テルサのFantastic Stories

今まで書きためていたとりとめもない物語を少しずつ連載していきます。ファンタジー物が多いです。ぜひ読んでみて下さい。

3-29 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-24 23:26:39 | 「ある国の物語」 第九章 
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このお話は・・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第3節 森と湖の国の皇妃  第29話

 アルコン皇子がいつまでも帰ってこないため,ラミエル帝は心配して様子を見に行った。フェリス皇子の部屋を覗くと,その幼い皇位継承者はアルコン皇子とともに絵本を持ったまま眠ってしまっていた。

「フェリス・・・フェリス」

 月の君はそっとフェリス皇子を起こす。結構強く揺さぶっても起きなかったが,やがて眠そうに目をこすりながら彼は目を覚ました。

「あ・・・兄上」
「フェリス。寝るんならちゃんとベッドで寝なくては・・・」
「う・・・ん。僕起きてますよ」
「何を言ってるんだ。さ,立って」

 月の君は,こっくりこっくりなりながら着替えようとしているフェリス皇子を手伝って夜着に着替えさせると,ベッドに寝かしつけた。そしてアルコン皇子も起こす。

「アルコン皇子,起きてください。風邪をひきますよ」
「う・・・ん。わっ・・・・・。兄上」
「起きられますか?」
「あ・・・はい。大丈夫です」

 アルコン皇子は慌てて起き上がると,服を整える。

「すみません。弟が本当に御迷惑を・・・」
「兄上,何を言ってるんですか。俺は平気ですよ。本当に弟ができたみたいで逆に嬉しいくらいです」
「そうですか?もし迷惑ならはっきりとフェリスに言ってやってください。それが彼のためですから」
「うん,約束する」
「では,部屋の方へ・・・」
「兄上,1つお願いしていい?」
「何でしょうか」
「んとね。俺も星見の塔で星を見たいんだ」
「今日は晴れていますから星もよく見えそうですね」
「いいの?」
「もちろんです。では,行きましょうか」
「ほんと?わあい」

 月の君はアルコン皇子を連れてフェリス皇子の部屋を出た。そして,ついでにセイラ姫も誘って3人で星見の塔へ行った。

 3人は暫く星空を眺めていた。ところどころ雲がかかっているが,それでも綺麗に星がまたたいている。ラミエル帝はミニキッチンでお得意の紅茶を入れて出す。

「兄上,いよいよ結婚されるんだって?おめでとうございます。」
「ありがとう」 
「結婚されても,こっちに遊びに来ていい?」

 アルコン皇子が月の君を見ていたずらっぽく言う。

「はい,それは一向に構いません」

 ラミエル帝はいつもの調子で答える。アルコン皇子は嬉しそうな顔をすると,急に真面目な顔にかえてラミエル帝をじっと見た。

「1つだけ・・・聞いてもいい?」
「何でしょうか」

 ラミエル帝は優しく言った。

「前に兄上は姉上のこと好きだって言ってくれたでしょ?なのに,なぜ違う人と結婚するの?」

 突然のアルコン皇子の質問に,セイラ姫は「何を言い出すの?」と顔を赤くして弟の口をふさいだ。ラミエル帝は少し困ったような哀しいような表情になる。

「兄上?」
「敢えて理由として挙げろと言われるなら,3つあります。1つ目は今回の結婚が契約結婚であること,2つ目は月の神レイミール神のことを考えてのこと,そして3つ目は姫君には誰よりも幸せな生活を送って欲しいと願っているからです」
「ふうん,何かよく分からないや。どういうこと?」
「1つだけって言いませんでしたか?ですからこういうことなんですよ」
「え~?ますます分かんないよ。何だよ,契約結婚って。政略とは別のものなの?」

 アルコン皇子はセイラ姫から逃れてラミエル帝に詰め寄った。


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3-28 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-23 17:25:36 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第28話

 ラミエル帝の19歳の誕生日が近付いてきた5月の終わり頃に,星の国イリュージョン帝国のデーリー帝一行がアフタル川環境整備の確認についての会談にやって来た。

「ようこそ,我がファンタジアへ」

 ラミエル帝はいつもと変わらず社交辞令で出迎える。デーリー帝との会談も無駄なく話をさっさと進めていく。

「では,そういうことで。確認事項は後日文書にしてイリュージョン帝国へお送りします」
「そうしていただけると有り難い。すまぬな,ラミエル殿」
「いえ,こちらこそ。わざわざご足労いただいて恐縮です。せめてこのくらいのことは・・・」

 会談を終えると,ラミエル帝はデーリー帝を貴賓室に自ら案内し,すぐに夕食会の打ち合わせに行った。デーリー帝一行は3泊4日の行程でファンタジア帝国を訪れており,ラミエル帝は会談の合間に自国の仕事とフェリス皇子の教育の時間を入れ込んで超過密スケジュールになっていた。
 
 夕食会が終わった後,結婚宣言後,初めてラミエル帝はセイラ姫と会った。最初は月の君とセイラ姫とアルコン皇子とフェリス皇子の4人で話していたが,フェリス皇子がアルコン皇子にぜひ見せたい物があると自分の部屋に引っ張っていってしまったので2人だけ取り残される形となってしまっていた。

「姫君,ワイルドチェリーティーをどうぞ」
「ありがとうございます」

 セイラ姫は出された紅茶を一口飲む。

「あの・・・御婚約おめでとうございます。お祝いに何かとも思ったんですけど,急には思いつかなくて・・・」
「ありがとうございます。お言葉だけで十分ですよ,姫君。相手もそう賑やかにいろいろとしたりされたりすることは好まない方ですから」
「そう・・・ですか」

 ラミエル帝は全くいつもと変わらない様子で座っている。本当にあと3週間足らずで婚約をするのかと思うぐらい落ち着いて静かだった。そして,やっぱり自覚してないようだがセイラ姫といると少しご機嫌なような感じである。

「それから・・・誕生日プレゼントをありがとうございました。とても可愛くて・・・つけてみたのですが,似合いますか?」

 セイラ姫は思い切って聞いてみた。彼女の胸元にサクラ貝が揺れている。ラミエル帝は聖なる月の神のように優しい表情で「とてもよく似合っていると思います。気に入っていただけたようでよかった」と言った。セイラ姫は嬉しそうにそして少し恥ずかしそうに笑う。月の君はその可愛さに少しとまどい,それを紛らわすようにティーカップに手を掛けて一口飲む。

 2人が話をしている頃,ファンタジアの大臣達は皇帝にばれないように,また密かに貴賓室に押しかけていた。そしてデーリー帝に対し,次の日の夜に実質婚を・・・・と持ちかけていた。

「デーリー陛下,我が陛下は今皇妃候補も公表したと言うことで油断しきっています。実行に移せるのは今回が最高にして最後のチャンスなのです」

 大臣達の必死の願いにデーリー帝は困ってしまった。

「し・・・しかしどうやって・・・。後のことを考えると恐ろしいぞ。そして何よりあのセイラの事じゃ。話をしても納得するまい。何よりもラミエル殿の望まぬことは決してしない娘じゃ」
「大丈夫でございます。全てはドクターアロウが立ち会ってくださいます。そして全責任は我々が負います。デーリー陛下やセイラ姫様に御迷惑をおかけするようなことは絶対いたしません。ですから・・・・どうか,デーリー陛下」

 デーリー帝はしかし首を横に振った。

「あの2人を無理矢理ひっつけさせるわけにはいくまい」
「しかし・・・それでは我が陛下は・・・・」
「そなた達,それはそれでよいではないか。ラミエル殿の判断で今まで間違ったことはないのだから」


 デーリー帝の言葉に大臣達はがっくりとうなだれた。デーリー帝にすれば,大臣達の申し出はとても嬉しく有り難かった。しかし,その後の事を考えた時,やはり愛娘のことが心配でならなかったのである。



