てっしーずのおでかけ日記

観たこと、聞いたこと、気づいたことを書くよ!

ルドンとその周辺―夢見る世紀末

2012年02月28日 | 都内のおでかけ
Odilon Redon

ルドンとその周辺―夢見る世紀末|三菱一号館美術館 グラン・ブーケ収蔵記念
会期: 2012年1月17日(火)〜3月4日(日)
http://mimt.jp/redon2012/

三菱一号館美術館に行くのはこれで3度目です。
マネ、カンデンスキーにつづいて、今回はルドン。
ルドン展は少し前のBunkamuraでの展示を見逃しているのでぜひ見たいと思っていました。
会期終盤になってきましたが、27日の日曜の時点で10分弱くらい建物の中に並んだ程度。
展示室は最初の部屋がやや混雑しているくらいで、あとはゆったり見られる状態でした。
目玉のグラン・ブーケはかなり大きくて見やすいのでまったく問題なしでした。

目玉の三菱の新収蔵作品をのぞくと作品は岐阜県美術館所蔵作品ばかり。
ルドンの作品を多数所蔵しているのがすごいですが、リニューアルオープンの展示もすごいようです。
http://www.kenbi.pref.gifu.lg.jp/page3312.php

ルドンというと幻想的な版画に尽きるという人間なので、第一部の「ルドンの黒」がやはり印象に残ります。
不気味さとユーモアを同時にもった独特の版画は一度見ると忘れられませんが、そこにたどりつくまでに、いい師匠や友人とめぐり合ったことが重要だったことがわかりました。
特にロドルフ・ブレスダンの版画はすごかったなあ。
http://bunka.nii.ac.jp/SearchDetail.do?heritageId=43281&isHighlight=true&pageId=2

この細かい描写はルドンとは全然違いますが、幻想的なイメージは継承しているんだろうなあ。
ブレスダンの作品の異常な描き込み具合を見ると、町田で見た「驚異の部屋」の展示を思い出します。
ルドンの絵には、そういった博物学的要素やシュールレアリスムに通じる文学的ともいえる要素が混在しているように思えました。
展示解説にはユイスマンスの「さかしま」によってルドンの名が世に広まったということが簡単に書いてありましたが、それ以上詳しい説明がないのはなぜなんでしょう。
「さかしま」というと退廃的小説の権化(?)みたいなものだから、そこで紹介されて有名になったことは「ルドン=退廃」というイメージがつきすぎて困ったりしなかったのかな?
まだ未読の「さかしま」ですが、これを読んだら挑戦したくなってきました。
相当難解なんでしょうが。
http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0990.html

話は「グラン・ブーケ」に飛びますが、これは本当に大きい作品でした。
ルドンが大きい作品を描くというイメージがなかったから特に大きく感じました。
ある男爵が食堂に飾るために描かせたものだということです。
確かに色は明るく食堂向けなのかもしれませんが、その花のただならぬ色彩は先日、近代美術館で見た大岩オスカールの作品を思わせる異様さがあります。
版画と絵画ではずいぶん印象の違いルドンの作品ですが、無垢と恐怖、優しさと残酷さといった複数のイメージがつねに共存して、見るものを不思議な感覚に陥れるところは共通しているように思えます。
そういえば、ロスコのあの大作も食堂に飾るためのものだったはずだと思い当たり、なんだか不思議な気分になりました。(ひ)

生誕100年 ジャクソン・ポロック展

2012年02月27日 | 都内のおでかけ
「ジャクソン・ポロック 51」

生誕100年 ジャクソン・ポロック展
2012年2月10日(金)~2012年5月6日(日)
東京国立近代美術館
http://pollock100.com/

割と早い時期に行ったからか、土曜の午後というのにじっくり見られました。
近代美術館は5時閉館なので、常設展示は駆け足で見るようになってしまいましたが。
常設展示がこれだけ質、量ともに充実しているんだから、基本6時閉館、土日は7時まで開館してくれるといいのになあ。

