チャオプラヤ河岸の25時

ビジネスマンの日記帳

浜岡原発

2011-04-20 17:27:08 | インポート

  明けても暮れても福島原発への不安、日本はとんでもない正念場にある。

 原子力保安院はようやく1~3号機での炉心溶融、4号機使用済み核燃料プールでの燃料棒溶融を認め、国際基準での事故レベルを最悪の7に引上げた。当然だ。

 政府は6か月後までに安定冷却を達成し放射能漏洩を止める、としている。残念ながらその実現可能性はかなり低い。炉内の放射性物質が漏れてしまっている以上、余りに高濃度な放射線のため屋内に立ち入ることさえできないはずで、様々な設備の交換や配管の再配置などは困難を極める。

 事故そのものがあり得ないとした安全神話のため、万一の場合に稼働させるロボットさえ、このロボット大国日本に用意されていなかった。建屋内部の様子を覗う程度の、単純なロボットすらアメリカから借りてくる体たらくだ。

 必要な大型機材を設計し、製造し、持ち込み、高度にリスクを伴う作業で設置する、一々についてそのような手順でしか修復を進められない。到底半年や1年の話ではない。その間も綱渡りのような手法で冷却を続け、高濃度汚染水をとてつもない単位で増やしながらも、何としても炉心爆発を阻止しなければならない。信じ難い困難な作業が連続する。

 原発がせめて冷温停止状態に至らなければ、日本の経済もこの破綻の淵から這い上がることはできない。消費マインドの急激な落ち込みを解消できなければ、日本は何もかもを失うことになりかねない。一気に80%もの落ち込みを見せた3月の貿易黒字額に続き、4月には驚異的な消費と生産の落ち込みを記録するだろう。掛け値なしに、日本経済は瀬戸際に追い込まれている。花見の自粛などもとんでもないことだ。

 ことは起こってしまった。心配ない、直ちに健康被害はない、を繰り返す政府の無能も加わり、収束は何時になるのか本当には分からない。今までのようには生きられない、ドラスティックな転換によってしか次には進めない、そのようなことが起きてしまっている。

 幸い、東京の現在の放射線量はモスクワの半分程度だ。これから内陸に向かって風が吹く季節にはなるが、新たな炉心爆発さえなければ首都機能は維持できるだろう。

 この間に、政治は先手を打って、甚大な損害を食い止める機能を今度こそ果たさねばならない。迫りくる東南海地震で動くはずの岩盤真上には、静岡の浜岡原発が立地している。東西を結ぶ複数の大動脈に近く、一帯が封鎖の事態になればその時点で日本が終わってしまう。今から停止しておくべき原発ではなかろうか?

  稀にみる太平洋プレートの活性期にあって、先手を打つ以外の対策があるとは思えない。後手の対応に追われ、ただ混乱する愚昧をまたも続けるわけにはいかないはずだ。正気の判断、今必要なものはそれだ。

                          

                                                                          川口

 

 

 

 

 

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プルトー

2011-04-11 16:18:29 | インポート

 福島原発の進行形の災害を含め、未だに大震災の被害集計ができない状態にある。文字通りの国難だ。

 原発事故の収束は10年後になる、との東芝、GEの技術者の工程表が示された。一方でイギリスの科学誌ネイチャーは解決に100年は必要と書いている。高濃度汚染の中、とにかく永続冷却が可能な設備修復を行うほかなく、その間も、何処に漏水しようと注水し、冷やし続けるしかない。冷温停止してからも燃料棒の抜き取り、解体、封止、除染、と気の遠くなるような作業が続く。

 今今は冷温停止にほど遠く、最悪の再臨界爆発を阻止するために綱渡りのような作業が続いている。3基がメルトダウンによって圧力容器、格納容器を破損、更には3,000度の高熱となった核燃料が何もかもを溶かし、床のコンクリートにもダメージを与え、イレギュラーな経路で炉内高濃度汚染水が海洋に出てしまった、それが起きていることの実態だろう。明らかにチェルノブイリと同様のレベル7、最悪事故であるはずだ。まだ廃炉プロセスどころの話ではない。

 15日の3号基建屋での爆発事故以来、周辺の汚染は一気にレベルを上げた。あれは単なるプールの水素爆発ではなかったかもしれない。メルトダウンによる炉心格納容器の水蒸気爆発、ということなら全ての整合性が取れる。

