テルサのFantastic Stories

今まで書きためていたとりとめもない物語を少しずつ連載していきます。ファンタジー物が多いです。ぜひ読んでみて下さい。

3-6 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-25 03:18:23 | 「ある国の物語」 第五章 
第3節 友と  第6話

「な・・・何だよ急に」
「別に・・・・ただお見合いのお話でしたから,意中の人がいるのなら前もって父君にお話をしておかれた方がいいと思っただけです」
「い・・・いないよ,別に」

 ラミエル帝は静かにマリウス皇子を見る。まともに見返せないほどの迫力ある美貌に天下のフォスター帝国の世継ぎは顔を伏せてしまった。

「私に弁解をしても何もなりませんよ。いればの話をしただけですから・・」
「お・・・お前はどうなんだよ。人の事言えるのか?」

 マリウス皇子は顔を赤くしたまま精一杯やり返す。

「私は結婚はしませんからお見合いの必要もないのです。もう世継ぎも決まっていることですし・・」

 月の君はいともあっさりと言ってのけた。

「さて,マリウス皇子,いつ帰られますか?もしファンタジア本宮においでになるのでしたらモンテオール帝に連絡をしておきますが」
「俺,帰らないぜ。見合いなんてとんでもない」
「分かりました。ではそのように・・・・」

 ラミエル帝はそれを確認するとまた部屋を出て行ってしまった。

「チェッ,いけすかない奴」
「そう怒るなよ。あれがラミエルの精一杯の思いやりなんだ。人付き合いの下手な奴だから許してやってくれ」
「フン,分かってるよ,そのくらい」

 マリウス皇子は顔をそらして窓の外を見た。

 ラミエル帝はモンテオール帝と連絡を取り合い,了承を得て2人をファンタジア帝国のムーンレイク宮殿へ連れて行った。ラミエル帝が友達を連れてくるのは久しぶりのことで,大臣達は2人を温かく歓迎した。しかし,いったん本宮殿に入ると,ラミエル帝本人は会議などの政務で滅多にお目にかかれなくなってしまった。

 その間2人はひそひそと一部屋に集まって談笑していた。

「なあ,マリウス。アイシス姫にプロポーズするなら今のうちだぞ。聞けばあっちもかなり見合い話が舞い込んでいるらしいぜ」
「だからあ,姫君は月の君命なんだってば。振り向いてくれないよ。俺がデートに誘ってもラミエルが見えたら,キャーッて叫んでそっちへ走って行ってしまうんだ。ショックだな。ラミエルにはかなわないと分かっていても,露骨に態度に出されるとさ」
「落ち込むなよ。天下のフォスター帝国の世継ぎが」
「お前はいいよ,ハービア。ちゃっかり妃を迎えてさ」
「何で俺の話になるんだ?お前とラミエルが仕組んだことだろうが」
「そりゃそうだけど・・・・お前見てると何か腹が立ってくるぜ」
「ならラミエルに頼んでやろうか?」
「冗談じゃない。俺の恋は俺の手でつかむんだ」
「はいはい,それだったら文句言うなよ。うるさい奴め」
「薄情な事言うなよ。俺の見合い話どうすりゃいいんだ。俺・・・1人息子だけどラミエルみたいにアカの他人を捜す勇気なんてないんだよ。俺にはあのおっそろしい父上様も母上様も生きているんだよ。何とかしてくれよ」

 マリウス皇子はハービア王子にすがりついた。相当アイシス姫に惚れ込んでいるらしい。

「ま,アイシス姫の恋はラミエル相手だから成就されることはないだろう。気が変わるのを待つしかないんじゃないのか?でも父上に言っておいた方がいいぞ。アイシス姫なら美姫だし名門だし父上も許してくれるんじゃないのか?」
「それが・・・」
「どうしたんだよ」
「俺の親父様とアイシス姫の父君のファルア帝とは犬猿の仲なんだよ。いつもいがみあっててさ。おまけにアイシス姫も一人娘で世継ぎの姫君だ。ラミエルのところならともかく,フォスター帝国ごときに愛姫を出してくれないよ」