今回のポロック展は日本国内で集められる限りのポロック作品を集め、更に海外の作品も見られるという豪華なもの。
テヘラン現代美術館からきた「インディアンレッドの地の壁画」だけでなく、他の作品も見応えがあるし、展示自体がポロックという画家の物語になっているいい展示でした。

この展示を見て思いださずにいられなかったのが、昨年末に見た、斎藤憐の「アメリカン・ラプソディ」のこと。
すばらしい才能を持ちながら、自分には届かない高みを求めるが故の絶望と孤独。
そのつらさを消すために女性や酒におぼれる、というガーシュインの人生を連想させます。

この展示を見て意外だったのは、思っていた以上にポロックがまっとうな画家だったこと。
絵の世界から逸脱している典型のように言われるドリッピングを使った作品も、実にきちんと絵画であり、書の世界に通じる美しさがありました。
作品を微妙に修正した跡を見ても、全体の構成や美しさにどれだけこだわっていたか分かります。
そして、ネイティヴ・アメリカンや、開拓時のアメリカを連想させるプリィミティヴで幻想的な「アメリカ」的な絵画が彼のベースにあったことも。

会場で見ることのできる作品製作の現場を映した映像を見ても、決して、気分任せにアドリブで描いているという感じじゃないんですよねえ、やっぱり。
「ミステリアス・ピカソ」での、果てしなく作品が変わっていく、自由そのもののピカソの絵と比べると、ふたりの資質はまったく違うんだなあ、と感じずにはいられません。(ひ)





第4回恵比寿映像祭 ―映像のフィジカル

2012年02月24日 | 都内のおでかけ
Deterioration

第4回恵比寿映像祭 ―映像のフィジカル
東京都写真美術館
2月10日(金)~2月26日(日)
http://www.yebizo.com/

今年も「エビゾー」を見に行ってきました。
写真美術館で毎年、春に開かれるアート系の映像を集めたイベントです。
やはり、こういうイベントは始まってすぐに行くに限ります。
珍しく最初の週の日曜に行ったところ、それほど混雑はなく、じっくり作品を鑑賞できたし、体験型の作品にも参加できました。

毎年、マニアックになっている気がするイベントですが、今回はアートという言葉がぴったりの抽象的な作品が多くて、いわゆる映像作品に興味のない人には退屈なものが多かったかもしれません。
最近は、映像作品にも娯楽性を求めている人が多いんじゃないでしょうか、どうしても。
今回は大人向けの作品が圧倒的に多いのも、冒険といえる気がします。
多分、今年もメディア芸術祭の方は中高生向けというくらいの展示だろうから、こういう大人がじっくり楽しめるイベントがあってもいいでしょう。
私はこっちの方が好きです(といいつつ、メディア芸術祭もきっと見るけど)。

今年も無料作品のみ見てきました。
体験型の賛歌に予約のいる作品はふたつ。
ユリウス・フォン・ビスマルクの「ザ・スペース・ビヨンド・ミー」は円形の部屋の中で蛍光塗料を塗った壁に映像を映し、映写機を移動させることで映像の残像を残していくというもの。
人の影がぼんやりと壁に残る姿は面白いが、映像自体がよく見えないのと、作品が生真面目すぎるのが難。
映像を映す人の声がめちゃくちゃ小さくてよく聞こえないのも困りました。
http://www.yebizo.com/#pg_ex2

オフサイト展示として、ガーデンプレイスの広場で行われていたエキソニモのThe eyewalkerの方は刺激的な内容でした。
http://www.yebizo.com/#pg_off1

一度に2人までしか体験できないので、混雑すると待ち時間も長そうですが、私の行った時点では体験できる展示と分かっていない人が多くて、ほとんど待たずに入れました。
小さなブースに入って映像の前に座り、視線の調整をします。
なんだか眼科か眼鏡屋にでもいったような気分ですが、スタートすると外の広場の映像が映り、いろんな場所に焦点をあわせることで、次々と別の映像を見ることができる。
焦点をあわせやすい場所とそうでない場所があったりして、いつの間にか元の映像に戻ったり、向かい側のブースにいると思しき方の映像が映ったりする(ということは、こっちの映像が相手には見えているのか)。
うまくいろんなところに焦点があうと、もっといろんな映像が見られるのかなあ、などと思っているうちに時間終了。
「見る」という行為を「見る」ことによって、どんなものか」考え直すという面白い作品です。

