出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

イレギュラー請求書

2006年11月28日 | 出版経理
すごく細かいことなんだが、ちょっと書く。(細かくないことは業界ニュースなどでフォローできるし、私のメモ代わりという意味では細かいことのほうが書く意義はあるかも。細かいことしか書けないので言い訳をしているだけなんだが…)

今月送られてきた計算書に、面白い請求書がついてきた。ひとつは返品手数料の請求書で、これ自体は何もおかしいところはない。毎月、計算書についてくる。

日販は計算書と返品手数料の締め日がずれていて、めんどくさい。1冊あたり10円もしないので、「これはおかしい!」とすぐ気づくような変な数字でない限り、細かいことは気にしない(確認しない)。

10月は通常の返品はなく、例の「献本突っ返し分」の伝票のやりとりだけがあった。つまり、9月に34冊の返品がきて1冊は突っ返し、33冊と訂正を入れた伝票をおじさんに返した。10月には、マイナス34冊とプラス33冊の伝票を受け取った。経理で言う、洗い替えみたいなものか。

で、10月分の返品手数料だが、1冊分のマイナス数字の請求書だった。本の受取はないし、おじさんもブツがなかったので確か来なかったと思う。訂正の(マイナス34とプラス33)の伝票は、11月に入って返品があるときに持ってきてくれた。

1冊違えば返品手数料も1冊分違うわけで、当然の処理をしてくれたわけである。が、今まで「1冊分の卸値が売上から引かれてるかどうか」ってことばっかり気にしていたので、手数料まで気が回らなかった。意外と律儀じゃん。

しつこいようだが、そんなことで律儀になってくれるより、「献本を返さない」律儀さを求めたいところである。

他人事で考えると、おじさん1回につきいくら…という手数料のほうが身近に感じる。1冊違ったって、おじさんの労力は変わらないだろう。が、やっぱりちゃんとした返品センターなんかができると、システムで自動的に「返本数→返品手数料」が出てくるということか。

もうひとつの面白い請求書は、1冊分の歩戻し。

日販の歩戻しは、請求月に控除される(ちなみに、トーハンは納品月にさっさと引いてくる)。うちの場合あまり特殊なことはしないので、普通は新刊委託配本にしか歩戻しは発生しない。この面白い請求書は半年以上前の納品分で、何だったかまったく思い出せなかった。

納品書を見ると、注文として納品してある。おそらく、新規出店で1冊だけリクエストをもらって入れた分じゃないかとしか想像できない。最近も新規出店要のリクエストが来て、こちらは常備でお願いしますと書かれていて、そのとおりにした。だから、そのときは「常備のお達し」はなくて、こっちで勝手に注文で入れたんだと思う。が、勝手に入れようが何をしようが、ちゃんと(勝手に)直されたに違いない。

で、何が面白いかというと、普段の委託配本にかかってくる歩戻しは、「定価」に○%掛けて請求されてくる。今回は見たことのない数字だったので、例によって「何事だ!」と色めきたった。が、よく見たら「卸値」に△%掛けていて、結果はほぼ同じだった。

ほぼというのは、1円お得だったのである。

同じようなことで、消費税を先に掛けるか後から掛けるか…などでも端数の関係で差額は出る。取次に得な方式で計算すれば、取引出版社はいっぱいあるだろうから結構違っちゃうんじゃないか。

前に「献本が返品」で騒いだとき、「取次もいろいろ考えて引いてくる」とのコメントがあった。「いろいろ考える」より「ちょっと考えてみる」ほうがいいのではなかろうか。

アマゾン

2006年11月24日 | 宣伝
オンライン書店で表示される在庫情報について、以前どなたかに「アマゾンはどうにもならない」と聞いたことがある。私も「品切れ」という言葉が気に入らなくて、「在庫なし」のほうがいいのに…と思ってしつこく連絡したことがあった。

それでも在庫情報は許せるが、本の情報さえ載らないとなると、これは大問題だ。

特に今回の新刊は、著者の知り合いの多くがアマゾンのヘビーユーザーだと前から聞いていた。なので、本(彼らの言う「カタログ情報」)が現れたら、いろいろ載せてもらおう(彼らの言う「「コンテンツ掲載」)と思って準備していた。

うちは大阪屋と取引がないので、カタログ情報の掲載もすんなりとは行かない。最初の頃は「大阪屋と云々」と言われて掲載自体を断られた。その後、部決が終わればカタログだけは出るようになった。とはいえ、他のオンライン書店よりはずいぶん遅かった。

ちょっと変化が現れたのは、「なか身!検索」に登録してからで、部決と同時にサンプル本が届くように手配するようになってから、いろんなコンテンツの掲載が早くなった。

あとは、ここでもいろんな人から勧められていた「版元ドットコム」に参加したので、新刊案内とか在庫情報の提供がいっぺんにできて、格段に楽になった。版元ドットコムからは、大阪屋へも在庫情報を送信できる。で、すっかり安心して、発売日から遅くとも2日くらいで現れるだろうと思っていた。

部決から1週間して、さすがに「これは出ないぞ」と思って連絡したんだが、なしのつぶて。今までの新刊でさえ、1週間もすれば表紙画像なしの「ただの書籍データ」みたいのは出てたんだが、いつまでたっても「該当書籍がみつかりません」。

今回の新刊は配本数をすごく抑えたんだが、そんなこと関係ないだろう。

で、本日も「みつかりません」だったので、再度「カタログ情報」と「コンテンツ情報」を送った。すると、ものの30分もしないうちに現れた。

何はともあれ現れてよかったんだが、ページ数が違ってたので本日私が再送したこととは関係なさそうだ。となると、アマゾンのデータベースに入る過程で事故があったとしか思えないんだが、そんなことってありえるだろうか?

