テルサのFantastic Stories

今まで書きためていたとりとめもない物語を少しずつ連載していきます。ファンタジー物が多いです。ぜひ読んでみて下さい。

3-11 「ある国の物語」 第七章 思惑

2013-03-31 01:15:06 | 「ある国の物語」第七章
*******************************************

いつも応援ありがとうございます。ただ今,3つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。さあ,今日の順位はどうかな?さらなる応援をお願いします~^^。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

人気ブログランキングへ



*******************************************

このお話は・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

*******************************************

第3節 5つの聖石と魔術師  第11話

「レイミール神様,これであなた様は四大精霊の力と運命の輪を廻す力をより強力なものとされました。私どもは聖石を託された者としてずっと主人を捜しておりました。ようやく今,聖石が求めている方が見つかり,重い役目を果たすことができたのです。どうか,聖石達の思いを受け止めて下さいませぬか。封印されたという残りの二つの水晶もあなた様を求めていずれあなた様の元に返ってくるはずでございます。5つの聖石をはめ込むのに細工師達がいつの間にか台を7つも作ってしまったというのはその証拠でございましょう」
「何度も言うが私にそのような聖石の力は必要ない。私の目的は天帝打倒だ。それなら聖石の魔力など借りなくても十分だと思っている。名目上は救世主として人界への降臨を許されているが,私はこの人界など敢えて救おうとは思っていない。救って欲しければ聖なる方に頼めばよいのだ。汝等は分かっているのか,この世が滅びるということは汝等の理想の世が創世されるわけではないということを・・・。私にはどの神ももっていない再生の力をもっているが,人間を再生するつもりはない。つまりは汝等魔術師も滅びるということだ。さて,天帝が気付く前に行くとするか」

 レイミール・ラ・ルネシス神は今にもクリスタリア神皇国に行きそうだった。

「レイミール・ラ・ルネシス神様。人の身は神体とは異なります。少しお身体を休められては・・・。そして十分準備をされてから天帝打倒を実行されてはいかがでしょうか」

 魔術師達は何とか魔性の月神を引き留め,彼自身も思い留まって最果ての塔にもう少しいることにした。そして,塔の中にハービア王子の気を感じ取ると,フッと消えた。

「わっ」

 自分の目の前に突然レイミール・ラ・ルネシス神が現れたので太陽の君はびっくりした。御力を使っているのですぐ魔性のレイミール・ラ・ルネシス神だと分かる。

「お前・・・魔性の方だな」
「お前のことだから必ずラミエルにひっついているだろうと思ったら・・・やっぱりそうだったようだな」
「ふん,余計なお世話だ」

 ハービア王子は少しいじける。月の君を守ってやれなかった・・・・そんな思いがずっと彼を苦しめていた。

「お前・・・もうラミエルに身体を返さないつもりか?月のサークレットもないし・・・」
「前にも言ったはずだ。私は天帝さえ倒せればよいと。それに今の私は不完全だ。ラミエルと融合しなければ真の覚醒は不可能だ。今の段階ではまだラミエルから身体を借りているに過ぎない」
「天帝と戦ったらとんでもないことになるぞ。人界がどうなるかもちろん知ってるよな」
「人界など滅びてしまえばよい。天帝打倒のためなら人界がどんな被害を受けようと仕方ない」
「頑固な神だな,お前って」
「これが私だ」

 レイミール・ラ・ルネシス神は大きな窓から外を見る。凄まじい魔力をもち,闇の支配者でもある魔性の月神。人々が怖れる魔物さえその名を聞いて震えあがるという。その彼と自分は今話しているのだ。

「ハービア王子,なぜお前達はこんな所にいるのか教えて欲しい。一体何があったのだ。お前達は何をしようとしていた?」
「パイオニアを始めとして西側の国々の干ばつがひどくて・・・・。その視察に行く途中だったんだ。突然襲われてここへ来たけどさ」

 その話を聞いたレイミール・ラ・ルネシス神は何か思いついたようだった。

 


*****************************************************
最初から読みたい方はこちらのFC2小説で読んで下さるとありがたいです。
徐々に更新していきますのでぜひ続きをお読み下さいね^^。


「ある国の物語」
*********************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3-10 「ある国の物語」 第七章 思惑