 マリウス皇子はテーブルに突っ伏した。

「あー,何で俺ってこんなに不幸なんだろう。好きでもない人と結婚するなんて嫌だよ~」
「よしよし,俺が何とかしてやるよ」

 悪友を慰めながら,太陽の君はマリウス皇子の荷物からまた聖書を取り出し,第20章を読み始めた。

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3-5 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-20 03:19:12 | 「ある国の物語」 第五章 
第3節 友と  第5話

「とにかく・・・・・ラミエルに何とか月のサークレットをはめさせておかないと・・・。魔性にならなくてすむように」

 ハービア王子の言葉に悪友は少し溜息をついた。

「ラミエル帝の強情さはお前の方がよく知ってるだろう。世界一有名な強情っぱりだぞ」

 マリウス皇子の言葉が届いたか届いていないのか,ハービア王子は旧約聖書を見ながら考えていた。第13節に書かれた魔性の月。神世に一度,この人間界を滅ぼそうとした月の神レイミール・ラ・ルネシスの姿がそこにはある。魔性となったレイミール・ラ・ルネシス神はこの世を悲観し,全てがなくなってしまえばよいと願った。その願いは自然を動かし,天帝が早く気づいていなければこの世は今,存在していなかったかもしれない。まるで大嵐と大洪水と大地震が一度に来たようなすごい荒れようだったらしく,人間はみな,この世の終わりと怯え,大地にひれ伏したと聞く。

「そう言えば・・・・あいつに何かあると自然が反応しているな,今でも・・・・。覚醒したらそれはすごいんだろうな」
「おいおい,感心してる場合かよ,ハービア」

 二人がもめていると,ラミエル帝が部屋に戻ってきたので,マリウス皇子は慌てて旧約聖書を荷物の中にしまいこんだ。急に二人は表情を変え,何事もなかったかのように月の君を迎えた。

「や,お帰り。すんだのかい?」
「ラミエル,お疲れ様」

 何も知らないラミエル帝は二人の態度にいささか不審を抱いているようだったが,追及することはなかった。悪友達に自慢のハーブティーを入れる。

「先ほど・・・・フォスターのモンテオール帝から通信が届きましたよ。宮殿に帰ったら山のようにお見合いの申し込みがたまっているから,楽しみにしておくようにと」
「ええーーーー?いやだあ。俺,帰らない」

 口をとがらせて,マリウス皇子は不満げにつぶやいた。ラミエル帝は二人に紅茶を出した後,お菓子をすすめる。

「意中の姫君がいるのなら,今の内に父君に申し上げておいた方がいいですよ」

 その言葉にマリウス皇子はドキッとして月の君を見た。

〈こ・・・こいつ,知っているのか。俺の好きな人のことを・・・〉

 ラミエル帝は相変わらず淡々とした調子である。

「いるのでしょう?」

 念押しの質問にマリウス皇子は顔が赤くなった。

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3-4 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-17 23:13:14 | 「ある国の物語」 第五章 
第3節 友と  第4話

「そう,珍しいだろ?でもさ,レイミール・ラ・ルネシス神が想いを寄せていたわけじゃない。星の女神スターリアの片思い。だから悲恋なんだよ」
「へえ~。悲恋かあ。あいつ・・・人を好きになったことないのかなあ。恋の苦しみ,愛の苦しみも味わったことないのかなあ。それじゃあ嫉妬なんて経験してないのかもしれないな」

 ハービア王子の様子を見て悪友のマリウス皇子は笑った。

「まあ・・・変わってるからな。どんな美人見たって表情一つ態度一つ変えないしさ,とりたてて自分から親しくしようとはしていないしな。あいつが誰かを好きらしいなんて噂,今までこれっぽっちも聞いたことないぜ」

 アイシス姫が好きなマリウス皇子はそう言いながら,内心ほっとしていた。天下の月の君がライバルではとうてい勝ち目はない。

「ふ~ん」

 ハービア王子はパラパラとめくって読み進めていく。

「実はさ,ハービア」
「うん?」
「お前達が帰った後にアラモンとかいうクリスタリア神皇国の司教が来て天照教について各国の首長に説明をしたらしいぜ」
「ふ~ん,それで?」
「天照教の信仰対象はレイミール・ラ・ルネシス神」
「知ってるよ,そのくらい」
「しかも・・魔性のレイミール・ラ・ルネシス神を信仰している」
「ということは・・・・」

