名作や傑作だらけの森崎東監督だけど、
特に印象に残っているのが、
東映で撮った「喜劇 特出しヒモ天国」かな、と。
ストリップ小屋にうごめく
怪しげなヒモ男たちと、腐れ縁でつながったストリッパーたち。
彼ら彼女らの阿鼻叫喚なエピソードを、
サラリーマンからドロップアウトした支配人で
のちヒモになる男(山城新伍)の目で描く。
その視点は限りなく優しいけれど、
ふだん虐げられた人たち、今の言葉で言うと
エッセンシャルワーカーな人たちの
悲惨な状況を笑い飛ばそうとしながらも、
笑ってる場合じゃねえよ、と突っぱねるような演出の凄み。
森崎作品に通底する、
世の中への怒りというか。差別への反発というか、
大きな権力に対する嫌悪感みたいなもの。
でも、そうしたテーマが声高になる前に、
映画としてとにかく面白すぎるわけで。
登場人物が逸脱した魅力に溢れていて、
泣いて笑って、ああ楽しかったなあという幸福感。
松竹から干されてフリーとなった監督が
慣れない東映で撮った本作は、
山城新伍や川谷拓三の大活躍で一気に東映テイストになりつつ、
にっかつロマンポルノの名花とも言える
芹明香のストリッパーぶりが、なんとも哀切でたまらない。
ということで
森崎作品の中でも「特出しの一本」かな、と。
実はもう一本、
森崎監督にはものすごい傑作があるのだけど、
それはまた追って書きます。