はあどぼいるど・えっぐ

世の事どもをはあどぼいるどに綴る日記

魔法にかけられて

2008-03-30 16:21:33 | 映画
「魔法にかけられて」監督:ケヴィン・リマ
 
 お菓子の城。それがディズニーに対するイメージだ。つまり、甘ったるくて胃にもたれる。A君のたっての要望で本作を見に出かけた時も、正直、席に座り上映開始になるまで乗り気ではなかった。毛ほどの事前情報もないが、期待は薄かった。
 開始と同時に繰り広げられたのは、ファンタジー世界アンダレーシアの木の家に住まうディズニープリンセス・ジゼルが、気の良い森の動物達と暮らしながら白馬の王子との出会いを妄想するある一日。さすが熟練のアニメのクオリティは高いものの、これが2時間も続くのかと閉口した。王子エドワードとの運命の出会いそして結婚へと至る流れなどもう見ていられない。
 ところが、王子の継母の悪い魔女ナリッサが登場し、ジゼルに呪いをかけたあたりから様相は一変する。なんと呪いの内容は、ジゼルを現実世界へと飛ばすことにあったのだ。
 いきなり実写になるジゼル(エイミー・アダムス)。NYのど真ん中のマンホールからひょっこり顔を出した彼女は、自分の置かれた状況もわからぬまま王子(ジェームズ・マースデン)の待つアンダレーシアへの帰り道を求めてさ迷い歩く。
 森の仲間達が作ってくれたふわふわのドレス以外には何一つ持たないジゼル。ファンタジーの姫丸出しの世間知らずのお馬鹿ぶりを遺憾なく発揮して通行人に手当たり次第に助けを求めるが、返ってくるのは冷たい視線のみ。お爺ちゃんなら優しいだろうと声をかけたホームレスにティアラを奪われ、雨に打たれて濡れそぼり、中世の城を模した看板の扉を叩くが当然返事はなく……。
 途方に暮れるジゼルの前に現れたのは、王子ではなく弁護士ロバート(パトリック・デンプシー)とその娘モーガン(レイチェル・コーヴェイ)。お姫様の世話を焼こうと盛り上がる娘の願いでしぶしぶジゼルを父子家庭に招き入れたロバートは、しかし大人らしくジゼルにドン引き。なんとか追い出そうと奔走するのだが、とる行動がことごとく裏目に出て、結局共同生活を送るはめになる。
 ジゼルを探し現実世界へ向かう王子と、ナリッサ(スーザン・サランドン)の命令で2人の邪魔をしようと画策する従者のナサニエル(ティモシー・スポール)。ロバートの恋人で結婚間近のナンシー(イディナ・メンゼル)。個性豊かな登場人物の絡み合いは、やがてディズニーにあるまじき生々しい結末へと疾走するのだった。 

 面白い。
 マンションの窓からいつもそうするように動物を呼び寄せたら鳩と鼠と蝿とゴキブリが来たり、王子王子と騒いでいたジゼルがロバートに惚れてしまったり、ディズニーがディズニーを皮肉り、否定するところから始まるストーリーには、まさしく一見の価値がある。
 もちろんディズニーらしさも忘れてはいない。アニメや特殊効果は珠玉の出来だし、歌い踊るパフォーマンスも実際のディズニーランドのアトラクションを思わせる巧みさ。いい歳になってディズニーなんて、という人にこそ見て欲しい、大人のディズニー作品なのだ。

THE 絶滅動物

2008-03-28 21:08:54 | マンガ
THE絶滅動物 (バンブー・コミックス) (バンブー・コミックス)