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3-27 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-22 22:11:13 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第27話

「もう!マリウス。せっかく奴と会えたのに何でお前だけいっぱいしゃべって終わりなんだよ!!」

 国家元首達が宿泊する霧の館の絨毯敷きの廊下を歩きながら,太陽の君はむっとして親友に文句を言った。

「お前,今まで十分しゃべってきたじゃないか。たまには俺にも話させてくれよ」
「ま・・・まあそうかもしれないけど,あいつにお祝い言うつもりが混乱させるようなこと言いやがって。ラミエル・・今頃どう思ってるだろうな」
「なあ,ハービア」
「ん?」
「俺・・・間違ったこと言ってないと思うんだ。だってどう見たってラミエルが大切に思ってる人ってセイラ姫だろう」
「前は思いっきり否定してたけど・・・今日は確かに好意をもってるってあっさり白状したもんな。そう言えばあいつにしては珍しく素直だったな」
「そしたらさ,あの2人両思いになるだろ?なのになんであんなことになるのかと俺は不思議で仕方がないんだよ」
「そりゃマリウス,お前には分からないんだよ」
「何を」
「月神レイミール神のことをさ」
「どういうことだよ」
「今までの反応を見るとさ,どう考えてもレイミール神と星の女神スターリアとはうまくいってないようなんだ。特に本来の月神は魔性の月神以上に星の女神をよく思ってないらしくてさ。ラミエルはもし月神に覚醒した時に,レイミール神がセイラ姫を傷つけるのを心配してるんだ。だから頑なに拒否してるんだよ。なにぶん本来の月神は時にすっごく残酷になるらしいからな。星姫の心をぐさぐさと傷つけるのではないかと不安なんだよ。ラミエルにとってはそれは一番望んでないことだろうからな」
「へえ。そうか。それは考えられるな」
「だろ?」
「う~ん」
「しかも考えてみろよ。レイミール神が毛嫌いしてる天帝大神様は,何でか知らないけどよりによって月神と星神をくっつけようとしてるだろ。あれ絶対何かあるんだぜ。毛嫌いしてる天帝様が望むことをあの月神がするとは到底思えない」
「なるほどね。どうやら月神の暴走へのストッパーとしての役目だけじゃないってことだな」
「ピンポーン。マリウスも冴えてきたじゃないか」
「何だよ。その言い方」
「へへ。でも可哀想だよな~。無事にラミエルの思い通りに事が運べばいいけど・・・」
「まずいかないだろうな」
「え?マリウス・・・それどういう・・・」
「俺達ですら知ってるその事実を,ファンタジアやルナのあの曲者大臣達が知らないはずないだろ」
「つまりは何か陰謀がはりめぐらされるってか?」
「多分ね。内部から攻められたらいくらあのラミエルでもやばいんじゃないか?」
「だよな。守ってやりたいけど,ファンタジアに入り浸るわけにもいかないし・・・。う~ん」

 2人は頭を抱え抱え自分達の宿泊宮である虹の館へと向かった。

 中休みの日はラミエル帝は他国との会談で会議以上に忙しかった。そして,重要議題が終わると,用事があるからと途中でそそくさと帰ってしまった。彼の頭の中にはとにかくフェリス皇子とアデル王子への国の引き継ぎをどうするかということでいっぱいだった。

 ファンタジア帝国では着々と婚約式に向かって準備が整えられていた。大臣や神官達は表向きはアリエス姫用にと準備を進めていたが,裏では密かにセイラ姫用に準備を整えていた。いまいち宗教的な行事に関しては詳しく勉強してこなかったラミエル帝は,大臣や神官達が手を組んだ小細工を見破ることができないでいた。みんなも表向きはアリエス姫,アリエス姫と言いながらしているので,ラミエル帝はまんまと騙されてしまっていた。


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3-26 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-21 23:55:22 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第26話

 次の日が中休みという日の夜,ハービア王子とマリウス皇子がラミエル帝の所にやって来た。いつものようにハービア王子とマリウス皇子はコーヒー,ラミエル帝は自分でブレンドした紅茶を飲む。

「俺は賛成だ,ラミエル。今までお前が選択した中で間違ったことってないもん。他の者が何言おうが気にすることないぜ。まあ,言わなくても気にしてないと思うがな」

 ハービア王子はコーヒーを飲み,頷きながら言う。

「う~ん。俺はセイラ姫も捨てがたいなあ」

 マリウス皇子は腕を組んで考え込む。

「いいじゃないか。このラミエルがアリエス姫って言ってるんだから」

 あくまでもハービア王子はラミエル帝の味方につく。

「そりゃそうだけど・・・。別に俺も反対してるわけじゃないんだ。でもな~。あっそうか。セイラ姫妃に迎えちゃったら下手すれば本当の世継ぎができちゃうもんなあ。なるほど,それでか」
「マリウス・・・何を」

 ハービア王子が月の君に気を遣って怒る。

「だって・・・そうだろ?噂聞いたぜ。アリエス姫は御子を産めぬ,つまり世継ぎは望めないってね。セイラ姫は望めるもん。ラミエルの第一条件だろ?世継ぎがいかなる陰謀をもってしてもできないということ・・・。フェリス皇子を次代皇帝にするためにはやっぱり手堅くいかなくちゃ」
「マリウス,お前なんてことを・・・」

 再び怒るハービア王子に構うことなく,マリウス皇子はコーヒー飲んで一息つく。ラミエル帝は2人の会話に口をはさむでもなく,黙ったまま紅茶を飲んでいる。

「でもさ,本当だろ?ラミエル。お前,頑なに否定してるけど本当に好きな人ってセイラ姫のはずだ。だから今までだってセイラ姫に何かあるとなりふり構わずお前ってすぐ飛び出して行ってしまうんだ。それならさ,俺は素直にセイラ姫と結婚した方がいいと思うよ。お前のことだもん,世継ぎなんてどうとでもなるような気がするけどな。結婚宣言した後に言うのもなんだけどさ」
「マリウス。お前間違って酒でも飲んでるんじゃないのか」

 太陽の君は慌てて取り繕おうとした。しかし,ラミエル帝は相変わらず静かにそこにいた。

「確かに私はセイラ姫に好意をもってはいますが,彼女との結婚はあり得ません」
「なんで?」
「彼女をこれ以上不幸にしたくないからです」

 マリウス皇子はやれやれと言わんばかりに大きくふぅ~っと溜息をついた。

「ラミエル。言っとくけど・・・お前が予定通りアリエス姫と結婚したら,今以上に彼女は不幸になるぜ。あの星姫の幸せを本当に考えるなら,お前が妃に迎えるのが一番だと思うよ」

 月の君は困ったように俯いてしまった。

「好きなんだろ?セイラ姫が。お前,自分自身気付いてないかもしれないけど・・・セイラ姫といる時,すごく機嫌良さそうに見えるぜ」
「私が?」
「そうだよ。お・ま・え」

 思いがけないマリウス皇子の指摘に月の君は思わず顔を上げて彼を見たまま,また黙り込んでしまった。

「セイラ姫が相手で困ることがあるんならさ,姫君と相談してみんなの陰謀を阻止すればいいんだよ」
「ちょっと待ってください。私はセイラ姫を妃に迎えるつもりはないのです」
「自分の心を偽ってか・・・。ラミエル・・・・お前自分でいられる間が1年余りだからって,余りにも自分の感情をおろそかにしてないか?そんな捨て石感情をそれこそ捨てたらいいのにな」
「マリウス・・・お前,さっきから何を言ってるんだ。俺達ラミエルの結婚を祝いに来たんじゃなかったのか」