普通の映像作品で印象に残ったのは、近代美術館で企画展を見たウィリアム・ケントリッジ。
http://www.yebizo.com/#ar_13

木炭で描いた、不思議な跡の残るアニメーションは独特の味わいがあります。
これを見るとユリウス・フォン・ビスマルクの作品相当緩いということになりますねえ。
ウィリアム・ケントリッジ作品がもつ奇妙な味わいはなぜかロバート・ワイアットの曲を連想させます。
ストーリーや曲調にまったく関係なく、存在自体に哀愁があり、それが実に複雑な魅力を醸し出している。

一番人気があったのは「東京シネマ」という科学映画のコーナー。
http://www.yebizo.com/#pg_ex8

ここは親子連れも多く、複数ある映像を熱心に見ている人がたくさんいました。
普通にストーリーのある映像ってこれくらいでしたからね。

唯一見られなかったのは伊藤隆介の作品。
展示に使われるテーブルと椅子をおじさんがなぎ倒してしまい、「危ないじゃないか! 」と勝手にキレていた。
多少部屋の中が暗いとはいえ、作品の中につっこんでおいて、自分が被害を受けたように主張できる人間ってなんなんだろう。
団塊の世代は立派というか何というか、とてもマネできませんね。
ともかく会場で一番インパクトのある出来事でした。
その後、その作品は調整中の紙が貼られ見ることができず。
大人が多いからといって油断はできませんね。(ひ)

特別展「北京故宮博物院200選」

2012年02月23日 | 都内のおでかけ
「清明上河図」アニメ版は妙にリアル

日中国交正常化40周年 東京国立博物館140周年 特別展「北京故宮博物院200選」
東京国立博物館 平成館 特別展示室
2012年1月2日(月) ~ 2012年2月19日(日)
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1418

この展示も最終版にすべりこみで行ってきました。
「清明上河図」の本物も当然ながら目に出来ず。
複製でさえ、なかなか目の前で見られないくらいの混雑振りでしたから、3時間以上並んで見るとどんな状態だったんでしょう。
貴重なものをひと目見たかったという気はありますが、そんなに並んでまでなんてのは無理ですねえ、正直なところ。
複製を見た限り、とにかくガラスケースのかなり間近に顔を近づけないと、細かい部分が分からなくて、全然面白くない。
近づくと分かるようになるからじっくり、そのままガラスにへばりついて見たくなる、という相当罪作りな代物です。
せめて、複製品くらいは一年間くらい特別展示させてくれたらいいのに、と思うのは贅沢でしょうか。
権利の問題に、意外(といっては失礼だけど)に中国がうるさいということなのかな。
そういえば、グッズ販売をしている東博の都合なのか、携帯で展示解説を撮影しようとしていたオジサンが結構激しく注意されてました。
まったく動じていないオジサンはすごかったですけど。

そんな混雑している展示ですから、結局は絵画中心に気になるところだけがんばって見て、書は一瞬目を走らせるだけという、いつものパターンになりました。
解説も書かれててはいたものの、時を経るとともに、中国の絵画や書にどんな変化があり、展示作品がその中でどういう位置に属し、なぜ貴重なのか、という辺りがよく分からないのは残念でした。
幅広い年代やジャンルの200作品の展示ということで、そうならざるをえないんでしょうが、すごく散漫な展示といった印象です。
まあ、中国の歴史の流れが全然分かっていないのが悪いと言われればそれまでですけどね。
特に書でも文人画でも大きな役割を果たした趙孟頫についての解説がもう少し欲しかった。

