テルサのFantastic Stories

今まで書きためていたとりとめもない物語を少しずつ連載していきます。ファンタジー物が多いです。ぜひ読んでみて下さい。

1-14 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-29 12:43:34 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第14話

 今までにない甚大な被害を受けたゴートン王国では,それでもネリオーカル王が『月の雫』を握りしめて手放そうとはしなかった。

「陛下・・・陛下・・・・どうか,どうかお願いでございます。そのお持ちになっている秘宝をファンタジアのラミエル帝にお返し下さいませ」
「陛下」
「陛下」

 家臣達は必死で王を説得する。しかし,欲深さでは世界一と言われるネリオーカル王のことである,そうそう簡単にこの秘宝を手放すはずはなかった。

「異常気象とこの宝石とは何の因果もないわ。お前達はそう言って儂から秘宝を奪うつもりであろう。そうはさせるものか」
「陛下,何度申し上げたら分かって頂けるのですか。これ以上猛吹雪が続くともはや復旧すらままなりませぬ」
「そなたらはそうやってまでこの『月の雫』が欲しいのか。これは儂のものじゃ。誰にもやらぬ」

 もうネリオーカル王は『月の雫』の魔力に引き込まれてしまったようになっている。

「陛下,我々を信じて下さいませぬのか」
「人間欲が絡むと何を考えるか分からぬのでな」

 家臣達は王の頑なな態度に困り果て,神殿に駆け込んだ。ゴートン王国も天帝教信仰のため,何とか良きアドバイスが得られるのではないかと思ったのである。
 実は,神殿の神官達は『月の雫』が持ち込まれた直後から秘宝の返還を王に強く求めていた。しかしながら,日頃から信心深くもない王は聞く耳すら持たず,逆にうるさいと,彼らを出入り禁止にしていたのである。

 家臣達が必死の思いで神殿に辿り着くと,そこでは家を失ったり傷ついたりした者達であふれかえっていた。

「何とむごいことじゃ」
「こんなにも多くの者が・・・・・」

 家臣達はすがりつこうとする国民を心を鬼にして振り払い,奥へ奥へと向かった。

「大神官マリネリ殿はおられるか」
「大神官殿」

 家臣達が大声で叫びながら進んでいると,白い祭祀服を着た一人の老人が姿を現した。

「おお,大神官殿」
「これは王宮のお方。どうやら我が王のお心はお変わりないようじゃな」
「そうなのです,そうなのです。もうどうしたらよいものやら。大神官殿,助けて下され。我々はどうしたら良いのじゃ」
「・・・・・・」

 大神官は深く一つの溜息をつくと重い口を開いた。

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1-13 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-28 23:08:06 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第13話

 デイモン王国のハニアン王は,あの心を奪われるような美しい『月の雫』を失ったのは残念でならなかったが自国に禍いが起こるというのであれば諦めるしかあるまいと思った。
 ハニアン王は占師ジィンの欲深さをよく知っている。そのジィンがすっぱりと諦めるぐらいだから相当の魔力があるのだろう。ハニアン王はもう二度と目にすることはできないであろうあの魅惑的な月の聖帝の秘宝を思い出しつつ深く溜息をついた。

 そして,それから数日後・・・・
 突然の異常気象でゴートン王国が猛吹雪に見舞われ,国が大被害を受けたという報告がハニアン王の元に届いた。

「なんと・・・・ゴートン王国が・・・」
「ははっ。被害は甚大ですがなおも猛吹雪はおさまりを見せず,手の施しようがないとか・・・・。死傷者も多数出ていると聞き及んでおります」
「・・・・・・・」

 ハニアン王は思わず玉座に倒れ込んでいた。

「へ・・・陛下。どうされました。大丈夫でございますか」

 家臣達が慌てて駆け寄る。

「ジィンの言うことを聞いていて良かった。お前達,もし儂が欲にかられて月の聖帝の秘宝『月の雫』をゴートン王国に渡さずに持っていたとしたら,その被害を受けていたのは我が国だったのだ。今思っただけでぞっとするぞ」
「おおっ」
「そうでございましたか」
「やはり聖帝の中でも最高位の月の聖帝の秘宝。他の者が手にすることは許されぬのだな」
「王よ。お休みを・・・。お顔の色が良くありませぬ」
「大丈夫じゃ。我が国はその禍を免れたのだからな」
「しかし,陛下。まこと『月の雫』という宝石のなせる業なのでございましょうか。たまたまということも・・・」
「たまたまで猛吹雪がゴートン王国だけに起こるものであろうか」
「そうおっしゃられますと確かに・・・」