 ハービア王子は頭を抱えた。

「お前が今頭で考えているとおりさ」
「ああ,もう・・・」
「これで世界皇帝会議の首長達はみんな,ラミエル帝がレイミール・ラ・ルネシス神であり,しかもその神こそがいたるところで国王を追い出している邪教の主神であるということを知ってしまった。そのこと・・・・ラミエル帝本人が知ったらどうなるだろうな。何よりも平和を愛するあいつのことだ。自ら軍を率いてたたきつぶすって言ってた相手が実は自分を信仰している奴らだってことを知ったらただじゃすまないだろう」
「・・・・・・・・くそ。なんであいつなんだ」

 ハービア王子は本から一度目を離し,悔しさを滲ませてのどから絞り出すように声を出した。

「アラモン司教から,何が何でもお前と力を合わせてラミエル帝を守ってくれって言われたよ。そして,覚醒の時,必ずルナ・パレスに連れて来てくれって念も押された。もし天照教の奴らに捕まったら,月の聖帝が魔性となるかもしれないって」
「だよな。月の魔帝となればこの世も滅びるわけだ。しかし・・・・やっかいな宗教が出てきたな」
「クリスタリア神皇国はつぶそうとしているらしいが,天帝ノブレス大神を主神とする天帝教に対し,天照教は月の神レイミール・ラ・ルネシス神ずばり本人だ。国民はその名を聞いただけで信者になる。事実,自然をあれほど狂わせた神話が載っているのは彼だけだからな。人間にとっても驚異だろう。神話の記録と史実がピタリと一致しているんだから。人間も恐れないわけにはいかない」
「・・・・・・・・・」
「だから天帝教は新約聖書としてノブレス大神のところだけをふくらませ,月の神が載った旧約聖書を表から隠してしまった。旧約聖書を知っているのはほんの一部のお年寄りだけだろうな」

 ハービア王子はふかふかの豪華なソファーの背もたれに自分の背中を思いっきりぶつけるように座り直した。

「ああ・・・・もう。何でラミエルはラミエルなんだ。もっと・・・・もっと普通でいてほしいよ」
「ハービア・・・。天照教に・・・もしラミエル帝が捕まって魔性として覚醒した時,この世は滅びるぞ。恐らく奴らはあのラミエル帝にこの世の醜さ,非情さを見せつけ,この世を憂えさせて魔性をひきずり出すつもりだろう」
「とんでもない。魔性にしてたまるか。俺の・・・・俺の大切な友人をそんな・・」

 ハービア王子はいたたまれなかった。
 
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3-3 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-11 00:10:27 | 「ある国の物語」 第五章 
第3節 友と  第3話

 月の神レイミール・ラ・ルネシス。この世を創世した天帝ノブレス・ラ・コスモ大神の第12番目の神皇子とされる。天界の至宝と言われるほどの神々の中でも類い希なる美貌をもち,自分の感情を氷のような心の中に閉じこめてしまった最高位の神皇子である。

 レイミール・ラ・ルネシス神は闇と水と生命を支配し,その人界に及ぼす力は父帝ノブレス大神に負けぬほどであったと伝えられている。聖と魔性の両方の面を併せ持つために,唯一天帝から封印のサークレットをはめられた封印の神皇子としても登場している。

「へえ~。あいつ・・・神様の時もそっけなかったのか」

 聖書を読みながらハービア王子は呟いた。

「そっけなかったどころじゃないぜ。いつも神殿の奥にこもってて姿さえあまり見せていない。神々に仕えていた者達は稀に彼の姿を見かけると,まるでうっとりと夢を見るようにみとれていたそうだぜ。昔も今も変わらないな」
「ふ~ん」
「闇と水と生命を司る神。しかも聖と魔性を併せ持つから人間は特に彼を恐れ,敬っていたらしい。でも・・・・次を見てみろよ。聖なる月の聖帝はこの世に黄金の夜明けをもたらし,魔性の月の聖帝はまさに黄昏から闇に向かう如く美しい死神と化してこの世を滅ぼしてしまうってさ。彼の神を悲しませてはいけない,とかなり人間は悩み,戦争も控えていた。第13節に魔性の月のことが載ってるぜ」
「魔性の月?」
「一度・・・・あるんだ。あの月の聖帝が完全に魔性と化したことが。闇の宗教天照教はどうやらその時の月の聖帝こそ真の姿として崇拝対象にしているらしいんだ」
「へえ」