一番意外だったのは、チベット仏教にこれだけ強く関心を持ち敬意を払っていた時代があったこと、しかも、時を経ても、そのときの品々がこれだけきちんと保管できていたということです。
http://www.asahi.com/kokyu200/news/20120127-01.html

中でも「大威徳金剛立像」は異様な迫力がありました。
腕が密集するように広がっている様は、目の前で手が動いているようでした。
チベット仏教では悪鬼を倒すために文殊菩薩が変身した姿だそうです。

そして、もうひとつ印象に残ったのは「康煕帝南巡図」。
こちらは「清明上河図」同様、細かく描写された大作ですが、じっくり見ることができました。
たくさんの人が手を広げて空を飛んでいるように見えたのはスケートをしているところだったんですね・・・・・・。
細かく丁寧に描かれているのに、遠近感がおかしいところが面白い。

青銅器や陶磁器も数多く展示されてましたが、こちらは色合いがどうも日本人好みではないようで、どうもピンときませんでした。
そういえば、台湾の故宮博物院に行ったときも、正直、印象が薄かったです。
こういう大ざっぱな展示法だと、よさの分かる人は少ないんじゃないかな。

ちょっと否定的な感想になりましたが、観に来ている人には中国からきたと思しき人たちも多く、日本に観光にきてもらうという意味では良かったのかもしれません。(ひ)


林忠彦写真展 紫煙と文士たち

2012年02月22日 | 都内のおでかけ
まるでNHKのような番組だったなあ

林忠彦写真展 〜紫煙と文士たち〜
2012年1月21日(土)〜3月18日(日)
たばこと塩の博物館
http://www.jti.co.jp/Culture/museum/exhibition/2011/1201jan/index.html

パルコミュージアムのついでに寄ってきました。
本当はTWS渋谷に寄るつもりだったんですが、展示のないときだったんですよねえ、残念ながら。
林忠彦の写真展は既に新宿歴史博物館でも写真美術館でも見ています。
今回は新宿歴史博物館の企画展に近い内容でしたが、あのときはカストリ雑誌に焦点が当てられていたのに対し、今回は文士を撮影した写真が中心。
有名な太宰の写真が印象に残るのは変わらないものの、解説を読むと感慨深い気持ちにさせられました。
太宰の撮影を行ったのは、本当は織田作之助の写真をバーで撮っていたときだったというのは前回の展示で知りました。
織田作之助はかなりひどい顔色で、このままだとすぐに亡くなってしまいそうだからと、無理に頼み込んで撮影させてもらったそうです。
そんなときに、横から「俺も撮れよ」といったのが太宰。
林忠彦は全然興味がなかったけど、バーの主人の薦めで仕方なく、撮ったらしいです。
それが、彼の代表作のひとつになったのは皮肉な話だというコメントが印象的です。
しかし、話はここで終わらず、同じバーで実は田中英光の写真も撮っていたのです。
織田作之助は撮影の後に亡くなり、太宰は自殺しているということで、バーの撮影はゲンが悪いと思っていたところに、太宰にあこがれる田中英光から、太宰と同じ場所で撮って欲しいと言われ、しぶしぶ承諾したんだそうです。
その後、田中英光も自殺したため、バーでの撮影は封印したとか。
田中英光のエピソードは今回、初めて知りました。

それにしても、撮影されている作家達は「文士」と呼ぶにふさわしい人たちばかり。
今の時代、ここに入れる作家はいないだろうなあ。
でも、昔は作家の自殺が多かったのに、今は作家以外の一般人の自殺が増えているというのはどういうことなんだろう。(ひ)

今週のNBA

2012年02月21日 | hoop madness
他にも何人かの選手に聞いていますが、不思議な人選です

ずいぶんNBAについて書いていなかったのですが、たまには。
「今週の」というタイトルを付けましたが、まだ一ヶ月ほど前の放送分しか試合を見ていないので古い話を中心にダラダラと書きます。