竹書房

このアイテムの詳細を見る


「THE 絶滅動物」

 1932年。ドイツ・ミュンヘン動物園は絶滅した原牛オーロックスを牛から蘇らせた。また、ロシアなどでは氷づけのマンモスからDNAを取り出し、クローン技術で復活させるプロジェクトが進行中である。絶滅した動物と人類との邂逅は、いまや絵空事ではない。
 関東近郊の某サファリパークでも、極秘裏に事が進められていた。厳重な警備体制の下、彼らはひとつの理想郷を作り上げた。その名を「絶滅動物園」という……。
 地上最強の古代怪鳥・ディアトリマ
 藪のような枝角を持つ古代シカ・エウクラドケルス
 南極をのし歩いた巨大ペンギン・ジャイアントペンギン
 太古の牙王・別名サーベルタイガー・スミロドン
 全長6m体重5tの大ナマケモノ・メガテリウム
 腐肉を喰らった狼族の祖先・ダイアオオカミ
 人類が挑んだ最強の敵・ドウクツグマ
 古代の装甲車・更新世のアルマジロ・グリプトドン
 推定50億羽・史上もっとも繁栄した鳥・リョコウバト
 その他数十種類の、かつての地球に存在していた珍妙巨大な生き物たちの生態に迫るコンビニ・コミック。450円という金額は、大きな生物愛好家の僕にはそれほど高くない。
 自然淘汰や人類の祖先の知恵によって葬り去れらた多くの生命の在りし日を偲び、妄想を膨らませる有意義な時間を過ごさせてもらった。

2008/03/25

2008-03-27 12:21:02 | 出来事
2008/03/25

快晴。8時、職場の同僚9人でスキーをするため、車2台に分乗して会津へ向かう。
白い山並みに映える透き通った湖。春の訪れを匂わせる生命の芽吹き。すこぶる天気のよい日で、単純にドライブと考えても割の合う良い道行きだった。
車内は全員男で気がねがなく、逆になさすぎて道中何度かコンビニに立ち寄り、酒肴を補給しなければならなかった。ナビの操作ミスでスキー場ではなく現地の役場に向かっていたのはご愛嬌。滑走開始が13時と遅れたが、今年度初滑り(多忙につき)は存分に楽しめた。9人中ボードが7人スキーが2人の内訳も、思ったほど寂しくはなかった。昨今のゲレンデ事情を考えるに、その程度のマイノリティはしかたあるまい。
シメは焼肉食い放題。店の人がヒクほど食べた。ホルモンがうまい。
しかし、やめときゃいいのに最後は来年度からの会社の変化を語り合い、皆暗い気持ちになって帰っていった。
就寝は23時。泥のように寝た。

花と泳ぐ (2)

2008-03-23 20:36:56 | マンガ
花と泳ぐ 2 (2) (まんがタイムコミックス)
口八丁 ぐりぐら
芳文社

このアイテムの詳細を見る


 形のあるもの 残らないもの その違いは僕が思うよりずっと大きい 菊子が残してくれた沢山の形のない優しさに 僕は今も包まれたままだ
 僕も桜が大好きだ 小さくすぐ散ってしまう儚い花 それは菊子のイメージ ねえ菊子 また今年も桜が咲くよ また笑って僕を誘ってくれよ 菊子
 僕の知らない所でいろんな想いが交差し やがてそれは一つに結びつこうとしていた ふみちゃんはどうしてあんな事をしてしまったんだろう 今はもう訊く事も出来ない
 あとで大家さんに教わった彼岸花の残りの花言葉 それは僕達の心を少しは勇気付けたのだろうか また会う日を楽しみに 想うはあなた1人
 過去を振り返りながら進んでいくのが人間だ それを考えても仕方ないことはわかっている 僕の力では眠り姫を救えなかった 今はただ祈る事しか出来ない
 優しさは特に過去の出来事を呼び起こす 思い出も日常もここにある と言ってくれた菊子 今 僕の隣に彼女はいない
 
「花と泳ぐ(2)」口八丁ぐりぐら

 人より霊感の強い大学生・笹川幸太と、幸太の部屋に転がり込んだ料理好きで記憶喪失のとぼけた幽霊・菊子。菊子を追って隣の部屋に住み着いた見習い霊媒師の女子高生・下田ふみと、幸太の親友で海より深い寛容さを持つが霊感ゼロのフリーター・梅ちゃん。どちらの存在も知っているけど猫だから理解できない黒猫の会長。4人と一匹の思いはすれ違いつつバッドエンドへとひた走る。
 今回、菊子のことを「見える人間」が増えた。幸太の兄・健太とふみの母の2人。普段幸太とふみしか話し相手のいない菊子はわっと喜ぶのだが、健太はすぐに去ってしまったし、ふみの母はなんだか怖い……。けっきょく理解者は増えぬまま、閉じられた人間関係の中で彼女の日常は進む。コミカルな描写の中に一際目立つ孤独の表現が鮮烈で、時折混じる悲劇のモノローグの効果もいや増し、物語から目が離せない。