 ハービア王子がはらはらしながら2人を見る。しかし,マリウス皇子はいつもののほほんとした穏やかな彼ではなかった。

「俺・・・本当にアイシスの件にしても何にしても世話になったラミエルだから言ってるんだよ。後悔しないでほしいからさ。ハービア・・・お前だって本当はそう思ってるはずだ」
「マリウス」
「俺達何年悪友やってると思ってるんだ・・・・まったく。俺,言いたいことは言ったよ。恐らくラミエルの選択はお前の考えた計画の成功を導くだろう。でも・・・気持ちってそんなに都合良くできてないもんだよ。じゃあ,俺達はこれで。コーヒーご馳走さま。今度はおいしい紅茶お前のために入れさせてもらうよ。行くぞ,ハービア」
「え~~~~~~~~~~~?俺,出番なかったぞ~」
「いいんだよ,その方が。お休み」
「ちょ・・・ちょっと待てよ。俺,ラミエルとほとんど話が・・・・。うっ」

 マリウス皇子は礼をするとハービア王子の口をふさいで出て行った。



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3-25 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-20 23:43:56 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第25話

 また,一方ではセイラ姫を大切に思うウーナ姫を始めとする王女達やファシス王子達一部の王子達が,ラミエル帝に対し身体的な関係はなくても夜を共に過ごした事は考えようによっては実質婚に当たるのではないかと訴え,ラミエル帝の結婚に待ったがかかった。
 セイラ姫と2人だけで夜を何度か過ごしたことがあり,陰謀とはいえ同じベッドで,しかも抱きしめて眠ってしまい朝を迎えたことは紛れもない事実である。まして,神界では天帝ノブレス大神に対し,セイラ姫との結婚を口実に人界に降ろしてもらったこともやはり事実である。

 思わぬところでラミエル帝の計画に邪魔が入った。しかし,ラミエル帝はそれらを言われても言い返すこともせず,珍しく黙って聞いていた。ただ,いつものポーカーフェイスで「これから誰に何を言われようと,私が影響を受けることはないし,計画が変わることもありません」と一言言っただけで相手にしなかった。何と言っても強情で意地っ張りで頑固者にかけては世界一と言われる月の君である。到底一筋縄ではいかない。

 ラミエル帝が自室に戻った時,控えて待っている大臣達の様子を見て,何があったのか大体察しはついていた。

〈なかなか思い通りにはさせてくれないものだな〉

 月の君は少し溜息をついて椅子に座る。

「陛下?」

 月の君は哀しさを含んだとても美しい顔でみんなを見る。見慣れているはずのファンタジア帝国の側近達でさえみとれてしまうほどの美貌である。

「なぜみんなは私が自ら選んだ結婚を喜んではくれないのでしょうか。私はただ・・・たった1人の弟を確実に次代の皇帝にしたいだけなのに・・・。私はあと1年余りでレイミール・ラ・ルネシス神に覚醒する身。それは私にとっては死と同じ意味をもちます。ならば,この1年余りを私のしたいようにさせてくれませんか」

 静かな月の君の言葉にみんなはしんとなる。守り役であり,一番の側近であるマリオ最上大臣がラミエル帝の前に進み出て跪く。

「それが陛下の真のお心とあれば・・・。でも陛下,恐れながら陛下は最近よく嘘をつかれます。しかも陛下ご自身の御心に嘘をつかれ,それを真実にするために後から行動されているように見受けられます」
「そんなことは・・・」
「ないとは言わせませんよ,陛下。陛下が本当に心を許され,愛しく思われている方はアリエス姫ではございませんでしょう。私は陛下に申し上げたはずです。どうせ結ばれるのであれば本当に好きな方とになさいませ・・・と。たとえそれが相手を傷つけることになったとしても,相手の方は決してそれを不幸とは思われないでしょう」

 ラミエル帝は静かにマリオ最上大臣を見る。

「ファンタジア帝国のために私はアリエス姫を我が妃にと望みました。この私が自分で熟慮した上で決めたのです。なぜあなた方は素直に喜んでくれないのですか?確かにまだ婚約の儀は行っていませんが,私は彼女を妃に迎えるつもりですし,彼女も私の所へ来る準備をして下さっています。今さら水をささないでください」
「そこまでおっしゃるなら,私はもうこれ以上何も申しあげることはございません」

 マリオ最上大臣はそう言うと,跪いたまま深く礼をして立ち上がった。

「それでは陛下,我々はこれで失礼させていただきます。何かありましたら控えの間にご連絡を」

 大臣達は深々と礼をすると部屋を退出した。ラミエル帝は彼らを見送った後,溜息をついて奥の自分の部屋に入った。

「何をしてもいろいろと言われるな」
 
 そんなことを考えながら,月の君は少し疲れたようにソファに腰を下ろした。



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3-24 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-19 23:53:08 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第24話

 ラミエル帝の結婚は誰からも祝福され,順調に進んでいるかに見えた。もともと結婚しないと言い張っていた世界一の強情者と言われているラミエル帝が,結婚すると宣言したのだからそれだけで大進歩である。各国の王子達はこれで意中の姫君が自分に向いてくれるかと期待をし,姫君達は皇妃がだめでも側妃にはまだ望みがあるとしてやはり月の君への憧れをやめられないでいる。 結婚宣言をしたものの,やはりしたらしたで月の君のそっとしておいてほしいという願いとは裏腹に彼の周りは相変わらず賑やかである。

 そんな祝福ムードにもかかわらず,ファンタジア帝国皇帝の側近の大臣達は密かにデーリー帝のところを訪れていた。

「なに?ラミエル殿の婚儀には反対じゃと?そなた達,結婚するぐらいなら死んだ方がましと言っていたラミエル殿が結婚に前向きになられたとあんなに喜んでいたではないか」

 デーリー帝は目を丸くしてファンタジア帝国の大臣達に言った。

「デーリー陛下,我々一同は,大切な我が陛下の皇妃様になられるにふさわしいお方はセイラ姫様しかおられないと思っております」
「どうしてじゃ?アリエス姫は申し分ないと・・・ラミエル殿の方から話を持ちかけたと聞いておるぞ。あの強情さで有名な月の君が御自分からアクションを起こされたのじゃ。めでたいことではないか。姫君自身もとてもいい姫君と伺っておるし」
「はい,それは・・・。しかし,困ったことが1つございます。これはデーリー陛下もお分かりのことと思いますが・・・」
「なるほどな。そのことか」
「はい。我々独自で密かに調べましたところ,やはり,アリエス姫様は御子が・・・産めませぬ」
「実子ができたら困るからな,ラミエル殿にとっては・・・・。まあ,月の君は大歓迎だろうがな」
「陛下は大歓迎でも,我々は大反対でございます。皇妃様をお迎えする意味がございません。フェリス皇弟殿下はご病弱の身。恐らく長くはもちますまい。となれば,やはり我が陛下の実子が必要となります」
「そなた達,それは一番ラミエル殿が嫌がっておられることを知っておろう。我が娘セイラが皇妃候補の対象外とされているもそれが理由なのだからな」
「嫌がられようが何なさろうが,お子様は絶対必要なのでございます。ですから,デーリー陛下,どうぞ,どうぞセイラ姫様と我が陛下を結ばせてくだされ。お願いいたします」

 大臣達は一斉に頭を下げる。デーリー帝はファンタジア帝国の大臣達を前に溜息をつく。

「お願いされてもどうしようも・・・。ラミエル殿はアリエス姫との婚約の準備を楽しみにされているであろうに」
「ですから・・・その・・・あの・・・」
「何だ?」
「真に恐れながら・・・あの・・・やはり既成事実に基づいた実質婚を・・・」
「実質婚?ドクターアロウ殿の話に,そんな事をすればとんでもないことになると言ったのは他でもないそなた達が言ったのではないか?」
「背に腹は替えられませぬ。陛下のご性格からして側妃は迎えられないでしょう。なので皇妃様がとても重要なのでございます。アリエス姫をそんなに望まれるなら,それこそアリエス姫を側妃にお迎えすればよいのです」