2013-03-20 23:28:54 | 「ある国の物語」第七章
*******************************************

いつも応援ありがとうございます。ただ今,3つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。さあ,今日の順位はどうかな?さらなる応援をお願いします~^^。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

人気ブログランキングへ



*******************************************

このお話は・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

*******************************************

第3節 5つの聖石と魔術師  第10話

 翌朝早く,レイミール・ラ・ルネシス神は起きると部屋の外に出た。とても爽やかな朝だ。周りを少し見た後,彼は目を閉じて気を集中させる。ここの場所,いきさつなどが次々と彼の頭の中で再現される。

「なるほど・・・そういうことか」

 魔性の月神は首にかかっているペンダントに手をかけた。

「5つの聖石の魔力があれば天帝など話にならないが・・・・」
「その通りでございます」

 突然声がしたので,レイミール神はその方を向いた。

「誰?」

 目の前に黒衣をまとった男が数人ひれ伏している。

「お初にお目にかかります,月の神レイミール・ラ・ルネシス様。我々は最果ての塔に住む魔術師でございます。私どもはあなた様に協力させていただきたいと考えております」
「協力?」
「はい。私どもも天帝打倒を目指す者でございます」

 その言葉に美しい月神は冷ややかな瞳を向けたままだった。

「何故私の味方をするというのだ?あなた方は天帝により創造された者。その生みの親を捨て,よりによってこの人界を滅ぼそうとする私の味方をするとは・・・・天帝への裏切り行為になるぞ」
「それで結構でございます。今の世はまさに人間の欲望に埋め尽くされております。そのような世は滅ぶべきなのです。そして,新しい世界が創造される時が来たのです」

 レイミール・ラ・ルネシス神は暫く黙ったまま彼らを見ていた。その突き刺さるような凍てついた瞳に魔術師達は思わず体が凍り付きそうな気がした。

「まあ,私に協力してくれるという者を無理に説教する必要もないだろうが・・・でも・・・」

 彼は少し不満そうにペンダントの鎖に手をかけた。

「私にはこの5つの聖石は不要な物だ。この聖石は遙か昔の神世より伝わるいわく付きの物。神々すらこの石を怖れ,手に取ることを嫌がったと聞く。確かにこの聖石は凄まじい魔力を持ち,この力を借りればいかなる願いも叶うだろう。だが・・・この石はとても危険だし,使い方を誤れば自ら滅びなければならないとも言われている。天帝に今までの恨みを晴らし,この人界を滅ぼすことが私の願い。それなら,この石の力を借りずとも私の魔力で何とかできるだろう。これは返すからはずしてくれぬか?」

 レイミール神の言葉に魔術師達は首を横に振った。

「我々にももはやどうにもできませぬ。この5つの聖石が主人としてあなた様を選んだのですよ。恐れながらレイミール・ラ・ルネシス神様の魔力ではずせないものを人間である我々がどうしてはずせましょう?これは聖石の意思なのでございますよ」
「そもそも,元々バラバラであった聖石を一つにするのが悪いのだ。まあ,まだましだからいいだろう。あと黒水晶と緑水晶が揃わなければこの5つの聖石もたいしたことはない」
「黒水晶と緑水晶?どういうことでございましょうか」
「魔術師の祖リーデン・ドールは教えてくれなかったのか?聖石は全部で7つあると・・・。天より2つ,地より2つ,天と地との境から1つ,そして闇から1つ,宇宙から1つ。黒水晶は闇を支配し,緑水晶は生命を支配する。聖石は7つ揃って初めて完全な物となる。7は我々にとっては聖なる数字。故に月も7日ごとに満月から半月,新月へと姿を変えているのだ。黒水晶と緑水晶は太古私が持っていた。故に,私は・・・と言うより月は闇と生命を司っているのだ。でもその2つの聖石は,天帝が人間には災いをもたらす物として封印してしまったのだ」

 レイミール神は静かに語った。

 


*****************************************************
最初から読みたい方はこちらのFC2小説で読んで下さるとありがたいです。
徐々に更新していきますのでぜひ続きをお読み下さいね^^。


「ある国の物語」
*********************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3-9 「ある国の物語」 第七章 思惑

2013-03-10 22:09:30 | 「ある国の物語」第七章
*******************************************

いつも応援ありがとうございます。ただ今,3つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。さあ,今日の順位はどうかな?さらなる応援をお願いします~^^。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