 ハニアン王はようやく落ち着いて座り直す。

「陛下」
「ゴートン王国は早急にあの秘宝をラミエル帝の元に返さねばなるまい。しかし,ジィンよりも欲深いネリオーカル王のこと・・・どうするかのう。一時は悔しい思いもしたが・・・・やはりあれだけは手を出してはいけなかったのだ。本当に・・・・本当に手元に置いていなくて良かった」
「はい,陛下」
「皆の者,ゴートン王国へすぐ支援ができるように準備を整えよ。いくら戦をした仲とは言えもともとは共に手を組んだ相手じゃ。そのままもできまい。しかし,猛吹雪がおさまるまで動いてはならん。動くとこちらもやられるからのう」
「かしこまりました。すぐに」

 家臣達は丁寧に頭を下げるとパタパタと足音を残してそれぞれの部署に散っていった。

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1-12 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-24 16:43:42 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第12話

 側に付き従っていた占師ジィンも,『月の雫』を見て息を呑んだ。本当に見事な細工で,ただほれぼれと見つめるだけである。
 この美しく輝く宝石ですらラミエル帝の心を奪うことはできない。普通なら争ってでも欲しい宝石のはずだが,月の君にとって宝石はただの綺麗な石に過ぎないのである。それが例え月の聖帝の秘宝『月の雫』であっても・・・・。

 ルナ王国に帰ったラミエル帝は,アデル王子をゆっくり休養させた。そして暫くルナの地に留まって王宮の警備を固め,二度と王宮に侵入者が入れぬようにした。フィラ国王代理が負傷しているので,その間にたまった仕事をさっさと片付け,ルナ王国をもう一度ビシッと引き締めてから彼はルナ王国を後にし,ファンタジア帝国へと帰った。

「陛下,よくご無事で・・・・」
「心配をかけましたが私は大丈夫ですよ。アデルも無事でした」
「そうでございましたか。本当に・・・本当によろしかったですね,陛下」
「はい」

 大臣達は君主の報告にほっと胸を撫で下ろした。

 しかし,一方ではデイモン王国とゴートン王国の間で不穏な空気が流れていた。
と言うのも,デイモン王国がラミエル帝を来させるという約束を破った上に,調べてみるとどうやら月の聖帝の秘宝までもらっているらしい,という情報が入り,ゴートン王国のネリオーカル王が怒ったのである。

 ゴートン王国のネリオーカル王は,デイモン王国のハニアン王に対して約束不履行の代償として『月の雫』を要求し,戦争となった。
 激しい戦いの末,『月の雫』はゴートン王国に渡った。デイモン王国のハニアン王はどうしても手放したくなかったが,息子のデルタ,アトラス両王子の命を助けるために,やむなくその見事な宝石を手放すはめになった。

 気落ちしているハニアン王に,意外にも占師ジィンはむしろそれで良かったと言った。

「なぜじゃ,ジィンよ。そなたもあんなに『月の雫』を欲しがっていたではないか」
「王よ」
「なんじゃ」
「ご覧になってお分かりになりませなんだか?あれは・・・・あの宝石は月の聖帝様がおっしゃった通りの宝石ですじゃ」
「ラミエル帝の言っていたことは真実じゃと?」
「はい。あの宝石をラミエル様以外の者が持つと禍が起こりましょう。あれは,そのような魔性を秘めたもにでございます。あの妖しく美しく光り輝く様はこの世の物とは思われませぬ。月は魔性も秘めた聖なる者。やがて遠からず,ゴートン王国に大きな禍が降りかかりましょう」
「それほど恐ろしいものなのか?」
「はい,左様でございます陛下」

 占師ジィンは深く頭を下げて申し上げた。

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1-11 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-23 23:10:11 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第11話