 ファンタジア帝国の大臣達は必死である。実は,今までも密かに大臣達はデーリー帝に謁見してはラミエル帝とセイラ姫のことを相談していた。デーリー帝は,大親友であったファンタジア帝国の先帝アシュラル帝からファンタジア帝国の後見を頼まれていた。アシュラル帝も息子ラミエルと大親友の姫君セイラ姫とのゆくゆくの結婚を望んでいた。しかし,そんな事を大の父親嫌いのラミエル帝が知ったらますますセイラ姫の恋路は厳しいものになろうと思い,デーリー帝は誰にも言わずに胸の中にしまいこんでいた。

〈この状況は・・・・まさに噂に聞く神界での話とシンクロするな。ラミエル殿もレイミール神も大の父親嫌いときている。そして本人達はどちらもセイラ姫を受け入れては下さらぬ〉

 大臣達の話を聞きながら,デーリー帝はますます溜息が深くなるのだった。



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3-23 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-18 23:57:03 | 「ある国の物語」 第九章 
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このお話は・・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第3節 森と湖の国の皇妃  第23話

「して・・・そのアリエス姫様は御子様をもうけることが可能な方なのでしょうか」
「そのようなことは一切・・・そもそもどのような姫君かも分かりませぬ」
「陛下が選ばれた方じゃ。きっとお世継ぎは望めないであろうな」
「それでは困ります」

 ファンタジア帝国の大臣達は頭を悩ませる。ラミエル帝は落ち着いたもので,ファンタジア帝国の皇妃の発表はしたものの,ルナ王国の神殿側がアデル王子を王位継承者として認めないという立場をとっている限り,ルナ王国の王妃はいないとした。ルナ王国の大臣達は大弱りである。しかし,ルナ王国の神殿側はあくまでも認めないという姿勢を崩さず,ラミエル国王に対して正式に世継ぎを王位継承者として立てるようにと要求した。月の君はアデル王子以外考えられないとその要求を突き返し,大好きな母なる国でありながら険悪ムードになっていた。

 そんな月の君に想いを寄せるセイラ姫は,ラミエル帝の皇妃候補発表以来心落ち着かず,沈み込んでいる。こればかりはデーリー帝もルチア女官長もどうしようもない。何といってもラミエル・デ・ルーン帝は公式に発表してしまったのである。内々ならともかく,婚約式の日取りも決まり,式が終わったらアリエス姫はムーンレイク宮殿に皇妃候補として入宮し,皇妃教育を受けることになっているのである。

 ファンタジア帝国の国民は諦めていた皇帝の結婚宣言に大喜びである。

 やがて,爽やかな5月になり,世界皇帝会議総会が開かれた。もちろん言うまでもなくみんなの注目の的はファンタジア帝国のラミエル帝である。しかし,ラミエル帝は相変わらず無愛想で全くいつもと変わらない。そしてまたいつものように遅刻ギリギリにやってくる。彼が到着すると,各国の国主達がいそいそと挨拶に向かう。

「これはラミエル殿,ご機嫌よう」
「こんばんは」
「この度はおめでとうございます。いよいよ御結婚ですな」
「ありがとうございます」

 ラミエル帝は軽く受け答えをすると,さっさと自室へこもってしまった。世界皇帝会議ではいつも1日目は国主達の到着日となるために,会議は開かれない。その夜,ラミエル帝はイリュージョン帝国のデーリー帝と今回の議題について確認と打ち合わせを行い,一息ついた。すぐに帰ろうとする月の君をまたデーリー帝が引き留めて飲み物を出す。

「これから忙しくなりますな」
「そうですね。あまりピンと来ませんが」
「アリエス姫とは連絡を?」
「はい,電話でしか話せませんが・・・」

 月の君はたんたんと話す。別に照れてもなく,嬉しそうでもなくまるで他人事のような感じである。

「失礼だが・・・それにしては嬉しそうじゃないね」

 デーリー帝は月の君を見つめて言った。

「そうですか?」

 ラミエル帝はその引き込まれるような美しい顔でデーリー帝を一瞬見返したが,また視線をテーブル上に落とす。

「ラミエル殿,何故アリエス皇女を選ばれたのか。そなたのこと,そなたの感情からではあるまい」

 デーリー帝からの問いに,ラミエル帝は紅茶を一口飲んでカップを置く。

「彼女は素晴らしくとてもいい方ですよ。私の妃としての我が儘な条件にもほとんど当てはまりますし,とても優しい方という印象を受けました」
「そうか」
「デーリー殿は私の結婚を喜んでは下さらないのですか?」

 ラミエル帝はデーリー帝を真っ直ぐ見つめて問いかけた。

「いや,もちろん嬉しいよ」
「私の結婚式の日にはぜひ参列して下さい」
「ああ,もちろんそうさせてもらよ」
「ありがとうございます。では,私はこれで失礼します。ご馳走様でした」

 ラミエル帝はそう言うとスッと席を立った。そして一礼をすると,出て行った。

「月の君の本心は分からぬな」

 デーリー帝はふうっと溜息をついた。



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3-22 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-17 23:59:30 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第22話

 突然の発表にはファンタジア帝国やルナ王国の大臣達までもがびっくりした。実は,彼らまでもが全く知らされていなかったからである。

「おい,そもそも・・・ムーンライト帝国ってどこの国だ?」
「分からん。何でもずーっと東の国で,向こうでもあまり知られていない神秘的な国だそうだ。まあ,でも大国らしいけどな」
「しかし・・・そんな国の姫君といつお知り合いになったんだ?ファンタジアの月の帝は・・・」
「さあ・・・・わけがわからんな」
「それにしても・・・ついにラミエル帝が御結婚か」

 どこに行っても凄い噂である。

 星の国イリュージョン帝国でもその話はもちろん伝わっていて,星姫は胸がギュッと締め付けられるほど切なく,苦しくて自然と涙がこぼれ出た。サクラ貝のペンダントをもらったのはついこの前のことである。その時は,彼は結婚の「け」の字も出していなかった。しかし,正式に発表された今,あのファンタジア帝国のラミエル・デ・ルーン帝が他の姫君と結婚することになったのは事実である。

 当のラミエル帝は全く落ち着いていて,「もう私の妃になる方も決まり,婚約式の日取りも決めました。これでいいのでしょう?」と冷めたものである。結婚式は行事のことも考えて9月中旬に挙げることも予定され,これから婚約式の準備にとりかかり始めるだろうという噂があっと言う間に広まっていく。

「へ・・・・陛下,我々にはそのような重大な事を一言も・・・・」

 寝耳に水で発表された当のファンタジア帝国の大臣達は大慌てである。ラミエル帝は息を切らして駆け込んできた大臣達とは対照的に,静かに「それは悪かったと思っています」と一言言っただけだった。

「し・・しかし,陛下。いつの間にそのような御国の姫君と仲良くおなりあそばしたのでございますか?」

 同じく知らされていなかった守り役のマリオ最上大臣が不思議そうに尋ねる。ラミエル帝は書類を見ていたが,皇印を押して脇に置き,少し息をつく。

「陛下?」
「前に行った東の国への視察旅行の時に偶然出会ったのです。あの幻想の国と言われるムーンライト帝国の皇帝サマリス・ジーグ・オギニアルに・・・。それで少し会談をして,皇妃候補を探していると話したら,条件に合う姫君がいるというのでそのまま・・・」
「で・・・当の姫君には会われたのでございますか?」
「はい。私より3つ下で彼女ならきっとファンタジア皇妃として務まるだろうと思えるほど,聡明で心優しい姫君でした。レイミール・ラ・ルネシス神の事も,私があと2年足らずの命であることも承知の上なので,とても心強いと思っています。いずれ,皇妃教育で入宮しますから,その時に紹介しますよ」