人気ブログランキングへ



*******************************************

このお話は・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

*******************************************

第3節 5つの聖石と魔術師  第9話

 脱出する方法も思い浮かばず,また1日が過ぎようとしていた。新月の夜が迫る。今は夕方。太陽が大きく西に傾き,1日の終わりを告げようとしている。その燃えるように空を染め抜く茜色は月の君がいる部屋にも差し込み,彼をも赤く染める。

「ラミエル・・・・」
「ハービア,私は今宵ずっと起きています。もし,眠りかかっていたら殴ってでも起こしてください」
「了解,何があっても起こしてやるさ」
「ありがとう」

「いよいよレイミール・ラ・ルネシス神様が目覚められる」

 最果ての塔の者達はみんな少なからず緊張していた。魔性のレイミール・ラ・ルネシス神の魔力は凄まじく,地球に及ぼす影響は天帝大神を凌ぐとさえ言われている。

 ラミエル帝は心を頑なに閉ざしたまま,その夜を静かに迎えた。夜になって風も涼しくなり,本当に心地よく吹いて彼らを眠りへと誘う。

「ハービア?」

 さっきまで一緒に話していた太陽の君の声が聞こえなくなる。横を見ると金髪の王子はソファにもたれたまま眠り込んでしまっている。

「私を・・・・起こしてくれるのではなかったのですか?」

 少し溜息をつき,ラミエル帝は立ち上がった。

「夜は長い。ここにいたら眠ってしまいそうだ」

 静かにドアを開けてその美しい少年帝は部屋の外に出た。魔術師達は変に束縛してラミエル帝を緊張させてもいけないと思っているのか姿がない。テラスに出ると彼は空を振り仰いだ。月が姿を見せていないため,辺りは本当に星影に照らされて幻想的な風景が広がっている。彼の胸にふと不安がよぎる。頼りとしている月のサークレットがない今,自分は魔性を押さえ込むことができるのだろうか・・・・・。
 椅子に座って目の前に広がる青白い美しい風景を見ている月の艶やかな髪や白い頬を,涼やかな風がそっと優しく撫でていく。その心地よさにさすがの月の君も椅子に座ったまま意識を遠のかせてしまった。静かに夜は更けていく。

 何時間か経ち,時計が夜中の2時半をさした時,彼の目がうっすらと開いた。少し首を振ってはっきりと目を開ける。

「ここは・・・どこ?」

 彼は辺りを見回していたが,やがて椅子から立ち上がり,外を見た。

「どうやらここはファンタジアでもルナでもクリスタリアでもなさそうだ」

 そっと自分の頭に手をやってみる。

〈何があったのだ・・・・。月のサークレットが・・・・・ない〉

 彼は紛れもなく魔性のレイミール・ラ・ルネシス神であった。月神はまだ聖石には気がついていないらしい。

「ラミエル・・・・やはりお前は何も教えてはくれないのだな。まあいい。そのうち分かるだろう。私も眠るとしよう」

 レイミール・ラ・ルネシス神は適当に近くの部屋に入るとベッドに横たわり,静かに目を閉じた。

 それは本当に静かな目覚めだったが,それでも自然は敏感に彼の気を感じ取り,月神の目覚めを風にのせて世界中に知らしめた。

 


*****************************************************
最初から読みたい方はこちらのFC2小説で読んで下さるとありがたいです。
徐々に更新していきますのでぜひ続きをお読み下さいね^^。


「ある国の物語」
*********************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3-8 「ある国の物語」 第七章 思惑

2013-03-09 23:21:53 | 「ある国の物語」第七章
*******************************************

いつも応援ありがとうございます。ただ今,3つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。さあ,今日の順位はどうかな?さらなる応援をお願いします~^^。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

人気ブログランキングへ



*******************************************

このお話は・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

*******************************************

第3節 5つの聖石と魔術師  第8話

 どのくらい時間が経っただろうか。彼らが話していると魔術師であろう3人の若者がやってきて最初の2人は月の君と太陽の君に食事を出し,後の1人はベッドメイキングをする。

