テルサのFantastic Stories

今まで書きためていたとりとめもない物語を少しずつ連載していきます。ファンタジー物が多いです。ぜひ読んでみて下さい。

7-3  別宮めぐり      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-24 22:58:48 | 「ある国の物語」 第九章 
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テルサより

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このお話は・・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。今,人界は人間による自然破壊から滅亡の道をたどりつつあり,それを救えるのはもはや最も優しく慈愛に満ち,また最も残酷で悲哀の心をもつ本来の月のみであった。聖と魔性の両面性をもつ本来の月の神。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第7節 別宮めぐり  第3話

 ラミエル帝一行は,まずは近くにある森の宮殿を目指した。フェリス皇太子はあまりの嬉しさに,はしゃいでアデル王太子とこそこそ話をしたりつつき合ったりしては2人できょろきょろと周りの風景を馬車から見ていた。セイラ妃は,森の宮殿には前に月の君に助け出された時に寄ったことはあるが,そこよりも西方は初めて訪れることになる。広大なファンタジア帝国の中で本宮ムーンレイク宮殿はイリュージョン寄りにあるため,彼女にとっては未知な部分が多いのである。

 セイラ妃は出発してからラミエル帝の様子が気になっていた。どこがと具体的に問われると困るのだが,時々ボーっと何か考え事をしているように見えるのである。やはり,フェリスやアデルのこれからを案じているのだろう。セイラ妃の傍であれこれと説明をしてくれているルーラ最上大臣の声をよそに,馬車が嫌いで一人愛馬のシルベスターに乗って先頭を行く月の君をずっと見ていた。

 ファンタジア帝国四大別宮殿の一つである森の宮殿は,約1日で到着する。宮殿内は妃来訪でものすごい盛り上がりようである。ラミエル帝は皇妃としてセイラを,また,正式なファンタジア帝国の後継者としてフェリス・デ・ルーンを紹介した後,すぐに地方官と会議に入ってしまった。

 セイラ妃はルチア女官長,ドクターアロウ達とともに森の宮殿の内官達と寛ぐ。

「ようこそおいでくださいました,セイラ妃様。今回は正式な皇妃様としてお迎えでき,我が森の宮殿の者一同心よりお喜び申し上げます。どうぞごゆるりとお過ごし下さいませ」

 内官達は宮仕に頼んで,いろいろな飲み物やお菓子,フルーツを用意させる。

「世話になります。どうぞよろしく」

 セイラ妃がにっこりと笑う。

「それで・・・恐れながら,我が陛下は皇妃様を大切になさっておられますか?あの御方のことですから,さぞかしお忙しく,一緒に過ごされる時間も少ないことでございましょう。ベッドでゆっくりお休みになる時間すらとれない時もあるぐらいですから」
「本当にお忙しい方でございますね。お姿すら見かけませんものね」

 ルチア女官長が溜息をついて言う。

「誠に申し訳ございません。でも,どうか,どうかお気を悪くなさらないで下さいませ」

 内官が弁明する。

「でも,その代わり,この別宮回りではその分だけごゆっくりお過ごし下さいませ。お部屋もちゃんと万全の準備を整えておりますゆえ」
「それで・・・もちろんお部屋はご一緒なのでしょうね」

 ルチアが貫禄をもって内官に言う。彼女のボリューム感たっぷりの体格は前にする者全てを怖がらせる。

「は・・・はい,一応は・・・」
「一応は?」
「え・・・あの・・・一応皇帝陛下皇妃様ご夫妻の間として『森の間』をご用意させていただいております。しかしながら・・・陛下は今まで皇帝の間を利用されておりますので,どちらでお休みになられるかは・・・ちょっと・・・」

 内官は汗を拭き拭き縮こまったようになって言う。

「なるほど・・・。確かにそうですね」

 女官長が頷く。内官は恐縮していたが,「ごゆっくり・・・」と深々と礼をして出て行った。

「せっかくの別宮回りで,陛下と過ごされる時間も大幅に増えるかと思いましたのに・・・」
「ルチア・・・」
「皇妃様,もし本宮と同じような生活が続くのでしたら,この私が文句を言ってやりますからね」
「え?」
「皇妃様も人が良すぎます。確かに陛下の忙しさも分かります。巨大国の皇帝に加えて月の国の国王でもあらせられるのですから・・・。でも・・・でもですね,せめてお休みになられる時ぐらいは・・・。陛下が陛下であられる時間も限られておりますのに」