 月の君は淡々と話すと,また次の書類に目を通して仕事に戻っていた。

 月光の国ムーンライト帝国第一皇女アリエス姫。たった何日かの出会いで月の君に結婚を決意させた姫君である。

 世界中はもうその話でもちきりで,当然姫君達のショックはとても大きく,騒ぎはおさまるどころかますますヒートアップしていた。そして,今度は早くも「ルナの王妃に」とか「側妃に・・・」という者が現れて,月の君の周りは全然落ち着かない。

 大臣達もひっきりなしの問い合わせにてんやわんやである。大臣達自身知らされていなかったので,問い合わせがあってもこたえようがなかった。もう冷や汗ものである。
 ラミエル帝は,もうここまで言ったらうるさく言われることもなかろうと,いつもと変わらない様子で政務を執っていた。ところが,彼の予想に反して,彼の結婚問題は決まったら決まったでまたそれで騒ぎになり,さすがの彼もいい加減うんざりしていた。


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3-21 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-16 12:42:57 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第21話

 デーリー帝はその後,ルチア女官長と話をしていたが,彼女はデーリー帝とドクターアロウの話を聞いて笑った。

「アロウ殿がそのような事を・・・。ラミエル陛下はあのような純真なふりをされていて案外御存知かもしれませんよ。あのお方は一切表に出されませんから,本当に知っていらっしゃるのか知っていらっしゃらないのかはさっぱり分かりません。ただ,ずっと陛下が心配なさっていらっしゃるのは,やはりラミエル様がラミエル様でなくなる時であるのは確かでございましょう」
「つまり・・・本来の月神レイミール・ラ・ルネシス神に覚醒された時か・・・」
「はい。私はあまり神様方のことは知りませんが,そんな私でもレイミール・ラ・ルネシス神様・・・それも本来の月の聖帝様はとても気まぐれなお方で,その美しさは神界の秘宝とも言われ,また,その気まぐれさ故,時には優しく時には畏怖の神とも言うべき残酷な神となられると言うことを聞き及んでおります。天帝大神様はある目的をもって月神様と星神様とが結ばれるを強くご要望されているとお聞きしますが・・・私はとても心配しているのでございます。果たしてラミエル様が月神様に覚醒された時に我が姫様はそれに耐えることができるのかと・・・」
「確かにな・・・。前世と言うとちょっと違うかも知れぬが,神界でも星の女神は月の神に片想いだったと。しかし,星の女神の化身と言われるセイラに耐えられねば他の姫君はもっと耐えられないと思うが・・・」
「そうでございますね。ただ・・・他の姫君であれば月の神様はさして反応はされないでしょう。逆に申し上げれば,神世からの繋がりがある姫様だからこそお辛い思いをされることもあるのではと・・・。どう見ても月神様は星神様を良くは思われていないような感じがしますし・・・」
「ふむ・・・。本当なら天帝大神様との約束で人界でラミエル殿とセイラは結婚するはずであったからな。それが成就されぬまま今に至ってしまったのはそれこそレイミール・ラ・ルネシス神本人が認めなかったからだ。聖なる月の神であったら何の問題もなかったであろうに,運命の輪を廻す者は全てを大きく変えようとしている」

 デーリー帝の言葉にルチア女官長は先ほどの笑顔はどこへやらで,一変して哀しい表情になる。

「私はただただ姫様がお幸せになられることを願っているのでございます。ですが,これほどまでに周りから望まれていながらお2人に進展がないのはどうしてでございましょう。神世の姫様はそんなに月の神様を怒らせるようなことをなさったのでしょうか。私にはとても信じがたいことでございます」
「神世のことは人間である我々には手を出してはならぬ領域じゃ。セイラもラミエル帝以上に神世のことは全く記憶にない故,心を痛めているであろうな。だが・・・唯一荒れ狂う月神を止められたは星の女神ただ1人ということも事実じゃ。それが一条の希望の光となることを私は信じておるのだよ,ルチア」
「そうでございますね。私も全く同じ思いでございます,陛下」
「それにしても・・・うまくいかぬものだな」

 2人は若い2人を取り巻く複雑な事情に暫く黙ったままだった。

 昼食が済んでからは,ラミエル帝はデーリー帝,フェリス皇子,アルコン皇子,セイラ姫を連れてプチムーン宮殿に遊びに行った。ラミエル帝は常にフェリス皇子の側にいてすごい可愛がりようである。特に,病弱と分かってからはフェリス皇子に関しては凄く敏感になっていた。それは誰が見ても明らかで,唯一ラミエル帝らしからぬ一面であった。

 やがて,星の国イリュージョン帝国の一行が帰って暫く経った頃,森と湖の国ファンタジア帝国のラミエル・デ・ルーン帝は,正式に月光の国ムーンライト帝国のアリエス第一皇女をファンタジア帝国の第一皇妃として迎えるつもりであることを宣言し,婚約式の日取りを自分の誕生日である6月15日に行う予定であることを明らかにした。

 もう世界は突然の発表に大パニックである。

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3-20 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-15 23:56:23 | 「ある国の物語」 第九章 
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このお話は・・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第3節 森と湖の国の皇妃  第20話

 翌朝,ラミエル帝はいつも通り朝の見回りに出かけていて不在だった。

 星姫が目覚める。静かにベッドから立ち上がって窓のカーテンを開けると,目の前の森の向こうに朝日に輝く美しい湖が広がっているのが見えた。さすがは森と湖の国と言われるファンタジアである。

「綺麗・・・・」

 思わずそう呟いたまま,セイラ姫は心を奪われたように立ちつくしていた。今まで自分が宿泊していた部屋は,旧ムーンレイク宮殿と新ムーンレイク宮殿と向かい合った側だったため,確かにとても整えられた美しい宮庭は見えたが,自然の美しさは見えなかった。今,目の前に広がっているのは,まさに森と湖の国と言われる所以となった森と湖が織りなす美しい風景だった。

「姫様,お目覚めでございますか?」

 部屋に入ってきたルチア女官長も窓の外を見て思わず息を呑む。

「まあ・・・これは・・・・何と美しい。ラミエル皇帝陛下がおっしゃっていたのはこの風景のことだったのですね」
「そのようね。ルチア・・・ここは本当に森と湖の国ファンタジア帝国なんだわ」
「はい」

 2人は暫くその美しい風景に見入っていた。セイラ姫は朝食の後,父帝であるデーリー帝にラミエル帝からペンダントをもらったことをルチア女官長に内緒で報告した。デーリー帝は優しく「そうか。大事にしなさい」と言い,「はい」と嬉しそうに頷く娘に目を細める。

 朝の見回りから帰ってきたラミエル帝は,国家行事である春のファンタジア祭の打ち合わせで,大臣達と会議を開かねばならず,その間,デーリー帝はドクターアロウとコーヒーを飲みながら雑談をしていた。セイラ姫とアルコン皇子はフェリス皇子につかまってしまっている。