「ア・・・アデル王子はここにはおられぬ」

 もう隠しきれないと思ったのか,ハニアン王はようやく白状した。

「なるほど・・・・では,ゴートン王国にでも連れて行ったのでしょうか?」

 月の君に言われて,ハニアン王はハッとなる。

「そ・・・それは」
「では,私はここにいても仕方がありませんね。『月の雫』はアデルの為に持ってきた物。ゴートン国王ネリオーカルにこれをお渡しして弟を返してもらいましょう」

 ラミエル帝は静かにそう言うと,用無しの部屋を後にさっさと出て行こうとしてハニアン王に呼び止められた。

「ま・・・待ってくれ。王子は・・・王子は必ず連れてくる。だから・・・暫く待って欲しいのじゃ」

 ハニアン王は何とかしてラミエル帝を足止めすると,慌てて使いを送ってアデル王子を連れ帰った。『月の雫』を手に入れるためにはアデル王子がどうしても必要だった。

「ラミエル殿,アデル王子じゃ。本人であることに間違いはないな」
「はい」

 ラミエル帝は跪き,暫く優しい表情でアデル王子を見つめていたが,立ち上がるとハニアン王を見た。ラミエル帝の氷のような瞳に王も思わず生唾を飲み込む。

「それではお約束の物を・・。くれぐれも言っておきますが,どんな禍が起ころうと,私には一切関係ありませんからね。もし,どうしても手に負えないような事態になったらクリスタリアのカルタニア大司教に相談して下さい。では,私はこれで。アデル,行くぞ」
「はい,兄上様」 

 ラミエル帝はハニアン王に『月の雫』を袋ごと渡すと,アデル王子を連れ帰った。
 彼の姿が消えると,緊張が解けてどっと疲れが出る。それほど月の君の迫力は凄まじいものだった。

 美しい月の姿が消えると,ハニアン王は早速袋を開けて『月の雫』を取り出した。

 巨大な黄水晶。様々な大小の宝石が品良く散りばめられた台座の上に,その黄金の如くまばゆく輝く水晶は涙の形をして吊り下げられ,怪しく光り輝いている。
 それは,見る者全ての目を釘付けにするほどの魔力とも言うべき力を持っていた。

「こ・・・・これが『月の雫』・・・月の聖帝の秘宝」

 ハニアン王は持つ手が震えてどうにもならないので,テーブルを持ってこさせてその上に乗せた。

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1-10 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-18 23:22:16 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第10話

 ラミエル帝が宮殿内の一室の窓辺に立ち,外を見ながら待っていると,カルタニア大司教が『小さな月の雫』を持って入室してきた。

 見ると本当に『月の雫』と形はそっくりで寸分違わず,大きさのみが二回りほど小さかった。

「これをお持ち下され,陛下」
「いいのですか?本当に」
「もちろんでございます。ただし陛下,この『小さな月の雫』とて不思議な力をもっております。本物ほどひどくはないかもしれませぬが,他の者が持つと禍が来るのは確かでございます。これを渡されたらすみやかにそこからお離れ下さい」
「それでは返せません」
「返していただかなくても,この秘宝達は必ずあるべき場所へ戻ってまいります。ご心配は無用ですよ」
「そうですか。ありがとうございます。大司教のご好意は有り難く・・・・」
「それから・・・」
「何ですか?大司教殿」
「お気を付けなされませ。デイモン国のハニアン王はあなた様をゴートン国のネリオーカル王に引き渡すおつもりです。どんな卑怯な手を使ってくるやも知れませぬ」
「分かりました。心に留めておきます」

 月の君は大切にその宝石を布に包むと,袋に入れて肩からヒモでぶら下げた。

「陛下,お気を付けて」
「ありがとう。お世話になりました。それでは私は行ってきますね」

 彼は丁寧に礼を述べてデイモン国へ向けて出発した。

 約束の時間通りに彼はデイモン王国のデイモート宮に着き,ハニアン王に会った。

「さすがはラミエル帝。予定通り帰ってこられましたな。それで・・・・『月の雫』とやらは持って来られたのですかな?」
「はい。あなたがアデルを私に返して下さればお渡ししますよ」