つぶらら(3)

2008-03-21 22:32:54 | マンガ
つぶらら (3) (アクションコミックス)
山名 沢湖
双葉社

このアイテムの詳細を見る


「つぶらら(3)」山名沢湖

 予想だにしなかった。まさかつぶららが解散しようとは……。
 長身でスリムで寡黙。クールビューティーな見た目に反してアイドルグループ・キャラメル☆エンジェルの熱烈なファンのつぶら。密かな趣味嗜好を隠すためにとる行動がどんどこいいほうに転がり、いい人、かっこいい人といわれ続けた第一巻。その活躍が新聞に載り、芸能プロダクションの目に止まり、相方・辻村つららと共に地域限定アイドルユニット「つぶらら」を組むことになった第二巻。
 夏の暑い盛り、連日繰り広げられる県高校野球予選の応援に、つぶららはひっぱりだこ。デビュー曲兼県高校野球テーマソングの「白いキズナ」は着実に浸透し、高校球児も老若男女も応援歌として歌いまくり踊りまくる。秋の足音が聞こえてくる頃には、つぶららはすっかり富士岡県(のみ)のアイドルとして定着していた。
 やる気MAX上昇志向満点のつららも満足……かと思いきや、ぜんぜんそんなことはなかった。テレビ中継を見た東京の大手プロダクションの誘いに乗るや、あっさりコンビを解散。呆然とするつぶらとファンに一方的に最後の挨拶をすませ、ダッシュでステージを走り去った。

「レモネードBOOKS」の山名沢湖の描くご当地アイドルつぶららのサクセスストーリー……ではない。成功と挫折。
 驚いた。1人異分子だったつららが当然とるだろう選択肢を選んだ。それだけの話ではあるのだけど、ほんわかで優しいキャラたちの中に埋もれそうになっていたから、思わずはっとさせられた。
 夢を選ぶか、義理を選ぶかの秤は遙に夢が重い。義理で過ごしたこの数ヶ月間を糧にして、さらなる高みへつららはゆく。楽しさも寂しさも踏み越えて。その決断がまぶしい。

UDON

2008-03-18 17:04:38 | 映画
UDON スタンダード・エディション

ポニーキャニオン

このアイテムの詳細を見る


「UDON」監督・本広克行

「踊る大捜査線」の本広監督が、やはり「踊る~」以来の付き合いのユースケ・サンタマリアを主人公に描くテーマはなんとうどん。コシが強くてシコシコしてて、全国にブームを巻き起こした讃岐うどんがまさにブレイクするきっかけとなった出来事とその舞台裏を描いた話題作。
「ここに夢はない。ここにあるのはうどんだけだ」
 そう吐き捨てて日本を脱出、憧れの地ニューヨークでスタンダップ・コメディアンを目指していたコースケ(ユースケ・サンタマリア)は、夢破れて田舎に帰郷した。製麺所を営む頑固な親父からはメタクソにどなられ、姉夫婦からは変に温かく接しられ、懐かしき友人知人からは生暖かく迎えられ……当然居心地はよくない。 
 そんな折、ひょんなことから出会ったタウン誌の編集者キョウコ(小西真奈美)と、広告代理店に勤める幼馴染みショースケ(トータス松本)とコースケの3人は、弱小タウン誌を媒体にした町おこしの一環として、讃岐うどんを盛り上げていこうと画策する。
 有名な店を写真入りで丁寧に紹介するのではなく、「苦労して発見する楽しさ」を味わってもらうために写真は載せず、文章と最低限の地図のみで構成されたそのコラムは、四国八十八箇所廻りに見立てた「巡礼記」としてタウン誌の1コーナーを占め、人気を博した。「たかだかうどんを食うためだけに旅行する奴がいるか」という大半の意見などなにするものぞ、その人気は町や県にとどまらず、四国、そして日本全国へと波及する一大センセーションを創りあげたのだった。
 騒動の渦中にありながら、3人にはわかっていた。ブームには終わりが来る。コメディアンになりなかったコースケ。いずれは農家を継がねばならぬショースケ。物書きになりたかったキョウコ。3人の青春の終わりは、タウン誌の廃刊とともに訪れた。旅行客の減少とライバル誌のフリーペーパーの台頭が原因だった。
 キョウコは東京の出版社から誘われ、ショースケは農家を継いだ。最後に残ったコースケは製麺所の門を叩く。学校や病院に麺を卸す傍らうどん屋を営む大嫌いな頑固親父と正面から向き合うことにしたのだ。
 だが折悪しく、親父は心筋梗塞で帰らぬ人となった。一時閉鎖された製麺所には、復活と親父の安否を伺う人々が連日訪れ、しまいには入り口にコメントを記すノートまで置かれるようになった。
 人々に愛されていた親父の人柄を偲び、コースケは泣く。生きている時に気づきたかった。30数年ぶりの思いを伝えたかった。親父、ごめん。親父。親父……。
 涙を拭い、コースケは割烹着に袖を通した。そこには、うどんしかなかった。奇しくもかつてコースケが言ったように、親父との語らいはうどんを作ることの中にしかなかった……。

