チャオプラヤ河岸の25時

ビジネスマンの日記帳

反知性主義

2024-01-16 14:57:03 | インポート

 情けないことに欧州や中東の戦争拡大の危機を前に、国内は無様にも政治とカネの空騒ぎ、肝心な外交議論は無いに等しい。政治にはカネが掛かるから、と云ういつもの言い訳も情けない。政治に掛かっているわけではなく、自身の選挙対策に金を掛けているに過ぎない。政策研究に駆け回る為ならまだしも、飲み食いと高額歳費のためにだけ議員をしている者も沢山いることだろう。裏金造りに同情の余地は一切ない。さっさと脱税案件で処理すれば良いだけのことだ。

 台湾で親米の総統が選出されたことで東アジア情勢の急変は無くなった。しかし習近平が表看板である偉大なる中国の夢を諦めるはずもなく、今後の動向には神経質な展開が予測されている。人民解放軍の腐敗や権力争いの為、即武力統一には踏み出せないのが習の悩みだ。天の時が味方すれば必ず台湾の占領に向う、ハイブリッド戦線では既に熾烈を極めた攻撃を行っている以上は今更撤退はない。

 1997年、広東省深センの広大な3階建てビルの中の電気街を歩いていた。店頭の商品の安さには驚愕する他なかった。単三電池が1グロス9元、1個あたり1円で店頭に並んでいた。何をどうすれば1円で販売できるのか意味不明だ。原材料費以下で店頭に並べるには仕入れ価格がゼロでなければならない。であれば盗品なのか、品質不良の廃棄品なのか?とにかく常識に掛からない価格のオンパレード。こんな異次元の世界と交流を深め、相互依存の経済関係を切り結ぶ、それは一体何を意味するのかは明らかだった。バブル破裂後の日本のデフレは際限無く長期化するはず、と。コスト競争をすれば圧倒的に中国が勝つ、ウイグルやチベットの奴隷労働まで含めれば労務費など計算するような比率にならないはず。せめて日本の労務費は釘付けにし、利益管理費も大幅に縮小しなければ市場の土俵にすらも上れない。日本の製造が追い込まれるはずのそんな近未来図は明らかに見えていた。

 天安門事件によって欧米から強烈に拒絶されていた中国を救ったのは日本による天皇訪中だった。中国の国際社会復帰を外務省が画策し、中国は豊かにすれば必然的に民主化される、との謎理論で政権やマスコミに天皇訪中賛成の世論誘導を迫っていた。その間の具体的な姿が秘密解除された公文書に克明に記されている。宮沢政権にはそもそも方針も見識も無く、ただ外務省が主導した大変な間違いであった。

 バブル後の30年に及ぶ日本のデフレは漸く脱出口に辿り着いた。だが、この間にGDPは2位から4位に後退し、賃金はほとんど上昇できなかった。そのデフレ不況の終焉は中国の人件費上昇による必然的な調整、と云う側面を持っている。最早馬鹿げたコスト競争をする必要はない、その安堵感が市場にあることは大きい。異世界と接点を持つと云うこと、それとの友好なるものがもたらす影響、それはどこまで考え抜かれたものなのか長らく疑問だった。結論は意外なものだった。要するに政権も官僚も、無論経団連も、何も真剣に考えてはいなかった、何の洞察力も無い無能だったと云うことだ。

 習近平の中国、その今後を読み間違えることがあってはならない。如何に日系企業の中国依存を減らし、如何に中国から脱出させるか、今こそ政治が大方針を掲げるべき局面だ。この今、小銭での空騒ぎに夢中な国会とマスコミ、余りに反知性的な風景だ。

 

 

                                  川口

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