モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

ブラジルのセージ発見の物語とサルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica)の花

2008-06-13 07:46:56 | セージ&サルビア
(写真)サルビア・ガラニチカの横から見た花


深いブルーの花を、秋まで咲かせるサルビア・ガラニチカ。
見るものに、元気と落ち着きを与えてくれる。

梅雨のような嫌な雨の日でも、
この花にはネガティブマインドを吹き飛ばす力がありそうだ。
それだけ、このブルーには元気と勇気にあふれる生命力が潜んでいそうだ。

英名では、アニスセンテドセージ(anise scented sage)と呼ばれ、
アニスのような香りがするセージと表現されているが、
それほど強く香りを感じることはない。

この花にかかわらず、セージ類は花柄とか枯葉を摘むと薬草のような独特の香りがする。
この香りに“不老長寿の伝説”があり、頭脳を明晰にする何かがあるのだろう?


このS.ガラニチカの別名は、バラバラで統一性にかける。
日本では、一般的に“メドーセージ”と呼ばれているが、
本物のメドーセージは別種なので、使い慣れた名前にさようならをすることにした。

英名のアニスセンテドセージ、原産地ブラジルの名がついたBrazilian sage
味気のない学名などを検討していたが、命名者、採取者を見て驚いた。

そこには、不老長寿の伝説を信じてもよさそうな物語があった。

(写真)サルビア・ガラニチカの正面から見た花


ブラジルのセージ 発見者の物語
S.ガラニチカは、1882年8月に学名が登録されており、採取日はこれより前になる。
その学名は、「Salvia guaranitica A.St.-Hil. ex Benth.」であり、
なんと命名者の一人が、英国の植物学者 George Bentham (1800-1884)だった。
シソ科の権威でありこの時期の中南米の植物の体系を整理していたことがこれでわかった。
(注1)ベンサムは、ボッグセージ、ヤマボウシに登場。
(注2)A.St.-Hil.は、フランスの植物学者サン=チレールSaint-Hilaire, Auguste François César Prouvençal de (1779-1853)。 
1816年から6年間ブラジルRio de la Plataで調査を行い、多くの動植物の標本をパリに持って帰った。現在はパリ自然史博物館のコレクションになっている。


この、ブラジルに咲くセージを採取したのは
コペンハーゲン生まれで病弱なレグネルだった。

Regnell, Anders Fredrik (1807-1884)は、裕福だが家庭的には恵まれない家に生まれ、
17歳の時に医学校に合格し、ウプサラ大学のリンネ派の先生の影響もあり植物学に興味を持つようになった。

1837年に卒業し1840年にはブラジルにわたった。
肺からの出血が止まらず健康的にすぐれないので、スウェーデンから遠い南国への転地でもあった。
この病は、ブラジルへの船旅中に回復したというから転地療法がうまくいった。
セージとは関係なかったのだが・・・・・

リオデジャネイロの医学校に入学し、カルダスという小さな村に生涯住むことになる。
ここに、土地とコーヒー園を取得し、コーヒーが順調に伸びて財を形成することになる。
この財産を一生の道楽である植物の調査探索と研究のために使った。
膨大な植物と標本を収めるハーバリウムを作り、多くの植物学者がここに滞在した。
カルダスという小さな村でのレグネル植物館は察するに相当目立ったことだろう。

これだけなら単に植物好きの偏屈な独身金持ちで終わったが、
母国スウェーデンにブラジルの植物研究を進める基金をつくり、
植物調査などを支援する“Regnellian Herbarium”設立の資金提供を行った。
設立された“The Regnellian herbarium”には、
中南米カリブ海などアメリカの植物標本40万件が集約されているそうだ。

今では世界の科学振興の基金となっている“ノーベル賞”は、
1901年にノーベル(1833 – 1896)の遺言ではじまったが、
これよりチョッと前に、南米の植物の範囲で、レグネルの研究支援が始まっていた。
ノーベル賞は、贖罪的な要素もあるが利益を社会還元するスケールの大きさに感心するが、
的を絞ったレグネルのドネーションも素晴らしい。

ブラジルのセージ S.ガラニチカは、採取日不明だが、レグネルの標本館にあった。
このセージは、健康と勇気と社会貢献を教えてくれるセージでもあり
不老長寿の伝説を創る1話となっても良さそうだ。

実際は、船旅で治ったのだが、
大きな物語の中では目をつぶる真実ということだろうか・・・
或いは、不老長寿は、個人の人間ではなく、人間の社会であると解すべきか??

ということで、
このセージを、“ブラジリアンセージ”と呼ぶことにしよう!!

(写真)ガラニチカの茎と葉


サルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica)=ブラジリアンセージ
・シソ科アキギリ属の耐寒性がある常緑低木。但し、冬場は、地上部から切り戻しを行う。
・学名は、サルビア・ガラニチカ(Salvia guaranitica A.St.-Hil. ex Benth.)。
・英名はBlue anise sage, Brazilian sage、anise scented sage、流通名がメドーセージ
・原産地は、ブラジル、アルゼンチンを含む南米。
・花弁が3cm級のブルーの花を6月から秋まで多数咲かせる。
・咲き終わった花穂は切り戻す。
・草丈50~150cmと大柄で、増殖力が強い。5月までに摘心を行い丈を調節し、花穂を増やす。
・夏場に乾燥させないように根元を腐葉土でマルチングすると良い。
・さし芽、株分けで増やす。

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