出版屋の仕事

知識も経験もコネもないのに出版社になった。おまけに、すべての業務をたった一人でこなす私。汗と涙と苦笑いの細腕苦労記。

不況?

2008年07月25日 | 出版の雑談
東京国際ブックフェアは、最初から「エラい小額で気分は出展社」ってなノリだったので、そういう結果になった。つまり、「出展ブース内で本がちらほら売れ」、「取引などの引き合いはなく」、「おだてられて出たミニセミナーは楽しかった」という感じ。来年も出展するとしたらいろんな課題はあるんだが、とりあえずのところはよしとする。もともと、ただの祭り好きなせいもある。

話変わって、最近感じていること。個人的に、出版不況と言われているけど不況なのではなくて、私自身は斜陽産業という感覚でいる。もちろん出版社も本屋さんも業界のいろんな人たちも、儲かればいいなとは思っている。自分のところも儲けたい。

こないだどこかで、「出版という言葉の意味は、紙の本を出すことだけではなくて、情報を広めることも指す」とかいう意味のことを読んだ。なので、「携帯だろうがウェブだろうが気にせずに、出版社として自信もって取り組みなさい」みたいな論調だった(と思う)。

テレビ業界に足を突っ込んでいたとき(地上波とネットの融合なんてのが言われていた頃)に、上の人たちがさかんに「耳にだけ心地いい言葉」を使って、ついてっているふりをしていた。今の出版にも、一部そういうニュアンスを感じるところがある。一部というのは、そうでなくてキッチリと融合を実現させている人たちもちゃんといるという意味。

で、その一部だが、どこかで似たようなことを感じたことがあると長い間思っていたんだが、最近になって思い出した。着物とか織物とか染色とか、日本文化の…と言われているジャンルが、妙な商品を開発して売り出すときに似ている。西陣織のクッションとか友禅の靴とか。

個人的な好みで大変申し訳ないけど、あまりカッコよくないと思う。元の製品(反物にするとか帯にするとか)のほうが、絶対いいと思う。なんか「無理のある町おこし」みたいで、「NHKとか地方の新聞が取り上げるだけで、結局ブレークしない」というイメージがある。

そういうイメージがないのは、文化が培った技術を純粋に活かすようなケースで、変な和洋折衷で終わらずに新しい製品になってたりする。こういうチャレンジは、出版の精神を新メディアで活かしていけるケースと重なると思う。

出来上がるものの特性をはき違えて融合なんていってるのは、友禅の靴くらいカッコ悪い。

で、その出来上がったものの成功例ってのは、元の業界とはまったく別物だと思うのだ。出版業が新しい形(業界)に姿を変えていくのは当然だろうけど、どこかで勘違いしてしまった人たちがいくら頑張っても、「友禅の靴」から離れることはできないと思う。で、出版のそういう部分(世界)は、不況じゃなくて斜陽だと思うわけです。

「また売上が上向くときもあるかもしれない」とかそういうことじゃなくて、これだけいろんなメディアが生まれている時代に、「そこをどうにか…」と思ったってついていけない人たちもいる、という意味。逆に(極端に)言えば、携帯配信なんかを業界の売上に入れているうちは、あっちの業界にかなわない気がする。

で、私自身は、「西陣織そのものをきちっと作って、かつ自社はきちんと回っていく」という出版を続けたいと思う。斜陽産業だろうが、構わないのである。

すごくエラそうな記事になってしまったが、出版業界に「西陣織から羽ばたいていく」人たちがいるのは、きちんと理解しているし、いいことだと思っている。でも、覚悟決めるっちゅうか、割り切っちゃえば「こんなに楽しい業界ってないのに」と思うのである。もっとエラそうに言えば、読者は最近、出版社の「苦し紛れ」を微妙に感じ取っているんじゃないかって気がする。

東京国際ブックフェア

2008年07月10日 | 宣伝
カテゴリーは「宣伝」だが、そんな大それたことではなくて、ちょっとしたお知らせ。

東京国際ブックフェアに、版元ドットコムの一員として出展します。土曜日には「日本でいちばん小さな出版社」というトークもします。宣伝というよりただの野次馬みたいな気分ですが、どうぞよろしく。