 ハービア王子は目を通していく。

 事の起こりは人間の欲望の醜さに失望した月の神が,この世を憂えたことからだった。この世など全てなくなってしまえばよい・・・そう感じた月の心は魔性を呼び起こした。その美しく整った顔に背筋がゾクッとくるほど妖しげで冷たい浮かべ,凄まじい嵐を巻き起こした。そして自らをかざして太陽の光を遮り,死の淵をさまよっていた人々は引き潮と同時に天に召されていった。自然は乱れ,まさにこの世の終わりと思われるほどだった。
 
 天帝ノブレス大神はそれを見て慌てて彼に月のサークレットをかぶせ,ぎりぎりのところで封印をしたと書いてある。それ以来,月の神レイミール・ラ・ルネシス神は月のサークレットをはずすことを父帝から許されることはなく,封印されたのである。

「封印かあ。あいつ・・・大丈夫かな。今,してないぜ・・・・サークレット」
「かなり嫌がってるな。やっぱり前世の記憶が少しは影響してるのかな」
「魔性の月か・・・・危険だな。天照教につかまってみろよ。とんでもないことになるぜ」
「あいつ・・・・早く大人になりたいってさ。知ってるのかな。大人になる時が月の聖帝になる時だってこと」
「知るわけないだろ」

 ハービア王子は更に読み進めていく。

 第15節に月の神と星の女神との悲恋が載っていたのでふと目をとめた。

「へえ・・・・あいつに恋物語か」

 太陽の君は興味深げに呟いた。

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3-2 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-10 00:17:31 | 「ある国の物語」 第五章 
第3節 友と  第2話

 その日の夕方,フォスター帝国の第一皇子マリウスが二人のもとに到着した。ラミエル帝は自ら出迎えると,部屋に案内し,自分は会議があるからと退出した。

 もともとの悪友二人は部屋でくつろいでいた。

「おい,マリウス。一体どうしたんだよ・・・・逃げ出すなんて」
「う・・・ん。親父がさ,見合いしろっていっぱい写真持ってきてさ,危うく決められそうになって・・・・」
「ふうん,見合いかあ。してみるのも面白いかもよ」
「どうせお前にとったら人ごとだもんな。まあ・・・それがいやで逃げてきたわけだ。幸か不幸かお前がファンタジアに行ったっていうのを聞いて,慌てて飛び出して来たわけだよ」
「なるほど・・・」

 マリウス皇子はドンとソファーに腰を下ろし,はあ~っと溜息をつく。世界皇帝会議の中枢国であるフォスター帝国の世継ぎの君でありながら,騎士一人つけず,単身乗り込んできたのである。二人は,再会を喜んでいたが,そのうち彼はふと思い出したように一冊のそれはそれは古い本を取り出した。

「なんだ?そのぼろい本は?」
「なんという罰当たりな・・・。これは天帝教の旧約聖書だよ。神話が載っていて面白い」
「天帝教の旧約聖書?」
「そう,今は新約になってしまっていて内容も天帝ノブレス大神の部分に編集されてしまったが,これには他の神々。つまり月の神のことも書いてあるんだ」
「へえ」
「もしラミエルが,天帝の12番目の神皇子であるところの月の神だということが本当だとしたら,これに載っていることが,ラミエルを理解するのに役立つんじゃないかと思ってこっそり持ってきたんだ」
「へえ。月の神のことが書いてあるんだ」
「うん。第20章に月の神レイミール・ラ・ルネシスのことが載ってる」
「レイミール・ラ・ルネシスかあ」

 ハービア王子はすぐにでも見たそうに,ハービアの胸に抱えられている一冊の古びた本に視線を向けた。

「神の名はレイミール・ラ・ルネシス様。ラミエルの名Lamielは月の神レイミール・ラ・ルネシスからとられた名でレイミールをルナ語読みしたものだ。生まれ変わっても同じ名だなんて,やっぱりあいつは月の聖帝なんだな~」
「へえ~。どれどれ」

 ハービア王子はマリウス皇子から本を受け取り,ぱらぱらとめくった。

 ここに,まだ神であった月の君の前世のことが書かれているというのだ。一体どんな神だったのだろう。興味がわいて,ハービア王子はまず第20章から読み始めた。


 
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3-1 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-05 23:00:34 | 「ある国の物語」 第五章 
第3節 友と  第1話

