第11節 砂漠の国の王子 第12話
「そう言えば,お前がサークレットもアームレットもしていない姿なんて初めて見たよ」
「それはお互い様ですよ」
マリウスの言葉にラミエルは少し笑ってさらっと応える。滅多に笑顔を見せないラミエルの貴重な瞬間である。
ハービアも早速ラミエルに迫る。
「何も着ていないラミエルも初めてだよな。ラミエル,男と男の裸の付き合いをしないか?俺はマジだぜ」
そう言いながら迫るハービア王子にラミエルはちょっと足を出してハービアをこかした。太陽の君はもろに浴槽の中でこけて全身がお湯の中に沈む。
「ぷはぁ・・・な・・・ラミエル,てめえ2度も俺を馬鹿にしたな」
「いつまでも懲りないことをするからですよ」
「ははは,月の君にかかっちゃ太陽もおしまいだな」
「何だと~」
3人の入浴中のはしゃぎ合いは続く。
夕食もご馳走になり,キラに通された部屋の広いベッドで3人は眠った。
「何か今までのことが夢のようだな。いろんな事がありすぎて・・」
「うん,でもさすがはラミエルだな。つくづく感心するよ。で,ラミエルは?」
「しっ,眠ってるよ。疲れたんだろう。俺達ラミエルにおんぶに抱っこだったもんな」
「ハービア,寝顔見せろよ」
マリウスは一番左端で眠っているラミエルを覗き込んだ。
「可愛いなあ。寝顔見るとやっぱりガキなんだって思うね。ずっと見てても飽きない綺麗な顔だ。しかし,お前も信用されてないな。そんだけ離されて眠られてるんじゃあ」
「バカ言え,マリウス。ラミエルは恥ずかしがっているだけだ。フッフッフッしかし今のラミエルは俺の物。もう俺からは逃げられないぜ。寝たふりをしてさりげなくラミエルを抱きしめる」
ハービアはそっとラミエルを抱きしめた。ラミエルは熟睡中なのか気付く気配はない。
「あっ,いいなあ,お前」
「へへん。いいだろう。月の君は太陽の腕の中で安らかに眠るんだ。お休み」
「きったねえ」
マリウスの言葉を気にもとめず,ハービアは腕の中で眠っているラミエルをずっと見ていた。本当にいつまでも見ていたい気がする。ハービアは幸せな気持ちで眠りについた。
翌早朝,ハービアは目が覚めた。ラミエルはもう起きていていなかった。マリウスはまだ夢の中のようだ。
3人は朝食をとり,パトリック元国王とキラ元第一王子に別れを告げた。
「キラ,ありがとう。本当にいろいろとお世話になりました」
「ラミエル帝,お元気で。またいらして下さい」
ラミエル帝は丁寧に挨拶をして砂漠の国コル・カロリ王国を後にした。
元老院からの使者が彼らの元を訪れたのはその後だった。アルハ大王は王位を奪われて逮捕。パトリックが再び王位に就き,キラは第一王子となった。国中は沸き返っている。
「しかし,大老様。なぜ,このような事に・・・」
パトリック国王に問われ,大老は髭をなでながら静かに口を開いた。
「ファンタジアのラミエル帝がじきじきに来られ,そなたの王位復権を乞いに来られたのじゃ。アルハ大王の数々の悪業の証拠とともに」
「ラ・・ラミエル帝が・・。そ・・・そのような事まで・・・。私達にはそのような事は一言も・・・」
「月の皇子はそういうお方じゃ。故に聖帝と言われておる」
「有り難い。ラミエル帝・・・・」
コル・カロリ王国ではラミエル帝を救世主とし,真の英雄として称えてやまなかった。
3人はベテルギウス帝国に寄り,一足早く帰国していたメシエ皇子の無事帰還をアルファルド帝とともに祝福した。
「ラミエル殿,本当に・・・本当に有り難う。そなたならやってくれると信じていたよ」
「仲間がいてくれたからですよ。私一人ではどうにもできないことでした。お役に立てて光栄です」
「ラミエル殿,もう少しゆっくりされても・・・」
「ご好意は大変有り難いのですが,私も二国の主。いつまでも自国を留守にしておくわけにはまいりませんので失礼させていただきます」
「そうであったの。気を付けて行かれよ,ラミエル殿,そしてハービア王子,マリウス皇子も」
「アルファルド帝,メシエ皇子,お元気で」
「ありがとう。本当にあなた方は私の命の恩人です。何か困ったことがありましたらなんなりとお申し付け下さい」
アルファルド帝とメシエ皇子の見送りを受けて,3人はそれぞれ自国へと戻った。この話はいつのまにか各国へ広まっており,ラミエル帝の噂で持ちきりだった。
「さすがは月の君」
「しかし・・・一国の国王をこうもたやすく追い出すとは・・」
「我々もうかうかしておられませんぞ」
「本当に怖いお方だ。どこまで情報を把握しておられる事やら・・・」
「噂では月の君が聖帝ではないかということだが・・」
「冗談でも運命の輪を廻す者ではないでしょうな」
「それでは下手をすると国を追われるどころか世界が潰されてしまいますぞ」
「恐ろしや,恐ろしや」
ほとんどの王達はほとほとこの若き皇帝に感心していた。王女達もますますその話を聞いて恋いこがれるようになった。しかし,一部の占いに通じている王達は古くとてつもなく恐ろしい伝説が現実となるのではと一抹の不安を抱えていた。
ラミエルはそのような動きには一切関知せず,ファンタジアとルナの統治に専念し,自国から一歩も出ようとはしなかった。
**********************************
いつも応援ありがとうございます。ただ今,4つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。