 ぬるい外見の根底に流れるしっかりとしたストーリーに、ユースケ・サンタマリアの軽佻浮薄なキャラがジャストフィット。小西真奈美の地味な美貌も、トータス松本の親しみやすい人柄も、すべて計算しつくされたパズルのピースのようにぴったりおさまる。笑って泣ける本広監督の名人芸。佳作。

2008/3/15 DREAM1

2008-03-16 22:07:38 | 格闘技
2008/3/15 DREAM ライト級GP1回戦

 ヨアキム・ハンセンVS朴光哲
 ミノワマンVSイ・グァンボム
 川尻達也VSブラック・マンバ
 桜井・マッハ・速人VS門馬秀貴
 エディ・アルバレスVSアンドレ・ジダ
 石田光洋VSチョン・ブギョン
 宮田和幸VSルイス・ブスカペ
 永田克彦VSアルトゥール・ウマハノフ
 青木真也VSJ.Z.カルヴァン
 ミルコ・クロコップVS水野達也
 ライト級8戦プラスワンマッチ2戦の計10戦。いずれ劣らぬ強豪を出し惜しみなく取り揃えた新格闘技イベントDREAM旗揚げ戦。
 10分5分の2R制。延長なしのマストシステム。序盤を見逃した為詳細なルールは不明。頭部への肘は禁止らしいことは試合中にわかった。
 解説はおなじみの高阪に加えて須藤元気とKID。元気はともかくKIDは不要だった。高阪はさすが。

○ヨアキム・ハンセンVS朴光哲× 判定3-0
 強面の外見とは裏腹の冷静な試合運びに定評のある北欧の処刑人対KIDの弟子。
1R 左へ回り込みながら左フックをひっかけ時折ワンツーを放っていく朴。けっこうパンチが重いな、と思ってる側からハンセンの激重な一撃。大振りの左右でダウンをとられる。グラウンドへ移行。
 寝技もできるハンセンのプレッシャーに耐えながら腕をとりにいく朴。狙い通りスタンドへ復帰したものの、裏投げをくらう。
 ハンセン朴の後ろをとり、そのまま前転するようにグラウンドへ。背後から胴締め。チョーク狙いから腕ひしぎへとスムーズな変化。
 なんとかスタンドに逃れた朴。鋭いパンチを上下に散らすが、ハンセンの左ストレート一発で崩される。打ち合いの末、コーナーに押し込まれ投げをくらってグラウンドへ。サイドから攻められたがマウントまではとられなかった。
 立ち上がり際を狙ってパンチを放つハンセン。不発も、勢いのまま組みつき裏投げ。上手い。後ろをとり胴締め、パンチ打ちながら首狙い。崩れてガードポジションへ移行するも、構わずパウンド落としていく。
 スタンド。ハンセン攻め疲れが見える。残り1分。打撃を避け組みつきテイクダウンして時間稼ぎ。
2R 激しい打撃の応酬。ボディを効かせて優勢に運ぶ朴。
 ハンセン首相撲から朴の足を刈りテイクダウン。長いグラウンド。
 残り1分ハンセン左ストレート直撃させてダウン奪う。追い込みは成就せず。そのまま終了。
  