 月の君はハニアン王を真っ直ぐに見つめて油断なく言った。

「『月の雫』を先にお渡し願いたいですな」

 ハニアン王はアデル王子をゴートン王国の手に渡し,ラミエル帝にそこまで行かせる予定であった。故にアデル王子の身柄は既にゴートン王国のネリオーカルに引き渡されていた。

「ここはあなたの国。アデルを先に渡しても不利ではないと思いますが・・・。それとも同時でもいいですよ」

 ラミエル帝は冷たい表情で言った。その深い瞳は既に彼らの策略を見抜いているように見えた。

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1-9 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-17 23:37:19 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第9話

「はい。あれも黄水晶に変わりなく,二回り小さいとは言えあれほどの大きい水晶はそうそうありませぬ。ばれることもないと思いますが・・・」

 カルタニア大司教の言葉を聞いて,その美しい君はもう一度本物の『月の雫』を見つめた。涙型をした黄水晶のその秘宝はダイヤモンドやエメラルド,ルビーやゴールドなどを上品にあしらって造られた台座の上に燦然と黄色い光を放っている。

 その秘宝がとてつもなく恐ろしい力を秘めていようことは素人のラミエルが見ても分かった。これをこのまま持ち出したら冗談ではなく何が起こるか分からない。

「そうですね。下手にこれを渡して大きな禍が予言通りあっても困りますし・・。
彼らには嘘をつくことになりますが,彼らのためですから仕方がありませんね」
「そうなされませ。『小さな月の雫』と言われるぐらいですから『月の雫』に変わりありません。では,早速用意いたしましょう。天帝ノブレス大神様もほっとされましょう」

 カルタニア大司教は平静を装って言ったが,その中でもどことなくほっとした表情があった。

「では陛下,ここを出ましょうか」
「はい。お手数をおかけしました」

 ラミエル帝はまた,真っ白い祭服を身につけた男の後をついて行った。
 
 2人が神殿の外に出ると,ゴゴゴゴ~ズ・・ンと凄まじい轟音と地響きをたててその入り口は固く閉じられた。そして,それと同時に神殿内のあのまばゆい黄金の光も遮られた。

「ラミエル陛下,一度水晶宮へお寄りなさいませ。急いで宝庫より持って参ります」
「お願いします。ところでナルシス帝はお元気ですか?」
「はい。ただ今別宮の方にいらっしゃいますが健やかにお過ごしでございます」
「それは何よりです」
「さ・・・・こちらへ」

 カルタニア大司教とともに月の君は,一度クリスタル宮へ行き,中へ入った。
 その時,彼には感じられなかったがカルタニアにはラミエル帝を迎え入れ,王宮が反応しているのが分かった。

 水晶宮が月の聖帝を欲しがっている。できるなら,このままラミエル帝をクリスタリアに・・・・・。

 大司教は思わずそのような思いにかられた。
 
 いずれにせよ,この少年帝が20歳の成人を迎えるまでに水晶宮にお迎えしなければならない。それは天帝ノブレス大神との約束である。大司教は複雑な心境で月の聖帝を一室へ案内した。 


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1-8 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-13 23:38:43 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第8話

 彫刻入りの重厚な扉が開くと,部屋の奥の豪華な祭壇が目に飛び込んできた。その前にはもう棺が用意されており,何もかもがきちっと揃えられている。

「ここが祭壇室でございます。このお部屋で月の聖帝様は永遠の眠りにつかれるのです。正確に言えば聖帝様の玉体が・・・・ですが」

 カルタニア大司教の言葉にラミエル帝は暫く部屋の様子を見ていた。

「何だかとても恐れ多い部屋ですね。まるで神様を奉る神殿そのものだ」
「天帝ノブレス大神様の神皇子様のお部屋です。まだ質素なくらいでございますよ」
「やはり私は慎ましく土に還ります。ここは何となく落ち着いて安眠できるところではなさそうですし」