 複数の原子炉が同時にメルトダウンに至る、という前代未聞の事故になった以上、国は正確な数値情報をアレンジせず出すべきだ。避難するしないは、数字を見て国民が判断する。政府が思うほど国民は愚かではない。パニックになって判断能力が麻痺し、極端な無能ぶりを晒しているのは菅首相のみである。

 まともな数字を後出しするなら、後手で避難指示地域を更に拡大することになり、自主避難などという訳のわからない方針での混乱にもなる。恐らく、実際に居住できない地域は50キロ圏に拡大しているはずであり、その放射線推移こそを住民に日々知らせるべきだ。風評被害を懸念する方は多いが、むしろ実態はもっと深刻である可能性が高い。危機認識が政府の情報管制のために甘くなっていること、その方が問題であるように思う。

 安定冷温停止にまで至れるのか、連休前が正念場になりそうだ。いずれにせよ原発事故はまだ始まったばかり、今後10年は放射能との付き合いが避けられない。

 国と東電は安全神話の下、全電源喪失や非常電源の流失などはあり得ないとし、事故時のシュミレーションさえ持っていなかった。

 現実には、自然の前で万全の技術などあり得ない。であれば、原子炉は三重四重の代替え設備で囲まねばならない。こんな状況に至る原発なら、やはり最悪のエネルギーということになるのだから。原子力村、安全神話、それには人の慢心と国民を愚民視する官僚の度し難い態度とが透けて見える。

 半減期2億年、人類が作り出した最悪の毒物である放射性物質、プルトニュゥム。原子炉の核反応生成物であって、決して自然界には存在しない。プルトーとはローマ神話の死神のことである。世に放してはならない悪魔、そのプルトニュゥムが原発の周辺土壌で検出されている。

 最早、原子炉内と外部との境界が取り払われてしまったことを意味している。政府に必要なことは、そのような事態の進行を正確に国民に報告することだ。知識として伝えるべきなのだ。敵が正確に見えさえすれば、この国の国民は正しく戦える力がある、そう思う。

                        

                              川口

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ギャンブル

2011-04-03 06:18:16 | インポート

 3月、新車販売は前年同月比37%減を記録した。30万台を割り込み1974年の水準だ。大震災と原発事故は、急速に国内の消費マインドを落ち込ませてしまった。

 始末が悪いのは、売れない以上に作れないことだ。基幹部品の一つでも欠ければ製品としては成り立たない。世界の半導体需要を支えるシリコン・ウェハーも60%はこの地域から出荷されていた。

 東日本のダメージによって世界の製造業がこれから稼働調整に追い込まれることになる。たった一つの代替え不可能な部品があれば、GMもボルボもBMWも完成品は作れなくなってしまう。今更ながら日本の部品製造が持っていた競争力、影響力は凄まじいものだ。

 立ち直らなければならない。ことは日本だけの問題に留まらないから。3月の様々な経済指標はどれも衝撃的な内容だ。重大な警報として受け止めねばならない。過剰な自粛ムードも見直される必要がある。

 原発も早期に石棺封止を宣言し、実行することだ。綱渡りの冷却が4基とも成功する可能性は随分と低い。炉心の超高濃度の放射性物質が出てしまっている環境下で、電源復旧と冷却ポンプなどの交換を行わねばならない。炉心からの漏れも何処からどの程度かがまったく分かっていない。

 1基でも再臨界爆発や水蒸気爆発を起こせば一帯に人間は立ち入れず、他の全ての炉も冷却の中断に追い込まれ、結果メルトダウンの連鎖になる他ない。

 福島第一の6基の炉心、他にもプール内には数年分のとてつもない量の使用済み核燃料、その全てが膨大な放射能を撒き散らしながら、崩壊熱暴走か再臨界かの破局に至る。それがチェルノブイリをもかすませる、福島の最悪のシナリオだ。

 手作業に等しい冷却作業で「必ず勝ち抜く」、と菅は云っている。だが、それは勝負になどなっていない。繰り返せば必ず負けるはずの、無知な素人のギャンブルに似ている。しかも勝ち抜くと云っても丁半のはり方は東電任せ、言い逃れを用意しながらの至って無責任な博徒なのだ。

 早期の石棺化と経済の立て直しとは同一歩調にならざるを得ない。遅れれば、どちらも日本にとって命取りになる。

                       

                       川口

 

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