○ミノワマンVSイ・グァンボム× 1R一本(膝十字固め)
 超人対元韓国プロ野球選手。
1R 前転して間合いを詰めてくるミノワマンに困惑する総合デビュー戦のイ。パンチから組みつかれ、グラウンドへ。サイドから移行した膝十字を防げなかった。相手が悪い。

○川尻達也VSブラック・マンバ× 判定3-0
1R 曲者ブラック・マンバ。ライト級にして183センチという身長は反則だろう。打撃は上手いし、飛び込んだところで迎え撃つ膝も怖い。
 川尻スタンドを嫌い片足タックル。マンバ粘るもしつこく食い下がりテイクダウン。ガードポジションからハーフガード、サイドポジションと徐々に移行してようやく攻めの体勢整うも、やたらリーチのあるマンバの膝が側頭部に直撃。逆にピンチに。耐えて後ろをとり、胴締めチョーク狙うも崩れて上に乗られる。ラバーガードでしのぎ、スタンドへ。
 石田が乗り移りでもしたかのような川尻。執念のタックルを成就させテイクダウン。ガードポジションからなんとかサイドまでもっていくものの、スタンドへ……しかし逃さずバックとる。チョーク入りかけるがダメ。肩固めへ移行もダメ。これが一番のチャンスだった。
2R 似たような展開。マンバの腰の強さにスタミナを奪われ大きく口を開けるシーンが目立つ川尻に、解説陣口を揃えてスタンドに切り替えたほうがいいのではとコメント。実際打撃から崩したほうがグラウンドへ入りやすいと思うのだが、今日の川尻は意固地になってタックルを繰り返していた。グラウンドになっても体勢をよくすることしか考えていないかのようにパウンドを落とさないし、得意の膝も出ていなかった。判定勝利も不安を残す結果となった。

 以下3試合はハイライトのみ。
○石田光洋VSチョン・ブギョン× 判定3-0
○ルイス・ブスカペVS宮田和幸× 1R一本(チョークスリーパー)
○永田克彦VSアルトゥール・ウマハノフ 判定3-0 

○エディ・アルバレスVSアンドレ・ジダ× 1RTKO
 ストライカー対決。ジダの名前の由来がadidasのスニーカーからきていたとは知らなかった(貧しい時代にもらった母からのプレゼントをaとsの文字が擦り切れるまで使っていたらしい)。
1R 早く激しい殴り合い。ジダの右フックでダウンしたエディだが、立ち直りは早く、気がつけばグラウンドで上になっていた。関節など知らぬかのようにハーフガードからパウンドを落としまくる。
 スタンドへ移行し再び激しい打ち合い。雑なパンチと当て勘を頼りに戦うジダを、エディの的確なパンチが制した。いや、どっちも大振りのフックが主武器なんだけど、エディのほうがコントロールがきいていた。
 崩れたジダの上に乗る形でグラウンドへ。ガードポジションから委細かまわぬパウンドの嵐。膝も交え、勢いでマウントまでとる。その後も一方的に、ジダが動かなくなるまで休まず殴り続けた。

○桜井・マッハ・速人VS門馬秀貴× 1RTKO
 和術慧舟會対マッハ道場をアピールする門馬。和術慧舟會ってそもそも強い人いないじゃんという気がするが。とりあえず表情はふてぶてしい。
1R ゆっくりとした立ち上がり。桜井のローが良い。門馬の出足を表裏丹念に蹴っていく。
 スタンドを嫌った門馬。打撃の応酬から引き込むようにグラウンドへ。マッハの首を狙って足を絡めていくが、これは不発。
 スタンド。門馬はジャブで距離をとりたいところだが、百も承知のマッハにカウンターのローを合わせられる。左ボディを打ちにいったところでカウンター気味に左フックをもらいダウン。追撃のパウンドのさ中レフェリーが止めに入った。 

青木真也VSJ.Z.カルヴァン ノーコンテスト
 スラムで育った家族愛の男、強豪カルヴァンに対するは早稲田から警察という誰もがうらやむ磐石路線を蹴ってサブミッションワールドに踏みこんだバカサバイバー青木。打極の頂上対決に、嫌でも会場内のボルテージは上がる。
1R 立ち上がり、中間距離で互いの出方を探る両者。一挙一動に息が詰まる。
 意外とガンガンいかないカルヴァン。よほど青木のサブミッションを警戒しているらしい。
 なんとかきっかけを見つけてグラウンドに引き込もうとするも、全力で逃げられて困る青木。猪木アリ状態が目立つ。
 コーナーで組み付いた青木の首にカルヴァンが肘を落とし、これがきっかけで青木戦闘不能。残念ながら無効試合となった。

