庄司卓完全攻略ブログ

作家庄司卓のブログです。
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映画『ジョン・カーター』

2012年05月24日 23時22分22秒 | Weblog
以前から記憶に残る作品として『火星のプリンセス』に始まる火星シリーズをあげてる以上は見に行かねばなるまいと忙しい中をぬって行ってきました( =゜ω゜)ノ。

すでに劇場公開もほぼ終わっているようなのでネタバレ全開で。
BD/DVD待ちの皆さんはお気を付けて。

興行収入がギネスものの大赤字だったそうですが、個人的には結構面白かったと思います。
意外だったのは予告編や広告などは「惑星バルスーム」で統一。火星という単語がほぼ出てこなかったので、映画はあくまで「未知の惑星バルスーム」で行くのかと思っていたら、原作通り「火星」なんですな。
これに限らず基本的に科学考証や設定はあくまで原作執筆時点に添った形になっております。有る意味ジョン・カーターをはじめとする登場人物の行動も、20世紀初頭の常識に基づいているような気もします。
そんなわけで冒頭からしばらくは概ね原作通り。地球のシーンが長いのは、この作品が原作執筆時点の常識に照らし合わせて作られたというのを分からせる為だと思います。
ゾガンガ帝国が巨大陸上戦艦になってるのは、同じ作者の『金星シリーズ』のリスペクトですかね。
原作との大きな違いといえばサーンの司祭マタイ・シャンが大きくクローズアップされている事。火星(バルスーム)や地球をまたにかけて陰謀を巡らせる黒幕になっております。
また原作では正体不明の風来坊だったジョン・カーターも、南北戦争で妻子を失ったと設定されてますな。原作だとどこか達観した感じもあったカーターですが、映画ではその点、悩めるヒーローからスタートしてますな。

興行収入が思わしくなかったのは「原作執筆時点の常識に沿って映画を制作したという方針がプロモーションで徹底されてなかった」事かなあ。日本でのプロモーションしか知らないので、海外ではどうだったのかは分かりませんが。
これがジュール・ベルヌ、H・G・ウェルズの超メジャーなSF作家ならば、当時の常識のまま制作する意義もあったでしょうが、E・R・バローズではさすがに少し厳しいか。私のような原作ファンは納得できますが、知らない人は「火星に生物がいる」時点で首を傾げたんじゃないかと。
さらに黒幕のマタイ・シャンのキャラクターですか。何にでも変身できるのにそれがいかされてない。また一度地球へ戻ったカーターを付け狙ってるわけですが、原作を知らない人はこの時点で深読みしたかも知れません。「そもそもバルスーム(火星)なんてなかった。すべてマタイ・シャンがカーターに見せた幻影だ」とか。
マタイ・シャンがカーターを地球に戻した時に殺さなかったのは、バルスームにいるのが移し身で、地球にいる肉体と同時に始末しなければ駄目だったからかな。
またデジャー・ソリスが「このままだとバルスームが滅ぶ」と言ってましたが、マタイ・シャンはゾガンガのサブ・サンを使って傀儡政権を立てようとしていただけ。サブ・サンとの結婚式が終わるとデジャー・ソリスをはじめとした秘密を知ってる人間はすべて始末されるような事を言ってましたが、それが何を意味していたのかもよく分からないまま。
この辺、ラストの盛り上がりが欠けましたな。
まあ原作もカーターが地球に戻るラストのくだりはかなり唐突なんですが。
金星シリーズから陸上戦艦を持ってくるなら、陸上戦艦同士の艦隊戦もやって欲しかったですね。いやいっそ開き直って同じ作者で知名度の高いターザンを語り手に持ってくると言う手もあったか。そうなると完全に『スーパーバローズ大戦』ですが(^^;。

そのデジャー・ソリスですが科学者であり、自ら剣を持って戦う勇敢な王女となったのは時代に合わせたというのもあるでしょうが、お話を転がしやすくする為でしょうな。
そういえばバルスーム人は意識して嘘をつく事ができないという設定はどうなったんだろう。明らかに途中、カーターを騙してましたが。
またカーターが妻子を戦争で失った事と、タルス・タルカスと娘ソラの親子愛を関連づけた事でも、いささかお話の焦点が曖昧になってしまったかな。

まあ文句ばっかり言ってますが、それも原作愛という事で(^^;。
サーク族の言動など原作の「高貴な野蛮」がよく生かされていたと思いますが、それが現代の流行りにそっているかというとまた別問題ですからねえ。

個人的に一番、イメージに近かったのがヘリウムの将軍カントス・カンですか。
他にも真ん中で回転するドア、空中戦艦のブリッヂにはめ込まれたガラスが歪んでいるんど、細かいところも意外に凝ってましたなあ。
心なしかカーターやデジャー・ソリスの衣装の一部は、アメリカでも人気のあるという創元SF文庫版のイラストを担当した故武部本一郎画伯の作品を連想させてくれました。

女神イサスの名前も出たし、キャストに黒人俳優がいないのは続編で黒色人を出す為かと期待したいのですが、やはりギネスものの赤字では厳しいですかねえ(;´Д`)。

それはそうと見ていて気になったのは……。
ヘリウム皇帝タルドス・モルスの娘デジャー・ソリス……。
………………あれ(;´Д`)?
モルス・カジャックはΣ( ̄□ ̄;;;)!?
原作だとデジャー・ソリスはヘリウム皇帝タルドス・モルスの孫娘で、小ヘリウム王のモルス・カジャックの娘という事になっているんですが。
まあ原作でもなんでいるのか分からんくらい影薄かったしなあ……(^^;。

2 コメント

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懐かしすぎです。 (nisi)
2012-05-25 08:15:11
面白かったですか。
DVDを楽しみに待ちます。
「火星シリーズ」に限らず、
バロウズ作品を読んだのは、
かなり前なので、
もうお話を全く覚えていません。
ギネスにのるくらい不評だと、
続編も金星シリーズも映画化されないかもしれませんね。
CMも「SF界不朽の名作」みたいなコピーをうてばいいのに、宣伝もイマイチだったような気がします。
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Unknown (なぎさわ)
2012-05-26 07:00:50
私も「30年位前(当時小学生)に子供向け抄本を読んだ」という記憶しかなく、内容はほとんど覚えていない状態ですね。
見に行きたかったんですけど、このあたりじゃもう終わってるかなぁ。
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