「どうぞお召し上がり下さいませ。高貴な方のお口に合うかどうかは分かりませぬが・・・」
「合わねえよ。合わねえから俺達を帰してくれないか?誘拐したんだぜ,お前達。世間に知られてみろ。ただじゃあすまないぜ。今のうちに大人しく帰してくれたら内々に処理してやってもいいけど」
「申し訳ありませぬが,そればかりはできませぬ。では,ごゆるりと。ああ,ハービア王子,これを・・・」

 若者の1人がフッと気を込めるとハービア王子のベルトが普通のベルトに変わった。

「わっ,変わった」
「では,失礼いたしました」

 3人の若者がいなくなった後,2人は食事を済ませて交互に入浴をし,溜息をつく。

「ところでさ,お前国の方大丈夫なのか?」

 眠気に襲われかけている太陽の君がベッドに潜り込みながら月の君に話し掛ける。月の君は隣で枕を整えていた。

「はい。国の方はほっといていても大丈夫です。何分国主が私のような者ですからね。大臣達はしっかりしたものです。でも・・・世間が気付くのは大分遅れるでしょうね。私達は2人で気ままに旅していましたし,パイオニアの方には一週間ぐらいで着く予定としか伝えていないし・・・」
「まあ,いいや。こんな経験何回かあるからもう慣れたろ?」
「こんなことに慣れても仕方ありませんけどね。私にとってはいい精神修行となります。魔性をどこまで封じることができるか心の問題ですね」
「大丈夫さ。新月まであと2日ある。それまでに何とかしようよ」
「はい」

 そう言ったきり,ラミエル帝はもう眠りについていた。

「相変わらず寝付きの早い奴だぜ」

 ふぅ~っと溜息をついてハービア王子は寝転がり,天井を見る。

“不思議だなあ。ラミエルなのにラミエルでなくなるなんて”

 翌朝,2人は無謀にも最果ての塔脱出を試みた。ラミエル帝はまだ時期が尚早だと止めたが,ハービア王子が彼の手を引っ張って強行突破を目論んだのである。しかし,結界がはられているのでなかなか抜け出せない。そのうち追っ手につかまる。

「さあ,お帰りあそばされますよう」
「嫌だね。帰るのはここじゃない」

 ハービア王子は暴れて抵抗したが,魔術には勝てずに眠り込んでしまった。

「さあ,ラミエル陛下もこちらへ・・・」

 抗うことを彼はしなかった。素直にハービア王子の様子を見ながら,魔術師達の後をついていった。ベッドに降ろされた太陽の君の寝顔を哀しそうな瞳で見つめる。

「ハービア・・・・」

 月の君は,窓の外に視線をうつす。

〈明日は新月だ・・・・。一体どうなるのだろう。私に魔性が押さえられるだろうか〉

 そんなことを思いながらベッドに身を横たえる。

 


*****************************************************
最初から読みたい方はこちらのFC2小説で読んで下さるとありがたいです。
徐々に更新していきますのでぜひ続きをお読み下さいね^^。


「ある国の物語」
*********************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3-7 「ある国の物語」 第七章 思惑

2013-03-03 22:09:04 | 「ある国の物語」第七章
*******************************************

いつも応援ありがとうございます。ただ今,3つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。さあ,今日の順位はどうかな?さらなる応援をお願いします~^^。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

人気ブログランキングへ



*******************************************

このお話は・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

*******************************************

第3節 5つの聖石と魔術師  第7話

「ラミエル・・・」
「心配です。もし,魔性の月がこの聖石の存在を知り,自分の野望のままその魔力と聖石の凄まじい魔力を合わせてしまったら・・・本当にこの世は一瞬で破壊されてしまうかもしれません。どうすれば魔性を封じることができるのでしょうか」
「新月まであと何日だったかなあ」
「新月の夜は闇の世界。魔性の月神レイミール・ラ・ルネシスがもっとも目覚めやすい時です。他の日は何とか私の意思で封じることができるでしょう。でもあの夜は・・・・新月の夜は月のサークレットがなければ私の力だけでは封じきれません。なぜ人間の中にわざわざ人界を滅ぼすようなことをする者がいるのでしょうか」

 その時のラミエル帝は明らかに動揺している。ハービア王子は思わずそんな彼の両手をギュッと握りしめていた。

「しっかりしろよ。いつものお前らしくないぞ。その不安が余計に魔性を呼び寄せてしまう。心を平静に保てよ。それってお前の得意技だろ?」
「ハービア・・・・・」
「大丈夫。俺と魔性のレイミール・ラ・ルネシス神は友達なんだ。決してそんなことはさせないよ。もし心配ならいっそのこと先に聖なる方を呼び出してみるか?」