 それを聞いたカルタニア大司教は苦笑しながら歩き,さらにその奥にある部屋へと足を向けた。
 その奥の部屋はガラーンとしていて正面に巨大な天帝ノブレス大神の御像があり,その前に燦然と輝く宝石が飾れていた。その光は,その広い空間から闇を追放するほどに明るく,七色にキラキラと輝いている。
 しかし,それをよくよく見ていると,その光を強烈に放っているのは巨大な涙型をした黄水晶だった。

「陛下,あそこに置かれておりますのが月の聖帝様の秘宝『月の雫』でございますよ」
「黄水晶ですね。これほど大きい水晶は初めて見ました。おそらく,世界中を捜してもこれほど大きな水晶はないでしょう」
「その通りでございます。陛下にしか持つことがかなわぬ秘宝ですよ」
「カルタニア大司教,この『月の雫』を暫くお借りしてもいいですか?用が済みましたらまた返しに来ますから」
「陛下・・・それはなりませぬ。陛下も御存じでしょう?この秘宝は他の者が持つと大きな災いをもたらします。その程度がどれ程のものか我々でも計り知れませぬ」

 カルタニア大司教はとんでもないことを言い出す月の皇子を慌てて止めた。しかし,そこは世界一の強情っぱりとして有名な月の君のことである。

「私はこの『月の雫』を借りに来たのです。この宝石が私のものだと言うのなら持ち出してもいいでしょう。必ずすぐ返しますから貸して下さい」
「陛下・・・・」

 恐らくこの目の前の眉目秀麗な少年帝はただでは引き下がらないだろう。
 カルタニア大司教は暫く考えていたが,名案を思いついた。

「陛下,相手はこの宝石がどんなものがを知りませぬ。偽物でもよろしいのですよ」
「偽物ではこの輝きは出せないでしょう」
「では・・・・・これより二回り小さいクリスタル宮にある宝石を持って行かれては・・・・」
「二回り小さい宝石?」

 ラミエル帝は興味を示してカルタニア大司教をその深く澄んだ瞳で見つめた。


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1-7 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-04 23:28:45 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第7話

 ラミエル帝が静かにその重厚な門の前に立って見上げると,彼がはめていた月のサークレットが光を放ち始めた。するとどうだろう,暫くしてゴゴゴゴーッと固く閉じていた門が開いた。

「これは・・・・不思議な門ですね」

 触ってみながら月の君は興味深そうに言った。よく見ても別にたいした仕掛けもなさそうだが,実に見事に出来ている。

 中へ入るとそこの空気はひんやりとし,物音ひとつせずにそこだけ時間が止まっているような錯覚に陥る。
 カツンカツンと足音を響かせ,カルタニア大司教は月の聖帝を案内するように少し先を歩いていく。ラミエル帝は初めて入る月の聖神殿に周りを見渡しながら彼についていった。

「本当はこの神殿には多くの仕掛けが隠されております。一度,ここが封印されますと,この神殿内の全ての仕掛けが動き出し,侵入者を容赦なく殺します」

 カルタニア大司教の説明を聞きながら,月の君は天井を見たり壁を見たりと少しきょろきょろと見回しながらそれでも遅れまいとついていく。17歳の少年らしく,とても好奇心を持っているらしい。
 ラミエル帝は時々,このように子供に戻る時がある。その時の表情や仕草はとても可愛い。カルタニア大司教も改めてこの目の前にいるラミエル帝も17歳の若者なんだと思う。
 カルタニア大司教が待ってくれると分かると,立ち止まって壁画や天井画に暫く見入ったり,部屋のあちらこちらに置いてある彫刻を一回りしてみたり触ってみたりと,相当ここが気に入ったらしい。まるで美術館にでも来ているかのように,美しい月の君はいろいろな物を見て回った。

「これらは皆一つ残らず,陛下の為だけに作られた物でございます。そして,今までに陛下と私しか見た者はおりませぬ」
「もったいないですね。これほどの名作を私は見たことがありません」
「陛下の為だけの神殿,そして陛下の為だけの絵や彫刻でございます。陛下以外の者にはお見せする必要はないのです」
「そうか」

 ラミエル帝はカルタニア大司教の後をついていきながら残念そうに言った。

 暫く行くと,ある大きな部屋の前でカルタニア大司教は立ち止まった。そして,鍵を取り出すと,見事に神話の世界を再現したような彫刻が施された重い扉の鍵穴にその鍵を差し込み,静かに回した。