「なぜあなたは,こんな私に興味をもつのですか?」

 予想外の質問に金髪の王子は少しとまどいを見せた。恐らくそのことさえも,背中越しに月の君は感じ取っていることだろう。

「そ・・・そりゃあお前が気に入っているからさ。友達になるのにいちいち,あなたのどこそこがどうだからと,理由を述べてなる奴がいるか?気になって仕方がないんだよ。それ以上なんか言えって言ったって無理だからな」

 その言葉を聞いて,月の君は静かに振り返るとハービア王子をまっすぐ見つめた。思わず目をそらしてしまうほどの,そのまま見ていれば吸い込まれてしまいそうなほどの澄んだ瞳がそこにあった。

「そうですね。では,一つだけ約束をして下さい。常にあなたは自分がレイクント王国の第一王子であり,世継ぎの君であることを自覚してくれることを。たとえ友人である私の身の上に何が起ころうとも,国をおろそかにしてまで友人を優先させないことを・・・・」
「ラミエル」
「約束して下さい。この私と」
「もし・・・もし約束できないって言ったらお前どうするつもりだ」
「もう私はあなたとは会いません」
「ちょ・・・ちょっと待てよ。そんなのなしだぜ。じゃあもし俺が約束を破ったらどうなるんだよ」
「あなたとは絶交です」
「おいおい,どっちにしたって一緒じゃないか。ひどいぜ」

 ハービア王子は頭をかきながらしばらく青い空を見上げ,考え込む。

「分かった。約束はする。でもな,緊急事態ぐらいは例外を認めろよ。どうなるか分からないけど,結果的に破ることになったってことぐらいは許してくれよな」

 月の君はそれを聞くと右手を差し出した。

「私との約束を守って下さい。必ず・・・・守って下さい」

 ハービア王子はちょっと自分の右手をぎゅっと握りしめてから,彼の右手に自分の右手を合わせ,誓いの握手をした。

 月の白く細い手にハービア王子は骨を砕いてしまいそうな気がして慎重に握手をした。月の手はとてもなめらかで,冷たかった。戦神と呼ばれ,剣にかけては右に出る者がいないとされる手とは到底想像できないような手だった。

 握手を交わすと,月の君はさっさと宮殿へ帰って行く。ハービア王子も慌てて後を追った。

〈一体なんで俺ってこんな奴んことが気になって気になって仕方がないんだろう〉

 何を考えているのか分からない美しい君の姿を見ながら,ハービアは溜息をついた。



 
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2-12「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-05 02:08:18 | 「ある国の物語」 第五章 
第2節 闇の宗教 第12話

 翌日,太陽の君が目を覚ます。起きて窓の外を見ると抜けるような青空が広がっていてとても気持ちがいい。窓を開けると風もなく,白銀の世界が遠くまで広がっている。時計を見ると午前8時。

「おお~。いい天気だ」

 着替えて外に出ると騎士達が部屋に案内してくれ,給仕が朝食を運んでくる。

 太陽の君はある人物を目でさがすが見あたらない。

「あの・・・・ラミエルは?」
「陛下は今,園庭を散策されております」
「この寒いのに?」
「今日は良い天気でございますよ,王子様。さあ,冷めないうちにお召し上がりくださいませ」