「そう言えば,お前がサークレットもアームレットもしていない姿なんて初めて見たよ」
「それはお互い様ですよ」
マリウスの言葉にラミエルは少し笑ってさらっと応える。滅多に笑顔を見せないラミエルの貴重な瞬間である。
ハービアも早速ラミエルに迫る。
「何も着ていないラミエルも初めてだよな。ラミエル,男と男の裸の付き合いをしないか?俺はマジだぜ」
そう言いながら迫るハービア王子にラミエルはちょっと足を出してハービアをこかした。太陽の君はもろに浴槽の中でこけて全身がお湯の中に沈む。
「ぷはぁ・・・な・・・ラミエル,てめえ2度も俺を馬鹿にしたな」
「いつまでも懲りないことをするからですよ」
「ははは,月の君にかかっちゃ太陽もおしまいだな」
「何だと~」
3人の入浴中のはしゃぎ合いは続く。
夕食もご馳走になり,キラに通された部屋の広いベッドで3人は眠った。
「何か今までのことが夢のようだな。いろんな事がありすぎて・・」
「うん,でもさすがはラミエルだな。つくづく感心するよ。で,ラミエルは?」
「しっ,眠ってるよ。疲れたんだろう。俺達ラミエルにおんぶに抱っこだったもんな」
「ハービア,寝顔見せろよ」
マリウスは一番左端で眠っているラミエルを覗き込んだ。
「可愛いなあ。寝顔見るとやっぱりガキなんだって思うね。ずっと見てても飽きない綺麗な顔だ。しかし,お前も信用されてないな。そんだけ離されて眠られてるんじゃあ」
「バカ言え,マリウス。ラミエルは恥ずかしがっているだけだ。フッフッフッしかし今のラミエルは俺の物。もう俺からは逃げられないぜ。寝たふりをしてさりげなくラミエルを抱きしめる」
ハービアはそっとラミエルを抱きしめた。ラミエルは熟睡中なのか気付く気配はない。
「あっ,いいなあ,お前」
「へへん。いいだろう。月の君は太陽の腕の中で安らかに眠るんだ。お休み」
「きったねえ」
マリウスの言葉を気にもとめず,ハービアは腕の中で眠っているラミエルをずっと見ていた。本当にいつまでも見ていたい気がする。ハービアは幸せな気持ちで眠りについた。
翌早朝,ハービアは目が覚めた。ラミエルはもう起きていていなかった。マリウスはまだ夢の中のようだ。
3人は朝食をとり,パトリック元国王とキラ元第一王子に別れを告げた。
「キラ,ありがとう。本当にいろいろとお世話になりました」
「ラミエル帝,お元気で。またいらして下さい」
ラミエル帝は丁寧に挨拶をして砂漠の国コル・カロリ王国を後にした。
元老院からの使者が彼らの元を訪れたのはその後だった。アルハ大王は王位を奪われて逮捕。パトリックが再び王位に就き,キラは第一王子となった。国中は沸き返っている。
「しかし,大老様。なぜ,このような事に・・・」
パトリック国王に問われ,大老は髭をなでながら静かに口を開いた。
「ファンタジアのラミエル帝がじきじきに来られ,そなたの王位復権を乞いに来られたのじゃ。アルハ大王の数々の悪業の証拠とともに」
「ラ・・ラミエル帝が・・。そ・・・そのような事まで・・・。私達にはそのような事は一言も・・・」
「月の皇子はそういうお方じゃ。故に聖帝と言われておる」
「有り難い。ラミエル帝・・・・」
コル・カロリ王国ではラミエル帝を救世主とし,真の英雄として称えてやまなかった。
3人はベテルギウス帝国に寄り,一足早く帰国していたメシエ皇子の無事帰還をアルファルド帝とともに祝福した。
「ラミエル殿,本当に・・・本当に有り難う。そなたならやってくれると信じていたよ」
「仲間がいてくれたからですよ。私一人ではどうにもできないことでした。お役に立てて光栄です」
「ラミエル殿,もう少しゆっくりされても・・・」
「ご好意は大変有り難いのですが,私も二国の主。いつまでも自国を留守にしておくわけにはまいりませんので失礼させていただきます」
「そうであったの。気を付けて行かれよ,ラミエル殿,そしてハービア王子,マリウス皇子も」
「アルファルド帝,メシエ皇子,お元気で」
「ありがとう。本当にあなた方は私の命の恩人です。何か困ったことがありましたらなんなりとお申し付け下さい」
アルファルド帝とメシエ皇子の見送りを受けて,3人はそれぞれ自国へと戻った。この話はいつのまにか各国へ広まっており,ラミエル帝の噂で持ちきりだった。
「さすがは月の君」
「しかし・・・一国の国王をこうもたやすく追い出すとは・・」
「我々もうかうかしておられませんぞ」
「本当に怖いお方だ。どこまで情報を把握しておられる事やら・・・」
「噂では月の君が聖帝ではないかということだが・・」
「冗談でも運命の輪を廻す者ではないでしょうな」
「それでは下手をすると国を追われるどころか世界が潰されてしまいますぞ」
「恐ろしや,恐ろしや」
ほとんどの王達はほとほとこの若き皇帝に感心していた。王女達もますますその話を聞いて恋いこがれるようになった。しかし,一部の占いに通じている王達は古くとてつもなく恐ろしい伝説が現実となるのではと一抹の不安を抱えていた。
ラミエルはそのような動きには一切関知せず,ファンタジアとルナの統治に専念し,自国から一歩も出ようとはしなかった。
**********************************
いつも応援ありがとうございます。ただ今,4つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。