 みんなは改めて,あと少しであの月の君が本来の月の神に覚醒することを思い出した。



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7-2  別宮めぐり      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-19 01:49:14 | 「ある国の物語」 第九章 
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第7節 別宮めぐり  第2話

「これは・・・陛下」」

 皇妃を始め,その部屋にいる者皆が一斉にひれ伏す。

「すみません,突然に・・・。今度の別宮回りの要項ができたので渡しておきます。一通り目を通しておいて下さい」

 ラミエル帝は恐らく会議の後そのままこちらに立ち寄ったのであろう。たくさんの書類とファイルと筆記用具を持ったままである。その中からすっと要項を出すあたり,月の君の完璧さが分かる。彼にはこの分厚い書類のどこに何が挟まっているのかも頭の中にインプットされているのであろう。

「有難うございます。陛下・・・あの,紅茶でもどうぞ。すぐお入れしますから」

 セイラ妃は,受け取った書類をすぐ側に控えていた女官に渡すと,すっとミニキッチンのある隣の部屋に行く。

「いえ,おかまいなく。これからすぐ用事がありますから」
「陛下,お茶の一杯ぐらいゆっくりと召しあがって下さいませ。すぐ入りますから。そのくらいのお時間はあるのでございましょう?」

 ルチア女官長は皇帝に椅子に座るように勧め,書類を預かってテーブルの上に置く。月の君は少しだけなら,と思ったのか取りあえず座るだけ座る。相変わらずきっちりと服装を整えていていつみてもほれぼれする格好良さである。
 セイラ妃が自ら紅茶をすぐに入れて持ってきた。とても良い香りが部屋中に広がる。ほんの一瞬の安らぎの時間が訪れる。

「それで・・・陛下,次は何のご用事なのでございますか?」

 ルチア女官長が紅茶に合うお菓子を出しながら気軽に尋ねる。天下のファンタジア帝国皇帝を前に,普通ならとてもそのような事は訊けない。しかし,不思議とルチア女官長が言うと,それも自然に聞こえてくる。ラミエル帝は少し紅茶の香りを楽しんで一口飲む。

「大したことではないのです。ちょっと国家事業に変更があってその打ち合わせをしようかと・・・」

 月の君がそう言いかけた時,「陛下・・・」「陛下・・・」と外で大臣達の皇帝を呼ぶ声が聞こえてきた。

「あ,いけない。御馳走様でした。せっかく入れて下さったのに,少ししかいただけなくてすみません」

 彼はもう一口分口の中に含むと,慌てて書類と筆記用具を持って,立ち上がった。

「陛下,どうぞご無理をなさいませんように」
「いつものことですから大丈夫ですよ」

 その美しい君はそう言うと,そのまま出て行った。向こうで「陛下,お捜し申し上げましたぞ」とルーラ最上大臣の声がする。カツカツと響いていた足音がだんだんと遠ざかっていく気配。やがて声や足音が聞こえなくなると,部屋の中にいる者達は溜息をつく。

「本当にお忙しいお方ですね,ファンタジアの月の君は」

 ルチア女官長がひときわ大きな溜息をつく。そんな女官長を見て,セイラ妃はクスッと笑う。

「何がおかしいのでございますか,皇妃様」
「分かり切ったことじゃないの,ルチア」
「そうでございますが・・・・」

 セイラ妃はぽりぽりと頭をかくルチア女官長を見ながら,それでも月の君のあまりにハードなスケジュールに心配をしていた。

 やがて,別宮回りの日が来て,ラミエル帝は皇妃の他にルナ王国からアデルも呼び,フェリスも連れて出発した。




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7-1  別宮めぐり      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-11 16:25:23 | 「ある国の物語」 第九章 
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第7節 別宮めぐり  第1話

「でも・・・」

 女官の一人がふと言いかけてやめた。

「何ですか?マーサ」
「いえ,何でもありません。失礼しました」

 ルチア女官長は溜息をつく。

「ここ何カ月かは御一緒にお休みにもなられていません。陛下は本当に皇妃様の事を大切に思っていらっしゃるのでしょうか。形式上とはこのことだったのでしょうか」
「ルチア,何て事を・・・」