 ハービア王子は朝からたらふく食べ,調理師達に「陛下もハービア王子様ぐらい食欲旺盛であられたらよろしいのに・・・・」と溜息をつかせた。

「あいつ,少食だろ?会議の時だって俺が山盛りついでやらないとほんの一口で終わってしまうんだ。あいつ,つがれたものは絶対残さないから多めについでやればいいんだよ」

 金髪の王子はそう言いながら全部食事をたいらげると,満足げに少しのびをした。そして,
「お~い,ラミエル~。おはよ~」
と,外へ飛び出していった。

 その様子を見ていた大臣達はみんな溜息をつく。

「本来なら我が陛下も,ハービア王子様のように明るく元気いっぱいでかけまわるお年頃ですのに」
「ハービア王子様は本当に明るく,溌剌としていらっしゃる」

 騎士達も,妙に大人びて冷めてしまっている自分たちの主君を思うと,またはあ~っと溜息がでる。


「おい,ラミエル,この寒いのに何を朝から外をウロウロしているんだ?」

 ようやく彼の姿を見つけてハービア王子は声を掛けた。ラミエル帝は積もったばかりの雪のように白い綺麗な顔をふと親友に向ける。

「寒かったら,中の居間に行かれるといいですよ。もうぬくもっている頃でしょう」

 相変わらず素っ気なく月の君は自分の世界に浸っている。

「お前なあ・・・・・俺はお前が風邪をひいたらいけないと思って・・・お・・・おい,待てよ,ラミエル」

 静かに身を翻して向こうへ歩き出したラミエル帝の後を慌てて太陽の君が追う。

 こういう時,ふと月が分からなくなる。一体,ラミエルにとって自分はどういう存在なのだろう。自分はただ,彼にとって興味・関心のある変わった生物としか受け止められていないのではないか。そう思うぐらい月は,ハービア王子が側にいてもアカの他人のようにふと無視して冷たくなる時がある。それは,あまり自分の関わって欲しくないと壁を作っているようだった。

 ハービア王子ですら月の君と深く関わることは許されないのだろうか。やはりもともと神であった彼だから,仕方がないのだろうか。ハービア王子はこの得体の知れない美神を持て余していた。そして,そうであればあるほど,ハービア王子はますます彼が気になって仕方がなかった。

 ふと月の君が立ち止まる。

「ハービア王子,一つだけ私に教えてくれますか?」

 彼に背を向けたまま,ラミエル帝は澄み切った声で言った。

「な・・・なんだよ,急に改まって」
 
 ハービア王子は彼の背中を見ながら何事かと月の君の次の言葉を待った。

 
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2-11「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-04-03 19:42:11 | 「ある国の物語」 第五章 
第2節 闇の宗教 第11話

「私のことを心配してくれてありがとう」
「そう思うなら,そのサークレットはめてろよ。いいな」
「でも・・・このままでは,私は自分が月の聖帝であると認めたことになります」
「ラミエル・・・・それは」
「ハービア王子,私はこれでも自分のことは何とか自分で対処できるつもりです。このサークレットが何の意味をもつのかは知りませんが,どうもしっくりしすぎて逆に落ち着けません。やはり私は自分で細工したサークレットが好きですからそちらの方を選びます」

 ラミエル帝が一度言い出したらきかないことはハービア王子も知っている。やはりラミエル帝を全て理解しようとすることは無理なのだろうか。彼は深く心の中に立ち入らせることを決してさせない。フッと心を閉ざし,拒否する。

「フン,どうせお前にとって俺はその程度の存在さ」

ハービア王子はいじけてツンとしている。

「悪く思わないで下さい。どうしてもこのサークレットだけは好きになれないのです。魔除けになるのだったらあなたに差し上げます」
「冗談じゃない。遠慮させてもらうよ。品がありすぎてこの俺様のハンサムな顔が目立たなくなる」

ラミエル帝はそっとサークレットをはずすと,また荷物の中にしまいこんでしまった。

「そろそろ休まれたらいいですよ。こちらへどうぞ,ハービア王子」

相変わらずよそよそしい態度で月の君は太陽の君を一室に案内した。

「恐らく明日,マリウス皇子がこちらに着くでしょう。それまでゆっくりしましょう。ではまた明日に・・・・お休みなさい。良い夜を」

ラミエル帝は軽く礼をすると,部屋から出て行った。

パタンと扉が閉められ,あたりはシーンと静まりかえる。

「あ~あ」

 ハービア王子はベッドにごろんと横になった。今は午後10時である。

 いつ遊びに行っても,ラミエル帝は必ず午後10時になると客人を客室に案内する。時間にはとても正確な彼である。きっとこれからは自分の時間として仕事をするのだろう。

「やっぱりあいつに近づけないな。それより・・・・・サークレットどうしよう。とうとうきいてもくれなくなった」

 ベッドの中で太陽の君は考える。

 まだ大丈夫だろう。とにかく成人になるまでに納得してはめさせておかなければならないのだ。

「ま,焦ったって仕方ないや。急ぐまい」

 ハービア王子はそのまま眠たくなってクーッと眠ってしまった。


 
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