チャオプラヤ河岸の25時

ビジネスマンの日記帳

ワールドカップ

2010-06-15 18:06:57 | インポート

 

 

  バンコクは到って平穏な日常を取り戻した。街には不思議な虚脱感が漂うが、先月までの市街戦もどきの騒動が嘘のように思える。

 土台の社会構造の問題は何も解決には至っていない。だが、それをタクシンか反タクシンかで括るのも奇妙な構図だった。名だたる大富豪のタクシンが、貧農の利益代表と云っても納得はいかない。

 放火、強盗にまで至った実行犯は単なる便乗組の若者が多かった。もともとバンコクは職業学校の生徒間などで抗争事件が多く、毎年多数の死傷者が出ている。そのような民度の問題を抱えた都市なのだ。そこで起こった政治抗争が、予想外の参加者を招き寄せることになった、ということだろう。

 とにもかくにも、バンコクは落ち着きを取り戻した。断固とした法治国家の顔をみせること、それが何より必要なことだったのだ。

 観光業を中心に受けたダメージは小さくない。リーマンショックから急回復する過程で起きた事件でタイの経済にとっては自殺行為に等しかった。

 更には、今後民主主義と王室の関係という、タイにとって極めて重い問題も議論していかなくてはならない。社会の構造変化は、否応もなく上部構造の変質を即す。にも拘らず、旧態依然の思考パターンでは、また必ず同じ問題が繰り返されることになる。タイの正念場は続く。

 雨期入りしたタイだが晴天が続き、暑い。あっけらかんとした南国の空気と空と、愛すべきタイが戻ってきたのは何よりだ。

 昨夜はワールドカップのカメルーン戦をテレビ観戦し、寝不足だ。喜びすぎて次のイタリアの試合まで観てしまった。

 代表の前評判が悪かっただけに盛り上がりに欠けているとされていたが、日本での視聴率も40%台後半だったと云う。サッカーという国境のない競技のパワーを改めて感じる。

 タイ人も一様にサッカーが大好きだ。ワールドカップが話題にならない日は無い。きっと様々な形で代表の活躍は、世界に散った日系企業を励ますことになるだろう。次は優勝候補のオランダ戦、間違っても勝つ可能性はないのだろうけれど、大敗もあり得ないような気迫をこのチームからは感じる。諦めず戦ってほしい。何といっても岡田の目標は世界のBEST4入りだ。

 絵を描かなくて手に入るものは何もない。先ず思い描くこと、それに向かって努力すること、練習試合で負け続け批判にさらされた岡田ではあるが、その戦略に何か間違いがあるわけではない。

 途方もない目標を手繰り寄せるしつこさ、その部分で勝つことだ。がんばれ岡田。日系企業の現在も、皆同じなのだ。

 

 

                           

                              川口

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鳩山・小沢の退陣

2010-06-02 10:54:27 | インポート

 

 鳩山の辞任が決まり、小沢も幹事長職を退くことになった。当然だ。

 驚くことに昨夜最後の粘り腰を見せたが、内閣支持率が19%台での政治執行など、到底無理なことだ。

 「トラスト・ミー」の直後、普天間年内決着を優柔不断にも5月末に引き伸ばした。その時、既に短命内閣の運命になることは決まっていた。政府間合意は断固履行し、追加の沖縄負担軽減策を継続協議する、国内外の複雑なベクトルを捌くたった一つのこの道をノーセンスにも見逃した。才能が無いということであり、同情の余地は無い。

 鳩山が退陣したからと云っても、辺野古移転反対の火を焚きつけてしまった以上、合意案の実行を本当に困難にしてしまった。結局は既存案に戻るという見苦しさの末、再度の外交的約束をも履行できなくなり、従って普天間の返還も消える。坊ちゃまの政治というものは、こんなにも犯罪的なものだ。

 参議院選挙が近い。

 顔のすげ替えで数議席の上積みはあるのだろうが、政権党の大敗は動かない。政権奪取の為には安全保障や外交で全く異質の妄想政党とも手を結び、挙句振り回されて自身の軸を見失う。そんな統治能力のなさを露呈した以上、国民が再度彼等を信任することは決して無い。一目散で再編成に進み、機軸政策での一致を前提に新たな政治勢力として再結集する、他にこの国を前に向かせる方法はなにも無い。

 島国日本はその視野の広がり、というものが常に課題となる。55年体制の遺物のような鎖国的イデオロギー政党を壊滅させ、世界を知り、国益の為の一点で是々非々の議論に向き合う、そんな議員のみで国会を再構成させねばならない。

 日本の民主主義の熟成、まだまだ先は険しい。

                           

                                                                      川口

 

 

 

 

 

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あじさい寺

2010-06-01 11:42:38 | インポート

 

 6月になって新緑の眩さが格別だ。若葉が初夏の陽光に輝く様、長野の最良の季節と云って良い。

 若かりし頃、下宿の在った阿佐ヶ谷から電車を乗り継ぎ、横須賀線の北鎌倉で下車して明月院にあじさいを見に行く、というのが初夏の定番デートコースだった。今ほど人が溢れる名所というわけでもなく、北鎌倉のマイナスイオンの溢れる散歩道を行くのは、何時も気持ちの良いものだった。

 「緑の沃野に居ながら、たった一本の枯れ草に心を奪われる愚昧」、哲学や思想の議論に夢中な私を、友人は静かにたしなめた。先ず生を楽しめ、楽しめないのであれば人の生を語るな、と。その彼が勧めてくれたデートコースこそが北鎌倉であった。

 明月院は紫陽花ばかりが有名になってしまったが実は、それは育てやすいからという理由で戦後に植えられたもので、歴史の浅い名物である。他にも竹林や菖蒲など古刹に相応しい見所は沢山ある

 付近の円覚寺や建長寺を廻るのも楽しいが、山の中に伸びる、幾つかの散歩道が秀逸だったような記憶がある。若いころに持っているものなど、所詮は時間だけ。そんな年頃であったため、ちょっと足を伸ばして極楽寺や長谷まで行くことも度々あった。何処も新緑に包まれ、潮風が心地よく吹いていた。初夏の北鎌倉は、長野に勝る場所だと思う。

 あじさい寺と云う通称は明月院だけのものではない。実は全国いたるところにあじさい寺は在る。手が掛らない、長い間咲いている、ということで各所で大量に植えられたのだろう。全国の紫陽花寺めぐり、というものも楽しそうだが流石に今はその時間が無い。いつか、の楽しみに取っておく。

 何もかもが予測した通りの終局を迎えつつある。何の意外性もない帰結、それこそが悩みの種だ。タイの政情も、鳩山の愚昧も、暫くは遙か遠くに投げ捨てて新緑のマイナスイオンに浸ろう。

 週末、久々に北鎌倉を歩きたい

                           

                            

                                                                                            川口

                 

 

 

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