○ミルコ・クロコップVS水野達也× 1RTKO
 秒殺。公開処刑。それ以外に言い様なし。

冬のオペラ

2008-03-13 21:25:21 | 小説
冬のオペラ (角川文庫)
北村 薫
角川書店

このアイテムの詳細を見る


「冬のオペラ」北村薫

 東京の叔父の経営する会社・姫宮不動産に勤める事務職・姫宮あゆみは、物書きになるという大それた野望を抱えながら日々を生きていた。田舎とは違う都会での一人暮らしの寂しさや、物知らぬ若輩者の自分の情けなさと戦いながら、健気に自分の立ち位置を踏み固めていた。
 その男は姫宮不動産の入っている雑居ビルに越してきた。安っぽいワイシャツにネクタイ。歳は40前後。髪をぴったりと撫でつけているので額が広く見える。眉は濃く真っすぐ、眼光鋭い。口をきつく結んでいる。果し合いの前の侍のような気合いのこもったたたずまいのその男は、巫(かんなぎ)弓彦と名乗った。
 身元調査など一般の探偵業は行わない。人知を越えた難事件にのみ出動する自称「名探偵」巫。彼は「名探偵というのは行為や結果ではない。存在や意志である」と言い切る。
 しかしいつ出会えるとも知れない難事件との遭遇を待っているだけでは生きていけない。土方や警備員やコンビニの夜勤などで糊口を凌ぐ巫の生き様に感銘を受けたあゆみは、ワトソン役として記録者を買って出るのだが……。
 彼とあゆみの出会う3つの事件は、色をなくした冬枯れの野のように物悲しい。人の悪意、美しい人の変貌、見たくない暗部を見せ付けられ、2人は等しく傷ついていく。

 季節の音を聞き、人との関わりを楽しみ、巫を思慕するあゆみ。
 真実が「見えてしまう」名探偵・巫。
 寸毫のいやらしさもない2人の距離感が爽やかで、それだけでも充分楽しめる。しかしストーリーに派手さはなく、巫が探偵でなければならない意外性や必然性もさほど感じられなかった。韋駄天や足疾鬼の挿話にも無理矢理感があり、それがこのシリーズが続かなかった最大の理由なのかもしれない。しっかり者の若い女の子の一人称、というだけでも読める人は多いだろうに、残念でならない。

2008/3/5 戦極

2008-03-11 23:11:02 | 格闘技
2008/3/5 戦極
 プライド亡き後の日本の総合格闘技コンテンツを支える資格があるかどうかの試金石となる戦極旗揚げ戦。開催は国立代々木体育館。15000人入場の満員御礼と、興業的にはひとまず成功となったが、間が空く構成やPRIDEに影響受けすぎの煽りに不満の残る内容となった。
 5分3R。目潰し金的への打撃の禁止。頭部顔面への肘打ち禁止。グラウンド状態の相手への膝蹴り踏み付けは有効。3点ポジションの相手の頭部顔面への脛または足の甲を使った打撃の禁止。など、ルールは当世風の禁止条項を含んだ5か条。
 解説は高阪、菊田、途中参加の郷野の3人。煽りVの声はシャア・アズナブル。