 太陽の君は月の君が落ち着くまで待つことにした。天下の軍神ラミエル・デ・ルーン帝が・・・あの月の君がここまで動揺して不安がっているとは・・・。ハービア王子は信じられなかった。さすがのラミエル帝でもそんな時があるのか・・・・。

「聖なる方を先に呼び出せと?」
「そうそう。できたらさ。お前が強く助けを求めたら聖なる方は必ず出てくるぜ,きっと」
「できません。そんなこと」
「なぜ?魔性よりよっぽどましだろ」
「そんなことをすれば私は・・・私の自我は聖なる方に取り込まれ,融合されるかもしれません」
「いいじゃないか,聖なる方とだったら。逆に取り込むことができるかもしれないよ」

 ラミエル帝は暫く考えていた。魔性より先に聖を呼び出せというのか・・・・・。

 月の君はやっぱり横に首を振る。

「ラミエル?」
「だめです。聖なる方を呼び出しても魔性にはかなわない気がします。神世とは違い,魔性は私の内なる魂の中で聖と同じく解放されています。そうなれば魔性の方が強いでしょう」
「なるほど・・・。お前が聖なる方を呼ぼうと心を解放したら魔性も出てくる可能性があるってことか」

 暫く時が過ぎてラミエル帝も心の整理がついたのか大分落ち着いてきた。そこはさすが月の君である。

「ハービア・・・もし,魔性が出てきてこの世を滅ぼそうとするなら構わず私を殺してください」

 いつもの冷静な声だった。ハービア王子は手を離すとポンポンと彼の肩をたたいた。

「了解。その時は俺の手でお前をあの世へ送ってやるさ。たとえこの世が滅亡の道を辿ろうと一瞬にして消えてしまうよりましだろうからな。まかせとけ」

 ハービア王子の太陽のように輝く微笑みにラミエル帝は少し嬉しそうに笑った。

「ありがとう,ハービア王子」
「照れるぜ,まったく」

 ハービア王子はそう言うとふと真面目な顔になって立ち上がった。

「ハービア?」
「それよりさ,お前のペンダントじゃないけどさあ,俺の服見てくれよ。これ・・・・脱げないんだぜ。ズルズルしててさあ,動きにくいのなんの・・・・。ここに来るまでに何度転んだことか。布は破れないし,ベルトはほら・・・継ぎ目も穴も何にもないんだぜ」

 太陽の君がファッションショーのようにラミエル帝の前で一回りしてみせる。

「本当だ。恐らく逃亡防止でしょうね。その格好では素早く逃げることはできませんから」
「ねえねえ,お前の魔術で何とかならない?歩くのさえやっとなんだよ,これ」
「言ったでしょう?私のは子どもだましなんだって。でも,何とかなりますよ。魔性を取り込んで逃がしてもらうとか・・・」
「そ・・・そんなあ。あいつおっかないんだもん。言いにくいなあ」
「とにかく,このままでいいはずがありません。が,あいにく私には剣がありません。少し考えさせて下さい」
「あーあ,また落としたのか?あれ,お気に入りの細工付きのやつだろ?」
「そうです。ぜひ見つけ出したいですね。もう作りたくありませんから」

 2人は暫くこれからのことを話し合っていた。

 


*****************************************************
最初から読みたい方はこちらのFC2小説で読んで下さるとありがたいです。
徐々に更新していきますのでぜひ続きをお読み下さいね^^。


「ある国の物語」
*********************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

3-6 「ある国の物語」 第七章 思惑

2013-03-03 01:50:08 | 「ある国の物語」第七章
*******************************************

いつも応援ありがとうございます。ただ今,3つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。さあ,今日の順位はどうかな?さらなる応援をお願いします~^^。


にほんブログ村 小説ブログ ファンタジー小説へ

人気ブログランキングへ



*******************************************

このお話は・・・

森と湖の国ファンタジア帝国の少年帝は,実は宇宙を創世した天帝の12番目の息子にして運命の輪を廻す月の神の降臨した姿だった。彼をめぐる光と闇との戦いが今、始まろうとしていた。そして彼自身がもつ聖と魔性の両面性。果たしてこの世に月の聖帝は黄金の夜明けを告げるのかそれとも黄昏の時を告げるのか・・・・・。