 セイラ妃が諌める。

「大切に思っていらっしゃるからこそ,御一緒にお休みになれなくなってきているのですよ」

 マーサと呼ばれた女官がやっぱり言うべきかな,という表情で控えめに言った。

「どういうことです?」

 ルチアが目を丸くして訊く。

「恐れながら,陛下は大切な母君様の御遺言を守られているために,御自身のお世継ぎを拒否されていると伺っております。ですが,お迎えした皇妃様は御自分の好きな姫君。しかも,お世継ぎの期待できる健康な方。陛下は皇妃様をお迎えになられても,房事をなさることはできません。一緒のベッドで御自分の愛されている,しかも決して手を出すことの許されない皇妃様を見ながらお休みになられるのはさぞかし地獄でございましょう。若く健康な殿方であれば,いくら月の聖帝様と言えど,お好きな方をその御腕に抱きたいという思いは持っていらっしゃるでしょうから」

「目の前でずっとお預け状態・・・ですか?」

 他の女官も言う。

「そう・・・」

 女官たちの話を聞いていたセイラは悲しそうに俯く。

「やはりアリエス姫なら・・・良かったわね。彼女となら,何回肌を合わせたとしても陛下が拒否されているお世継ぎができることはないんですものね。陛下が,お世継ぎのできない方を探されていたのを私は知っていたのに・・・。いっそのことこの身体がアリエス姫のように・・・」
 

「何て事をおっしゃるのです,姫様!」

 ルチア女官長が大声で諌めるように言った。感情が高ぶっているので呼び方が姫様に戻ってしまっている。

「ルチア・・・」
「そのような事をおっしゃるなんて・・・」

 ルチア女官長の涙を見ながら,セイラ妃は「ごめんなさい」とポツリと呟いた。

「それでは,陛下にとっては別宮回りはさぞかし地獄の連続となることでしょう。皇妃様と過ごされる時間もぐんと増えますし,この一ヶ月半,夜は当然御一緒ということになります。さすがの陛下もよほどしっかりしておかれませんと御自分の欲求に負けてしまうことがあるかもしれません」

「それはありえますわ。だって我が姫様は世界一の夜の宝石と呼ばれし美姫。セイラ様に迫られたらどんな殿方もイチコロですわよ」

 女官達はキャッキャッと言いながら,話を弾ませている。あの,隙のないいつも冷静なラミエル帝にそんなことがあるのだろうか・・・。セイラ妃はふと思ってみたが,考えられなかった。

「陛下のお子様をお産み下さい,皇妃様。母君様の御遺言などどうでもよくなるぐらい陛下を虜になさいませ」

 ルチア女官長を始め,女官達がけしかける。

「でも・・・」

 セイラ妃が言いかけた時,ガチャッと音がして,噂の月の君が入ってきた。



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6-20  天帝大神の計略      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-07 23:54:30 | 「ある国の物語」 第九章 
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第6節 天帝大神の計略  第20話

「陛下!ですからお休みになるようにと・・・」
「これくらい平気だ。たいしたことではない」
「陛下!!」

 ドクターアロウは本気で怒った。大臣達は,また始まった2人のバトルを冷や汗もので見ている。

「どうぞ,こちらへ」
「アロウ・・・何をする。放せ」

 駄々をこねる子供を強引に連れて行く父親のように,ドクターアロウはラミエル帝の手首を掴んで皇帝の部屋へ連れて行こうとする。彼は嫌がって抵抗し,あくまで動こうとしないため,今度は大臣達も加わってその世界一強情な皇帝を休ませようとした。

「お前達,国の当主よりもドクターの言うことをきくつもりか」
「今回ばかりは陛下の御意向には添えませぬ。御容赦下さいませ」

 ドクターと大臣達は総がかりでラミエル帝を自室に戻らせようとする。しかしながら,ラミエル帝はフェリス皇太子の側を離れたがらず,根負けしてしまったドクターアロウは仕方なく,フェリス皇太子のベッドの横に簡易ベッドを運びこませてそこでラミエル帝を寝かせた。

「さあ,陛下。これでよろしいでしょう。全く小さな子供ではあるまいし,駄々こねもいい加減になさいまし」

 ドクターアロウに叱られて,月の君はシュンとなって掛布を頭からかぶる。後からセイラ妃も来たが,ラミエル帝のそんな少年らしいところが可愛くて,思わずあの激しい炎を冷たい氷で覆った戦神ということを忘れてしまう。