アトランタは現在6位。
ホーフォードのいない中、よくがんばっているんじゃないんでしょうか。
どうやらハインリックが戻ってきたようで、控えから登場しています。
そうなるとティーグ、グリーン、パーゴというGの出場時間をどうするかという問題があるし、Gの控えとしての働きをしてくれていたTマックの使い方が難しくなりそうです。
実際、先日、マーヴィン・ウィリアムスが個人的事情で欠場した際、代わりの先発メンバーとして使われなかったTマックは不満を持って、ドリューHCと話し合いをしたそうですから結構深刻。
今シーズン、Tマックは良い活躍ができているだけに不満が出てくるでしょうねえ。

豊富すぎるGに比べて、ますます手薄になったインサイド。
コリンズが一ヶ月かかる怪我をした後、ダンピアーと契約したそうです。
彼こそ、いよいよラストチャンスという感じでしょうから、最後のがんばりを見せて欲しいものです。
これがうまくいかないとトレードを画策するんだろうなあ。

さて、1月20日前後までの試合を見た感想ですが、見ていて印象に残ったチームというとインディアナ、トロント、デンヴァーといったところです。
WOWOWは放送が多いから、結構いろんなチームを見せてくれるのかと思ったら、とんんだ間違いでやっぱり人気チーム、強豪チームの試合ばかり放送してます。
ということで、まだフィラデルフィアの試合をまったく見ることができていないんですが、上記3チームの試合は面白かった。
トロントはバルニャーニがいよいよ覚醒した感じだし、デローザンも相当いい数字を出すようになっています。
まだ上位にくるまでは時間がかかりそうですが、あと1,2年我慢してくれれば良いチームになりそうです。
インディアナはウエストが入ったことで必要なメンバーが揃った感じです。
紆余曲折を経て、ようやくチームの立て直しに成功したんですが、時間がかかりましたねえ。
ボストンに代わってここが次のイースタンの強豪になれるかもしれません。
トロントもインディアナも中心選手がやたらに若い。
大都市以外のチームが勝てるようになるには時間がかかりますよ、そりゃ。

好調なマイアミやオクラホマは自分の好みのチームではないこともあるんでしょうが、昨年以上のすごさは特に感じません。
今シーズンはアンチ・マイアミ、オクラホマ、シカゴでいきます。
WOWOWでも中継が多そうだなあ。(ひ)

没後150年 歌川国芳展

2012年02月20日 | 都内のおでかけ
没後150年 歌川国芳展
前期:2011年12月17日(土)~2012年1月17日(火)
後期:2012年1月19日(木)~2月12日(日)
森アーツセンターギャラリー
http://kuniyoshi.exhn.jp/

またしても会期終盤に行ってしまいました。
それにしても、混んでました。
ここや森美術館は、展望台のついでに美術展を見る人も多いから、こういうことになるんだろうなあ。
エレベーターの前で10分ほど、会場前で20分ほど並んで待ったと思います。
当然ながら会場内に入ってもかなりの混雑だったので、見やすい章からどんどん見て、展示前半や人気の「戯画」の辺りは閉館間際に後回しにしました。
そういえば、太田記念美術館のときの展示も混んでいて見るのが大変だったなあ。

展示ですが、正直、作品数が多すぎて疲れました。
前期、後期をほとんど入れ替えているというから、これで半分なのか。
こういう娯楽的な要素の強い作品は、当時の流行や文化が分かっていないと、ほとんど今が分からないんだろうなあ。
まったく予備知識なしで古典落語を聞くようなもので、何度も作品を見ながら、気になったものについては知識を入れたり、調べたりすると、本当の面白さが分かってくるものなんでしょうね。
ということで、「役者絵」や「武者絵」はなんとなく見るだけで終わってしまった感じです。
展示は混雑を見越してのことなのか、作品数が多すぎるせいなのか、あまり解説がついていません。
太田記念美術館の展示では国芳がいかに西洋画を学び、その影響を受けたかがよく分かる展示になっていましたが、その辺もすごくあっさり。

それにしても、「武者絵」、「役者絵」、「戯画」に「子ども絵」などジャンルが多岐にわたっていることに改めて驚きます。
それぞれのジャンルでお客の対象もずいぶん違うものなんでしょうか。

