第3節 友と 第6話
「な・・・何だよ急に」
「別に・・・・ただお見合いのお話でしたから,意中の人がいるのなら前もって父君にお話をしておかれた方がいいと思っただけです」
「い・・・いないよ,別に」
ラミエル帝は静かにマリウス皇子を見る。まともに見返せないほどの迫力ある美貌に天下のフォスター帝国の世継ぎは顔を伏せてしまった。
「私に弁解をしても何もなりませんよ。いればの話をしただけですから・・」
「お・・・お前はどうなんだよ。人の事言えるのか?」
マリウス皇子は顔を赤くしたまま精一杯やり返す。
「私は結婚はしませんからお見合いの必要もないのです。もう世継ぎも決まっていることですし・・」
月の君はいともあっさりと言ってのけた。
「さて,マリウス皇子,いつ帰られますか?もしファンタジア本宮においでになるのでしたらモンテオール帝に連絡をしておきますが」
「俺,帰らないぜ。見合いなんてとんでもない」
「分かりました。ではそのように・・・・」
ラミエル帝はそれを確認するとまた部屋を出て行ってしまった。
「チェッ,いけすかない奴」
「そう怒るなよ。あれがラミエルの精一杯の思いやりなんだ。人付き合いの下手な奴だから許してやってくれ」
「フン,分かってるよ,そのくらい」
マリウス皇子は顔をそらして窓の外を見た。
ラミエル帝はモンテオール帝と連絡を取り合い,了承を得て2人をファンタジア帝国のムーンレイク宮殿へ連れて行った。ラミエル帝が友達を連れてくるのは久しぶりのことで,大臣達は2人を温かく歓迎した。しかし,いったん本宮殿に入ると,ラミエル帝本人は会議などの政務で滅多にお目にかかれなくなってしまった。
その間2人はひそひそと一部屋に集まって談笑していた。
「なあ,マリウス。アイシス姫にプロポーズするなら今のうちだぞ。聞けばあっちもかなり見合い話が舞い込んでいるらしいぜ」
「だからあ,姫君は月の君命なんだってば。振り向いてくれないよ。俺がデートに誘ってもラミエルが見えたら,キャーッて叫んでそっちへ走って行ってしまうんだ。ショックだな。ラミエルにはかなわないと分かっていても,露骨に態度に出されるとさ」
「落ち込むなよ。天下のフォスター帝国の世継ぎが」
「お前はいいよ,ハービア。ちゃっかり妃を迎えてさ」
「何で俺の話になるんだ?お前とラミエルが仕組んだことだろうが」
「そりゃそうだけど・・・・お前見てると何か腹が立ってくるぜ」
「ならラミエルに頼んでやろうか?」
「冗談じゃない。俺の恋は俺の手でつかむんだ」
「はいはい,それだったら文句言うなよ。うるさい奴め」
「薄情な事言うなよ。俺の見合い話どうすりゃいいんだ。俺・・・1人息子だけどラミエルみたいにアカの他人を捜す勇気なんてないんだよ。俺にはあのおっそろしい父上様も母上様も生きているんだよ。何とかしてくれよ」
マリウス皇子はハービア王子にすがりついた。相当アイシス姫に惚れ込んでいるらしい。
「ま,アイシス姫の恋はラミエル相手だから成就されることはないだろう。気が変わるのを待つしかないんじゃないのか?でも父上に言っておいた方がいいぞ。アイシス姫なら美姫だし名門だし父上も許してくれるんじゃないのか?」
「それが・・・」
「どうしたんだよ」
「俺の親父様とアイシス姫の父君のファルア帝とは犬猿の仲なんだよ。いつもいがみあっててさ。おまけにアイシス姫も一人娘で世継ぎの姫君だ。ラミエルのところならともかく,フォスター帝国ごときに愛姫を出してくれないよ」
マリウス皇子はテーブルに突っ伏した。
「あー,何で俺ってこんなに不幸なんだろう。好きでもない人と結婚するなんて嫌だよ~」
「よしよし,俺が何とかしてやるよ」
悪友を慰めながら,太陽の君はマリウス皇子の荷物からまた聖書を取り出し,第20章を読み始めた。
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「ある国の物語」