 ラミエル帝はそれでもたまった疲労でいつしか意識が遠くなり,眠ってしまった。

「ようやくお休みになられましたね」
「ああ。陛下のお気持ちも分からなくはないが・・・陛下の御健康が1番です」
「そうでございますな」

 みんなはようやく静かになって動かなくなった月の君を見て溜息をつく。

 翌日はフェリスの熱も下がり,ラミエル帝は大喜びで「欲しいものはないか,食べたいものはないか」と弟に対していたれりつくせりな態度をとっていた。

「兄上・・・あの・・・大丈夫ですから・・・兄上」

 フェリスが言っても,月の君は時間があるごとに看に来ては一安心して次の仕事に向かうのだった。そんなラミエル帝にみんなはやはり溜息をつくのだった。

 セイラ皇妃は皇妃の間でフェリス皇太子の着替えをたたんでいた。

「皇妃様がそのようなことを・・・」
「いいのよ,ルチア。陛下は御自分で炊事洗濯掃除なんでもされますもの。あ,でもね,服は縫えないとか・・・。ボタン付けや繕い物しかできないっておっしゃっていたわ。みなさんが一生懸命されているというのに,皇妃の私が何もしないわけにはいかないわ」

 セイラ妃はにっこりと笑うと,さっさと着替えをたたんでいく。が,ふと動きをとめる。

「皇妃様?」
「ルチア・・・フェリス皇太子はまだ8歳なのね。こんなに小さな服を着ているんですものね」

 セイラ妃は服を広げてみながらしんみりと言った。

「皇妃様・・・やはり本当のお子様が・・・」
「ルチア,その言葉はここファンタジアでは禁句なのですよ。私はそれを承知でここへ来たんですもの」
「皇妃様・・・」

 ルチア女官長はただただ目の前のセイラ妃を見つめるしかなかった。

 ラミエル帝はきっぱりと自分の血を引く子供を否定している。そしてあれから全く夫婦関係を結ぼうとはしなかった。キスぐらいは受け入れるものの,それ以上のことははっきりと拒絶するのである。



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6-19  天帝大神の計略      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-06 23:59:18 | 「ある国の物語」 第九章 
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第6節 天帝大神の計略  第19話

 翌日,ラミエル帝は相変わらず仕事に追われていたが,夜は久しぶりに夫婦の部屋である森の間で仕事をしていた。セイラ妃は邪魔をしないように少し離れた所で自分の皇妃としての勉強の続きを進める。仕事が一段落ついたのか,月の君がペンを置いて机上に置いてあった封筒からスケジュール表を取り出す。

「セイラ,別宮回りの日程が決まりました。私の誕生日までに終わらせたいので5月に入ったらすぐに出発しますが,何か不都合はありませんか?」
「私はいつでも構いませんよ,陛下。楽しみにしています」

 セイラ妃はいつも優しい笑顔である。ラミエル帝は星姫と言われるセイラ皇妃を見るたびに,何故か胸が痛く,顔が熱くなるような気がしてくるのである。
 実は星姫の優しい光に捕まったのは紛れもなく月の方であった。しかし,セイラ妃は星の女神の現身。月の神レイミール・ラ・ルネシス神の秘密に関わる天帝ノブレス大神の送った天帝大神側の女性であり,レイミール神の今後の覚醒を考えれば彼女を愛して深入りしてはいけないような気がする。なぜなら,本来のレイミール神はスターリア神をひどく嫌っているようだからだ。
 セイラ妃を愛しく思う気持ちと,深入りしすぎて彼女を余計に傷つけてはいけないという気持ちの狭間で月の君の小さな恋の芽は揺れ動き,言いたいことも言えず,そして世継ぎ拒否ということもあって何かふっきれないもんもんとしたものが彼にはあった。

 彼は,まだその思いが恋だとは分かっていない。そして,結婚式で愛を誓ってみたものの,今一つ愛するということがどういうことなのかも彼は分かっていなかった。自分にとって不可解な感情を持て余して,美しい月の君は自分の部屋へと帰ってしまった。

 次の日は朝からフェリス皇太子の体調が崩れ,ずっと高熱が続いていた。ラミエル帝はひどく心配しながらも,どうしてもはずせない仕事で駆けつけたのが夕方だった。

「フェリス・・・」
「兄上・・・頭が割れるように痛いです」
「大丈夫だ,しっかりして・・・」

 ラミエル帝は冷たいタオルを取り換え,ドクターアロウの調合した薬を自らの手で飲ませる。本当に兄と言うよりは父親のようにそれはそれは神経質になって看病している。
 フェリスの熱は翌日も下がらず,月の君は仕事を弟の部屋に持ち込んでつきっきりで看ていた。