 ドクターアロウは,デーリー帝がセイラ姫から教えてもらったラミエル帝の皇妃としての条件を聞いてハッハッハッと大笑いした。

「まあ,陛下のことですからそんなところでしょう。陛下の修められた帝王学には恋愛学はないですからな。まさに純情な陛下のこと,不器用にも手探りで恋愛学を学んでいかなければならない。政略結婚は恋愛に不器用な我が陛下の逃げ道の1つでしたが,なかなか相手が見つからなかった。となると,後は御自分で条件の合う相手を見つけなければならなくなったわけです。フェリス皇子のためにも・・・・。しかしそのような条件ではますます姫君は見つかりますまい」
「娘はその相手としてはふさわしいかね」
「もちろんでございますとも,デーリー陛下。我が陛下には御結婚していただけたら私はそれで良いのでございます。お相手がセイラ姫様ならなおさらのこと。まあ・・・お世継ぎができぬ方にこだわっているであろう陛下にとっては,セイラ姫は対象外でございましょうが」
「それが第一条件なのであろうな,あの月の君にとっては・・・」
「フェリス皇子様のための御結婚です。実子がおできになっては本末転倒となりますからな。陛下には性教育もきちんと教えて差し上げています。他に何の情報も入ってこなかった陛下にとっては我々のお教えしたことが唯一の知識。我々は御結婚されれば初夜に結ばれるものとお教えしております。そして敢えて避妊の仕方はお教えしていないので陛下は御存知ないでしょう。ですから,世継ぎのできぬ妃を,と言うことにこだわっていらっしゃるのです。形だけの皇妃にはしないおつもりなのですよ」

 ドクターアロウの言葉に,デーリー帝は含み笑いをする。

「あの,何事にも完璧な月の聖帝がそんなに純情だとは信じられぬが・・・。彼の情報収集力は侮れぬぞ」
「日頃の陛下を見ていればそうです。でも,陛下は他の皇子達と違い恋愛ゲームをする時間がなかったのです。本当に性に関しては真っ白な状態なのです。ですから,きっと御結婚されたら寝食を共にするものですよ,と言えばそのようなものかと嫌がることもされないでしょう。ですから,実は今まで危なかったのでございます。陛下が解毒の知識があり,戦神であったために今まで何とか保身できていますからね。きっと相手に迫られて,その相手がまんざらでもない女性だったら,それこそ抵抗もされず,いくところまでいってしまうでしょうな」
「そんなものかね。あの冷たい月が?信じられぬな」

 デーリー帝は意外な話に目を丸くした。ファンタジア帝国の典医はフッと溜息をつく。

「それがラミエル・デ・ルーン陛下なんですよ。陛下は本当にまだ18歳の子供なのです。好きな人と話をして,一緒にいられるだけで嬉しい純真な少年なんですよ」
「ドクターアロウ殿,私は一人の娘をもつ父としてセイラをできればラミエル殿の妃にしてやりたいと思っておる。しかし,ラミエル殿は自分ではセイラを幸せにはできないと頑なに拒否されて一向に進展せぬ」
「デーリー陛下,ですから実質を先にと申し上げているのです。でも・・・まあ,時間の問題でしょうな。私は陛下はセイラ姫を皇妃として迎えられることでしょう」
「本当にそう思うかね?」
「思いますとも」

 2人はずっと話し込んでいた。

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3-19 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-14 23:56:56 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第19話

「これを・・・私に?」

 ラミエル帝は,その小さな白い包みを取ると,セイラ姫の透き通るような手のひらの上にそっと置いた。

「日頃からお世話になっている姫君へのお礼です。あなたのお誕生日に間に合わなくてごめんなさい。前に,友人達と海に行った時に綺麗な貝を見つけたので加工してもらったのです」
「ありがとうございます,陛下。大切にします」
「気に入っていただけるといいのですが。では,良い夜を・・・」

 月の君は少しはにかんだような表情で少し礼をして出て行った。

 セイラ姫は彼が出て行った後,そっとその白い包みを開けてみた。そこには,1個のペンダントが入っていた。ペンダントのチャームにはピンク色をした形良いサクラ貝とサンゴがガラスのような樹脂の中に閉じこめられ,周りに金製の枠がはめ込まれている。チェーンを通す所にはプチダイアモンドが2つ上品についている。灯りに照らされてキラキラと輝き,とても綺麗だ。

「可愛いサクラ貝」

 セイラ姫は少しドキドキしていた。ラミエル帝はサクラ貝の意味を知っているのだろうか。

 恋を成就させると言うサクラ貝。それを女性に贈るのは愛の告白と一緒である。ラミエル帝は,セイラ姫に愛の告白をするつもりで贈ったのだろうか。それとも,単に綺麗な貝殻だと何も知らずに贈ったのだろうか。

 思わせぶりな行動と贈り物に星姫はとまどって顔を赤くし,胸の鼓動を更に速くしていた。震える手でそっと首にかけてみる。あの月の君が海で拾ったサクラ貝が自分の胸元で揺れている。

 少しするとドアをコンコンコンとノックする音が聞こえた。

「姫様,こちらのお部屋にいらっしゃるとお伺いして参りました。入室してよろしいですか?」

 聞き慣れた女官長の声がする。

「あ・・・ルチア,ちょっと待って」

 セイラ姫は慌ててペンダントをはずすと白い包みに戻してポーチの中に入れた。頬を少しパンパンと手でたたき,ドアを開ける。

「姫様」
「ルチア・・・」
「どうかなさったのですか?何だか少し様子が変ですよ」

 さすがはセイラ姫の守り役である。星姫の少しの変化にも彼女は気付く。

「いえ,何でもないです。この部屋は窓からの風景がとても綺麗だからと陛下が案内して下さったのです」
「それは楽しみですね。夜が明けて明るくなったらどんな風景が待っているのでしょうね。さ,今日はお疲れでございましょう。ここの泉の間はどちらでしょうか。すぐに用意をいたします」

 ルチア女官長は相変わらずテキパキと用事をこなす。
 泉の間で身体を清め,ベッドに横たわると,ルチア女官長は「お休みなさいませ,姫様」と優しく言って部屋を出た。

 また1人になったセイラ姫は夢のような出来事になかなか夜も寝付けなかった。誕生日から一週間過ぎていたが,紛れもなくラミエル帝は自分に誕生日プレゼントを贈ってくれたのである。その小さな白い包みは,他のどんなプレゼントよりも彼女の心を嬉しくさせた。

「お休みなさい,陛下。良い夜を・・」 

 セイラ姫はそう呟くとようやく目を閉じた。

 静かに春の夜が更けていく。 

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3-18 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-13 23:32:38 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第18話

「フェリスはアルコン皇子をすっかり気に入ってしまったようです」

 段々と遠ざかっていく2人の後ろ姿を見ながら,月の君は呟くように言った。

「遊び相手としては最高なんでしょうね。弟はイリュージョンでも小さい子に人気があります」

 セイラ姫は紅茶を飲みながら優しい笑みを浮かべて言う。ラミエル帝は暫く黙って2人の姿をずっと見ていた。その優しい眼差しは月の君が上機嫌な証拠だ。聖なる月の神のように全てを慈愛で包み込むような表情で見ている。そんな月をセイラ姫は少し見て,彼女もアルコン皇子とフェリス皇子を見る。

 爽やかな春の風が吹いてきて2人の髪を弄んでいく。

「今日は本当に良いお天気で,風も爽やかで気持ちがいいですね」

 セイラ姫が思い切ってラミエル帝に話し掛ける。月の君はあまり自分から積極的には話し掛けない。昔,ハービア王子が自分から話し掛けるのをやめた時,実に1時間以上ずっと沈黙の時間が続いたというエピソードもある。それほど彼から話し掛けるというのは珍しい事であった。

「そうですね」

 月の君は一言そう言って,空を見上げる。自分が自分でいられるのは後1年と少し。その間に何ができるだろう。何をしておかなければいけないのだろう。彼は政務をしながらずっとそれを考えていた。2人の世継ぎはまだ幼い。周りを固めておかないと心許ない。
 
