第1節 月の国を継ぐ者 第14話
今までにない甚大な被害を受けたゴートン王国では,それでもネリオーカル王が『月の雫』を握りしめて手放そうとはしなかった。
「陛下・・・陛下・・・・どうか,どうかお願いでございます。そのお持ちになっている秘宝をファンタジアのラミエル帝にお返し下さいませ」
「陛下」
「陛下」
家臣達は必死で王を説得する。しかし,欲深さでは世界一と言われるネリオーカル王のことである,そうそう簡単にこの秘宝を手放すはずはなかった。
「異常気象とこの宝石とは何の因果もないわ。お前達はそう言って儂から秘宝を奪うつもりであろう。そうはさせるものか」
「陛下,何度申し上げたら分かって頂けるのですか。これ以上猛吹雪が続くともはや復旧すらままなりませぬ」
「そなたらはそうやってまでこの『月の雫』が欲しいのか。これは儂のものじゃ。誰にもやらぬ」
もうネリオーカル王は『月の雫』の魔力に引き込まれてしまったようになっている。
「陛下,我々を信じて下さいませぬのか」
「人間欲が絡むと何を考えるか分からぬのでな」
家臣達は王の頑なな態度に困り果て,神殿に駆け込んだ。ゴートン王国も天帝教信仰のため,何とか良きアドバイスが得られるのではないかと思ったのである。
実は,神殿の神官達は『月の雫』が持ち込まれた直後から秘宝の返還を王に強く求めていた。しかしながら,日頃から信心深くもない王は聞く耳すら持たず,逆にうるさいと,彼らを出入り禁止にしていたのである。
家臣達が必死の思いで神殿に辿り着くと,そこでは家を失ったり傷ついたりした者達であふれかえっていた。
「何とむごいことじゃ」
「こんなにも多くの者が・・・・・」
家臣達はすがりつこうとする国民を心を鬼にして振り払い,奥へ奥へと向かった。
「大神官マリネリ殿はおられるか」
「大神官殿」
家臣達が大声で叫びながら進んでいると,白い祭祀服を着た一人の老人が姿を現した。
「おお,大神官殿」
「これは王宮のお方。どうやら我が王のお心はお変わりないようじゃな」
「そうなのです,そうなのです。もうどうしたらよいものやら。大神官殿,助けて下され。我々はどうしたら良いのじゃ」
「・・・・・・」
大神官は深く一つの溜息をつくと重い口を開いた。
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「陛下・・・陛下・・・・どうか,どうかお願いでございます。そのお持ちになっている秘宝をファンタジアのラミエル帝にお返し下さいませ」
「陛下」
「陛下」
家臣達は必死で王を説得する。しかし,欲深さでは世界一と言われるネリオーカル王のことである,そうそう簡単にこの秘宝を手放すはずはなかった。
「異常気象とこの宝石とは何の因果もないわ。お前達はそう言って儂から秘宝を奪うつもりであろう。そうはさせるものか」
「陛下,何度申し上げたら分かって頂けるのですか。これ以上猛吹雪が続くともはや復旧すらままなりませぬ」
「そなたらはそうやってまでこの『月の雫』が欲しいのか。これは儂のものじゃ。誰にもやらぬ」
もうネリオーカル王は『月の雫』の魔力に引き込まれてしまったようになっている。
「陛下,我々を信じて下さいませぬのか」
「人間欲が絡むと何を考えるか分からぬのでな」
家臣達は王の頑なな態度に困り果て,神殿に駆け込んだ。ゴートン王国も天帝教信仰のため,何とか良きアドバイスが得られるのではないかと思ったのである。
実は,神殿の神官達は『月の雫』が持ち込まれた直後から秘宝の返還を王に強く求めていた。しかしながら,日頃から信心深くもない王は聞く耳すら持たず,逆にうるさいと,彼らを出入り禁止にしていたのである。
家臣達が必死の思いで神殿に辿り着くと,そこでは家を失ったり傷ついたりした者達であふれかえっていた。
「何とむごいことじゃ」
「こんなにも多くの者が・・・・・」
家臣達はすがりつこうとする国民を心を鬼にして振り払い,奥へ奥へと向かった。
「大神官マリネリ殿はおられるか」
「大神官殿」
家臣達が大声で叫びながら進んでいると,白い祭祀服を着た一人の老人が姿を現した。
「おお,大神官殿」
「これは王宮のお方。どうやら我が王のお心はお変わりないようじゃな」
「そうなのです,そうなのです。もうどうしたらよいものやら。大神官殿,助けて下され。我々はどうしたら良いのじゃ」
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大神官は深く一つの溜息をつくと重い口を開いた。
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