ちなみに、7&Yでは書店配本前から載っていて、本日めでたくジャンル1位を獲得した。アマゾンの客が待ちきれなかったのか。「待ちきれない=すごく読みたかった」で嬉しいし、「まだ待っている=もっと売れる」で嬉しい。

大阪屋はいろんなことで「縁がない」としかいいようがないんだが、アマゾンだけはどうにかならないかと、いつも思う。

刷り部数

2006年11月17日 | 制作業務
新刊ができあがって、委託の納品を済ませ、その残りが届けられた。うちの使っている倉庫はただの「置いとく」倉庫なので、とりあえず本はうちに届く。

で、印刷会社の子会社(?)の運送屋さんが、ビックリすることを言っていた。私は人が物を運んでるときに、「手伝わないで自分の仕事をして、終わったらハンコだけ押す」というのができないので、運送屋のおじさんを手伝う。おじさんは出版社ばっかり回っている人なので、そのときにする雑談が、結構ためになったりする。

運びながらおじさんが、「こんなに多いのってすごいですね」と言ったのだ。

最初、意味がわからかった。というのは、うちの刷り部数は少ない!と思い込んでいるからである。

今回は配本数を少なめにしたので(したって言うと思い通りになったみたいだが、もし多めに取次に言ってもダメだっただろうと思う)、その分、事務所に届けられた本が多い。なので、おじさんにそう言うと、

「いやいや、残りじゃなくて、全体の刷り部数も他んとこはもっと少ないですよ」

そんなことはないだろうといろいろ質問しても、おじさんはもっと少ないと言い張る。曰く、少ないところは250部、多いのは500部くらい。

本当か! 本当なら、最近はそんな部数でも採算が合うようになって来たに違いない。1年以上前に増刷の見積りを取ったときには、そんなんでは割に合わなくてやめてしまった。が、500部でも単価を抑えられるなら話が変わってくる。印刷製本会社が進化したんだろうか。進化なら嬉しいことだけど、「需要が多くて無理を強いられている」という、ありがちなケースかもしれない。

そのへんは、機会があったらきちっと見積りを取ればわかることなので、よーく覚えておくことにする。印刷会社の営業マンとしては聴かれたくなかった話かも。

ただ、最近、「3千部売れたら御の字」とか「意外とどこも初版は少ない」とよく聞く。意外と少ないったって、うちよりは多いだろうと思ってたんだが、本当にみんな少ないのかもしれない。おじさんの話を半分に聞くとしても、千部くらいの出版社も結構いるのかも。だからうちがどうってことはないんだが…。

とにかくビックリして知り合いに話したら、「自費出版の分ではなかろうか」と言う。自費出版を手がける版元も多くて、刊行数もすごく多いらしい。で、どうせ自費出版なので、千部刷ったと客には言って、実は500部・・・なんてことをしているのではないかという推理。

そんなことみんなで一斉にやめて、普通に作った本をたくさん刷るほうがいいと思う。それぞれの事情だからしょうがないんだろうけど。。。

見本の数

2006年11月08日 | 発売前
本日は見本納品。

以前どなたかに、部決ともいうと教わったが、違いがわかった。見せに行くのが「見本納品」。搬入日の前に電話して配本数の確認をするのが「部決」。なるほど。

うちは、「献本が返って来た」事件以降、「献本」というハンコまで作ってそれを押して持っていく。前回もそうだったんだが、何にも言われなかった。今回、日販では前回と同じくコメントなし。トーハンに持ってったら、「献本なら1冊だけでいい」と言われた。

どういうことなんだろう。これまでも「献本です」と言って、4冊置いてきた。最近変わったんだろうか?