 暫くして月の君が席を立った。

「姫君,私は宮殿へ戻ります。少し用事があって・・・。姫君はどうされますか?」
「私も帰ります。でも・・・アルコン達は・・・」

 心配するセイラ姫とは対照的に月の君は落ち着いたものだった。

「ああ,大丈夫ですよ。フェリスはまだ幼いけれど,この広大な宮廷の隅から隅まで知っているのです。もう暫くしたら帰ってくるでしょう。大臣達もいますし・・・」
「そうなんですね。安心しました」
「では戻りましょうか」
「はい」

 星姫はラミエル帝の後をついて宮殿へ戻った。星姫の部屋まで自ら送った彼は「後ほどまた・・・」と言い残してそのまま自分の部屋へ戻っていった。
 彼はとにかく忙しい。用事が済まないのか,フェリス皇子やアルコン皇子が戻ってきても姿を現さず,次に会えたのは夕食の時だった。

 夜,彼はデーリー帝とセイラ姫と3人で話をしていた。フェリス皇子がアルコン皇子を放そうとしないので,星の国の皇子はもっぱらフェリス皇子のお守り役となっていた。フェリス皇子はもう嬉しくてはしゃいでおり,ラミエル帝はまた彼がはしゃぎすぎて熱を出すのではないかと心配するほどだった。
 3人の話でも,月の君はもっぱら聞き役に回ろうとし,自分が話すよりはデーリー帝の話を聞きたがった。デーリー帝は話の中で,さりげなく本人から皇妃選びについて聞き出そうとするが,なかなか聞き出せなかった。
 夜も更けてきたので,デーリー帝を宿泊室へと案内し,また,セイラ姫も自ら案内した。

「今夜はこちらでお休みください。ここから見る朝の風景はとても綺麗なのです」
「ありがとうございます」
「では,ごゆっくりどうぞ。後から女官長達には言っておきます。では,失礼します」

 月の君は相変わらずの調子で部屋を出て行こうとして,ふと何かを思い出したように立ち止まった。

「・・・・・・?」

 何事かと星姫が見ていると,ラミエル帝は自分の皇衣のあちこちを探していたが,また戻ってきた。

「陛下?」
「すみません,すっかり忘れていました。これを姫君にと思って・・・」

 ラミエル帝は美しい手をそっと出して握っていた手を開いた。そこには小さな包みが乗っていた。

 

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3-17 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-12 00:32:53 | 「ある国の物語」 第九章 
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このお話は・・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第3節 森と湖の国の皇妃  第17話
 
 やがて,4月を迎えてそろそろ北国にも春の足音が遠くから聞こえてくる頃となった。各国とも平和で穏やかな日が続く。実際の北国の春は5月であるが,気温も上がってきてあちこちに春らしい様子が垣間見える。

 セイラ姫もこの4月で18歳の誕生日を迎え,ラミエル帝と2ヶ月間だけ同じ歳になる。星の国イリュージョン帝国国内では第一皇女セイラ姫の誕生日を祝う催し物が各地で開かれ,各国の王子や皇子達から続々とプレゼントが届けられた。中にはプロポーズまでする者もいたが,肝心な森と湖の国ファンタジア帝国からは何の贈り物もメッセージもなかった。もし,セイラ姫に少しでも気があるなら,花の1つ贈っても良さそうなものである。
 ファンタジア帝国からのお祝いがないことをセイラ姫が気にして落ち込むのではないかとデーリー帝は心配したが,セイラ姫はみんなからの祝福を嬉しそうに受けていた。

「陛下,姫様も強くなられましたね」

 ルチア女官長が目を細める。

 セイラ姫の生誕祭が開催されて一週間後,アフタル川の架橋に関する中間報告第2回目が開かれ,デーリー帝一行がファンタジア帝国へ向かった。本来ならルナ王国とイリュージョン帝国との間に架かる橋なので,ルナ王国へ出向くのが筋だが,ファンタジア帝国から離れられないラミエル帝のために,予定変更でファンタジア帝国ムーンレイク宮殿へ行くことになったのである。

 ムーンレイク宮殿に到着したイリュージョン帝国一行を,国主であるラミエル帝は相変わらずの様子で出迎えた。

「ようこそ,デーリー殿。今回は無理を申し上げてすみませんでした」
「お久しぶりですな,ラミエル殿。むしろこちらの方が近くてこちらにとっても好都合でしたぞ」
「どうぞこちらへ。まずはゆっくりと休憩されてください」
「ああ,そうさせてもらおう」

 国主同士の挨拶のあと,待ちかねたようにアルコン皇子が挨拶に来る。セイラ姫も後ろでそっと控えている。

「兄上~,こんにちは。お久しぶりです。前は資料ありがとうございました。本当に助かりました」
「こんにちは,アルコン皇子。お役に立てて良かったです」
「こんにちは,お世話になります」
「セイラ姫もようこそおいでくださいました。みなさんお疲れでしょう。どうぞ,まずはゆっくりおくつろぎ下さい」

 ラミエル帝はいつもと変わらず,丁寧だが踏み込んだ事は話さず,大臣を呼ぶとイリュージョン帝国一行を部屋に案内させた。

 落ち着いた所で報告会が行われ,橋の完工はこの秋になりそうだ,という確認で話は終わった。

 その夜はささやかに歓迎の晩餐会が催され,ラミエル帝はデーリー帝と政治の話をしていた。

 翌日,ラミエル帝はアルコン皇子の剣の練習に付き合っていた。当然のことながら,アルコン皇子は月の君に全く歯が立たない。

「わあ,兄上にはかなわないなあ」
「アルコン皇子,脇をしめないから剣がグラグラして安定せず,隙ができてしまうのですよ」
「う~ん,難しい」

 頭を抱え込むアルコン皇子に,ラミエル帝は少し笑って剣をしまう。

 午後からはラミエル帝はフェリス皇子,アルコン皇子,セイラ姫と4人で屋外テラスで紅茶を飲んでいた。デーリー帝は疲れたと部屋でのんびりと休んでいた。フェリス皇子はアルコン皇子が大好きで,いつも彼が来ると側に寄っていってまとわりついている。そのうち,「あっちへ行きましょう。良い所があるんです。私が案内します」と言うと,アルコン皇子を引っ張って宮廷へ出て行ってしまい,ラミエル帝とセイラ姫がぽつんと残された。


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3-16 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-11 15:31:51 | 「ある国の物語」 第九章 
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森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

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第3節 森と湖の国の皇妃  第16話

 その夜,デーリー帝は,セイラ姫の身の回りの世話を終えたルチア女官長を談話室に呼んだ。

「お呼びでございましょうか,陛下」
「おお,ルチアか。まあ,ここへ来て座れ」
「それでは,失礼いたします」

 深く礼をして,ルチア女官長はかしこまりながら皇帝に促されるままソファに座った。デーリー帝は給仕の者に飲み物を持ってくるように言い,女官長を見た。

「ルチアよ,セイラの様子はどうだ?」
「はい,元気で気にしていらっしゃらないかのように振る舞われていらっしゃいますが・・・そのお姿が余計に健気に思えます,皇帝陛下。今,ようやくお休みになられましたが・・・」
「そうか」
「ファンタジア帝国のラミエル様はどうなさるおつもりなのでしょうか?」
「まあ,ラミエル殿の言うとおりの二国の中から妃を選ぶことはあるまい。あれは過大な干渉を嫌ったラミエル帝の自衛策と見るが・・・」
「恐らく陛下のおっしゃる通りでございましょう。お見合い話も今は一切受け付けていらっしゃらないとか・・・。どうやらラミエル様もお心に決められた方がいらっしゃるのではないかと・・・」
「それにしてはえらくのんびりしているな。もしかして今から探そうなどと思っているのではないか?」
「なるほど・・・あの皇帝陛下ならそれもあり得ますね」
「ルチア,余は1人の父親として今まで母親代わりに頑張ってきた娘の健気な思いを叶えさせてやりたいと思っておる。本当に我が姫は皇女であることを鼻にかけることもなく,困った者を見れば助け,一緒に動く心優しい自慢の娘じゃ。母親を早くに亡くした分,セイラには人一倍幸せになって欲しいと願っておる。しかし,何分にも姫が恋いこがれる相手は満天の星を落とすよりも難しいと言われる冷たき月の君。手強い相手じゃ」
「そうでございますね。本当に・・・・ラミエル皇帝陛下以外の方であれば,もれなく姫君を我が妃にと思ってくださいますのに。よりによって月の聖帝様に想いを寄せられるとは・・・」

