はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

偽物語(上)

2011-01-29 18:38:10 | 小説
偽物語(上) (講談社BOX)
西尾 維新
講談社


「偽物語(上)」西尾維新

 阿良々木火憐と阿良々木月火。2人合わせて栂の木二中のファイヤーシスターズ。何かともめ事を絶やさぬ正義ウーマンぶりが売りの2人の妹は、その名字から察せられるように、ずばり阿良々木暦の妹だ。ただし、女性故か若さ故か、行動指針がけっこう激しい。たかだか女子中学生の分際で、不良からヤクザまで、相手を選ばず立ち回りを演じてしまうのだ。ツンデレな兄の暦は、それがいつも心配でしょうがない。なんとか怪異にだけは出会っていないようだからと安心していたのも束の間、かつて戦場ヶ原ひたぎを騙し、仙石撫子に飛び火した災厄の起こし主・貝木と火憐が最悪の形で遭遇。火憐はスズメ蜂の怪異を押しつけられてしまう。
 運動神経抜群で恐れも遠慮も知らない武闘派の妹に初めて訪れた危機に、立ち上がらなければ男じゃない。なんだかんだいいつつもシスコンな暦は、すべてを賭けて、火憐と戦うのだ……あれ?

 人気作、化物語の正統続編。あれから、羽川翼の怪異変化の事件からしばらく経った暦は、戦場ヶ原と羽川の2人に変わりばんこに受験勉強を教えてもらいつつ、路上では八九寺と変態すれすれのスキンシップをかまし、神原の家でぎりぎり限界のエロトークをし、撫子の部屋でツイスターゲームにいそしむ、といった、非常にけしからん阿良々木ハーレムを楽しんでいた。ここまで100ページ以上。
 そんな適当な配分なのに、これがめっちゃ面白い。なにより良いのはやっぱり会話。暦のメリハリの効いたツッコミと、どこかがずれた女の子たちのボケの応酬が笑えて笑えてしょうがない。メインストーリー抜きでも十分商業的に売りに出せるレベル。
 じゃあメインがつまらないかというと、そんなことはぜんぜんない。妹を思う兄の気持ちと、悪を憎む妹の気持ちのぶつかり合いは熱いし、貝木との最終対決は、バトルもの小説へのアンチテーゼとして、とても考えさせられる内容だった。
 作者の趣味全開すぎるので、向かない人には絶対向かないだろうけど、向いてる人には猫にまたたびのおもしろさ。ものは試しで、ぜひ「化物語」から読んでいただきたい。

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