだけまだ共通認識が出来上がっていない植物でもあり、
寒暖の差がある温帯では栽培が難しいことにも一因がありそうだ。

サルビア・コクシネア発見者に日本の“Yamamoto”さんが・・・
キュー王立植物園のデータベースに
S.コクシネアの採取者として
日本の“Yamamoto”がブラジルで採取したと登録されている。

コレクター(採取者)のデータベースで確認すると、“Yamamoto”さんは1名しかいない。
Yamamoto Yoshimatsu (山本由松1893-1947)である。

時代考証的には100年ほどおかしく、S.コクシネアの発見者ではなさそうだが
日本の植物学者・プラントハンターとして面白い存在なので紹介してみる。

山本由松は、1893年(明治26)に現在の福井県鯖江市に生まれ、
福井師範学校を卒業し小学校の教員などを経て、東京大学理学部に入学。
早田又造教授に師事し、正宗巖敬とともに台湾、屋久島の植物の分類学的研究を行った。

在学中に台湾総督府中央研究所の嘱託となり、台湾の植物研究に没頭していった。
1928年(昭和3)には台北大学に迎えられ、
台湾・ジャワ・スマトラなどのジャングルに入り植物探索を行うなど、
約180種もの新種を発見したプラントハンターでもあった。

戦後は、中華民国政府の招きで台湾大学院教授に就任し、台湾の植物学の発展に貢献したが
1947年(昭和22)、つつが虫病に感染しこれがもとで亡くなった。
35年間台湾の植物研究にささげ、
彼を記念した「Yamamoto Yoshimatsu Commemorable Pavilion」が台湾につくられた。

太平洋戦争という激動期を経ているが、
このような純粋に初志貫徹した稀有な生き方が出来たことも素晴らしい。
植物は国境という人為的な境界線を低くする何かを持っているのであろうか?

あいにく、主題であるブラジルに植物探索に行き、S.コクシネアを発見した
という記録にはたどり着いていない。

S.コクシネア発見者である、山本さんは何処に??

(写真)S.コクシネアの花


サルビア・コクシネア‘スノーニンフ’(Salvia coccinea 'Snow Nymph')
・シソ科アキギリ属の耐寒性がない多年草だが、冬越えが難しいので1年草扱いがされる。
・学名、Salvia coccinea(S.コクシネア)。英名Tropical sage(トロピカルセージ)、Blood sage、Texas sage、Scarlet sage。和名はベニバナサルビア。
・白色なので、Salvia coccinea 'Snow Nymph' (Nymph Series)
・原産地はテキサスからメキシコなどの中央アメリカ、カリブ諸島、ブラジルなど
・開花期は、6月~11月。花柄を摘むと脇から新しい花が出る。
・草丈50~60㎝、春先に摘心して丈を詰め、枝を多くする。

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