「しかし・・・こう申し上げては何だが・・・我が陛下の弟君への執着は異常なほどですな。軍神ラミエル・デ・ルーン帝の唯一の弱点
とでも言いましょうか・・・。
「それはそうだろう。何と言っても望みの世継ぎの君だ。フェリス様に万が一の事があってみろ。陛下は約束によって実子をお立てになるしか方法がなくなってしまう。そんなことになってみろよ。我が陛下とは言え,ひどく取り乱されるぞ。それこそアデル王太子の時のようになられたら一大事だ」
「あの時は本当にお人形のようだったからなあ」

 大臣達はひそひそと話し合う。

「しかし・・・こうたびたびお熱を出されるようでは皇位継承は難しいですな。健康に関する条件は他人に譲位する場合,特に厳しいと伺っておりますぞ」
「そうなのだ。陛下もそれを心配されておられる。故に神経質になられるのだ」

 ラミエル帝は,なかなか引かないフェリスの熱にひどく心配し,ずっとつきっきりである。ドクターアロウが,
「陛下,私がついておりますから」
と,言っても譲らず,言うことを一つも聞かない。そのうち今度は自分の体調が崩れ,それでも無理をしてついにめまいを起こして倒れてしまった。


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6-18  天帝大神の計略      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-05 23:57:08 | 「ある国の物語」 第九章 
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第6節 天帝大神の計略  第18話

 そんなある日,ラミエル帝は珍しく時間がとれたので,夜に星見の塔に上がってぼんやりと星を見ていた。彼が何をするでもなくボーッとしているのは久しぶりのことである。セイラ妃を呼ぶでもなく,彼は一人座り込んで遥か遠くに輝く星を見ていた。そこへ「よろしいかな」と声がして,ドクターアロウがやって来た。

「アロウ・・・」
「よっこらしょっと」

 ドクターアロウもラミエル帝の隣に座る。月の君は拒否するでもなく,そのまままた目を外へうつす。

「陛下,最近の体調はどうですかな?」
「別に・・・いつもと変わりませんが・・・何か用ですか?」
「セイラ妃様とは御一緒に過ごされておりますか?」
「・・・・。最近は・・・あまり・・・」

 月の君はあまり答えたくなさそうに言う。

「お世継ぎを儲けなさる気はありませぬのか?」
「え?」

 ラミエル帝は思わず聞き返した。

「お世継ぎです」
「そのような必要性はありません。そもそも私の結婚はフェリスやアデルのためのもの。世継ぎはもういます。フェリスに何かあったとしても今度はフィラが即位してくれることでしょう。大体彼らを世継ぎにしたいがためにしたくもない結婚をしたのに,何故また別に世継ぎを儲けなければならないのですか?」
「陛下,本当に・・・ルーンとルナの血を絶やしておしまいになられるのか?1500年続いたルナ王家の血を・・・300年続いたルーン皇家の血を・・・あなた様お一人の意思で・・・」
「アロウ,そのことが先祖に対する最大の罪であることは百も承知です。でも・・・アシュラル帝はそうなって然るべき行為をしたではありませんか。私は何があろうとも,哀しみに沈んだまま亡くなった母シフェラザードの遺言だけは守りたい」
「陛下」
「だから言ったでしょう。セイラ姫を妃に迎えたらやがてそれは国民の悲劇的な期待に結び付くと・・・。アリエル姫なら最初からそのような幻想を抱かなくて済んだのです」
「それは・・・」
「みんなも勝手です。人界は人界で王家の血を残そうと私にうるさく言い,神界は神界で本来の月に恐れをなし,その暴走と気まぐれから少しでも身を守ろうと星の女神スターリアと結ばせて天空の神を誕生させようとしていると聞きました。冗談ではありません。私は一人の人間で道具ではないのですから。誰も私のことを本当に必要とはしてくれていなかったのですね。みんなが求めていたのはルーン皇家とルナ王家の血を受け継ぐ者であり,私の内にいる月の神であり,将来聖なる月よりも遥かに輝かしい黄金の夜明けを告げる天空の神を誕生させることができる者だったのです」
「陛下,そんなことはありませんぞ」
「そうではないですか。みんなが勝手をするなら私も勝手にします。私の願いはこのファンタジアとルナを守ることだけ。そのためには本来の月に,今のこの黄昏の不安を再生の希望に替えてもらわなければなりません。だから,私は本来の月として封印を解くことを覚悟しました。私はそれ以上何も望みません。本来の月でしかこの世を救えないと言うのなら,私はただその希望に賭けるだけです。私は自分の子供など興味はないし,欲しくもありません」