*******************************************

第3節 5つの聖石と魔術師  第6話

「ふぁ~あ。よく寝たぜ,まったく。う~ん」

 ようやく目覚めたハービア王子が両腕を思いっきり伸ばしてノビをする。暫くボーッとしていた彼だが,ふと違和感を覚えて辺りをキョロキョロと見回す。

「あれ?ここどこだ?ラミエルは?」

 サーッと王子の顔が青くなる。魔術師達とのやりとりが脳裏に鮮やかに蘇ってくる。

「も・・・もしかしてここは最果ての塔?あーーーやばいぜ。ラミエルのバカ野郎。月のサークレットはずしたままじゃないのか。魔性が出たらどうするんだよ。もう・・・・ルナ・パレスの三日月の泉の手は使えないんだぜ」

 慌てて飛び起き,走ろうとしてハービア王子はこけた。何かおかしい。

「おかしいなあ,一体・・・・あれ?服が・・・・替わってる?」

 太陽の君は手足をいろいろと動かしてみた。まるで祭祀用の服のように長く動きづらい。おまけに腰のベルトにはつなぎ目どころか切れ目さえ見あたらない。

「ぬ・・・脱げない。何だこりゃ。これじゃあとてもじゃないけど走れないじゃないか」

 どんなに引っ張ってみても服は破れない。

「まいったなあ,ほんとにもう・・・・」

 ハービア王子はそれでもずるずるした長い裾をつかみ,持ち上げて何度もすべりこけながら部屋から飛び出し,大切な親友を捜し求めた。

「おーい,ラミエル~。どこにいるんだよ~。返事しろ,ラミエル~」

 大声で呼びながらあちこち手当たり次第にドアを開けて彼は美しい少年を捜す。どこにも彼の姿は見えず,最後に一番奥の部屋に辿り着く。ガチャッと太陽の君はドアノブを回して重い扉を開けた。

「ラ・・・ラミエル,無事か?」

 太陽の君の視線の行き先に1人の本当に美しい少年がいた。彼はベッドに腰掛けたまま窓の外を眺めていた。

「ラミエル?」

 ハービア王子の呼びかけに少年はふと振り向き,彼を見つめる。

「ハービア・・・。大丈夫でしたか?」
「俺のことなんかどうでもいいって。それよりお前,大丈夫か?」
「はい・・・何とか」
「良かった~。魔性になってなくて。今,月のサークレットを返すから待ってて。あれ?な・・・ない。確か・・・・あれ?あれ?」

 両手でどんなに頭をなで回してみても,あの黄金と黄水晶でできた月のサークレットの冷たく固い感触は得られなかった。

「私の不覚でした。魔性を待ち望む彼らのこと。その目覚めを妨げる月のサークレットなどいち早くどこかに隠したに違いありません。それよりも・・・」
「それよりも?」
「心配なのはこれです」

 ラミエル帝の白いなめらかな指が金の鎖を握った。

「何だ?それ」
「5つの聖石です。彼らが言っていた・・・四大精霊と運命の輪を廻す力をもつという」

 ハービアはまじまじとそのペンダントを見る。

「本当だ。5つある。紅と青と白と紫と黄か。綺麗だなあ」
「綺麗だなんて・・・。とれないのです,これ・・・・」

 月の君はその鎖を軽く引っ張ってみながら言った。ハービア王子は目をぱちくりさせて彼の首筋をよく見た。

「とれないって・・・そんな・・・・あれ,つなぎ目がない。これ,このまますっぽりと抜け・・・・・ないよな。その大きさじゃ無理だ。あれえ,どうやってつけたんだこれ・・・。それにこれよく見ると石がはまってない台があと2つあるぜ?聖石はまだあるってことか?」
「・・・・・・・・・・・・・・」

 月の君は少し動揺しているように見えた。彼の不安そうな表情を見たのは初めてである。


*****************************************************
最初から読みたい方はこちらのFC2小説で読んで下さるとありがたいです。
徐々に更新していきますのでぜひ続きをお読み下さいね^^。


「ある国の物語」
*********************************
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする