ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ

2024-05-19 17:50:49 | ジャズ(ハードバップ)

ジャズ・メッセンジャーズの結成当初のことについては以前に「ハード・バップ」でも解説しました。今でこそアート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズとして認知されている彼らですが、1956年にホレス・シルヴァーが脱退するまではブレイキーとシルヴァーが対等の立場でリーダーを務めていたようです。今日ご紹介する作品は1954年11月13日と1955年2月6日に吹き込まれたセッションで構成されていますが、ブルーノートから「ホレス・シルヴァー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」の名でシルヴァーのリーダー作として発売されており、ブレイキーはサイドマン扱いです。残りのメンバーはケニー・ドーハム(トランペット)、ハンク・モブレー(テナー)、ダグ・ワトキンス(ベース)というラインナップ。これは一般的にジャズ・メッセンジャーズのデビュー作とされている同年11月のライブ盤「カフェ・ボヘミアのジャズ・メッセンジャーズ」と全く同じ布陣です。

とは言え、収録曲8曲のうち7曲をシルヴァーが作曲しており、内容的にもファンキーかつキャッチーなシルヴァー節が全開ですので、グループの名称はともかくとしてやはりシルヴァーのリーダー作として扱うのが正しいような気がします。シルヴァー作品の特徴としてありきたりのジャズスタンダードやバラードを演奏しないこと。そんなのは他のグループに任せておけと言わんばかりに、オリジナルのファンキージャズで固めています。特に本作は後に他のジャズメンによってカバーされる名曲がずらりと収録されています。”Hippy”はクロード・ウィリアムソン、”The Preacher”はジーン・クイルやジミー・スミス、”Doodlin’”はディジー・ガレスピーやサラ・ヴォーンらがそれぞれカバーしており、それらのバージョンを聴いた後でオリジナルを聴き直すとまた良さがわかります。上記3曲以外だとオープニングトラックの”Room 608”、1曲だけハンク・モブレーが書いた”Hankerin’”も軽快なハードバップで非常に良いです。この後、シルヴァーとブレイキーは1年ほど活動をともにし、上述「カフェ・ボヘミア」や「ニカズ・ドリーム」と言った名盤を残しますが、1956年後半に分裂し、それぞれ別の道を歩むことになります。ただ、その後も他人名義のセッションではたびたび共演していますので(「ブローイング・イン・フロム・シカゴ」「ソニー・ロリンズVol.2」etc.)、決してケンカ別れしたわけではないようです。

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