 典医アロウは暫く黙っていたが,静かに口を開いた。

「陛下がそうおっしゃるなら私ももう何も申し上げますまい。この国の当主は陛下であり,陛下のご決断が今まで間違われたことなど1度もないのですからな」

 ラミエル帝はそのまま星空を見上げる。辺りは静まり,星達の輝きが幻想的で星の宮殿にいるようだ。

「アロウ,あなたも私の典医なら大臣達の悪巧みに乗らないで私に力を貸して下さい」
「私はいつでも陛下の御味方ですぞ」
「嘘ばっかり」
「いくら陛下でもそれは失礼というものですぞ」

 ラミエル帝はクスッと笑うと立ち上がり,ドクターアロウに紅茶を入れる。

 その夜,ラミエル帝はドクターアロウと何かしらとめどなく話をして語り明かした。月の君が他人にこれほど話したのは初めてである。ドクターアロウは,いかに月の君でもまだ少年であるが故にずっと言いたいこともあったのだろう,と思い,耳を傾けていた。そして,やがて月の君がうとうとと眠りにつくと,そっとマリオ最上大臣を呼んでベッドに運んでもらった。

「お休みなさいませ,我が陛下」

 2人は礼をすると部屋を出て行った。




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6-17  天帝大神の計略      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-04 23:57:42 | 「ある国の物語」 第九章 
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このお話は・・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。今,人界は人間による自然破壊から滅亡の道をたどりつつあり,それを救えるのはもはや最も優しく慈愛に満ち,また最も残酷で悲哀の心をもつ本来の月のみであった。聖と魔性の両面性をもつ本来の月の神。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第6節 天帝大神の計略  第17話

 ムーンレイク宮殿に帰ったラミエルは仕事に熱中し,また,フェリスへの帝王学も寸時を惜しんで教え込んだ。本来の月神への目覚めまであと9カ月である。セイラ妃と話をしようにも挨拶をしているとすぐに大臣達に呼び出され,彼はいつも「では,また」と皇妃と離れることになってしまうのだった。

「皇妃様,いいのですか?このままで・・・」

 女官長のルチアが溜息をついて言う。

「いいのよ,ルチア。このような生活になることは前々から分かり切っていたことだし,覚悟はできています」

 セイラ皇妃はにっこり微笑んでそう言った。

 翌日,ラミエル帝は珍しく夫婦の部屋である森の間で湯浴みをし,果実酒を試しに飲んでいた。

「陛下・・・それは・・・」
「チェリー酒だそうです。軽いからということでもらったのですが,なかなかおいしいですよ。セイラもどうですか?」

 ラミエル帝はグラスを取り出すと,セイラ妃にも注ぐ。薄い赤色のいい香りがするチェリー酒である。

「あっ,ほんと。とてもおいしいですね」

 ラミエル帝は少しずつ飲みながらとてもご機嫌である。そして気分良くそのままくったりと目を閉じて眠ってしまった。セイラ妃が隣で彼の寝顔を見るのは久しぶりのことである。きっとフェリスへの帝王学が順調に進んでいるのだろう。

「お休みなさい,陛下」

 セイラ妃はそっと軽く彼にキスをすると,自分も眠りについた。

 しかし,それだけで幸せな2人とは違って大臣達は深刻な顔つきをしていた。

「ドクターアロウ殿,お2人がとても仲がよろしいのは結構なことでございますが・・・あの・・・お世継ぎのできる気配がいっこうにございません」
「そらそうであろう。陛下にはフェリス・デ・ルーンというそれはそれは目に中に入れても痛くないとても可愛い世継ぎがいらっしゃるのですからな」
「しかし,我々としてはやはり陛下の御子を望みます。そのために実質婚を企んでまでセイラ姫様を皇妃としてお迎えしたのです。もう御結婚されて4カ月。なのにろくすっぽ一緒にお休みにもなられていない御様子」
「セイラ妃様なら陛下の固い決意も崩れるかと思いましたが・・・」
「フェリス様は皇帝代理としてお努めを果たして下さるのが一番です」

 大臣達は一向に世継ぎをもうけようとはしないラミエル帝に不満なようである。しかし,ラミエル帝は一切態度を変えない。とにかくフェリス,アデルが第一で,セイラ妃とは夫婦言うよりも親友と言う感じで結婚前と変わっていないように見える。大臣達は何とかならないかと頭をひねる。

「ドクター,何とかなりませぬか」
「ふむ。こればかりはのう。実質婚と違い,タイミングが合わねば1回きりでというわけにもいくまい。陛下もそうたびたびと油断されるとは思えぬし・・・。ましてやフェリス様のための御結婚。そのフェリス様に不利になるようなことはされますまい」
「そんな・・・・」