初公開ということで話題だった「金魚づくし ぼんぼん」は当然印象に残ったんですが、「ぼんぼん」がどんなものなのか気になりました。
http://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/item/kuniyoshi020.htm

「ぼんぼんうた」というお盆のときに行われる子供の遊びだそうで、落語の噺にもあるんですね。
一度聞いてみたい。(ひ)


DOMANI・明日展

2012年02月16日 | 都内のおでかけ
DOMANI・明日展「2012年1月27日[金]ギャラリートークダイジェスト」

未来を担う美術家たち
DOMANI・明日展
文化庁芸術家在外研修の成果
2012年1月14日(土)~2012年2月12日(日)
国立新美術館
http://domani-ten.com/

そんな訳で徒歩で国立新美術館まで移動しました。
毎年開催されている文化庁留学の成果を発表するような展示ですが、今年は例年に増して地味な印象です。
特に、特別展示のコーナーに展示されている作品がほとんどピンとこないものばかりだったのも、その印象を強めました。
なんだか全体に「発表会」の色が強すぎて、美術展としての楽しさが感じられない。
特別展示のコーナーをせっかく作るなら、こんなおざなりに、数多くの作家の作品を少しずつ並べるようなマネはせず、研修時代の前後での作品における変化や、研修の意義について考えさせるような展示を見せて欲しいものです。
カタログを見せられているような退屈さがありました、正直言って。
作品そのものではなく、展示の仕方の問題ですけど。

そんな中ですが、印象に残ったものを挙げておきます。
まずは元田久治。
この人の作品はミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで一度見ています。
有名な建築物や街が廃墟のようになった近未来(?)の図をリアルなタッチで描いています。
http://web.me.com/motoda_01_01/hmotoda/Home.html

廃墟になった街は大きく破壊されながらも静寂に包まれていて、時がとまった印象を受けます。
ここから先に何があるのかがやはり気になるところで、そういう方向に作品が変わってくるんじゃないかと勝手に考えました。


そして、津田睦美の作品も印象に残りました。
http://www.mutsumitsuda.com/topic/

ニューカレドニアの日系移民の子孫とその歴史をテーマにした作品はここよりも恵比寿映像祭の方が似合いそうなものでした。
ニューカレドニアの移民達を丁寧に取材して作られた映像作品が興味深い。
日系移民の話というと、移り住んでみたものの聞いていた話とはまったく違って困難な生活が待ち受けていたという話が多い気がしますが、ニューカレドニアは実に暮らしやすく豊かな生活を送っていたそうです。
戦争さえなければ逮捕されて財産を没収されたり、家族がバラバラにされたりすることもなかった訳ですが、戦争というものは実に多くのものをかえてしまいます。
果たしてこういうときの怒りは、何に対して向ければいいのか。
この映像作品が良かったのは、そんな話を歴史の勉強のように展開せず、あくまである一家の物語に絞っているところ。
日本語は話せないのに「君が代」は歌えるというおばあさんにとって、日本とは何なのだろう。
説明しようのない、自分と日本との関係が話の端々から伝わってきます。
ぜひ、子供や孫たちにとって、おばあさんや日本とはどういう存在なのかという話を聞いてみたくなりました。(ひ)



龍を撫でた男

2012年02月15日 | 劇場へ
オリガト・プラスティコVOL.5 「龍を撫でた男」
本多劇場
作 福田恆存
演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ
キャスト
山崎 一、広岡由里子、緒川たまき、赤堀雅秋、大鷹明良、田原正治、佐藤銀平、猪俣三四郎
2012年2月3日(金)~2月12日(日)
http://www.morisk.com/plays/ryu_index.html