○ニック・トンプソンVSファブリシオ・ピットブル・モンテイロ× 判定3-0
 彼女に葉っぱをかけられ一念発起した、格闘技経験5年のBodogFightチャンプ・ニック対幼少の頃より柔術を学び、昨年他界したハイアン・グレイシーを師と仰ぐ、柔術世界選手権ムンジアルを2度制覇したファブリシオ。動機はともかく戦歴には遜色のない対照的な2人の対決は、対柔術のディフェンスを知るストライカーが着実に打撃でポイントを稼いで判定勝利という、まことに当世風な結末となった。
1R 180超というウェルター級にあるまじき身長とリーチの長さを生かしたいニック。遠距離からのリードジャブで間合いを制し、ワンツーやボディストレートでダメージを与えていく。
 スタンドには付き合いたくないファブリシオは3度テイクダウンをとるも、きっちりとディフェンスのできるニックを攻めあぐねる。1R終了間際マウントとるも惜しくも時間切れ。
 高阪いわく、クロスガードの足をとるふりをしてパウンド落とすのは流行りらしい。
2R スタミナ切れか、ニック動きに精彩欠く。
 チャンスと見たファブリシオは打撃を掻い潜ってカウンター気味にタックルを決めテイクダウン。ほぼ2R一杯に使って攻めまくるも、対柔術のディフェンスを知り尽くしたニックの長い手足に阻まれ今一歩攻めきれない。それどころかたびたび上になられ、パウンドを落とされる。
3R グラウンドでの一本負けはないと踏んだニックがスタンドで押す展開。グラウンドになっても上からパウンドを落とし、ポイントを稼いでいく。
 結果は3-0でニックの圧勝。見た目ではそれほど差はないものの、何度やっても多分ニックが勝つだろう。

○川村亮VSアントニオ・ブラガ・ネト× 判定3-0
 長谷川健太(サッカー)似のパンクラシスト対これまたハイアングレイシーを師と仰ぐムンジアル王者。ここまで来ると大安売りだな。ムンジアル王者。
1R 早々にテイクダウンをとるブラガ。マウントやバックマウントからネチネチと攻める。
 川村なんとか逃げ切り、スタンドで鋭いパンチを打つ。
2R 打撃攻防からカウンターをもらってぐらつく川村。テイクダウンをとられあげくバックマウントとられるもなんとか逃げる。
 ブラガの慎重な攻めに慣れてきた川村。終了間際逆にサイドをとりパウンド。
3R 川村上になられている時間多いがスタミナ切れずよく動く。スタンドはもちろん優勢。グラウンドになってもサイドから頭に膝を打ち込んだり、上になってパウンド落とす。
 結果は3-0。

○エヴァンゲリスタ・サイボーグVS瀧本誠× 1R一本勝ち(アキレス腱固め)
 一応断っておくが誤植ではない。シュートボクセアカデミー対吉田道場の有望株対決は、意外な形でシュートボクセに軍配が上がった。
1R サイボーグ鋭く回転の速い打撃。かわしつつ隙を窺う瀧本にローを効かせてダウン気味にグラウンドへ。
 サイボーグ立ち上がり、猪木アリ状態の瀧本の足をとると、何を思ったかプロレスのようにヒールホールドへ移行。これが意外にがっちり極まりそうになり、さらに変化させてアキレス腱を狙い、成功。解説陣と会場がどよめく中、エヴァンゲリスタ・サイボーグ、まさかの一本勝ちとなった。

○藤田和之VSピーター・グラハム× 1R一本勝ち(肩固め)
 ジェフ・モンソンに敗れ傷心のままアメリカに渡っていた藤田対、記者会見場でバダ・ハリに決めた鮮やかなタックルが印象深いグラハムの出来試合。いや、結果わかりきってるだろこれ。

○三崎和雄VSシアー・バハドゥルザダ× 2R一本勝ち(フロントチョーク)
 秋山戦からわずか2ヶ月のPRIDE王者・三崎対アフガニスタンの戦場帰り・修斗王者・シアー。
1R いきなりいい右ストレートとラッシュもらう三崎。両腕さして逃げるようにテイクダウン。
 三崎アームバー外される。返されガードポジション。下から三角、オモプラッタなど狙う。
2R スタンドは不利。というかそもそも打撃が見えていない模様。テイクダウンからフロントチョークで勝利するも、味気ないし全体的に動きに精彩欠いていた。試合間隔短すぎか? 勝っただけ、という郷野の冷静なコメントが印象深い。
 試合後のマイクアピールはいつもよりマシ。しかし大晦日の秋山戦に対する捉えかたには納得。無効試合? 僕らはしっかり覚えている。

○五味隆典VSドゥエイン・ラドウィック× 1RTKO
 今日初のストライカー対決。復活の五味対UFCでジェンス・パルヴァーやチャールズ・クレイジーホース・ベネットや須藤元気を倒した実力者ラドウィック。
1R いわく「総合の打撃の完成形」ラドウィックはさすがに本格的なパンチを打つ。蹴りも早く、軸が全然ぶれない。
 五味久しぶりの実戦かつラドウィックの打撃に大いに戸惑う。しかしガードの間をすり抜ける右ストレートで崩し、返しの左フックで鼻をカットし、大出血を誘ってあっさりTKO。
 試合後涙を浮かべながらのマイクアピールは好印象。