 みんなは大きな溜息をつく。

 ラミエル帝はそれはセイラ妃を大切にしていたが,会うことも少なく,ほとんど結婚前と同じである。それでも1日に1回は顔を出して挨拶だけはしていく。それが「おはよう」の一言だけだったとしても,彼は忘れることはなかった。
 


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6-16  天帝大神の計略      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-03 23:53:04 | 「ある国の物語」 第九章 
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森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。今,人界は人間による自然破壊から滅亡の道をたどりつつあり,それを救えるのはもはや最も優しく慈愛に満ち,また最も残酷で悲哀の心をもつ本来の月のみであった。聖と魔性の両面性をもつ本来の月の神。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第6節 天帝大神の計略  第16話

「ナチュラルオーブを本来あるべき所へ戻すことです」
「あるべき所?それはどこなのだ?」

 ミフィール神の言葉に聖なるレイミール・ラ・ルネシス神はその美しい顔を少し伏せる。

「私には分かりません。それを知っているのは本来の月だけです」
「それでは間に合わないのではないか?」
「兄上,滅亡に向かいつつある今の世を再生させるのは非常に困難です。果たしてそんな面倒くさくて大変な労力を伴うことを,自分が言うのもなんですが本来の月がするでしょうか。私はとても心配です」
「大丈夫だ,心配するな。何とかするよ。しかし,まずは今の危機だ。人界は異常気象に悩まされている。黄金の夜明けを告げるはずだったそなたなら今の状況を少しは良くすることができるのではないか?」
「兄上,もはや私の力ではどうにもなりませんが・・・少なくとも魔性の月の魔力は私の力よりも遥かに上回るものをもっています。どうか,魔性の月に月の聖神殿の封印された2つの部屋の所へ,ナチュラルオーブを持って行くようお伝えください。7つの聖石と魔性の月とナチュラルオーブが揃えば,もしかしたら何とかなるかもしれません」
「分かった。魔性の月にはそう伝えることにしよう。さ,もう少し眠れ,レイミール」
「はい・・・少し・・・疲れました」

 聖なるレイミール神はそう言うと,またすうっと眠りについた。

 今度目覚めた魔性の月帝はミフィール神からそのことを聞き,聖なる月の言う通りにしてみることにした。ナチュラルオーブを持って月の聖神殿に行き,大司祭に事情を話して封印の間を開けてもらう。

 ゴゴーッと重く鈍い音を立てて開いたその部屋の向こうにはもう一つの部屋があり,その部屋を開けて奥に進むと月の聖台が置かれていた。

「ここはやがて本来のレイミール・ラ・ルネシス神様がお目覚めになられる所です」
「そうか・・・それにしても聖なる方はどうしてナチュラルオーブをこんな所に・・・」

 魔性のレイミール神はナチュラルオーブをそっと聖台の上に載せた。するとどうだろう,それと同時にナチュラルオーブが凄まじい七色の光を発して,部屋をその熱くほとばしる光で覆った。

「あっ」

 魔性の月がうずくまる。

「レ・・・レイミール神様」

 レイミール神の首にかかっている7つの聖石がともに光り,輝きを増す。

「レイミール様」
「くっ・・・・私の・・・魔力が・・・吸い・・とられ・・・る」

 ゴオーーーッと低い音が部屋全体が震えるほど鳴り響き,その光はますます広がっていくとやがてパアーーーッと花火のように散っていった。

「だ・・・大丈夫でございますか」

 大司祭が慌ててかけつけた時,魔性の月は倒れてしまっていた。

「レイミール神様」」
「・・・・・」

 大司祭はレイミール神をベッドに寝かせ,休ませる。大気が落ち着き,嵐はやみ,太陽が顔を出す。小鳥はさえずり,穏やかな時が流れだす。暫くして,ベッドの上の月が気付いた。

「う・・・ん」
「お目覚めですか?」

 今度目覚めたのはラミエル帝だった。大司祭から事情を聞いて安心し,ルナ王国のアルテナス宮殿に行く。そして,そこでアデルやフィラ国王代理と会って少し静養し,ファンタジア帝国へ戻った。

 ナチュラルオーブが安定しているせいか,最近は穏やかな日々が続く。このまま何とか本来の月が覚醒するまでもってもらわなければならない。ラミエル帝はただただそれを祈るばかりだった。



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6-15  天帝大神の計略      「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2015-01-02 23:45:20 | 「ある国の物語」 第九章 
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第6節 天帝大神の計略  第15話

