明けても暮れても福島原発への不安、日本はとんでもない正念場にある。
原子力保安院はようやく1~3号機での炉心溶融、4号機使用済み核燃料プールでの燃料棒溶融を認め、国際基準での事故レベルを最悪の7に引上げた。当然だ。
政府は6か月後までに安定冷却を達成し放射能漏洩を止める、としている。残念ながらその実現可能性はかなり低い。炉内の放射性物質が漏れてしまっている以上、余りに高濃度な放射線のため屋内に立ち入ることさえできないはずで、様々な設備の交換や配管の再配置などは困難を極める。
事故そのものがあり得ないとした安全神話のため、万一の場合に稼働させるロボットさえ、このロボット大国日本に用意されていなかった。建屋内部の様子を覗う程度の、単純なロボットすらアメリカから借りてくる体たらくだ。
必要な大型機材を設計し、製造し、持ち込み、高度にリスクを伴う作業で設置する、一々についてそのような手順でしか修復を進められない。到底半年や1年の話ではない。その間も綱渡りのような手法で冷却を続け、高濃度汚染水をとてつもない単位で増やしながらも、何としても炉心爆発を阻止しなければならない。信じ難い困難な作業が連続する。
原発がせめて冷温停止状態に至らなければ、日本の経済もこの破綻の淵から這い上がることはできない。消費マインドの急激な落ち込みを解消できなければ、日本は何もかもを失うことになりかねない。一気に80%もの落ち込みを見せた3月の貿易黒字額に続き、4月には驚異的な消費と生産の落ち込みを記録するだろう。掛け値なしに、日本経済は瀬戸際に追い込まれている。花見の自粛などもとんでもないことだ。
ことは起こってしまった。心配ない、直ちに健康被害はない、を繰り返す政府の無能も加わり、収束は何時になるのか本当には分からない。今までのようには生きられない、ドラスティックな転換によってしか次には進めない、そのようなことが起きてしまっている。
幸い、東京の現在の放射線量はモスクワの半分程度だ。これから内陸に向かって風が吹く季節にはなるが、新たな炉心爆発さえなければ首都機能は維持できるだろう。
この間に、政治は先手を打って、甚大な損害を食い止める機能を今度こそ果たさねばならない。迫りくる東南海地震で動くはずの岩盤真上には、静岡の浜岡原発が立地している。東西を結ぶ複数の大動脈に近く、一帯が封鎖の事態になればその時点で日本が終わってしまう。今から停止しておくべき原発ではなかろうか?
稀にみる太平洋プレートの活性期にあって、先手を打つ以外の対策があるとは思えない。後手の対応に追われ、ただ混乱する愚昧をまたも続けるわけにはいかないはずだ。正気の判断、今必要なものはそれだ。
川口