○ジョシュ・バーネットVS吉田秀彦× 3R一本勝ち(ヒールホールド)
 どちらもひさしぶりの登場。柔道対キャッチレスリング、珠玉のグラウンド対決。
 ちなみに吉田は柔道着着用。
1R 打撃攻防から吉田が投げにきたところを返してまさかのバックドロップを決めるジョシュに会場が沸く。
 一連のグラウンドの攻防の後、再度の吉田の投げもジョシュ踏ん張る。しかし吉田はめげず、ジョシュの腕をとり回転するようにグラウンドへ。
 高阪の指摘通り、ジョシュは同時に吉田の足首を狙っていた。膝で押さえこみ逆に曲げるキャッチレスリングの技だとか。
 二転三転するグラウンドの攻防に会場のボルテージが上がる。ジョシュも笑顔。ものすごい楽しそう。
2R 吉田の雑な打撃をうっかりもらうジョシュ。グラウンドに逃げながら吉田の柔道着の裾をとりアキレス腱固めからヒールホールドを狙う。が、これは外れる。
 亀になった吉田をジャーマンで引き抜こうとしたり、脇に膝を打ち込んだり、マウントからパウンド落としたり腕ひしぎ狙ったりとやりたい放題のジョシュ。吉田劣勢。
3R 完全にスタミナ切れの吉田。大きく口を開ける。勝ち目がないことを悟ってか、防戦一方。グラウンドでも亀になるのが目立つ。
 伝家の宝刀ヒールホールドが決まり手。1、2Rの攻防が面白すぎただけにあっさりとした終わりには拍子抜けした感がある。しかしジョシュ対ノゲイラ戦以来ひさしぶりの面白いグラップラー対決だった。堪能した。この一戦に八百長疑惑が浮上しているらしいが、無粋な話だ。男と男の戦いに口を挟むな。

茄子(2)

2008-03-08 21:37:00 | マンガ
茄子 (2) (アフタヌーンKC (295))
黒田 硫黄
講談社

このアイテムの詳細を見る


「茄子(2)」黒田硫黄

 茄子を主題にした連作短編集第二弾。茄子を栽培する1人暮らしの農家・センセ。授業で茄子を栽培している男子をたぶらかして茄子を貢がせる貧乏姉弟の長女・高橋。デートの弁当に茄子を入れるフリーター・国重の3人が1巻から続いての登場となった。
 8話構成のうち、とくに気に入ったのは「39人(前・後編)」と、「お引っ越し」。
「39人」
 親父が多額の借金を抱えて失踪し、幼い弟妹と共に田舎の親戚に引き取られることとなった高橋(同じ村にセンセがいた)。ただ養われているだけでは気持ちがおさまらず、持ち前の小器用さと外交能力を駆使して映画ロケ隊39人の食事係を買って出る。
 限られた時間と食材、アクシデントの数々を乗り越えベストな方法を模索しようとする彼女。そのパワフルな姿に圧倒されながらも冷静に意見し手伝うセンセとのコンビが清々しくてよかった。
 茄子料理のは出番がなかったが、大人数のカレーと水餃子、ミルク寒天にくずもちなど、紙面は相変わらずうまそう。
「変ですか? 花も実もある歳なのに守銭奴みたいですか私」と高橋。本人は女子高生らしくない自分の素行を気にしているようだ。
「お引っ越し」
 風呂もテレビもゲーム機もない1人暮らしのシンプルライフを送る国重の部屋に、インドへ旅立つキャッチボール仲間の有野がテレビとゲーム機を持ってきた。
 有野がクリアしていないRPG「ラジオ」をクリアすることを餞別にしようとする国重。国重のスーパーのアルバイト後に毎日一緒にゲームすることになった2人。その距離感がよい。恋人であろうとか親友であろうとか、余分な思惑の一切ない肩肘張らない関係が微笑ましい。
「いいでしょうやりとげたエンディング。仕事もみんなこんなふうならいいのになあ。仲よしごっこじゃなくてさ」とは国重の感想。ゲーマーなら共感できる?