本日、日販の返本おじさんが、訂正した伝票を持ってきた。ひと月ほど前に「献本が入ってるから違う」と言って突っ返した伝票である。で、伝票は直ってたし問題ないんだが、おじさんが「あちこちの出版社で問題になっているようだ」と言っていた。「私も、最初は他の版元さんから聞いたんですよ」と答えておいた。

「あちこちで問題になっている」プラス「今後は1冊でいい」・・・。これが何か新しい動きだったらいいなと思うのは、期待のしすぎか。。。

製本所見学

2006年11月07日 | 制作業務
厳密には「制作業務」じゃないんだが、制作途中の出来事なのでこのカテゴリー。

昨日、製本所の見学に行った。ずいぶん前に印刷所の見学には行ってたんだが、製本所はなかなかチャンスがなかった。もちろん、最終目的は「どこをどう突っ込んだら安くなるか」を知るため。とはいえ、流れと機械の大きさに圧倒されて、それどころではなかった。

うちはある印刷ブローカーを使っていて、それはやっぱり安いからなんだけど、この「製本所見学」にブローカー氏と印刷会社の担当者もくっついてきた。見学が終わる頃、製本所の人が「今日100冊見本上がりますから」と言ったとき、私には明日だと言っているブローカー氏と印刷会社氏がビビッたのが可笑しかった。そんなこと、こちらはわかって発注している。

で、製本所見学からは、即役立ちそうな情報は得られなかった。どこをどう調整するか(機械の)はバッチリ聞いてきたので、「遊ぼうと思えばコストをかけずに遊べる点」はわかった。けど、もともと遊びがない発注で、どうすればもっと切り詰められるかってのは、わからない。

笑っちゃったのは、三面断裁(だったかな?)の機械で、一体になった折丁の束をバサッと切る(小口とかを揃える)ところ。

こっちは「四六判ってのは188x128だったっけ…」と、調べたり前の本のデータを出したりしてDTPしてるのに、製本所で「適当に」切っちゃってることが判明。

確かに、同じ四六判でも微妙に大きさが違ったりすることがある。背表紙の具合かなんかが原因だと思ってたんだが、実は製本所の人の美的感覚らしい。「表紙を見て、このへんだと収まりがいい」と思ったところで切るとのこと。

うーん、こいつは知らなかった。私は非常に大雑把な性格で、細かいところは無視したいんだが、こんなところで製本所を頼れるとは知らなかった。逆に言えば、大雑把と言いながら、ノンブルの位置とか本文のテキストボックスの大きさにこだわって0.何ミリ単位で調整していたのは、まったくの無駄(ま、無駄じゃないときもあるだろうが)だったということだ。

多分、細かいところ(デザイナーの指定)にこだわって作る版元のときは、気を遣うんではなかろうか。うちの場合、マックでいじってるときにはいじるくせに、上がってきた本だと、「ああ、いいじゃない、いいじゃない」と喜んで済ましちゃうような感じだから、製本所の「このへん」で適当でもよしとなる。

で、それをブローカー氏も印刷会社氏もよーくご存知というわけか。まあ、それでやすいのなら構わない。

ブックライナー

2006年11月01日 | 注文納品
最近、トーハンのおみくじ棚で、よくはずす。

つまり、持っていった冊数で間に合わなくて、泣く泣くおみくじ(注文短冊)を持ち帰るのだ。だいたい既刊は3冊ずつ、新刊(1年以内)は4冊以上持っていくんだが、見事に外れてしまう。

それも、あと1冊あれば完売御礼!ってなときが多くて、すごく悲しい。きょうもそうだった。

書店さんからの注文で、単純に1店分足りないってなときは、近いうちにもう一往復する。ここだけの話だが、図書館は確実なので次週に回して、書店を優先する。

それでも1冊ずつの注文であれば、どれにしようか悩めるわけで、まあ自分なりに納得して「当日入れるものと後日入れるものに分ける」ことができる。

問題はブックライナーだ。これは、本によって違うんだがだいたい3冊くらいの注文。以前、「満数での出荷」の話題になったとき、急ぎなら1冊少なくても早く入れたほうがいいのかと思ってトーハンのお兄さんに尋ねてみたら、やっぱり満数でと言われた。だから、今日みたいに4冊なんて注文があると、「既刊は3冊」が基本なので泣く泣く短冊を持ち帰る。

ところで最近、電話注文が減ったなと思っていた。営業方法を変えたわけでもないのに、なんか少ない。以前は少なくとも月曜日は必ず電話注文があったのに、最近はない。

何が原因だろうと必死で考えたんだが思い浮かばず、かといって売上が減ったわけでもないので不思議に思っていた。本日4冊のブックライナーの注文を持ち帰って、ハッと気づいた。そうか、電話で来ないでブックライナー経由で来てるんだ。

うちは今までに9冊出した。そのうち1冊は完売、1冊は絶版。残り7冊への注文がとっかえひっかえブックライナーから来て、そのたびに読みが外れていたわけだ。じゃあ4冊持っていけばよかろうと思っても、いつどの本に注文が来るかわからない。全部4冊ずつだと、荷物がどんと増えることになって大変だし、注文がなくって持ち帰るのも悲しい。

でも増えてきているから、何らかの対応を考えないといけない。もしかして、まがりなりにも5年目に突入したから、トーハンに「版元」だと認められて在庫を持ってもらえるようになったのか。

ところが今、ブックライナーって取次在庫のことだっけ?と思って調べてみたら、例の桶川の流通センターのおかげで7月から新サービスがどうのこうのと書いてあった。うちにブックライナー経由の注文が増えたのは、書店さんが新サービスに満足して利用が増えたのかもしれない。