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「別に・・・・ただお見合いのお話でしたから,意中の人がいるのなら前もって父君にお話をしておかれた方がいいと思っただけです」
「い・・・いないよ,別に」
ラミエル帝は静かにマリウス皇子を見る。まともに見返せないほどの迫力ある美貌に天下のフォスター帝国の世継ぎは顔を伏せてしまった。
「私に弁解をしても何もなりませんよ。いればの話をしただけですから・・」
「お・・・お前はどうなんだよ。人の事言えるのか?」
マリウス皇子は顔を赤くしたまま精一杯やり返す。
「私は結婚はしませんからお見合いの必要もないのです。もう世継ぎも決まっていることですし・・」
月の君はいともあっさりと言ってのけた。
「さて,マリウス皇子,いつ帰られますか?もしファンタジア本宮においでになるのでしたらモンテオール帝に連絡をしておきますが」
「俺,帰らないぜ。見合いなんてとんでもない」
「分かりました。ではそのように・・・・」
ラミエル帝はそれを確認するとまた部屋を出て行ってしまった。
「チェッ,いけすかない奴」
「そう怒るなよ。あれがラミエルの精一杯の思いやりなんだ。人付き合いの下手な奴だから許してやってくれ」
「フン,分かってるよ,そのくらい」
マリウス皇子は顔をそらして窓の外を見た。
ラミエル帝はモンテオール帝と連絡を取り合い,了承を得て2人をファンタジア帝国のムーンレイク宮殿へ連れて行った。ラミエル帝が友達を連れてくるのは久しぶりのことで,大臣達は2人を温かく歓迎した。しかし,いったん本宮殿に入ると,ラミエル帝本人は会議などの政務で滅多にお目にかかれなくなってしまった。
その間2人はひそひそと一部屋に集まって談笑していた。
「なあ,マリウス。アイシス姫にプロポーズするなら今のうちだぞ。聞けばあっちもかなり見合い話が舞い込んでいるらしいぜ」
「だからあ,姫君は月の君命なんだってば。振り向いてくれないよ。俺がデートに誘ってもラミエルが見えたら,キャーッて叫んでそっちへ走って行ってしまうんだ。ショックだな。ラミエルにはかなわないと分かっていても,露骨に態度に出されるとさ」
「落ち込むなよ。天下のフォスター帝国の世継ぎが」
「お前はいいよ,ハービア。ちゃっかり妃を迎えてさ」
「何で俺の話になるんだ?お前とラミエルが仕組んだことだろうが」
「そりゃそうだけど・・・・お前見てると何か腹が立ってくるぜ」
「ならラミエルに頼んでやろうか?」
「冗談じゃない。俺の恋は俺の手でつかむんだ」
「はいはい,それだったら文句言うなよ。うるさい奴め」
「薄情な事言うなよ。俺の見合い話どうすりゃいいんだ。俺・・・1人息子だけどラミエルみたいにアカの他人を捜す勇気なんてないんだよ。俺にはあのおっそろしい父上様も母上様も生きているんだよ。何とかしてくれよ」
マリウス皇子はハービア王子にすがりついた。相当アイシス姫に惚れ込んでいるらしい。
「ま,アイシス姫の恋はラミエル相手だから成就されることはないだろう。気が変わるのを待つしかないんじゃないのか?でも父上に言っておいた方がいいぞ。アイシス姫なら美姫だし名門だし父上も許してくれるんじゃないのか?」
「それが・・・」
「どうしたんだよ」
「俺の親父様とアイシス姫の父君のファルア帝とは犬猿の仲なんだよ。いつもいがみあっててさ。おまけにアイシス姫も一人娘で世継ぎの姫君だ。ラミエルのところならともかく,フォスター帝国ごときに愛姫を出してくれないよ」
マリウス皇子はテーブルに突っ伏した。
「あー,何で俺ってこんなに不幸なんだろう。好きでもない人と結婚するなんて嫌だよ~」
「よしよし,俺が何とかしてやるよ」
悪友を慰めながら,太陽の君はマリウス皇子の荷物からまた聖書を取り出し,第20章を読み始めた。
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