 ガチャッと音がして,その扉はカルタニア大司教の手によって静かに開けられた。

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1-6 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-03 23:26:50 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第6話

 その荘厳な神殿は,大理石と水晶と黄金で造られ,上品で雄大な姿をたたえていた。

「この月の聖神殿は,そもそも月の聖帝様のためだけに造られたものでございます」
「一体何のためにこんなに手をかけて作っているのですか?」
「この神殿は月の聖帝様がお隠れあそばされた時,そのご遺体を安置し,奉って墓所とするためのものでございます。ですから,クリスタリアにはこのような神殿が60あり,すでに58の神殿がそれぞれの聖帝様のご遺体を迎え入れ,秘宝とともに封印されております。あとの二つは・・・・氷の神殿とそしてこの月の聖神殿でございます」

 月の君はもう一度その神殿を見上げた。

「では,私はこれから墓所の中に入ると言うのですか?」
「そうでございます。御自分のお墓ですよ,陛下」

 カルタニア大司教は重々しい雰囲気で口を開いた。

「そうですか。でも,それならここの主はいないということになりますね。私がもし月の聖帝であれば,私は死んだら恐らくルーン皇家代々が眠る墓の中に入れられるでしょうから,ここにはこれません」
「いいえ,陛下。聖帝様は必ず崩御されれば御自分の神殿に入られる運命。そして,特に天帝様の神皇子であるクリスタル・ナイトの皆様の魂は神界に戻られるのですよ」
「そんな事を言っていたら私が死んだ時は骨は三等分されて,ルナとファンタジアとここに埋められることになります。死んでからの事は気にしなくてもいいとは思いますが,何か体がバラバラにされると言うのはいい気がしませんね」

 ラミエル帝の言葉に,カルタニア大司教は慌てて否定した。

「滅相もございませぬ。陛下がもしお隠れあそばすことがありましたら,頭の先から足の先までここに安置されます。しかも他国のように火葬されて骨となられるのではなく,特殊な技法で氷の中で永遠にそのままのお姿で・・・」
「あまり自分の死後のことまで考えたくありませんが,それも何か不気味ですね。いつまでも安まらないような気がします。やっぱり人間は骨になって土に帰るのが自然だと思います。まあ,私が死んだら何でも好きにしてくれていいですけど・・・。どうせ私には痛くもかゆくもないことでしょうから・・・。それより,入り口はどこでしょうか」
「こちらでございます」

 カルタニア大司教は少し東へ歩き立ち止まった。
 彫刻入りの重々しい門がどっしりと据えられ,2人を迎えた。

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1-5 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-02 21:45:14 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第5話

 デイモン王国を出たラミエル帝は愛馬シルベスターを走らせ,師匠の所へ赴いた。その時はもうすでに3日が経過していた。

「これは・・・・ラミエル殿。一体どうされたのじゃ」
「大占師ルオウ殿にお願いがあって・・・」
「ほう。そなたが願いとは珍しいのう。して,どうされたのかな」
「私を・・・・」
「ん?」
「あなたのお力でクリスタリアへ送って欲しいのです」
「クリスタリアですと?」
「はい」

 大占師ルオウはその眉目秀麗な少年に真っ直ぐ向かい合った。

「陛下・・・もしや月の聖帝の秘宝に関することでは・・・。もしそうであれば,いくら陛下のお願いとあってもお受けするわけにはまいりませぬ」
「どうか何もおっしゃらず,私をクリスタリアへ・・・。もう時間がないのです」

 その少年帝は相変わらず凛とした声で師匠に言った。

「陛下・・・。もうこの年寄りが何を言っても無駄なのでしょうな」
「すみません」
「・・・・・・」

 大占師ルオウは静かに頷くと杖を持ち,静かに呪文を唱えだした。するとラミエル帝の周りに霧が立ちこめ,その霧が晴れる頃,もうその少年の姿はなかった。

 クリスタリア神皇国に送ってもらったラミエル帝は大司教カルタニアに会った。

「ラミエル様・・・・今・・・何とおっしゃいましたか」
「月の聖神殿はどこにあるかを教えて頂きたいと言ったのです」
「ま・・・まさか月の聖神殿にある『月の雫』を持ち出されるおつもりですか?」
「お分かりなら話が早い。で,どこです?」