予想以上にヘビーな舞台でした。
福田恆存というと、どうしてもシェイクスピアの翻訳と考えてしまうんですが、何年か前、「キティ颱風」を読んで、こんな面白い戯曲を書いているのか、と驚きました。
今回見た「龍を撫でた男」は「キティ颱風」の書かれた5年後、1955年に発表されていますが、どちらも、ある一家を中心にした、ごく小さな物語でありながら、当時のブルジョア(というものが日本にかつて存在していたとすれば)たちが抱かざるをえなかった矛盾と倦怠感を見事に描ききっています。
おそらくは当時の時代の空気感をはっきりと捉えている作品だけに、予備知識がないと分からない部分が相当あると思うんですが、それでも面白い。
彼らが抱く不安や焦燥は根っ子の部分で今の私たちとまったく変わっていないんでしょうね。

精神科医の家を中心に繰り広げられる物語という点で、同じ設定の「黴菌」という芝居を連想させますが、インタビューを読むと「黴菌」の資料を集めていたときに「龍を撫でた男」を見つけたそうです。
この舞台はひとことでいうと、果たして狂気とは何なのか、ということになるんでしょうが、狂気というものは確かに龍と同じくらいとらえどころのない、しかし、大きくて存在感のある厄介な代物なのは間違いありません。
「正常」と「狂気」の境目が果たして存在するのか、人を「狂気」に陥れるものがあるとすればそれは何なのか、というようなことを考えつつ舞台を見ました。

それにしても、福田恆存の本だからなのか、お客の年齢層がいつになく高かった。
これって、文学座の芝居だっけ、というくらい年配の男性が多かった。
そのためなのか、始まってすぐに寝ている人が多かったなあ。
私が見たのは最前列だったんですが、横の人はずっと沈没してました。
こういう人は60年前にも同じ舞台を見ていて、記憶の中で、この舞台と過去の舞台がひとつになっていたりするんだろうか。(ひ)




東北画は可能か?

2012年02月14日 | 都内のおでかけ
東北画は可能か?

ニュートロン東京
「東北画は可能か?」
2012年1月11日 (水) ~ 29日 (日)
http://www.neutron-tokyo.com/gallery/schedule/1201/TOHOKUGA/index.html
http://www.touhokuga.org/

はじめてニュートロン東京にいってきました。
存在は知っていたものの、駅から15分ほど歩くところにあるので、どうも足を運びにくかったのですが、たまたま青山一丁目に出掛ける用事があったので、散歩がてらニュートロン東京に行きつつ、乃木坂に出て国立新美術館まで出掛けてきました。
天気もよくて、人通りが意外に少なくて散歩にも走るのにもいいコース。
皇居付近の車がガンガン走っているコースにはまったく魅力を感じませんが、この辺は歩いているだけで気分がいい。
なんだか贅沢している気がします。

そんな閑静な場所にあるニュートロン東京では「東北画は可能か?」展を開催中でした。
2010年から開催されている展示のようですが、今回初めて見ました。
展示は三瀬夏之介を中心に彼の門下生を含む人びとの展示で構成されていて、それぞれの考える「東北画」が展開されている。
作品に対するコメントを読むと、今、東北について、というテーマで描くことの困難さというのが伝わってきます。
当然ながら、それぞれ「東北」との距離感や考え方は違うし、その自分と「東北」との距離感をどう作品に出せばいいかという難しさがある。
作品全体に覆われている、少し重たい空気は、「東北」の現状の困難さというだけでなく、「東北」以外の場所にいる、他の人間がどうすればいいのか分からない、もどかしかの現れにもなっているようです。
無数に(と感じられるくらいたくさん)あった鳥のオブジェが非常に印象的でしたが、その鳥がバラバラの作品群をひとつにまとめるような効果を上げていました。
これまでの展示も今回と同じメンバーでやっていたのでしょうか。
だとしたら、どう展示の仕方や作品に変化があったのかも見られると面白い。
これから川崎市岡本太郎美術館でも展示があるようですが、他の展示と一緒になったとき、どう雰囲気が変わってくるのか確かめたいなあ。

それにしても、ニュートロン東京は展示スペースの広いギャラリーで見応えがありました。
また、別の機会にここから根津美術館くらいまで歩いて見よう。(ひ)