「ミフィール」

 天帝ノブレス大神が静かに近寄ると第一神皇子に声を掛けた。

「父上様,今日は1日この私が弟についております。どうか・・・どうかこの魔性の月の辛く悲しい気持ちを察して下さい。今まで言われもなく疎まれ,虐げられてきた不遇の者です」
「そうか。ミフィール,では頼んだぞ」
「かしこまりました」

 ミフィール神はそっとレイミール神を抱きあげると,月の間へと向かった。2人の姿が消えると,みんなほっと胸を撫で下ろす。

「本気でどうなるかと思ったぞ。さすがに凄い力だな,レイミールは」

 湖の神にして天帝大神の第四神皇子ミルズ・ラ・レイクスがやれやれと言う感じで言った。

「人間の身体,しかも半身でボロボロの状態・・・・。それであの力だろう。本来の月はあれの何十倍,いや,何百倍という想像を絶する力をもつぞ。確かに人界も神界も救えるが,滅ぼす力も莫大だろうな,あの様子だと・・・」
「長兄殿がいて下さって良かった。唯一あの月の神がなついているからな」
「しかし,それは聖なる方か魔性の方かのどちらかの場合だ。本来の月がそうであるかどうかは分からぬ」
「これからどうなる?」

 兄弟神達はひそひそと話し合う。

「ナチュラルオーブの不安定な状態は本来の月神の長年にわたる封印によるもの。我々にはどうしようも・・・」
「う~ん」

 兄姉達は考え込む。

 その頃,星神ミザールは弟の太陽神ヘリオリアスと怒っていた。

「ますます許せん。弟の分際でレイミールの奴,よくも俺を・・・。生意気な・・・」
「兄上,傷にさわります。落ち着いて下さい。いくら神とは言え,回復には時間がかかります」
「ふん,見ておれ。諸悪の根源はあの恐ろしい月だ。必ず水晶の間に閉じ込めて出られなくしてやる。あの破壊の神にみんなは甘すぎる。そうは思わないか?」

 ミザール神はますますあの美しい末の神皇子をいまいましく思うようになった。

 ミフィール神は静かにレイミールについていた。月の神はミフィール神の眠りの糸にからめられてくったりと眠りについている。辺りはこの月神を起こすまいとひっそりと息をひそめている。
 森の神は月神の髪を撫でてやりながら,ずっと起きてついてやっていた。その夜,その気が感じられるのか,レイミール神は何もかも投げ出して,安心しきって眠っていた。それ故に自然は心地よく静かな休息をとる。

 翌日,目覚めたレイミール神はなぜか聖なる方になっていた。

「レイミール,目覚めたのか?」
「兄上・・・ではここは・・・神界」
「魔性のレイミールがナチュラルオーブの暴走を心配して,何とか早く本来の月に戻ろうとして神界へやって来たのだよ。ところが犬猿の仲のミザールと大喧嘩をして,この状態になった。恐らくそなたの身体はボロボロになっているはずだ。全くあの2人は何とかならぬものか・・・」
「すみません・・・兄上にご迷惑ばかり」
「そんなことはどうでもよい。レイミール,そなたはナチュラルオーブのことについて何か分からぬのか?」

 兄神に尋ねられて,聖なる月は少し考え込む。

「え?ええ・・・ナチュラルオーブは太古に本来の月が休息を与えると言って新月宮に封印したもの。故に,それからこの地球は父上の天下となりました。しかし,今,永年の眠りから急に解き放たれ,人界を救えと言われたナチュラルオーブは,封印によって自らのコントロールが不安定となり,暴走の危機にあります。しかし,本来の月の覚醒を早める方法はありません。オーブを安定させる方法ならありますが・・・」
「安定?それはどういう方法なのだ?」

 森の神ミフィール神は,聖なる月に尋ねた。




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テルサ通信 No.8

2015-01-01 18:35:19 | テルサ通信
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新年明けましておめでとうございます。

バタバタしている間に新年を迎えてしまいました。(A;´・ω・)フキフキ

今年も少しでも更新をしていこうと思いますので,どうぞよろしくお願いします。
今,話は本来の月神覚醒に向けて話が進んでいます。

話が長すぎて最近訪れて下さった方には何のことやらお分かりにならないことと思います。
時間があれば今までのあらすじ,登場人物の相関図,地図など載せたいのですがなかなか時間がとれません><。

本当に申し訳ないです。<m(_ _)m>

またいずれ整理しなおしていこうと思いますので,どうぞ引き続き応援をよろしくお願いいたします。





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