 カルタニア大司教は顔を真っ青にして止めた。

「ラミエル陛下,それだけはおやめ下され。『月の雫』は持ち出されてはなりませぬ」
「でも,約束をしてしまいましたし,アデルの命がかかっているのです」
「陛下がお持ちならともかく,他人の手に渡るとそれは想像もつかないような災いが起こりまするぞ」
「そうですか。それならば,自分で捜します」
「陛下・・・・」

 カルタニア大司教は仕方なく彼を月の聖神殿に案内した。この少年の強情さは大司教もよく知っている。この目の前の少年帝はすると言えば何を言ってもする男なのである。

「あそこに見えるのが月の聖神殿です,陛下」

 その少年帝は大司教が指さした方に目を向けた。

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1-4 「ある国の物語」 第四章 月の神を封ずる者

2009-01-01 03:58:55 | 「ある国の物語」 第四章
第1節 月の国を継ぐ者 第4話

「あの宝石は,月の聖帝以外の者が持つと大きな災いが起こると言われています。それでもいいのですか?」
「秘宝にいわくはつきものじゃ。しかし,その中のどれほどの物が真実であろうか」
「分かりました。『月の雫』は私もお目にかかったことはありませんが,持ってきましょう」
「それがよろしかろう。可愛い弟君のためですからな」

 二人のやりとりを聞いていたアデル王子は気が気ではない。

「兄上,私のことはどうでもいいのです。危ないことはしないで下さい・・兄上」

 そのつぶらな瞳に涙をいっぱいためて言うアデル王子に月の君は優しい笑顔を向ける。

「アデル,お前が心配するような事は何もないんだよ。だからここでおとなしく待っておいで」
「でも・・・でも・・・兄上」
「1週間ぐらいたったら迎えに来るよ。それまでの辛抱だから・・・できるね」

 アデル王子は涙をポロポロと流して泣いていた。それを見ていた月の君の表情がふと切なくなる。その姿は妖しいまでに美しく,周りにいる者は一人残らず吸い込まれてしまいそうになる。

「ルナの世継ぎ候補がこんなことで泣いてどうするのだ」

 月の君は幼い世継ぎ候補を優しく,それでも少し戒めてからハニアン国王に向き直った。

「1週間の期間を私に下さい」
「いいだろう。しかしあそこまで1週間で行って帰ってこれるものなのかね」
「普通の人間の足であれば無理でしょう。でも,私には素晴らしい駿馬と魔術師の師匠がいますので大丈夫です」
「ふむ」
「ハニアン殿。必ず約束は守って下さい。もし,アデルの身に何かあった時はファンタジアとの全面戦争を覚悟された方がいいですよ」
「分かっておる。私とてファンタジアとは事を構えたくはない」
「その言葉・・・・ゆめゆめお忘れなきように」

 月の君はそう言うとアデル王子をもう1度見てから向きを変えて颯爽と出て行った。

 彼の姿が消えると,みんなは魔法が解けたようにハッと我に返り,ホッとしてざわつき出す。

「噂にはお聞きしていたが,凄い迫力だな,彼は。こんな状況下でも全く動じた御様子がない」
「月の聖帝様だからな」
「間近でお会いしたのは初めてだが,それにしてもなんとお美しい方だ」

 側近達はひそひそと噂し合う。

「うまくいきましたな,陛下」

 占師ジィンが嗄れた声で言った。

「うむ・・・しかし,どうも気に掛かる」
「何がでございますか」
「ジィンよ,本当なのか。月の聖帝以外の者が『月の雫』を持つと大きな災いが起こると言うのは・・・・。月の君が嘘をつくとは思えんが・・・」
「陛下,そのようなことは言い伝えに過ぎませぬ。お気になさいませぬよう」
「そうだな。ここでとやかく言っても,もうラミエル帝は行ってしまった」

 ハニアン王は美しい君が出て行った扉を見ながら呟いた。


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「ある国の物語」

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