 2人のもとにコーヒーが運ばれ,デーリー帝は一口飲んでふうっと溜息をつく。

 当面ファンタジア帝国との会談はない。ラミエル帝も他国からの会談申し込みが殺到していて忙しく,よほどの用でないと会談時間がとれないのである。また,彼が用もないのに遊びに来るということは絶対にない。つれないのである。
 ラミエル帝の会談は短いので有名だ。よほど準備をし,心して行かないとしどろもどろで言いたいことの半分も言えないうちに終わってしまう。ラミエル帝に会うだけでも普通の人なら足が震え上がってすくんでしまうのである。

「4月になれば・・・アフタル川の架橋の事でルナ王国との打ち合わせ会がある。その時ならラミエル殿にも会えるな」
「そうでございますか。それはラミエル陛下とお会いできるチャンスでございますね」
「そうなのだ。姫もそれを楽しみにすれば少しは元気も出よう」
「はい。陛下?」
「どうしたルチア」
「幸いにもファンタジア帝国の大臣達もルナ王国の大臣達も姫様をおおいに応援して下さっております。何気に皇妃の間に置かれているドレスも,姫様をイメージされてお似合いになるデザインにしているとか。もしかすれば,今までのように何か企んでいらっしゃるのかも知れません。私はそれを少し期待しているのでございます」
「ほう」

 デーリー帝はルチア女官長を見た。

「まあ,確かに度々ファンタジアの大臣達からはそういう話を相談されるが」
「そうでございましょう?私はラミエル皇帝陛下とセイラ姫様は本当にお似合いのカップルだと思っております。天帝大神様もお二人が人界で御結婚されたいということで人界へ戻ってこられることをお許しになったと聞いております」
「その通りじゃ。ただしその後,魔性のレイミール・ラ・ルネシス神が怒ってその話は白紙になったがな。どうやらあの2人は神界にいた頃からいろいろとあったらしい。それが・・・・吉と出るか凶と出るかは分からぬ。ただ・・・・月神の方はあまり星の女神に対していい想いはもっておらぬようだな。それを思うと,むしろ姫には諦めさせた方がいいのかも・・・とも思ってしまうのだ」
「私はずっと星の女神様の片想い・・・・せめてこの人の世で成就させたいと思います」
「ルチア・・・。そこまで娘のことを思ってくれていたのか」
「当たり前でございますよ,陛下。守り役として当然のことでございます」
「ありがとう。いつも世話をかけるな」
「何を仰せられているのです?さて,陛下,私はそろそろ失礼させていただきます。もう一度姫様の様子を伺ってから引き取らせていただいてよろしいか?」
「う・・・うむ。頼むぞ」
「承知いたしました」

 深く礼をして,ルチア女官長は部屋を後にした。

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3-15 森と湖の国の皇妃 「ある国の物語」 第九章 森と湖の国を継ぐ者

2014-02-10 23:56:01 | 「ある国の物語」 第九章 
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第3節 森と湖の国の皇妃  第15話

 ラミエル帝が周りからあれこれと言われなくなって,落ち着いて政務をし,精力的にフェリス皇子に直接帝王学を教えている頃,星の国イリュージョン帝国ではセイラ姫がどーんと落ち込んで元気がないので,ルチア女官長を始め,宮内の者は大弱りだった。デーリー帝は愛娘の元気がないので,「ラミエル帝はそなたが好きだと言ったではないか」となぐさめてみるのだが,姫君はただ頷くだけでいつもの溌剌とした聡明な彼女の姿は見られなかった。

「セイラ」
「すみません,父上。本当に御心配ばかりおかけして・・・私は大丈夫ですから・・・」
「無理はするな。我慢強いそなたがそこまでになってしまうのはよほどのことじゃ。ラミエル殿へせめて思いを伝えてみてはどうじゃ」
「え?」

 セイラ姫は父帝からの言葉にびっくりした。

「そ・・・そんな事はできません。だって陛下に他に好きな方がいらっしゃるのは分かっているのです」
「ほう?なぜそれが分かるのじゃ」
「それは・・・」
「申してみよ,皇女よ」
「前に・・・御自分の出す条件に全部当てはまる人はいないけど,ほとんど満たしている方ならいるって・・・。それもただ1人。まだプロポーズも何もしていないけどって教えてくださったのです。みんなはそのことをまだ知らないので秘密ですよ,と」
「ほう・・・ラミエル殿がそのようなことを」
「私はそれを聞いた時に,その方とうまくいくようにと・・・。うまくいったらちゃんと祝福をしてあげなくちゃって思うんだけど・・・あのね,なぜか胸が苦しくなって涙が・・・」

 そう言っているセイラ姫の目からは,ポロポロと水晶のかけらのように煌めく涙が流れる。デーリー帝は思わずそんな星姫を抱きしめていた。何と言ってもセイラ姫の元気の素はラミエル帝なのである。

「セイラ,そなたもあと少しで18歳じゃ。そろそろ大人の恋の駆け引きを知っても良いのかもしれぬ」
「父上」
「それから,まだ諦めるのは早いかも知れぬぞ」
「え?」
「もしかすれば,その条件をほとんど満たしているという女性はそなたかも知れぬ」
「ええ?」

 セイラ姫はびっくりして父帝を見上げた。

「その,ラミエル殿が出されたという条件を教えてくれぬか?」
「は・・・はい。何より国に有益で,2人の弟たちを愛してくれて,二国の妃としてしっかり務まって,世継ぎができなくて,自然を愛する人で,お互い干渉し合わない方が条件だと・・・」

 デーリー帝はそれを聞いてにっこり笑う。

「そなたはほとんどの条件を満たしているではないか」
「父上」
「良いか?ファンタジアにとってイリュージョンは隣国。古くから親交もあり,国境警備や交通面では有益国。ほとんど鎖国化しているファンタジアには珍しく貿易国として我がイリュージョンは位置づけられている。そしてそなたはフェリス皇子やアデル王子にも好かれており,二国の妃として十分やっていけるだけの資質もある。自然も好きで,人のすることに思い悩んでも口にすることなく,我が娘ながら優しい思いやりの心をもっておる。ただ・・・そなたは生まれた時からすこぶる健康体じゃ。故に然るべき行為がなされれば世継ができる可能性がある。そこだけ条件が外れてしまうな」

 セイラ姫は顔を赤くして俯く。

「そなたの3年越しの恋,そろそろ天上高い月にも伝わってもいい頃じゃ。良いか,その今人を思う大切な心を決して手放してはならぬぞ」
「はい,父上」

 デーリー帝の言葉にセイラ姫は小さく返事をした。執務室に戻ったデーリー帝は少し溜息をつく。

「それにしても・・・ラミエル殿の言う1人の人とは一体誰なのであろうな」

 噂では,ラミエル帝の初恋の人にそっくりな姫君が南国にいるという。しかも,好きな花までも同じで,ラミエル帝がとまどっていたという情報もファンタジア帝国から聞き及んでいる。その姫君のことなのか・・・。

 デーリー帝はいろいろと考えていた。
                                                                   
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