出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

業界掲示板

2006年08月01日 | 宣伝
出版の人の集まりに行って、面白いことを教わった。彼ら出版の人(私もそうだが)にとって、「朝日新聞は、ニュースを読むための新聞ではない」らしい。

最初、うちの本について「告知をしたらもっと売れるような本だ」と褒めてもらっていい気になってたら、「60万あるか」ってな話になった。朝日に広告を出したら、結構動くのではないかと。

以前読売に記事で出たときの動き方を説明して、朝日はそんなに違うのかときいてみた。そしたら別の人が「売れない、売れない」とどこかの本に書いてあるようなことを言うので、内心やっぱりなと思いながら2人の話を聞いていた。

だんだん新聞そのものの話題に変わってきて、新人の頃に「新聞はどこから読むか」ときかれて、1面からと答えたら怒られたという話が出た。出版人たるもの、1面の下の広告から読めということらしい。

これについては、昔ビックリしたことがある。新聞の下のほうが広告になってるのはもちろん知ってたが、1面から本の広告だという認識はなくて、そう教わって驚いたのだ。なぜかというと、新聞ってのは公器とか何とか言われてて、「決まった場所が決まった業界に割り振られてる」とは思ってもみなかったから。

あと、以前から、なんで出版の人は朝日朝日とうるさいのか、不思議に感じていた。そりゃ、売上への影響と言われればそれまでなんだけど、読売のほうが発行数(というのか?)は多いそうだし、最近はあまり変わらない(どのみち売れない)そうなのに、なんでかと思ってたのだ。

私はもともと朝日新聞はあまり好きじゃなくて、「天下の」なんてこれっぽっちも思ってない。経済ニュースをまず読みたいから日経をとっていて、あとの新聞は他の人のところで読む。そうはいっても本好きだから、一応下のほうも見るけど、それだけのこと。

別に「何はともあれ朝日の下のほう」なんて思ったこともない。新聞はあくまでも「ニュースを読む」ための媒体だと思ってた。

で、60万の広告出稿料は、その本の売上では元取りできるものではなくて、会社について知ってもらうというような効果のために出すのだと割り切らなきゃだめなんだそうだ。

これについても昔ビックリしたのが、まだ潰れていないことを知らしめるために広告を出すということ。潰れていないことをわざわざ知らせるためにそんな高い金を出すのかと、驚いたのだ。

で、2人の会話からわかってきたことは、あの「新聞の1面の下のほう」というのは、出版業界の掲示板になってるということ。

潰れてませんという広告は書店にむけて出してるのかと思ってたが、そうじゃなくて、他の出版社に向けたメッセージらしい。潰れそうじゃないにしろ、「こういう本を出しました」ってのも、他の出版社向け。で、お互いに、「そうか~」、「そういうの出したか~」と情報をアップデートしているとのこと。

とのこと…と言っても、彼らがそうだと説明したわけじゃないんだが、傍で聞いてると、そうとしか考えられない。極端な話、「この前、朝日に出してたね」なんて会話が、挨拶代わりみたいになってそうだ。

ふーん、出版業界の掲示板ね。。。

出版業界のメッセージのやり取りのおかげで、新聞社は新聞を出し続けていられる。かつ、そうとは知らない一般人(知らなかった私も含めて)は、出版業界のおかげで新聞を読み続けていられるというわけだ。

変な話である。

9 コメント

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ちなみに…(-o-;) (さくらん☆)
2006-08-02 09:52:01
1面サンヤツは右が堅い出版社や朝日と長く取引のある会社で、左にいくに従ってやわらかい会社になっているそうです。

右1常連だった会社が右2とかに載ってると業界から「ああ~力がなくなってきたんだな」と思われるそうです。



うちは読売をとってるのですが、最近はハードゲイがなんちゃらとか1面に載せる本じゃないだろ~と思う広告が出ててビックリします。。。
ああ、そういうノリ (タミオ)
2006-08-02 17:43:32
>業界から「ああ~力がなくなってきたんだな」と思われる



そういうふうにメッセージを送り合ってるわけですよ! なんとなく怖くて近寄りたくない雰囲気です。



広告のことはよく知らないので、「1面に載せる本じゃないだろ」とかも、あまり考えたことありませんでした。広告は(原稿審査があっても)あくまでも広告で、新聞ってのは「記事だけで主張」してるのかと思ってました。
Unknown (みむ)
2006-08-04 21:01:29
むかしわたしが聞いた話は

一般の純広告よりも、書籍の広告は安い、なぜなら新聞社は文化活動に貢献うんぬんみたいな話を聞きました。

へーと思っていましたが、

そうやって出版業界がメッセージを送り合うのに使っているなら、営業かけなくていいから人件費分、安くてOKじゃないかちら、と思ったり。。。
みむさん、毎度です (タミオ)
2006-08-07 19:06:08
>書籍の広告は安い、なぜなら新聞社は文化活動に貢献



貢献してるとは思いますが、私は個人的に、他の業種が貢献してないとは絶対思いません。服だって食べ物だって建物だって文化だ!と思ってます(笑)



Unknown (Babel)
2006-08-08 21:32:26
文化活動への貢献なんて建前ですよ。あったりまえじゃん。

古い出版と古い新聞は再販価格維持という共闘をしてるから、そういうところでわかりにくい便宜をはかるのは当然なんです。
徒然なるままに (シゲキ)
2006-08-09 02:06:04
新聞の広告を業界掲示板ということも、それに対して業界的な文化ということも、さらにそれが建前であろうとも、結局のところ狭い世界だなぁ、というのが個人的な考えです。



出版という世界はたしかにとても狭き門です。

その門をくぐれたことを誇りに思うことは大切ですが、併せて勘違いの度合いが高い人を多く生み出した面も否定出来ないと思います。

小部数の刊行物でもマスコミと勘違いすることや、何か特別な世界のように思い込むということ等など。



基本は本が好きということだったのでないかと推測しますが、なぜかある日特殊な世界と思い込んでしまい、気がつけば出版の常識は世間の非常識となっているような気がする今日この頃です。



似たようなことでテレビなどの取材する人間の居丈高な態度にも通じるように思うのは私だけでしょうか?
Babelさん (タミオ)
2006-08-09 15:06:56
>古い出版と古い新聞は再販価格維持という共闘



再販の影響っていろんなところにあるんですね。
シゲキさん、毎度です。 (タミオ)
2006-08-09 15:11:01
>何か特別な世界のように思い込むということ



最近思うのは、どの業界も多かれ少なかれ自分のとこは特殊と思ってる傾向があるな、と。



で、不思議なのは、そういういろんな業界のことを(著者に書いてもらうにしろ)本にして出している人たちが、今ひとつ他の業界に詳しくないというか、興味なさそうというか。

ライターさんで「何か書くたびに、そのことに詳しくなる」という人がいましたけど、それが普通じゃないかと思います。

その点でもテレビと似てて、出演者はともかく、作ってる人間は何もわかってなかったりします。
ザ・マイカーが休刊 (しんご)
2020-07-31 14:37:46
新アポロ出版が広告担当でGOODSPEEDが編集担当で販売元は文友舎が発行していた「ザ・マイカー」が新刊が入荷していないからネットで休刊を知りました。近年自動車雑誌は休刊が多いです。2019年に「ホリデーオート」を休刊して電子版に移行しています。「ザ・マイカー」は1995年に創刊して25年目で休刊になりました。

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